表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/54

第21話 ダンジョン第二層 魔族の冒険者パーティー

 今日は第二層の調査だ。


 第一層から第二層へ続く坂道を下る。

 階段がある訳でも無く、緩やかに坂道になっているだけだが第二層になるのが分かる、

 魔力感知眼があるヒル姐で無くとも明らかに魔力が異なるのが体感出来る程、魔力が濃い。


 第二層に着いていきなり、人族のパーティーが倒れてた。

 と言うより全員死んでいた。

 第一層に向けうつ伏せに倒れているとこを見ると引き返す途中、何者かに殺られたのだろう。


 可哀想にも思えるがこのまま放置してアンデッド系になられても困るので火魔術で焼き払っておいた。

 本来なら魔力はあまり使いたく無いのだが仕方ない。


「皆、気を引き締めて行くぞ」

 ヒル姐が声をかけてくる。


「はいっ」

 俺とアンバーは返事をし俺を先頭にアンバー、ヒル姐の隊列で歩を進める。


 しばらく進むと昨日すれ違った魔族パーティーの1組が魔物と対峙していた。


 魔物は初めて見る魔物で体長3mはあろう亀の様な魔物で甲羅はエメラルドグリーンと茶色のマーブル模様で足は2本だが手が4本ある。


 見た目は亀みたいだが、その動きは野生の肉食動物の様に俊敏で4本ある手をフルに使い魔族パーティーを攻めている!


 リーダーらしき魔族の男が何とか持ちこたえているが2人倒れて1人が懸命に治癒魔術を施している!


「ジェイク!どうするの!?」

 アンバーが聞いてくる。


「同じ魔族が困っているんだ、助けよう!」


「いいのか!?ジェイク?」


「はい!取り敢えず俺だけ助太刀に行きますので2人はまだ動かないで下さい!」

 そういうと俺は亀の魔物目掛けダッシュした!


 亀の魔物が俺に気付いた時はもう遅い、亀の4本ある手の1本を斬り落とした。


 たまらず絶叫をあげる亀の魔物、だか直ぐに逆の手を俺に振りかざしてくる!

 俺はバックステップし躱すが追って2本目の手が俺に向かって伸びた!


「っ!?」

 何とかブレードソードを盾に躱すが5〜6mは弾き飛ばされた。

「ジェイク!!」

 アンバーが叫ぶ。

「大丈夫!」

 俺は返事をする。


 亀だから手足伸び縮みするのか?

 つーか魔族の人、ボーっとしてないで俺に意識集中して背中見せてる亀に攻撃しろよ!


「早く攻撃を!!」


「っ!?」

 魔族の男は我に返った様に俺を見て亀を見る。


「どりゃぁああぁぁ!!」

 魔族の男は渾身の力で亀の甲羅に剣を振り下ろす!!


 が、甲羅は硬く剣を弾き返す。

「ぐぅ」


 亀は魔族の男へと振り返り噛みつこうとしてるのか口を開ける。


「うおぉぉおぉぉ…」

 剣を弾き返され体制を崩した魔族の男は防御が間に合わない!


 俺は以前空間魔術の実験で収納していたアンバーに出して貰った雷属性魔術の雷弾(スパークボール)を亀の足目掛け空間より射出した。


 雷弾(スパークボール)は亀の左足に命中し倒せはしないが亀を姿勢を崩す事は出来た。


 斬られた手と雷弾(スパークボール)で足を攻撃された事によって亀が左側にバランスを崩す。


 俺は左に倒れバランスを取ろうとしている右手を2本まとめて斬り捨てた!!


 亀は残り手が1本、足は2本あるがその巨体を支えきれず腹を地面につけ平伏す形になった。

 斬られた手からはヴェノムフロッグよろしく紫色の血が噴き出している。

 よく分からないが毒があるかも知れないから触らない様気をつける。


 俺は地面に平伏した亀の甲羅の前側に飛び乗り亀の首をゴルフスイングの様にブレードソードを振り斬り飛ばした!!


