表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/54

第10話 初めての武器

 町に帰ってきた。


 修行だと言われてスティフトレントの斬り落とした枝を俺とアンバーそれぞれ1本づつ持たされて。


 途中何回かEクラスの魔物が襲ってきたけど魔力枯渇近くまで訓練代わりにアンバーが攻撃しルーファスがとどめと片付けをしながらも無事帰ってきた。


 今日の戦利品はスティフトレントの腕枝2本とシクルインプの鎌2本だ。


 シクルインプの鎌は雑貨屋にあげ、スティフトレントの腕枝は城に持って帰る事になった。

 尤も魔物を倒して得た戦利品は通常なら売買するそうだがルーファスの場合は普段の魔物退治や町のインフラ整備なんかで得られる収入があるから安値のものだったら町の人に還元してしまうんだとか。


 それからスティフトレントの枝は1本は俺の木剣にするのだが、もう1本は今日頑張ったアンバーの新しい杖としてあげると言うからルーファスもなかなかいいところがある。


「アンバーとお揃いの方がジェイクも嬉しいだろ?魔族は火属性が強いだけにアッチッチってか?でっへっへ」

 などと下衆な笑みが無ければ尚良かったのだが…。



 そんなやり取りがありながらもアンバーを家に送り、また明日一緒に訓練する約束をし、俺達も城に帰った。



 城に帰るとランスが城門のところで待っていてくれ、中に入るとエントランスではミランダが待っていてくれ、皆んなでディナーとなった。


 ミランダは外の世界はどうだった?森はどうだった?魔物は怖くなかった?等、矢継ぎ早に質問してきた。

 けどその表情は自分の事のように楽しげだったから俺も興奮気味に今日起きた出来事を話した。


 ディナーが終わると今日は初めての外出でその上ちょっとした冒険をしたから疲れただろうから早く休みなさい、明日から訓練を本格始動するからな、とルーファスが勧めてくれた。


 俺もそうだなと思い自室に戻りベッドに横になったが何故か眠くなかった。

 初めての外出で体が興奮しているのか実際余り疲労感が無かったのだ。


 寝れないついでに筋トレでもするかと腕立て、腹筋をしたが余り疲れない。

 前世の筋トレ全盛期の中2時代でも腕立て30回、腹筋100回が自己記録だったが魔族年齢とは言え4歳で腕立ても腹筋も無限大に出来た。

 魔族って疲労感じないのか、限界値が高いのか不思議と疲れなかった。


 でもルーファスは疲れただろうからって言ってたから魔族でも疲れるのだろう。


 そんな風に何時間か筋トレしながら考え事をしていたら流石に眠気を感じたのでその日はそこで就寝した。


 ーーー


 翌朝、訓練が楽しみという事もあり早めに目が覚めた。


 居間に行くとミランダは既に起きていてランスは朝食の準備をしていた。


「おはようございます。母様」


「おはよう、ジェイク。今朝は早いのね」


「はい、今日から本格的に訓練して頂けると言うから早めに起きましたが父様は?」


「ルーファスならいつも1番に起きて森までランニングしに行ってるのよ。たまに朝から魔物や魔獣と戦闘になる時もあるみたいだけど、それも含めて朝練だって言って毎朝やってるわ」


