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ヒロイン=ヒーロー  作者: だっつ
7/17

第7話 魔法少女対魔法少女

最近寒いですね。鍋が食べたくなります。でもこの小説は今夏真っ盛りなんすよね。

前回のあらすじ


よぉ。俺はマタルだ。

この前はなんだっけなぁ・・・そうだ。エレンホスが可愛かった。以上。

え?もっと詳しくしゃべれって?気になるなら、前回を見ればいいじゃねぇか。それで済むから、俺はわざわざ面倒なことはしない。んじゃ、スタートだ




「海・・・?」


夏の暑い日差しが差し込む中、ここ、三月パンの店内で四人の男女がいつも通りにパンを食べながら、話していた。


内容は夏休みに何をするか。学生ならではの会話内容である。そこで今出たのが海に行こうというものであった。


「そう!みんなで海行こうよ海!!」


と、無邪気にそう話す、一人の少女。動くたびに長い茶色の髪と、首にかけてるロケットペンダントと、ふくよかな胸が揺れている。

彼女の名前は『池内千鶴』


「海かぁ・・・いいな、それ」


と、千鶴の意見に賛同の声をあげたのは、胸の位置に大きく『ジャスティス』と書かれた服を着ている、少年。名前は『小峠春樹』


「だったら、早めに準備をしなければな」


と、冷静に言うのは、銀髪で整った顔立ちの少年。名前は『小野悟』


「よっしゃ。じゃあとで準備しに行きますか!」


そして最後に彼女。元気な声で立ち上がるボーイッシュな少女。名前は『西園寺あかね』この物語の主役である。


勿論、主役であるからにして彼女は普通の人間ではない。いつの時代も、主役というのは何か人とは違った能力などを持っている。彼女の場合、それは『魔法少女になれること』である。


つまり彼女は見た目に似合わずメルヘンチックな能力を持っている。だが、能力も万能ではない。チートだと、あまりにも面白くない。


変身できることのデメリットというか、実は彼女の魔力は普通の人より全然無い。魔力がないからか、彼女の強さは最弱。そして、なぜか変身すると、姿形が5〜6歳の幼い少女になってしまう。


そんな見た目幼女強さ最弱な彼女が戦う理由として真っ先に挙げられるのが、『守るため』である。それ以上でもそれ以下でもない。ただ守るために彼女は力を使う。


もっとも、こうして友人と会話してるところだけを切り取ると、ただの女子高生にしか見えないのだが・・・


「おやおや、なんかおもろそうな話しとるやんか・・・どれ、おねぇさんも混ぜてくれへんか?」


そんな彼女たちの会話に入ってきたのは、赤いウェーブヘアーを揺らす、三月パンの文字とクロワッサンの絵が描かれた割烹着を着ている女性。名前は『小森杏子』


彼女はここのパン屋の店主をやっており、幼い娘のかすみと一緒に経営している。


・・・いや、まだ書くべきことがあった。彼女もあかねと同じ魔法少女である。しかも大ベテラン。


「海?ええな!それ!ウチらも行きたいで!」


そして、いつもと変わらないエセ関西弁を使い、あかねたちと一緒に海に行きたいという。そしてウィンクしながら。


「まぁ、あれや。保護者役がおった方が何かと楽やろ?」


と言う。まぁ、確かにそうだが・・・と言う顔であかね達は顔をあわせる。


空気が読めないのか、それともある意味読んでるのか。だが、彼女はもう行く気満々というような顔で、かすみの方を向き、そして忙しそうなかすみの方に大声で声をかける


「かすみちゃーん!今度海の日あたりにあかねちゃんと一緒に海に行くさかい!後で準備するでー!!」


と楽しそうに言うが、当の本人は忙しく、その言葉に賛同する時間がない。その代わりに杏子の方を見ずに、手伝え!と叫んだ。


それを聞いて杏子はあははと笑い、そしてあかねの肩に手をポンと置いた。


「まぁ、本音の部分はもしあかねちゃん達が襲われたらと思うと、少し心配やねん。あ、馬鹿にしたわけちゃうで?」


小声でそういう杏子の目は真剣そのもの。喋り方こそおちゃらけてるが、彼女は真剣に考えてるのだ。

そんなあかねの視線に気づいたのか、杏子はニコリと笑い、忙しさに騒いでいるかすみの方に駆け足で近寄る。


「っはー・・・杏子さんには敵わねぇな・・・よし、何時に行くか決めようや」


と、言ってあかねは春樹達の方に向き直りそう話し始める。春樹達も了承したというように、会話を続けた。


そして、今から始まる会話は、ただの高校生達が遊ぶ予定を、町の小さなパン屋で楽しく決めるだけであった。


それをパン屋の中にいる人と、杏子がみんな優しい目で見ていた。ただ一人、かすみだけがパタパタと忙しく働いていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「海・・・?」