 亀の頭は右にすっ飛び壁に当たり落ちた。

 当然亀本体も動かなくなった。


 が!!


「「ジェイク!!」」

 アンバーとヒル姐が叫ぶ!!


 頭をすっ飛ばされた亀の首から勢いよく紫色の血が噴き出している!!

 その噴き出し方は消防車の放水さながらの勢いだ!


 そしてその紫の放水は容赦なく魔族の男に降りかかっている!

 それは魔族の男が見えない程にだ!

 更に魔族の男の後ろにいる他の魔族冒険者の方達にもかかっている。


 やっべ!!!

 ヴェノムフロッグみたいに血も毒だったら死んじゃうよね???


 ………………。


 しばらくして血は止まった。

 そこにいたのは魔族パーティーの方達の形をした紫の物体があった。


「あ、あの〜………」

 俺は恐る恐る声をかける。


「だ、大丈夫ッスか…?」

 動かない…。


「っ!?」

 魔族の男が動いた…?


「っぱあぁぁああぁ!!くっせぇぇええぇぇぇ!!!!」

 魔族の男は叫びながら立ち上がった!


「うおぇぇええ…」

「………っぷ」

「げえぇぇえ…」

 次々と魔族パーティーの方達はのたうち回り出した。


 良かった?取り敢えず無事みたいだ。


 魔族パーティーの1人が水属性魔術を発動してパーティーにかかった亀の血を洗い流す。


 うん、確かに臭い。

 つーか、パねぇ。

 いや、臭すぎでしょ!!

 こりゃたまらんらんどこじゃない!!


「あ、あの〜、だ、大丈夫ですか…?」


「あ、ああ。ちぃと臭いに参ったが助かったぜ。礼を言う」


「あ、いえ。血に毒性が無くて良かったです」


「この亀はカースタートルっつってこいつの吐く息を吸うと体が重くなるんだ。しかもこいつデケェくせに速くて力があるから厄介なんだ」


「そうなんですね、この階層はカースタートルが多いのですか?」


「ああ、俺達も昨日この第二層に入ったんだがカースタートルが多いな。それとニードルスネークだ」


「貴方達はこれからどうするのですか?」


「俺達は魔力切れだし満身創痍だから一先ず撤退だ。お前らはこれから先に行くんだよな?」


「はい、一応僕達も魔宝探しているので」


「そうか、まあさっきの力から見て強いのは分かったが油断すんなよ?」


「はい、貴方達もお気を付けて」


「ああ、また機会があったら会うだろうぜ」


 俺達は互いに踵を返し反対方向に進んだ。

 と、その時!


「ジェイク」

 振り向くとヒル姐の首に魔族の男の剣が突きつけられている!


 ヒル姐の肩越しに魔族の男が俺を見据える。


「どう言うつもりだ…」

 俺は怒りを沸々と湧き上がらせる。


「助けてあげたのに…」

 アンバーは俺より怒ったみたいで魔力が急上昇しているのが分かる。


「…………………」

 魔族の男は黙っている。


 数秒間の沈黙が流れる。


 沈黙を破ったのはヒル姐だった。

「落ち着け、ジェイク、アンバー」

 ヒル姐は不死魔族だから首を斬られても死にはしないからか落ち着いている。


 だが、そう言う問題じゃない。

 この男は恩を仇で返そうと言うのだ。

 許さない…。


「ジェイク、落ち着けと言っている」

「いいえ、ヒル姐。僕は許しませんよ」


「お、おい…クオリス…お前…」

 魔族パーティーの仲間も驚いている様だ。


「っ!?」

 アンバーが王笏を振りかざす!

