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第23話 ダンジョン第四層 無双って気持ちいい

 地底湖の真ん中にある島。


 あそこに第四層に行く道があるのだろう。

 だが、この暗い地底湖を泳ぐのはリスク高過ぎだろ。


「やっぱりあの島に行くしか第四層に繋がる道は無さそうですね」

「確かにね」

「だがこの地底湖には何がいるか分からないぞ、まあ何もいない可能性もあるが、何がいる可能性の方が高いだろうが」


「あ、いい事思いついた!」

「え?何ですか?アンバー」

「試しに誰か地底湖に入ってみればいいんじゃない?」

「それはそうだが誰が入る?」

 嫌な予感がする。

「僕はイヤですよ!」

「誰もジェイクだなんて言って無いわよ」

「え?じゃあ誰?」


「ふふん…」

 また八重歯見せる悪い顔でアンバーが笑う。


「あの人族共よ」

 あ〜なるほど。

 ってそれはちょっと、残酷な気がするな。

「なるほど、それで行こう」

 ヒル姐まで!


「ちょ、ちょっと待って下さい、それは最後の手段で僕に考えがあるので、それを試してからにしません?」

「えぇ〜?良い案だと思うけどなぁ」

「うむ、奴らはそれ位するべき犯罪を犯してきているからな」

「ま、まあ取り敢えず僕に付いて来て下さい」

 アンバーとヒル姐は面倒くさそうに渋々と言った感じで付いて来てくれた。


 ひとまず地底湖の淵を戻り地下水脈が地底湖に流れ込む所まで戻る。


 途中、人族を閉じ込めた檻の前を通ると目が覚めていた。

「おいっ!テメー等こんな真似してタダで済むと思うなよ、ゴラァ!」

「せいぜい背後に気を付けながら生きんだな!」

「あが、あがが、もごもごごごごご!」

 他にもTheヤラレ役なセリフを吐いていた。

 やっぱり1人位地底湖に突き落としても良かったかな?


 しばらく歩くと地下水脈が地底湖に流れ込むトコまで戻ってきた。


「で、ジェイク何をしようと言うんだ?」

「はい、ヒル姐とアンバーでこの地下水脈を土魔術でせき止めて欲しいんです」

「それはいいけど、そんなんで地底湖は無くならないんじゃない?」

「ええ、それは分かってますが一時的にでも止めて欲しいんです」

「なるほど、地底湖の水を空間魔術で無くそうって考えか?」

「はい、そうです。無くせるかどうか分かりませんが試してみたいんですが如何でしょうか?」

「分かったわ、やってみましょ」

「うむ」


 アンバーとヒル姐は地下水脈に向き、俺は地底湖に向き構える。

「それじゃあアンバー、ヒル姐お願いしますっ!!」

「行くわよ!!」

 アンバーとヒル姐で土壁(フィールドウォール)を形成する。

 流れが止まった。

 俺の番だ。

「はあぁぁああぁぁ…」

 意識を集中して両掌を地底湖に向け広げる!!


 っ!?

 地響きがして地底湖の水が、無くなった!!!


