第30話 闘いの向こう側
残酷な表現があります。
苦手な方はスルーして下さい。
今まで闘った中で一番手強い。
認めた上で対策を考えなければ勝てない。
「そら、休んでる暇は無いぞ」
リュディルガーが雷矢を立て続けに放つ。
アンバーが治癒魔術をかけてくれたおかげで能力強化を駆使すれば躱せる。
が、リュディルガーの雷矢の連射が早すぎて躱すだけで攻めあぐねいている。
アンバーとヒル姐も土槍中心にリュディルガーを迎撃するもリュディルガーは竜斬刀で魔術を捌いたり避けたりして当たらない。
「っ!?」
俺達とリュディルガーが魔術合戦で拮抗している中、その均衡を破る様に雷の矢が俺達の間に落ちる。
「アンバー、伏せろ!」
「きゃっ…!」
「ぐっ…!」
アンバーとヒル姐が衝撃で倒れる。
…リッジテールが復活した。
「やってくれたな、魔族のガキどもが」
「リッジテール、女2人を狙え」
「はい」
リュディルガーとリッジテールの雷矢が倒れているアンバーとヒル姐目掛け放たれる!
「くっ…!」
俺はアンバーとヒル姐の方へ飛ぶ!
「かかったな、馬鹿が」
「っ??」
リッジテールはリュディルガーの指示通り倒れているアンバー目掛け雷矢を放っている。
が、リュディルガーは横っ飛びに飛んで宙を舞っている俺目掛けて雷矢を放ってきた!
仕方ない…
「っ!?」
リュディルガーとリッジテールが放った雷矢が消える。
「貴様の空間魔術は魔術も消せるのか?」
「ええ、さっきから馬鹿の一つ覚えみたいに雷矢しか撃たないから空間魔術使うまでも無いと思ってましたが標的を分けられたから仕方無く使いました」
「誰が馬鹿だ!?雷神鉄槌!!」
リッジテールが挑発に乗り雷神鉄槌を撃ってきた。
正直、雷神鉄槌かぁ…って感じだ。
せめて狂乱大雷クラスを打って欲しかったが。
「ぐぅ…」
俺は小芝居をしてみせた。
「な、何とか…収容出来た…」
「ぐふふふ、雷神鉄槌が収容出来るリミットみたいだな…」
リッジテールはしたり顔だがリュディルガーは神妙な顔つきだ。
「リッジテール、もう一発雷神鉄槌を食らわしてやれ」
「了解、ぐふふふ」
リッジテールが雷神鉄槌を撃ってくる。
「くっ…!」
小芝居しながら雷神鉄槌を収容しようと掌を向けた瞬間リュディルガーも雷神鉄槌を撃ってきた!
「ちっ!」
仕方無く続け様に雷神鉄槌を収容する。
「やはりな、芝居は下手だな。目的は何か知らんが油断させようって腹か?リッジテール、お前もお前で安い挑発に乗って奴の策にハマるな」
「ぐぅ…、テメーのせいで踏んだり蹴ったりだぜ、それにいつまで俺の竜斬刀振り回してやがんだ!?いい加減返しやがれ!」
「あ、これリッジテール先生のでしたね、すいません」
俺は竜斬刀を空間に収容しリッジテールの頭上に出し落とす。
「ぐぁ…」
リッジテールの脳天から竜斬刀が突き刺さる。
「やった!ジェイク!」
リッジテールが頭に竜斬刀が刺さったまま膝まずき前のめりに倒れる。
すかさず竜斬刀を収容する。
「これでまたリュディルガー1人になったな」
「ふんっ、それがどうした?お前らが不利な状況には変わり無いぞ?」
「あっそ、土壁!」
アンバーの土魔術でリュディルガーを囲む様に土が盛り上がる。
「土槍!」
ヒル姐が土魔術で囲まれたリュディルガーの頭上から数本の土槍を落とす。
土の壁をぶち壊しリュディルガーが迫ってくる!
