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第25話 ダンジョン攻略エピローグ

 地下迷路(ダンジョン)から出たら朝だった。

 1週間振りの地上だ。


 久しぶりに日の光を浴び爽やかな空気の中、地下迷路(ダンジョン)入り口近くの空き地で朝食を取りタマンドの街に帰る。


 たかが1週間、されど1週間で街並みは変わっていないが俺達は随分と成長した気がする。

 空間魔法で全て収容している手ぶらの俺達を見て地下迷路(ダンジョン)攻略帰りだと分かる物はいないだろう。



 冒険者ギルドに着き、中に入ると多くの冒険者達で賑わっている。


 その中に俺達が地下迷路(ダンジョン)に入る時に色々なアドバイスと照明系魔法封印紙(マジックシール)をくれた【梟の鉤爪】の面々もいた。


 俺達が声をかけようとした時、横から俺の肩を叩く人物がいた。

 振り向くと俺達が第二層で助けて地下迷路(ダンジョン)での心構えを教えてくれた魔族パーティーだった。


「よう、お前達がここにいるって事はまさか地下迷路(ダンジョン)攻略しちまったのか?」

「お久しぶり?です。はい、何とか地下迷路(ダンジョン)攻略出来ました」

「っ!?マジか!?いや、あんだけの力があれば当然っちゃあ当然か」


 そんなやり取りをしていると【梟の鉤爪】の面々も俺達に気付きやってくる。

「おう、お前ら地下迷路(ダンジョン)の入り口であった地下迷路(ダンジョン)初心者の【紅炎の焔】じゃねーか、今、地下迷路(ダンジョン)が攻略とか何とか聞こえたが…」

「こんにちは、【梟の鉤爪】の皆さん、その節はお世話になりました。皆さんのおかげで無事地下迷路(ダンジョン)を攻略出来ました」

「は?地下迷路(ダンジョン)を攻略した?嘘だろ?」

「いや、多分ホントだぜ。何せ恥ずかしながら俺達もこいつ等に危ない所助けてもらったしな」

「って、お前等は…確か【白鷲の黄色い鱗】?じきAクラスって言われてるお前等がこいつ等に助けてもらった?」

「ああ、こいつ等が来てくれなきゃヤバかったぜ」

「マジか!?お前等一体何者だ?あん時は完全に地下迷路(ダンジョン)素人に見えたが…」

「はい、完全に地下迷路(ダンジョン)に関して素人でした。でもクオリスさんのアドバイスのおかげで何とか地下迷路(ダンジョン)は攻略する事が出来ました」

「いや、俺のおかげって…俺ゃただ照明系魔法封印紙(マジックシール)をやった位で」

「あ、そうだ!もらった照明系魔法封印紙(マジックシール)返さないといけませんね、ちょっと待ってて下さい、あ、そうだ。クオリスさん、ご存知みたいですがこちら地下迷路(ダンジョン)内で僕達に地下迷路(ダンジョン)での心構えを教えてくれた…」

「【白鷲の黄色い鱗】のリーダーやってるオデリッサだ、まあ心構え教えたなんて大層な事してねぇが、こいつ等に助けてもらったんだ」

「冒険者ギルドじゃあ、お互いよく顔見てたと思うが挨拶すんのは初めてだな、俺達は【梟の鉤爪】だ。んで俺がリーダーのクオリスだ」

「宜しく頼むぜ」

「ああ、こっちこそ」

 2人がそれぞれのパーティーを代表し握手する。

 魔族の冒険者同士気が合いそうだ。

「それじゃあ、ちょっと待ってて下さい」



 こんなに人がいる中、いきなり空間から物を出したら騒ぎになるだろうから二階のトイレへ行き借りた魔法封印紙(マジックシール)地下迷路(ダンジョン)で拾った物で申し訳無いが、中でも価値がありそうな剣を2つ、1つは剣の根元から剣先まで同じ太さで剣先が1つの尖りじゃなく4つの尖りになっている剣、もう1つは刃紋がやたら波うっている妖しい輝きを放つ剣を出し皆が待つ一階に戻る。


「お待たせしました、これ借りてた魔法封印紙(マジックシール)です。ありがとうございました。

 後、2人には本当にお世話になったのでお礼と言っては何ですがこれを貴方達に」

「っ!?これをって…この剣は『虎駈剣』と『龍紋剣』じゃねーか、どちらも業物だぞ!?」

「ああ、お礼にしちゃ行き過ぎだ、これは流石に受け取れねーな」

「あー、実はこの剣、地下迷路(ダンジョン)の地底湖の底に沈んでいたのを拾った物なんです。だから拾い物で失礼ではあるんで謝らなければならないのですが、形に出来るお礼がこれ位しか無くて…」