「そうだったんですね、それじゃあ明日から僕も父様と一緒に朝練します!」


「ジェイクはまだ訓練始めたばかりって言うより外に出たのも昨日が初めてなんだから無理しないで自分のペースでやっていけばいいんじゃない?」


「ありがとうございます。

 ただ昨日から体力が有り余って仕方ないのです。

 ですので無理はしてないです」


「そうなの?まあ今日から本格始動って言ってたから今晩また朝練するか考えたら?」


「そうですね」


 そんな会話をしてるとランスが前世で言うところのオレンジジュースみたいな味のするバレンスと言う果物を絞った果汁を持ってきてくれた。


「おはようございます、ジェイク様。

 ジェイク様の好きなバレンスを絞ったものです」


「おはようございます、ランスさん。

 いつもありがとうございます」


 とそこへ朝練からルーファスが帰ってきた。


「おう、ジェイク。

 おはよう、よく寝れたか?」


「おはようございます、父様。

 ええ、よく寝れました。今日から訓練の程、宜しくお願いします」


「うむ、ビシバシ行くから覚悟しろよ。

 なんてな、まあ始めは様子見ながらやっていくから安心しろ」


「楽しみです」


「それじゃあしっかり朝ご飯食べておきましょうね」


 そういうとランスがタイミングを計った様に朝ご飯を運んできてくれ皆んなで朝食を取った。


 ーーー


 朝食を食べ終わって1時間しない位でアンバーがやって来て今は城の庭にルーファスを前に3人でいる。


「よし、それじゃあまずは準備運動から始めて午前中は基礎体力作りだ。

 アンバーは魔術を使えるし実戦経験もあるがやはり剣技や体術が使えないより使えた方がいいからな。

 ジェイクは剣技も魔術も並行してやっていく予定だがまずは基礎体力作りだ」


 う〜む…早いとこ剣を振り回したり、何より魔術を使ってみたかったが仕方ない。

 あの桜◯花◯もキソキソキソキソ文句いいながらも気付けば俺、上手くなってる?って感動してた位だからな。


 そんな訳で準備運動後、城の周りを5周走る様指示された。

 城の周りはおよそ1kmだがこれを5周だからおおよそ5kmのランニングだ。

 魔族年齢で4歳の俺と6歳のアンバー、人族なら2歳と4歳と言ったところか。人間だったら100%無理だ。


 実際アンバーは何とか3周したところでギブアップした。

 何とか弟弟子の俺の前で面目保ちたかったのだろうが3周が限界だったみたいだ。

 それでも6歳で3kmランニングは大したものだ。


 俺はというと難なく5km完走出来た。しかも後10周は走れそうな位体力はあった。

 これにはアンバーは呆気にとられていたがルーファスも驚いていた。


 その後、腕立てや腹筋、背筋等、筋トレを一通りやってあっと言う間に昼になった。


 通常は午後からアンバーは魔術中心に訓練、俺が剣技中心の魔術をぼちぼちと言ったスケジュールでいくとの事だが今日は俺の剣とアンバーの新しい杖を作るという事で今日の午後はモノづくりらしい。




 午後になり、ルーファスが町唯一の武器屋にスティフトレントの枝を持っていき、木剣と杖に加工してもらうと言う事で俺達は今、町を歩いている。


 しばらく歩くと件の武器屋が見えてきた。


 ルーファスが行きつけだと言うその武器屋は至って普通な店構えだ。


「よう、ハワードいるか?」


 すると店のカウンターの陰から背の低いずんぐりむっくりと言った感じの髭面の中年男性が顔を出した。

 紹介されなくても炭鉱族ドワーフだと分かる出で立ちだ。


「おう、ルーファスじゃねーか。

 お、アンバーに…そっちの小っちぇのは、もしかしてジェイクか?」


「こんにちは、ハワードさん」

「はじめまして、ジェイクです」


「アンバー元気にしてたか?ジェイクはルーファスと違ってしっかりしてんな」


「俺に似て、だろ。

 ま、今後ともアンバー共々ジェイクも宜しく頼むぜ。

 ところで今日はこいつらの持ってる枝でジェイクには木剣、アンバーは今使ってる王笏のスタッフの交換を頼みてぃんだが」


「スティフトレントの枝か。硬くて軽くて魔力も通しやすい良い材料だ。

 ただその分加工が面倒だかな」


「お前に掛かればチョチョチョいだろ?」


「バカ言ってんな、いくら俺が天才でも武器をチョチョチョいと作ったりはしねぇぞ。しっかり丹精を込めだな…」

「分かってるよ、だからこうして加工代の他にコレ持ってきたぜ」


 そういうとルーファスは右手で引っ掛ける様に肩越しに持っていた瓶をハワードに差し出した。


「木剣の加工に1銀貨、スティフの加工と魔石の付け替えに2銀貨、でこれは心付がわりの酒、酩酊阿修羅マダだ。

 なかなか手に入らない銘酒ってのは知ってるよな」


「そ、それは!!