「スゴーい!!!ジェイク!!」

「やるなっ!!ジェイク!」


 …俺も驚いた。

 地底湖の水を消すつもりでやりはしたがまさか全部消せるとは思わなかった。


 あれだけの水量を収容しても特に体が重いとか何処からか水が漏れてるとかも無い。

 つまり収容先は俺の体内では無く何処か異次元の空間に収容しているのだろう。


 驚きながらも水が無くなった地底湖を覗き込めば、地底湖の真ん中にある島が富士山型に隆起しており地底湖自体は深さ20mはある。

 湖底には魚の魔物が多数のたうち回っている。

 前世で言うと雷魚みたいな魚の魔物、と言っても体長10mはあるからその比では無いが。

 他にもアンコウみたいな魔物や鉄砲魚の化け物みたいな魔物もいる。

 全部体長は5m越えの巨大魚ばかりだ。

 こんな魚の魔物がいる地底湖を泳いで渡るなんて確実に死が待ち受けていただろう。

 そしてその地底湖を泳いで渡ろうとしたのか、犠牲になった冒険者の物らしき鎧や盾、剣などの残骸が転がっている。


 ここで新たな発見に気付く。


 地底湖の水を収容しようとしたから水は収容出来た。

 以前試して分かっていた通り、生きている者つまりこの地底湖では魚の魔物、は収容出来ない。

 だが物質である冒険者の物であった(・・・)武器類まで残っている。

 これはつまり、範囲で収容するんじゃ無く見えていて意識できる物しか収容しないと言う事を意味しているのだろう。

 試しに残った武器類を収容してみる。


 ん?

 大体は収容出来たが全体の1/6程が残った。

 流石に許容オーバーした?

 もう一度トライする。


 やっぱり残る。


 収容できなかった武器類を見ながら考える。


 ………………。


 !?


 武器類が動いてる??


 そう思った時、地下水脈をせき止めていた土壁(フィールドウォール)が決壊し水が流入してきた。

 まあ、これだけの地底湖を満たすには相当時間がかかるだろうけど一旦、空間魔術で収容した水を地底湖に戻す。

 今度は激しい地響きがし水が一気に満たされる。

 勢い余った水が地面や島を一旦覆い余った水は滝へと流れ出る。

 俺達はヒル姐が作った土魔術で水が来ない高さまで避難し濡れずに済んだが土魔術の檻に入れられた人族は…ま、まあ不可効力って事で。


土壁(フィールドウォール)で地下水脈をせき止められるのは約1分位ですね」

「そうだな、2人で掛かりっきりになればもう少し持つと思うが」

「いえ、それだけあれば大丈夫です。

 そうしたらもう一度土壁(フィールドウォール)で地下水脈をせき止めて下さい。また地底湖の水を消しますのであの島まで土魔術で橋を繋げて貰えますか?幅は人1人歩ければいいので。

 そうしたらアンバーは地下水脈をせき止めて、ヒル姐が橋を作って下さい。

 橋が出来たら一気に島まで渡りましょう」

「分かったわ」

「了解だ」

「それじゃあお願いします」


 アンバーが土壁(フィールドウォール)で地下水脈をせき止める。

 俺が空間魔術で地底湖の水を消す。

 ヒル姐が湖底から土壁(フィールドウォール)で幅30cm程の土の壁をせり上げ島までの簡易的な道を繋げる。

「それじゃあ行きましょう!」


 俺達は一斉に走り橋を渡る。

 橋を渡りながら湖底を見ればやはり収容出来なかった武器類が動いてる。

 この地底湖で亡くなった冒険者の持ち物が魔力を帯びてるであろう水で武器自体が魔物になったのか、あるいは冒険者の霊がファントム系にでもなったのか、いずれにしても収容出来なかった武器類は意思を持っているみたいだ。


 島にはアンバーが作った土壁(フィールドウォール)が決壊する前に余裕で渡れた。


「それじゃあまた地底湖を元に戻しておきましょう、ヒル姐すいませんがまた高台を作って貰えますか?」

「うむ」

 ヒル姐に高台を作ってもらい地底湖の水を戻す。


 水が引いてから島に降り第四層に続く祠の様な入り口から下る。

 第四層に続く下り坂は螺旋状になっていた。

 先程から地底湖を水を消したり戻したりで、この坂にも水が大量に流れ込んで、その際に魔物は流されたのか1匹も魔物に遭遇しなかった。


 長い螺旋状の下り坂を下り切ると第四層に着いた。

 第四層は広い空間だった。

 見渡す限り空間で確認出来る魔物は思ったより少ない。

 イメージは魔物がひしめき合う様な階層だったのと思った以上に広い空間で魔物が少なく感じるのかも知れないが…。


 恐らくあの地底湖を泳いで渡れる魔物はいないだろうし仮に飛べる魔物でも魚の魔物に襲われ島の祠みたいな入り口に辿り着くのは至難の技だろう。


 確認出来る魔物はやはりと言うか、地底湖の湖底で見た武器類が意思を持ったであろう彷徨う鎧が多く、次いで魚の魔物が陸地に上がれる様になったのか歩く魚?みたいな山椒魚のデカいヤツみたいなのがいる。