少しの日差しも差し込まない、暗い部屋の中で3人の男女が座っていた。


「ええ、海ですよ。どうです?いきませんか」


と、見た目が少女の様に華奢だが、声は少年に近い。彼は『エレンホス』その体に似合わず、実は魔法少女が戦う相手のディザイアと言う化け物達の事実上のトップである。


「海・・・何をしに行くの?泳ぐのはめんどくさいなぁ・・・」


と、茶色いボロボロな布を羽織っている、緑で短めのツインテールにしている。彼女の名前は『テベリス』


「なんか考えがあんのか?エレンホス」


と、ぶっきらぼうな声を投げなのは、ガタイがよく、そして左目が潰れている男性。名前は『マタル』


いうまでもなく彼らもエレンホスと同じディザイアであり、化け物でもある。姿形が人間なのは彼らが完全体だからなのだが、詳しい事は過去の話を読んで思い出してもらいたい。


さて、こう二人から何をするかという疑問を聞き、エレンホスはニコリと笑う。


「そうですね。一番大きな目的は新しい欲の発掘でしょうか。人間というのは面白いもので、この時期になると飲むと体に害を与える水の中に、もはや下着同然のものをつけて入るのが好きらしいです・・・噂じゃ、そんな格好してるのに、一部の女性は他人にその格好を見られるのがいやだというらしいですけどね」


意味がわからないというように両手を肩の位置まで上げて、顔を横にふる。そしてトコトコと歩きながら二人の横を通り過ぎて、しばらくした後に立ち止まる。


「・・・ま、その分人も多いのですけどね。だからこそ、新しい欲が見つかるかもしれませんし・・・それに、あの人も来るそうですし」


また、エレンホスは可愛らしく笑う。無邪気だが、どこか恐ろしかった。そんな彼をマタルはうっとり見つめて、テベリスはただ見つめていた。


(・・・なんでかな・・・あのとき別れた後からずーっと会いたい・・・悟・・・)


心の中で彼の名前をつぶやく。自分を化け物と知りながら、助けてくれた一人の少年の名前。なぜだろうか、彼のことを考えると、胸が痛くなる。でも不思議と嫌ではない。


「どうしました?テベリス」


ふと気づくと、エレンホスが腰をかがめてテベリスの顔を下から心配そうな目で覗いていた。だが、どこか心の中まで見透かされているような感じであり、その瞳がテベリスは少し恐ろしくもあった。