「待てっ!!アンバー!!!」

 ヒル姐が慌てて静止させる。


 と、その時ヒル姐の首に突きつけられていた剣が下げられた。


「貴様ぁ…」

 俺は助けた相手に恩を返せとは言わないが卑怯にも別れ間際に油断させておいて剣を向けられた事に苛立ちを隠せなかった。


「ジェイク、この男には敵意も殺意も無い。だから落ち着け」

 ヒル姐が俺を落ち着かせようと説明する。

「?」

 どういう事だ?


「ジェイクってのか?いきなり済まなかったな。ただこれは俺なりの礼のつもりだ。ヒル姐さんとやらも済まなかった。それからそっちのアンバーってのも」


「…どういう事か説明してもらえますか?」

 俺はまだ警戒を解かず魔族の男を見据えたままだ。


「ここは地下迷路(ダンジョン)って名の戦場だ。お前らはいい奴で見ず知らずの俺達を助けてくれた。

 俺達はその行動に深く感謝してる。

 だが、俺達は助けてくれと言ったか?仮に助けてくれと言っても助ける助けないはお前達が決める事だ。

 戦場にいる以上、油断はならねーって事だ、俺はお前に強えのは分かったが油断するなって言ったのにこのザマだ」


 確かに勝手に助けたがそんな言い方あるか?

 俺はハッキリ言ってイラついた。


「つまり、お前達が勝手に助けたのに相手は感謝して当たり前だと思ってないか?って事だ。

 さっきも言ったが俺達は感謝している。

 だが全員が全員そう取るとは限らないぞ。

 もう一度言うぞ、ここは戦場だ。

 自分達より強い相手が強い相手を倒してくれ更にその強いお人好しの寝首をかけりゃライバルが減って一挙両得って考える奴もいるって事だ」


 確かに助けたんだから感謝されると思っていた。

 だからこそ裏切られたと思いイラついた。


「だからって人助けをするなって言ってるわけじゃ無いのは分かるな?

 助けたのはお前達の勝手で見返りが来ると思い込むのもお前達の勝手だって事だ。

 勝手に助けたなら助けられた相手の行動も勝手って考えて行動しないと痛い目にあう時が来るかも知れない、相手に必要以上の期待をするな。

 もし俺達が明らさまな悪者だったらお前達を後ろから斬ってたぜ?」


「分かりました。おっしゃる通り感謝されて当たり前だと思って貴方達を信用しきって油断してました。

 これからは気をつけます」


「あ、いや、すまねー。何か説教になっちまって、お前達が謝る事じゃねーよ。

 ただ同じ魔族同士、しかもお前らいい奴だ。そんな奴らが騙し討ちにあってもムカつくからよ、俺なりに実践して分かってもらいたかっただけだ」


「いえ、本当に勉強になりました。ありがとうございます」


「や、だからお礼を言うのは俺らだって。あんがとな。

 んじゃ、俺の仲間も疲れちまってるからぼちぼち行くな」


「はい、また会ったら宜しくお願いします」


「こちらこそだぜ」


 そう言い再度踵を返し別れた。


「そうそう、その調子だ!」

 クオリスと呼ばれてた魔族の男は俺の警戒心を感じ取ったのか振り返らずに手を振り歩いて行った。


「私達甘かったわね、基本的に言葉を交わせばいい人みたいに思い込む節があったわ」


「ああ、あいつには戦場の心構えみたいなのを教わったな」


「はい、これからは油断し過ぎない様にして頑張りましょう」


「ジェイクが1番騙されやすそうだしね」


「アンバァ…」

 俺は敢えて三文芝居的なダメ亭主っぽく戯けた。

 地下迷路(ダンジョン)第二層で思わぬ笑いが起き団結力が高まった。


 そうして一致団結して調子に乗った俺達【紅炎の焔】は次々とカースタートルとニードルスネークを撃破し第三層へ続く道を発見し野営準備し今日は終わる事にした。


 追伸:

 途中、他の冒険者パーティーと2組程すれ違ったが油断しない様にするつもりがアンバーだけ何を履き違えたか相手にメンチきってたのは内緒だ。

 やっぱヤンキー気質なんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