 魔物は俺達に気づいていないのかと思う位俺達に背を向けていたがその理由はスグに分かった。


 皆、強烈な魔力が発生している方に吸い寄せられる様に一方へ向かっているのだ。

 それは催眠術に掛けられているかの如くゆっくりと1つの方向に向かっている。


「きっと魔物の向かっている先に魔宝があるんじゃない?」

「その様だな」

「俺達も向かいましょう」


 なるべく魔物を刺激しない様、音を立てないで歩く。


「気をつけろ、1匹1匹が今までの魔物とは比べ物にならない位魔力が強いぞ」

 ヒル姐の警告に息を飲む…。


 だが魔物の列に並んで順番待ちする気は無いので警戒しながらも初めの魔物、体の無い鎧に剣と盾を持った魔物をそっと追い抜く。


 背中に緊張が走る。

「………………」


 3人とも息を飲みゆっくりと歩く速度を上げ魔物と距離を開ける。


 ……大丈夫そうだ。



 次に魚の魔物も抜いたが大丈夫だった。


 どうやらこの層にいる魔物は敵や獲物を襲うと言うより魔宝に向う事だけに傾注している様だ。


 そんな魔力が高いがしゃべらない、襲い掛からない魔物達の逆に不気味な光景に警戒しながらもしばらく歩くと壁の奥に部屋らしき空間のある場所に辿り着いた。


 だが入り口は入りきれない魔物達がひしめき合っていてとても入れる隙がない。

 更に次々と魔物達が押し寄せ正に魔物のすし詰め状態になっていく。


「この先に魔宝がありそうだな。だがどうやって先に進むか?」

「ふふん、私に任せて」

「どうするんです?」

「あれだけ、ひしめき合って密着していて鎧が多いなら雷属性魔術で一気に感電させられるでしょ」

「なるほど、無双出来そうですね」

「何だ?無双とは?」

「あ、えーと。一気に敵を一掃する闘い方です」

「それじゃあ無双しちゃうわよ…雷神鉄槌(ディバインハンマー)!!」


 アンバーの雷属性魔術が入り口にひしめき合う魔物の群れに炸裂し彷徨う鎧達はバラバラになり、感電した魚の魔物は腹を見せひっくり返った。


 俺は空間魔術を発動する。

 バラバラになった彷徨う鎧は魔力を失い意思を無くしたのか収容出来た。

 また感電して焼き魚になって死んだ魚の魔物も収容出来、そのほとんどの魔物達を無双出来た。

 収容出来なかった魔物は死んでないって事だろう。


 とは言え、瀕死の状態だから止めを刺すのも問題無い。


 一掃されスッキリした入り口から奥に進むとその部屋、と言うか空間は天井が高く、広さ的には入り口から逆扇状になっており、ちょうど前世で言うと野球場のバックスタンドからバックホームを見た様な感じだ。


 その野球場の外野フィールドにいたであろう魔物はさっきのアンバー無双で殺られたらしくいないが、被害を免れた内野フィールドにいる魔物の群れは健在だ。

 そしてバックホームにはデカい魔物がいる。

 あのデカい魔物がこの地下迷路(ダンジョン)の主であり、魔宝を守りし魔物だろう。


 デカい魔物は多分、蜥蜴の魔物が魔力で進化したのであろう姿をしており彷徨う鎧をも吸収したのか、その身を鎧で固めている。


 蜥蜴の魔物が俺達に気付く。


 その目が金色に輝く。

 すると内野を固めていた魔物の群れが一斉に俺達の方へと振り返る。


 完全に俺達を侵入者として認識したな。


 彷徨う鎧や魚の魔物が唸り声をあげ、静かに俺達の方に歩を進め距離を縮めてくる。


「また無双する?」

「行きますか」

「うむ」


 っ!!


 俺達は魔物の群れに向かってダッシュをかけた!!

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