「ううん。なんでもないよエレンホス・・・ただ、少し眠くなっただけ・・・」


そして大きくあくびをする。それを見たエレンホスはまた子供らしく、そして愛らしくにこりと笑った。


「それは素晴らしいことです。では、おやすみなさい」

「・・・うん。おやすみ・・・」


と言いながらテベリスはトコトコと歩き、ベットの上に転がった。そしてすぐに寝てしまった。


「あー・・・まぁ、いいや。じゃ海に行く話はテベリスが起きてからだな」


と、マタルはいうが、エレンホスは考え事をしてるように俯いていた。


「やっぱり面倒なことに・・・この前あの少年の欲を開放して、恐怖を植え付けようとする目的もありましたが、彼は来ませんでしたし・・・」


ブツブツと呟くエレンホスを頬をかきながらマタルは見つめていた。が、大きなため息をひとつつき、エレンホスの背中をおもいっきり叩く。


バシン!といい音が響き、エレンホスがヒャン!と可愛らしい声をあげて背中をさする。それを見たマタルは慌てた様子で


「す、すまん!!・・・けど、エレンホスは考えすぎだぜ?俺には難しいことはわからないけど、協力できることはなんでも言ってくれよ?俺たちは仲間なんだからよ」


と、ウシシと笑うマタルをエレンホスはしばらく見た後、ふっと息を漏らした


「そうですね・・・それじゃ、今度の作戦の為に探して欲しい欲があります。海に行った後は僕も疲れてますから、探すのをお願いできますか?」

「それぐらい朝飯前だ。任せておけ!」


胸をドンと叩くマタルはとても頼もしく見えた。それをエレンホスは満足そうな目で見た後、てくてく歩きベットの上に転がった。


「僕も疲れました。おやすみなさい」

「お?エレンホスが寝るなら俺も寝るぞ!おやすみ!!」


と、マタルは叫び、布団の上に転がった。なぜか彼は布団で寝るのにこだわった。まぁ、一番は寝相が悪いというのが大きいのだが。


(僕は・・・誰を信じればいいのでしょう。誰に従うべきなんでしょう・・・)


エレンホスは目を瞑りながら、そう心の中で呟く。


(しかし・・・支配欲である僕が、誰かに従うことを悩む・・・馬鹿みたいですね)


と、自嘲気味に笑いながら、エレンホスは眠りに入ろうとした。だが、あることを考えると眠れない。それはテベリスの話ではなく、己の話であった。


(やはり、僕はまだ子供なのかもしれません・・・それとも畜産農家という方が正しいかもしれませんね)


結局考えはまとまることはなく、時間だけが過ぎていく。そして、目を瞑りながら時間が経てば、自然と眠りに入ってしまう。それは人間とディザイアも一緒であった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そして時間が経って、今は夏休みが始まったばかり。あかねたちは隣町のショッピングセンターに来ている。場所はもちろん、海に行くのに必要な道具。水着コーナーである。

「千鶴ー。あたしは別に、中学のとき買ったスク水でもいいんだけど・・・」

「ダメだよあかねちゃん!スク水なんて、一部の人から夜な夜な、オカズにされちゃうよ!!いや、あかねちゃんのスク水見たいけど!でもせっかく海に行くならスク水よりキャワイイ水着でレッツゴーしようよ!」


水着コーナーの前で騒いでるのは、あかねと千鶴。もともとあかねは買う気は無かったが、千鶴がしつこく誘うため、渋々付いてきた。


あかね自身ファッションには無頓着なので、千鶴がキャワイイ水着を選んでくれるなら、嬉しいものだが。


「でもよぉ、最悪胸とかが見えないならなんでもいいんじゃね?」

「じゃ、あかねちゃんは絆創膏でいいの?・・・あ、ヤベ興奮してきた」


あかねの裸に絆創膏をはられた姿を想像した二人は、片方は顔を真っ赤にして、俯き、片方は鼻から何か出るのをにやけながら抑えている。


「あ、あ、うん、なんか、キ、キャワイイものを頼むよ」


少し恥ずかしそうに千鶴にそう告げて、そそくさと水着コーナーから出て行くあかね。後ろで千鶴が何か叫び声をあげた気がしたが、多分気のせい。


しばらく歩いて、座れるところを見つけてストンと座る。そして大きく息を吐く。


あかねは、千鶴のことは嫌いではない。むしろ好きなのだが、彼女の行動はいまいちわからない。何故、自分が好かれてるのが一番わからない。


そこで、少し目を閉じ始めてあったときのことを思い出す。確かあれは高校入学の時、顔が暗かったので少し気になったあかねは千鶴に話しかけたのが、初めての出会い。確かそのあと、あかねの顔を見て千鶴はまるで子供が四つ葉のクローバーを見つけた時のように、パッと顔を輝かせたあと、いきなり抱きつかれていた。


(思い出しても、やっぱりわからないなぁ。なんでだろう?)