「お前らこそ馬鹿の一つ覚えで土ばかりこねて遊んでいるな」
俺はアンバーとヒル姐の前に立ち竜斬刀を構える。
「間合いを詰めればお前達も魔術の無駄撃ち出来ないだろう?」
リュディルガーが獰猛な笑みを浮かべ言う。
激しく金属同士がぶつかる音が部屋に共鳴する。
俺とリュディルガーが竜斬刀同士で鍔迫り合いになる。
「っ!?」
リュディルガーの足元から土が鋭く盛り上がる。
リュディルガーは自分の足元を確認しながらバックステップで避けるかと思いきや力づくで俺を押し切り一歩前に出た。
押し切られ尻もちつく形で倒れる俺を見下ろすリュディルガー。
しかし、天井から土槍がリュディルガーに襲い掛かる!
続け様に床からも土槍が襲い掛かる。
上下からの攻撃に流石にバックステップする。
かと思いきや俺を飛び越える様にジャンプし俺の背後を取ろうとするリュディルガー。
俺は思わず口角が上がる。
「っ!?」
ジャンプした事により空中で自由が利かないリュディルガーの頭上に俺は持っていた竜斬刀を収容する。
「さよなら」
俺はリュディルガーの頭上に収容した竜斬刀を出し落とす。
「まだ別れを言うには早く無いか?」
リュディルガーは頭上にある竜斬刀を自分の竜斬刀で叩き半回転させその手に俺が出した竜斬刀を収めた。
結果、リュディルガーは竜斬刀を両手に持ち二刀流になった。
「そ、そんな…」
アンバーが嘆く様に言う。
俺は空間から雷神鉄槌を2発、まだ宙を舞っているリュディルガーに撃ち込み、更に自分の愛剣ブレードソードを出す。
「ぐっ…!」
やはり雷属性は効く様だ。
しかし致命傷にはならないらしく持ち堪えているが感電はしている。
俺はブレードソードを上段に構え雷神鉄槌をブレードソードに落雷させる!
「な、馬鹿か!?」
目の前が真っ白になり意識を刈り取られそうになりながらもリュディルガーの驚く声が聞こえる。
俺は意識が飛ばない様必死に堪え渾身の力で雷神鉄槌が宿っているブレードソードをリュディルガー目掛け振りかざす!
「ぐっ…うぉおおぉおぉ!!」
感電しているリュディルガーも必死に防御しようとしているが、宙を舞っている姿勢では力が込められず防御が間に合わない!
「うあぁぁああぁぁあっ!!!」
俺は前方宙返りをする様にリュディルガーを斬りつけた!
着地も防御も無い、ただ力任せに雷属性が宿ったブレードソードをリュディルガーに撃ち込んだ!
「があぁぁっ!!」
薄れ行く意識の中、リュディルガーの左肩から右腰にかけ斬りつけヤツが血が噴き出しながら背中から地面に落ちるのを確認した。
「ア、アンバー…ヒ、ヒル姐ぇ…最大の…魔…術を……」
「無数雷弾!!」
斬られ悶えるリュディルガーに無数の雷が落雷する。
「ぐぉおぁあぁ…!!」
「ジェイク!!」
「アンバー、早く魔術を発動しろっ!!ジェイクならその後治癒すればいい!!」
「で、でも…」
「ジェイクは命懸けでヤツにダメージを与えたんだぞ!その覚悟を無駄にするな!!早くヤツを殺ってジェイクに早く治癒魔術をかけるんだ!!」
「…火神豪火!!」
ヤツにとっては正に地獄の業火が襲い掛かる。
……ダメだ、もう…意識が……
「…ク、…ェイク!!」
「っぱあ…!!」
目が覚めた。
「良かった、ジェイク!!」
「うおっ!!」
アンバーが抱きついて来た。
「っ!?」
俺の中と言うか外と言うか何かが目覚めた!!
何かと言えばナニかだ。
生死を彷徨い精子が目覚めた?
いや、ナニ言ってんだ!?