「いや、拾い物だろうと何だろうと業物には変わらないから失礼も何も、なあクオリス?」

「ああ、本当に貰っちゃっていいのか?って感じだな」

「あなた方さえ良ければ是非貰ってやって下さい、僕達はあなた方のおかげで地下迷路(ダンジョン)攻略する事が出来、魔宝を手にいたんですから」

「ん〜、まあ、そう言う事ならありがたく頂戴するが…」

「はい、是非!どちらがどちらにしますか?」

魔法封印紙(マジックシール)貸したクオリスから選びな、俺はどっちだって文句ねーから」

「俺だってどっちでもいいって言うか、甲乙つけらんねーしな」

「んじゃあ、お前さん、っていうか名前聞いてなかった!」

「あ、俺もだ!」


「ああ、そうでしたね。挨拶が遅れました、僕達は【紅炎の焔】と言うパーティーでリーダーはこちらの」

「ヒルディだ」

「ヒルディって、あの彷徨える王女ワンダリングプリンセスの?」

「そうだ」

「ああ、俺も聞いたぜ、何年か前に彷徨える王女ワンダリングプリンセスが復活して冒険者になったって。何でもそのパーティーがやたら強いパーティーなんだが、噂じゃ彷徨える王女ワンダリングプリンセスと魔族の子供2人って話だったが、なるほどお前等だったのか?」

「確かに噂じゃあ、その魔族の子供は1人が金髪で小さいながらに土魔術で一晩のうちに街道まで作れる天才的な魔術士で、もう1人は金属色角(メタリックホーン)なのに魔術が使えない剣士だって聞いてたが、なるほど確かに噂と合致するな」


「ふふふ、その天才魔術士のアンバーよ」

 いや、一晩で街道は作ってないでしょアンバー。否定しないの?って言うかアンバー、気持ち良さそう。

 さぞ天才的魔術士って言われたのが嬉しかったのだろう、鼻の穴全開にピクピクしてる。

 それにしても俺の噂は…まあ、事実だからいいんだけど。

 いや最近は空間魔術使える様になったもんね!