頬をぽりぽりかきながら、途中で買ったりんごジュースをごくりと飲む。二、三秒飲み、少し疲れた体を癒す。そして、またほっと一息をつく。


「あれ?西お・・・あかねじゃん?ここで何してんのさ」

「んー・・・あ、春樹。オッスオッス。いや、水着を千鶴と一緒に買いに来たんだ」


すると、目の前から袋を提げて3人の男性と、少女が歩きながら、あかねの方に近づいてきた。春樹と、悟。そして、春樹の妹の美冬の3人だった。


美冬は早足に、あかねに近づき、あかねはそんな美冬の頭を優しく撫でる。美冬は目を閉じ気持ちよさそうにしている。


「水着ね。あかねはスク水とかじゃないのか?」

「うん?まぁ、私もそうしようと思ったけど、千鶴が、キャワイイものを選んでくれるってよ」


いつの間にか、膝の上に美冬を乗せて、その頭の上に自分の顎を乗せているあかねが春樹の質問にそう答えた。


「ボクたちも水着を買ったのです。おニューな水着です」


美冬はそう言った。心なしか嬉しそうな顔である。まるで小動物みたいであり、あかねはなんとなくギュッと抱きしめる。


「う?なんですあかねさん?いきなり抱きしめたりして・・・?」

「別にーただ、美冬ちゃんが可愛いから、抱きしめたくなっだけー」


美冬がその言葉を聞いて少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。そして、美冬を抱いたまますくっと立ち上がったあかねは、春樹達に千鶴に会いに行こうと声をかける。


そして戻ってきた水着コーナー。千鶴は買い物済ませており、あかね達を見つけて笑顔で手を振りながら猛ダッシュで突っ込んできた。


それをすんでのところで避けるあかね。勢いあまり千鶴は柱に正面衝突。額を押さえながら今度はゆっくり歩きながらあかね達に近づく。


そして、二つある袋のうち、片方の袋を渡す。どうやらあかねの水着なようだ。あかねはありがたくそれを受け取った。


「あかねちゃんのために精一杯選んだから、きっと似合うよ!!」

「はは、サンキューな、千鶴」


にこりと笑顔を向けてそう礼を言うと、千鶴は堪えきれないというように、飛び込んできた。

今度は避けることができずに、抱きつかれるあかね。離せと言いながら千鶴を押すが、千鶴は微動だにしない。


「あかねちゃん!結婚しよう!!私の初めてならあげちゃう!」

「ちょ、まって、いきなり変なこというな、変な目で見られるだろうが!!」


そう騒ぐ二人を変な目で見てるのは、悟ると春樹。あかね達と少し距離を開けて立ってるのは、知り合いではないと言ってるのだろう。


すると、美冬がプルプル震えたあと、あかねのもとに走って行った。


「ボクも、あかねさんと結婚します!!」

「ちょ、美冬ちゃんも何言ってんの!?」


あかねに抱きつきながら、美冬はそう言い、あかねは迷惑そうではあるが、それでもどこか嬉しそうな顔でそう美冬に言った。


そんな光景を見ていた春樹と悟は、目を合わせたあと、お互いににこりと笑った。


「よしゃ、俺もあかねと結婚するー!」

「俺は・・・愛人でいいぞ」


そんなこと言いながら、二人もあかねに抱きつく。あかねはとうとう耐えれなくなり、倒れた。それをお客さん方は楽しいものを見るような目で、横を通り過ぎていく。


「たっ・・・く・・・あんたらさぁ・・・」


文句を言おうとあかねは立ち上がるが、何故か、笑いがこみ上げてきた。どこか楽しくなっていた自分自身に笑ったのだ。


ひとしきり笑ったあと、あかねはみんなの手を引いて立ち上がらせる。悟は倒れてないことを見ると、おそらく抱きついてはなかったのだろう。


「よっしゃ、どこかでなんか食べにいかねぇか?」


と言って、全員で近くのファストフード店まで歩いて行った。あかねは今から海が楽しみになっていた。きっと楽しい1日になるだろう。そう考えると、自然と笑みがこぼれていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



青い海。そして白い砂浜。海の日に海に来るというのもベタだが、 ベタはベタなりにいいものである。


「暑いな、悟・・・なんで海って暑いの?」

「暦上、今は夏だからだ。冬には海は寒いぞ」


海パンを履いてる、春樹と悟がそう話していた。水着はというと、悟は藍色の海パン。春樹は黒に、青色で『enjoysummerlife』と書いてある。というかよく見つけたものである。


「せやでー、あつはなつい。やなくて、夏は暑いんや」


と、春樹達の隣に立っている、子供用の薄いピンクの水着を着ているのは、杏子の娘『小森かすみ』金色の三つ編みが風に揺れていた。もし、あと10〜15歳歳を取っていたら、可愛らしいというより、美しいと言われるだろう。