「っ!?」
アンバーの顔が真っ赤になる。
気付いた?俺の愚息の変化に。
アンバーが離れたかと思ったら目の前が真っ白になった。
あれ?この感じ…どこかで感じた事ある感覚…
そうだ!さっきブレードソードに雷神鉄槌落雷させた時の感覚だ。
「ちょっと!!何考えてんの!?」
「アンバー!どうした!?何故ジェイクに雷神鉄槌を喰らわせる!?」
ああ…そうか…俺はアンバーに雷神鉄槌を喰らわせられたのか…
「高治癒魔術!」
ヒル姐が高治癒魔術を掛けてくれたおかげで助かった。
「さ、さーせんした…」
「ま、まあ、私も、び、びっくりしちゃって、や、やり過ぎたけど…」
「ん?もしかしてジェイクが大人になってジェイクのがアンバーにぶつかって…」
「ちょ、ヒル姐!」
「ふふふ、そうか。ついにジェイクも大人になったか」
「な、何ですか!?ヒル姐のその笑顔はっ!?」
「っ!?それよりリュディルガーは!?」
ヒル姐が俺の後ろを指す。
そこには黒焦げになったリュディルガーが横たわっていた。
俺は黒焦げになったリュディルガーから竜斬刀を2本空間に収容してみる。
収容出来た。
つまりリュディルガーは死んだと言う事だ。
周りを見れば頭から血を流し息絶えたリッジテール。
リュディルガーと同じく黒焦げになったセラムが倒れている。
セラムからも竜斬刀を空間に収容してみる、収容出来た。
「終わったんですね…」
「ああ、ジェイクのおかげでな」
「ちょ、ちょっとは、か、カッコ良かったわよ…」
「あ…ありがとう、アンバー…」
「っ!?」
こ、これはっ…!!
今度こそイケる!?
アンバーの瞳が潤んでいる。
「アンバー…」
「ジェイク…」
俺はアンバーの両肩に手を伸ばす。
アンバーが瞳を閉じる。
………!………
マジか!?
イケた!!
初キッスはアンバーとだ。
やっぱアレか?生死をさまよう様な体験を共にすると恋愛に発展するって前世で聞いた様な感情か?
恥ずかしそうにうつむくアンバー…
ああ、頑張って竜人族と闘った甲斐があった…
やったな、オレ!!
と、その時俺の肩が叩かれた。
振り向くと唇を奪われた!
ヒ、ヒル姐!?
「っ!?」
こ、これは舌がシタで…
長い口づけを味わう様に唇と唇がようやく、いや、もう離れた。
「ジェイクが大人になったみたいだからな、私も…な」
「ちょ、ちょっと!ヒル姐!!」
アンバーがあたふたしてる。
「って、ジェイク!あんた!!」
「へ?」
「へ?じゃないわよ!どこ膨らましてんのよ!?」
「っ!?」
あ!やっべ!空間から出した訳じゃないのに股間に天幕が…!!
「ふふふ」
「ふふふじゃないわよ、ヒル姐!!」
まさかのハーレム状態か!?
思わずスケべな笑みが漏れる。
「ジェイクもジェイクでスケべな顔して股間膨らましてんじゃないわよ!!」
「っ!?」
…ああ、はいはい…もうこの感覚覚えた…雷神鉄槌ッスね…
アンバーが怒りの鉄槌下ろした訳ね…
まあ、いいや。
この痛み、夢じゃない証拠だし。
「…って言うか、誰か治癒魔術を…」
「まあ、調子に乗らせない為にもしばらく放置しておくか」
「それがいいわ、ヒル姐」
え?元はと言えばヒル姐がいきなり俺の唇を奪ったからじゃないの?
アンバーもアンバーで何、納得して放置してんの?
ーーー
しばらくしてアンバーが治癒魔術をかけてくれた。
初歩治癒魔術だが…
やっぱいきなりハーレムになる訳ないか…
ただ可能性は大だ!!
ぐっへっへっへ…
「ジェイク、また何かスケべな事考えてるな?」
「え?そうなの!?雷神…」
「や、考えてないッス!!そそそそれより、あの獣人族の少女は!?」
「あ、そうね!ジェイクのスケべに付き合ってる場合じゃ無いわね!」
「うむ、そうだ!ジェイクのスケべに付き合ってる場合では無い!」
酷くない…2人してスケべスケべって…
まあ覚醒した今、否定出来ない自分が悲しいけど…
「その扉!」
「うむ、怪しいな、開けてみよう」
部屋の奥にある扉を開けると獣人族の少女が横たわっていた。