「その金属色角(メタリックホーン)なのに魔術が使えないジェイクです…」

「ははは、気にすんな!魔術なんざ使えなくてもあんだけ剣が使えれば問題ねーだろ!」

「まあ、その内、何かしらのきっかけで使える様になんだろ」

 はい、実は何かしらのきっかけで空間魔術だけ使える様になりました。


「そ、そうですよね、で、剣はどうします?」

「ああ、そうだった。ジェイクお前が決めてくれ。俺達はどっちでもありがてぇぜ、な、オデリッサよ?」

「ああ、違ぇねぇ」

「それじゃあ、クオリスさんには『虎駈剣』を、オデリッサさんには『龍紋剣』でいいでしょうか?」

「ああ、ありがたく頂戴するぜ」

「何か俺まで悪りーな」

「いえいえ、ホントにこちらこそありがとうございました。それじゃあ僕達、ギルドに報告に行きます」

「ああ、又な」

「後で飯でも行こうぜ」

「はい、それじゃあ後ほど」


 そして俺達は受付カウンターに行き、魔石を出し地下迷路(ダンジョン)攻略の旨を伝える。


 するとここの冒険者ギルドマスターが出てきた。

 やはりと言うか魔族中心のここアクリア大陸の冒険者ギルドだけあってギルドマスターは魔族だ。

 ルーファスやガラディンのギルドマスターエルヴィンさんのマッチョスタイルとは違い、線の細い学者タイプの魔族男性だ。


「新しい地下迷路(ダンジョン)をもう攻略したんですか?」

「はい、これが証拠の魔石です」

 俺は魔石を差し出す。


 ギルドマスターが魔石を手に取る。

 当然の様に魔石が光りギルドマスターの髪の毛が一瞬逆立つ。

 周りにいた冒険者達からも驚きの声が上がる。


「っ!?これは…魔力が回復した…?」

「はい、恐らくその魔石は魔力回復の効果がある物と思います」

「なるほど」

 そう言いギルドマスターは魔石を俺に返してくれる。


「それじゃあ取り敢えず私の部屋へどうぞ」

 ギルドマスターは係の人にお茶を用意する様、伝えると俺達を自室へ招いた。


「改めまして、私、冒険者ギルドタマンド支部長をやらせて頂いておりますシーパーと申します」

 自己紹介しながら俺達に着座を勧めてくれる。


「初めましてシーパーさん、ジェイクです」

「アンバーよ」

「ヒルディだ」

 3人合わせて【紅炎の焔】!!と言いそうになったが止めておいた。

 アンバーあたりがノッてきて毎回言わされかねないからな。


「ええ、冒険者カードから貴方方の事は存じております。それからエルヴィンや他の冒険者達からもかねがね貴方方の噂は聞いていました」


 それから俺達は地下迷路(ダンジョン)での顛末を説明した。

 あの人攫い人族パーティーの件も含めて。


「分かりました、魔石がある以上、地下迷路(ダンジョン)攻略は間違い無いでしょう。その人族パーティーは明日捜索隊を投入し地下迷路(ダンジョン)内探査と併せて確保しましょう。その後犯罪者リスト及び冒険者ギルド情報網と照らし合わせしかるべき対処をすると約束しましょう」

「宜しくお願いします」

「それから貴方方の冒険者ランクですが今回の依頼達成でBランクへと昇格しておきました」

「ありがとうございます!」

「一応、地下迷路(ダンジョン)探査と人族パーティーの成り行きを後日報告しますが、まだこの街にいらっしゃいます?」

「そうですね、まだ休憩を兼ねゆっくりしたいので1週間位はこの街に滞在してます」

「それじゃあ5日位したらまたギルドに顔出して下さい」

「分かりました」

 そう言い俺達は冒険者ギルドを後にした。


「はぁ〜、地下迷路(ダンジョン)攻略は疲れたわね」

「魔物もクセのある魔物ばかりだったし、敵は魔物以外にもいたしな」

「取り敢えず何か美味しいものでも食べに行きますか」

「賛成〜〜!!」

「うむ、そうしよう」

「あ、そうだ。【梟の鉤爪】と【白鷲の黄色い鱗】も後で飯でも行こうって言ってましたから誘って皆んなでパーッと行きますか」

「そうね、私の武勇伝でも聞かせてあげようかしら」

「こういうトコで冒険者同士交流を深めるのもいいかもな」


 その後【梟の鉤爪】と【白鷲の黄色い鱗】の面々と合流し打ち上げを実施し盛り上がった。

 こうして初めての地下迷路(ダンジョン)攻略は無事幕を閉じた。



 ーーー



 5日後


 俺達は冒険者ギルドに顔を出した。

 するとギルドマスターのシーパーさんの部屋に通された。


「いやぁ、わざわざご足労頂いてすいません」

「いえ、ゆっくり過ごしていましたので」

「早速ですが地下迷路(ダンジョン)探査の結果と人族パーティーの件についてですが、地下迷路(ダンジョン)は確かに攻略され普通の洞窟になっておりました。とは言え定期的に観察していかないといつ魔物の巣窟になるか分からないので今後も冒険者の訓練場を兼ね定期探査はして参ります」

「そうですか」

「そして例の人族パーティーですが、かなりの大物でしたね。冒険者ギルドでも登録抹消が出ていて、分かっているだけでも数十件の被害報告がありました。実際はその何十倍なんでしょうけど奴ら巧みに犯罪を隠しており正確な犯罪数は分かりませんがいずれにしても極めて重い刑は免れないでしょう。