「ところでおにーさん達、あかねちゃん達の水着姿見に来たんやろ〜?もーやらしいわぁ〜」

「な、ちが、違うぞ!断じて俺はあかねの水着に興味なんてないぞ!!」

「春樹、顔に出てる。ま、俺は興味はない。ただ、海に入りたいから来たんだ。深い意味はない」


と、3人が話していたら、遠くからお待たせーという声が聞こえてきた。春樹達がそこを振り向くと、四人の女性が歩いてきた。


「みんなお待たせ〜あれ?かすみちゃんおらんおもったらこんなところにおったん?」

「おっと!まず歩いてきたのは小さなパン屋の似非関西オカンこと、小森杏子だ!服装は派手に黒いビキニ!男共の視線は全て私がもらうと言わんばかりのプロモーション!!流石最年長!溢れ出るオカンオーラ!」


突然、実況者のように声をはりあげるかすみを驚いた顔で、春樹と悟が見ている。というか、関西弁も消えるほど役に入ってるのか。ある意味見上げたプロ根性である。


「暑い。溶けてしまいそうです。ボクの体はアイスなのです・・・」

「おっと!もうばてかけてるのは誰がよんだか公式チート!!小峠美冬だ!!なんと、まさかのスク水!胸に大きく名前が書いてあるぞ!確かに一言も自分の水着を買ったと言ってない!だが、スク水も素敵です!」


春樹は何か突っ込みたいが、今突っ込んだら負けな気がしたため、あえて黙った。悟をちらりと見ると、彼も諦めたように頭を振った。


「確かに暑いねぇ。ま、だからこそ絶好の海日和だよ!」

「おやおや!次に来たのはアイラブA☆KA☆NE池内千鶴!!黄色いフリルがついた水着です!そしておへそ可愛く覗いています!下のスカートは薄い青を基調とした花びらが舞っている柄です!なんとかわいい!!」


もう苦笑いしか出なくなってきた、春樹と悟。まさかかすみにこんな趣味があるとは思わなかった。まぁ、ある意味仕方ないことかもしれない。


「な、なぁ、千鶴・・・ほ、本当にこの水着似合ってんのか・・・?」

「本日ラストが来ました!彼女は世界一乙女なボーイッシュガール!西園寺あかねです!!水着は・・・おっと!淡いオレンジのワンピースです!こちらも下の方にフリルがついてあります!なんとキャワイイ!!」


恥ずかしそうな顔で、早足に千鶴達のもとに来るあかね。いつものような勝気な風には見えなく、とても弱気な少女に見えた。


「うん!あかねちゃんかわいいよ!さぁ、二人一緒に海に入ろう!」

「か、かわいい・・・!?そんなことはない・・・あ、でも海には入りたいな。よし、準備運動してから入るか」


と、あかね達が、海に向かって走って行った。途中であかねがこけたがそれもまぁ、夏の風物詩でもある。


そのあとみんなは思い思いにはしゃいだ。ビーチバレーや、海での競争。何かを忘れてる気がしたが、あかねは気にせずに遊んだ。なんせ次にまたこう遊べる日が来るかわからない。もしかしたらもう来ないのかもしれない。そんな不安を拭うように、たくさん遊んでいた。


「・・・ふぅ・・・疲れましたね、あかねさん」

「ん・・・んん!?あれ、いつの間にかこんなに時間が経ってたんだ・・・?」


楽しい時間はすぐに過ぎるものである。決して遊んでいる描写を書くのが面倒だったわけではない。と、いうわけで美冬とあかねはみんなと一度別れて、近くの海の家で休憩と軽食を取りに行った。


ジュースを頼み、乾いた喉をジュースで潤す。疲れた体に染み渡る感じがとてもよく感じられた。


「・・・すいません。相席いいですか?」


と、声が後ろから聞こえてきた。男性の声だったので、少しナンパの可能性があるかと思ったが、自分にそんな色気が無いと結論づけ、どうぞとうながす。男性は礼を言い、あかねの前に座る。