 ば、バカ野郎、それがあるならさっさとそれ出せってんだ。

 マダ(それ)さえありゃ金なんざいらねぇよ」


「いや、金も酒も受け取ってもらう。

 その代りにお前の誇り(プライド)に掛け、木剣だろうとスタッフだろうと最高の逸品を作ってくれ」


「分かったよ。俺が作ると言った以上、誰にも文句言わせねぇ逸品を作ってやるが、お前が安心してぇってんなら金も貰っといてやらぁ。

 アンバー、ジェイク、最高の逸品を作ってやるから腕上げて待ってろよ」


 そういうとハワードは腕まくりして太いが短い腕をボディビルダーみたいに肘を直角に曲げて見せた。


「「宜しくお願いします!」」


「おう、任せとけ。

 早速だかいくつか質問に答えてくれ。

 武器づくりには欠かせない質問だから、変な見栄を張る必要は無いぞ。

 1つ1つお前らに合ったお前らだけの武器を作るんだからな。

 まずアンバー、魔術はどれ位使える?そしてこれからどの属性の魔術を伸ばしていくつもりだ?」


「はい、私が使える魔術は火弾ファイヤーボール火炎丸鋸ファイヤースライサー土槍フィールドランサーの3つです。

 今後は火属性を特化させながら土、風、雷、水とオールレンジに、そしてお母さんみたいに治癒魔術も得意になりたいです!」


「ふむ。分かった。

 次はジェイク、お前さんだ。剣技はどの程度の腕前だ?」


「腕前以前に剣を持った事もありません」


「お、そうなのか?じゃあこれを持って振ってみろ」


 そういうとハワードはカウンターの奥から何本かある模造剣らしき剣の内、1番小さい剣を差し出してきた。


 以前、ルーファスの剣を抜こうとして抜けなかったがこの小さい模造剣なら大丈夫かな?


 俺は恐る恐る小さい模造剣を受け取った。


 あれ?何か軽い?

 手に取った瞬間そう思った。


 うん、ブンブン振りまわせる。


「スゴく軽いです」


「そうか、じゃあこれは?」


 次々模造剣を渡され振っていく。


 結局、模造剣の長さは別として1番重い模造剣まで振る事は出来た。


「こいつはたまげたな。ルーファスお前んトコのジェイクはいくつだ?模造剣とは言え1番重い剣を振れたぞ?」


「まだ4歳だ。

 俺もまさか、ここまでとは思ってなかった」


「ついこの間、父様の剣を抜いてみろと言われたのですが、その時はピクリともさせられなかったのですが…」


「何っ!?紅炎龍剣プロミネンサーか?

 そりゃそうだろ。あれは魔剣だからそれに見合った魔力が無ければ抜けんからな。

 しかしルーファス、お前、何考えてんだ?」


「いや、違うんだよ!ジェイクにだな、命の尊さと剣の危険さを教える為に、俺だって抜けないの分かっててやらしたんだから…」


「じゃあお前、模造剣とは言えジェイクが1番重い剣を振れると思ったか?思ってなかっただろ?