 あ、ちなみに確保される時も迫真の演技で自分達は被害者で貴方方に騙し討ちされ魔宝も奪われたとか言ってましたが、貴方方と奴らでは奴らに分が悪かったですね」

「きちんと奴らが犯した罪を償う様、裁かれればそれでいいです」



「それで、これからヒルディさんの実家に向かいプラハス大陸へ渡られるのですか?」

「ええ、かれこれタマンドには1カ月近くいましたからボチボチ出立しようかと思ってます」

「そうですか、またタマンドに寄った際は顔出して下さい」

「はい、また寄らせてもらいます」


 ー


 こうして長かったタマンド滞在は終り、次の街テックスコートに向かい出立した。


 テックスコートまでは歩いて7日掛かるがテックスコートの次はいよいよ港町リヨークだ。



 テックスコートまでの道中、特にランク度高い魔物に会う事も無くのんびりと歩く。


「そういえばアンバー、聞きたい事があるんだけど」

「何?」

地下迷路(ダンジョン)で蜥蜴の魔物殺った時、僕に躊躇無く火弾(ファイヤーボール)ぶっ放しましたよね?」

「え?ああ、ジェイクが私に火弾(ファイヤーボール)打ってくれって頼んだやつ?」

「あー、そうです」

「それがどうかした?」

「いや、あん時随分射出するの早かったなーって」

「うん。早いでしょ」

「何か考えたり躊躇したりしないのかなーって」

「しないわよ」

「で、ですよねー」

「何なの?何か言いたい事あるならはっきり言いなさいよ」

「あ、いや、例えば俺の身を案じたりしないのかなーって」

「だってジェイクが打てって言ったんじゃない」

「や、まあ、そうなんですけど、僕に当たったどーしよとか頭よぎらなかったのかなーって」

「よぎらないわよ」

「で、ですよねー」

「だってジェイクが打てって言うんだから何か考えあっての事でしょ?私はジェイクを信用してるからジェイクが打てって言えば躊躇無く打つわよ」

「…アンバー」


 空間魔術に顔入れられたら俺はこう言うだろう。

「惚れてまうやろぉおおぉぉぉ」とな。



 ーーー



 移動に関してもかなり快適になった。


 空間魔術で食事も出来たてホカホカの食事を持ち運び出来るしその気になれば家1軒まるごと移動できるがいきなり何も無い所に家があるのも怪しいので快適旅行は食事だけでガマンしている。

 尤もテントも1人1つで設営撤収の手間が無いから中にはベッド完備で外からは想像出来ない快適さを実現しているので野営の辛さはほとんど無い状態だが。



 ーーー



 そんなこんなで7日はあっと言う間に過ぎ俺達はテックスコートに着いた。


 テックスコートは中規模の街で種族は多様だ。

 魔族が半分位で残り半分は他の種族だから今までの街とは雰囲気が違う。


 ただ都会なのか周りの種族には無関心で良くも悪くも関わりが少なく感じる。


 この街には2泊して第一目的地であるリヨークに向け出立だ。

 いよいよプラハス大陸への窓口である港町リヨークへ向かう事になる。

 港町リヨークまではテックスコートから歩いて2日の距離だ。


 港町は初めて尽くしだ、海を見るのも初めてなら船を見るのも初めてだ。

 種族も今まで会った事無い種族に会うかも知れない。


「ところでヒル姐、プラハス大陸までの船代はいくら位かかるんでしょう?」

「確か、魔族は1人5銀貨だったと思うぞ」

「魔族は1人5銀貨っていう事は種族によって違うの?」

「ああ、アンバー。種族によって金額が違うのはよくある事だ」

「もしかして魔族は高いのですか?」

「その通りだ、例えば船代なら魔族は1人5銀貨に対し人族は1人3銀貨、獣人族、竜人族ドラゴニュート、不死魔族は1人4銀貨、炭鉱族ドワーフは2銀貨、尖長耳族エルフはタダだ」

「え〜、何かそれってぇ、差別じゃない?」

「うむ、何でも魔力が高い程トラブルが起こった時のリスクを鑑みてと言うのが建前らしいが…」

「魔力が高い程、金額が高くなるなら何故尖長耳族(エルフ)がタダなんでしょうか?魔力だけなら魔族に引けを取らないど思いますが」

「そこなんだが…どうやら尖長耳族エルフは良い種族、魔族はトラブルメーカーと言うのが世間の見方らしい」

「え〜、ひどぉい…」


 やっぱり魔族に対するヘイト問題はあるんだな。


「まあ、ここで船代の議論をしても仕方ありません。ただそう言う事があると言う事を学べただけで良しとしましょう」



 ーーー



 テックスコートで1週間分の食事を確保し港町リヨークへ向かう。


 快適徒歩旅行だがプラハス大陸に行ったら移動用に従魔を従えたいな。


 途中何匹かの魔獣を退治し予定通りテックスコートを出て3日で港町リヨークに着いた。


 いよいよ新たな大陸、プラハス大陸へは目前だ!

今回の話でダンジョン攻略編は終わりになります。


次回は渡航編(仮)で海を渡り新たな大陸へステージを移しストーリー展開して参ります。


また編単位では連日掲載したいと思い、現在次編執筆中です。

纏まり次第掲載させて頂きますので宜しくお願い致します。




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