「・・・!?な、お、おまえは!!」

「よぉ、あの時のチビ。名前は確か、アナザーだっけか?」


座った男性はマタルだった。あかね達が初めて負けた相手。その圧倒的な力に、あかねと杏子では、手も足もでなかった。


「あー、一応言うが、俺は戦うつもりはねぇ。少し話に来ただけだ」


と、マタルは言う。よく見たら彼は今赤い海パンを履いてるだけで、あとはその筋肉がついてる肉体だけだった。


「その言葉嘘じゃないと信じよう・・・で、話ってなんだ?」


あかねはあくまで平静を保ちつつ、そうマタルに質問する。マタルは美冬の方をちらりと見て、あかねに視線を戻す。


「単刀直入に言おう。お前は『どっち側』なんだ?」

「・・・どっち側?どういう意味だ?」

「そのまんまだ。俺たちディザイア側か、そこのチビと同じ、人間側かって奴だ」


あかねは暫し意味がわからなくて、頭で整理していた。その整理が、終わってもまだ意味がわからない。そんなもの答えは決まってる。答えるのも馬鹿らしいのであかねは何も答えなかった。


それを見たマタルはため息をひとつついた。あかねが黙ってる故に、答えはわかった。元々そうだろうとは思っていたが。


「たく・・・エレンホスが行けるって言ってたんだけどな」

「・・・そういえばなんでお前は、そんなにエレンホスに執着するんだ?」


あかねは何気なしにそう疑問を投げる。彼らの力関係はおそらくエレンホスが一番上であろうが、何故、マタルはそれに従ってるだろう。彼はそういうのが嫌いな風に見えたから、尚更気になった。


「・・・聞きてぇなら、少し俺についてこい。あーと、ついてこなかったら、ここで俺は暴れるぜ?まずそこのチビから殺すからな」


マタルはそうあかねに告げた後に、美冬の頭をガシッと掴んだ。ギリギリと音を鳴らし、美冬はとても苦しそうな顔をする。


「てめぇ、汚ねぇぞ・・・!」

「なんとでも言いやがれ。俺は元々お前を連れて行くつもりで話しかけたんだ。隠しながらってのは俺の性に合わねぇ」


と言いながら、マタルは美冬を連れて店の外に出て行くあかねは迷わず、走ってマタルを追いかけた。


どう考えても罠。だが、行くしかない。なぜなら行かないと美冬を失うから。あかねはいつもの様に拳を握っては開くを繰り返す。もう失いたくない。失わないためなら全力を尽くす。そうあかねは呟いた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「・・・で、俺の過去だっけか」


あかねとマタルと美冬はトコトコと砂浜の上を歩きながら会話をする。一見、兄弟に見えなくもないが、緊張感が広がっていた。そんな中、マタルは少し悩んだ後、口をゆっくりとあけた。


「俺が、エレンホスをこう慕ってるのは、あいつが俺を必要としてくれたからだ」


マタルは目を閉じ、そして懐かしそうな顔になった。あかねはそれを横目でチラリと見た。あまりにも整っている横顔に思わずドキリとして、すぐに目を逸らした


「・・・俺は、他のディザイアの例に漏れず元人間だったんだ。子供の頃の記憶はねぇが・・・そうだな、職業は確か音楽家。いろんな曲を作ってはそういう企業に売り込みに行った。だが、どれもこれも売れない認められない。いつも不合格だかそんなことを書かれた紙が送られてきた。正直悔しいし、やめようとも思った。だが、そんな俺の曲を毎回聞いてくれた奴がいた。名前は忘れたが・・・まぁ、俺の友人だったやつだ。そいつはいつも俺の曲を褒めてくれたとても嬉しかった・・・」


気づくと、あかね達は洞窟の前にいた。どうやらこの奥に行くべきらしい。マタルが前を歩き、あかね達はマタルについていきながら奥に進んでいく。


「んでだ。ある日俺は自分が考え付く中で最高傑作ができた。その曲は俺はまず友人に聞かせた。そいつはすげぇ嬉しそうな顔をして俺にこう言ったんだ。家でじっくり聞きたいから持ち帰っていいか?・・・ってな」