 つまり俺が言いたいのはそういう事だ。

 もし万が一ジェイクが紅炎龍剣プロミネンサーを抜けちまったら魔力枯渇で倒れるだけならまだしも、最悪魔力吸い取られて死んじまう事だってあるって事だ!」


「分かったよ、俺が悪かった、ゴメンなジェイク。

 教育のつもりだったが危ない事したのは事実だ。

 悪かった…」


「い、いえ。とても抜ける気がしなかったですし。

 剣自体からも拒否反応的な拒絶感を感じましたから、どっちみち抜けなかったですよ」


「まあ、とりあえずジェイクは真剣なさがらの質量で大丈夫だろ。

 長さはどうする?長めがいいとか短めがいいとかあるのか?」


「う〜ん、分かりません。父様どうですか?」


「そうだな…。ジェイクは力もあるし成長もするから長めで作ってもらって大丈夫じゃねーか?」


「よし分かった。んなら長めで親父と同じ両刃で真っ直ぐな剣とするか」


「それでハワード、いつ頃出来上がる?」


「そうだな、2週間程時間くれるか?最高の逸品を作るからよ」


「分かった。それじゃあそれ位にまた顔出すから頼むぜ」


「ハワードさん宜しくお願いしますっ!」


「僕の剣も宜しくお願いします」


 任せとけ、とハワードさんは小さくも厚い胸板をどーんと叩いた。



 それから剣とスタッフが出来るまでの2週間の間、俺とアンバーは道具も無いので毎日基礎体力作りに励んだ。




 ーーーーー



 それから2週間、俺達の武器が出来上がった。


 アンバーは以前から使ってる簡単な魔法陣が描かれた長方形の石を先に付けた王笏が出来た。

 以前のより少し長くアンバーの身長より少し長くなり、色も全部黒になった。

 スタッフ部分と石の間に十字に広がる飾りが付き、スタッフ部分はキレイな棒状になっていて磨き上げられている。

 そして後端部には同じく黒い、小さな魔石が付けられていた。


 そして木剣とは言え初めてのマイソードだ。

 形はホントにルーファスの紅炎龍剣プロミネンサーをまんま小さくした形で木製とは思えない雰囲気を醸し出している。

 誰が見ても紅炎龍剣プロミネンサーのレプリカだと思うだろう。

 いや、パッと見、紅炎龍剣プロミネンサーかと思う、それ位の出来だ。


 これには俺もアンバーも大満足だ。


「なかなかの出来だな、ハワード」


「何がなかなかの出来だ。あたりメェだろ。

 この俺様が丹精込めて作ったんだからよ。アンバーの王笏は半永久的に使える代物だ。もちろんアンバーがこの先成長して大魔導になったって使えるぜ。

 そしてジェイク、お前の木剣も木剣なのが勿体ねぇ出来だ。

 このまま刃つけりゃ大人んなったって短剣として使えるぜ。

 何せ紅炎龍剣プロミネンサーを作った俺が紅炎龍剣プロミネンサーを一回り小さくして作ったんだからな」


「え、紅炎龍剣プロミネンサーってハワードさんが作ったんですか?」


「お前が紅炎龍剣プロミネンサー作った訳じゃねーだろ。

 紅炎龍剣プロミネンサーの基の剣を作ったんだろ。

 紅炎龍剣プロミネンサーは俺の天才的剣技で焔紅玉石フレイムルビー斬った事で生まれたんだからな」


「バッカ、おめぇ。おめぇの剣の腕じゃ無く焔紅玉石フレイムルビーをも切り裂く俺が作った剣だからこそ紅炎龍剣プロミネンサーが生まれたんだろが」


「ま、まあまあ、2人とも。何れにしても2人が居なければ紅炎龍剣プロミネンサーが生まれなかったと思いますから2人とも天才ですよ」


「まあスティフトレントの枝が両刃の剣にするにしちゃ、ちぃとばかし細かったから俺様特製の糊に魔力流し込んで貼り合わせて作ってるが、まあちょっとやそっとじゃ割れたり折れたりしねぇから安心して使いこなしな」


「ありがとうございます!!ハワードさん!」


「いいって事よ、ルーファスから金と酩酊阿修羅マダ前金で貰ってるしな。それより武器屋ってのは武器を使いこなしてもらう事にやりがいを感じるからお前らも訓練頑張って腕ぇあげんだぞ」


「そこは俺に任せておけ。何しろこの天才魔法剣士ルーファス様直々に教えるのだからな!」


「ちぃとばかしアホっぽいとこあっけど腕は確かだからルーファスの言う事聞いて訓練に励みな」


「誰がアホっぽいんだ!」


「いいじゃねぇか、腕は確かだってフォローしたんだからよ」


「っく、まあそうだな。じゃあまた来るぜ、ハワード。

 今度、紅炎龍剣プロミネンサーのメンテも頼みてーしよ」


「メンテ代は金じゃなく銘酒にしろよ」


「分かったよ、じゃあな。サンキュー」


「「ありがとうございました!」」


 そういい俺達は武器屋のハワードさんとこを後にし城に戻った。


 もちろん帰り道は厨二病全開に剣を振りかざしながら、アンバーは王笏をかざしながら帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