そう話してるうちに、3人は少し広いところに出ていた。3人は座れそうな石を見つけたりして、そこに座った。


マタルはとてもまた目をつむっていた。あかねと美冬は体を寄せ合って話を続きを暫く待った。


そして、マタルはゆっくりと口を開けた。


「・・・俺は次の日会社に売り込みに行った。俺は自信満々だった。それに、もしこれで売れなくても悔いはねぇ。だがな、その会社のやつが言ったのはなんだと思う?」


マタルはまた喋るのを一旦止めた。そして今度は悲しそうに目を強くつむり、そしてマタルは言った。


「『この曲は昨日の夜、男性が持ってきた曲と一緒ですね。盗作ですか?』・・・だってよ」


そういうマタルの顔は、とても暗いものになっていた。その顔は敵であるあかねすら同情するほど。


「ははは。笑っちまうだろ?最高傑作を俺の友人は勝手に持っていて勝手に落ちやがった。こんな笑い話どこを探してもねぇよ。そんでよ、こっから面白いんだけどよ、この件を友人に問い詰めたんだ。そしたらよ!そいつなんて言ったと思う!?」


今度は楽しそうにマタルは喋っている。あかねは少し恐ろしかったのか、無意識のうちに美冬を強く抱きしめていた。美冬も同様に力を込めていた。


「『お前の作った曲はクソみたいだったな、俺はお前の曲なんか聞きたく無いけど、毎回我慢してたんだ。最高傑作?ふざけんな、お前のせいで恥かいたじゃねえか。このカスが!!』だってよ!!ははははは!!笑えるよな!!はははは!!」


とうとう堪えきれないというように、お腹を抱えてマタルは笑い出した。その姿はあかねから見たらとても恐ろしく、滑稽で、そして哀れに見えた。


「・・・まぁ、そのあとのことは覚えてない。気がついたら目の前に友人『だった』ものが転がっていた。そして俺の手は赤い何かが付いていた・・・俺は恐ろしくなって逃げ出した。近くにあった赤いフードを深くかぶってな。そっから毎日ブラブラ歩いて、あの時のことを忘れようとした。でもよ、この手には残ってたんだ。あの時殺した時の感覚が・・・忘れねぇんだ。だから俺はあまり人に会わないようにした。でも、たまに人を殺したくなる。あの時の快感を得たくなる。そんな時が人間の俺は怖かった。そんなある日・・・俺はそいつにあった」


マタルはうつむきながら、話している。先ほどまで笑ってたのが嘘のように、とても哀愁を漂わせていた。いや、もしかしたら先ほどまで笑ってたのは無理矢理笑ってごまかしてたのかもしれない。


「そいつは俺に手を差し伸べた。可愛らしく笑いながら、俺が必要だと言ってくれた。初めて聞いたその言葉。だから俺はその手を握り返し、そして決めたんだ。そいつ・・・エレンホスのためにはなんだってする。なんせ、初めて俺を必要と言ってくれたやつだからな・・・と、ここで俺の話は終了。楽しくなかっただろうが、気にするな・・・さて、次は俺の質問に答えてもらうぞ。内容はさっきと一緒。お前はどっち側だ?」

「答えは簡単だ、あたしは人間側だ」

「ま、『お前は』そうかもな・・・と、どうやら役者が来たらしいぜ」


マタルはそういうと、洞窟の入り口から二人の足音が聞こえてきた。一つは少年手品師のような風貌をした、エレンホス。もう一つは見覚えがある姿だった。


「・・・な、あん・・・師匠!?」


それはブラックローズだった。あかねの師匠であるブラックローズがフラフラした足取りでエレンホスについてきていた。


あかねは急いで変身をして、ブラックローズに駆け寄った。ブラックローズは暗く、そして青ざめた顔でしきりに何かをつぶやいていた。


「私はなんのために私はなんのために私はなんのために・・・」

「し、師匠?どうしたんです?」

「いやぁ、彼女には刺激が強すぎたようですね・・・魔法少女の真実は」


と言いながらエレンホスはゆっくりマタルの方に歩いていく。そして、軽くマタルとハイタッチをした。それはこの空気には不釣り合いに見えるし、釣り合っても見えた。


「あ、それと役者はあと一人きますよ・・・あ、きたきた」

「・・・遅れました。悪気はありません」

「お、お前は魔法少女・・・!?何やってんだ!?」

「・・・そうか、あの時は気絶してましたから、初めましてですね。私の名前はマジックブルー。以後お見知り置きを」


そう言いながらやってきたのは蒼色の魔法少女、マジックブルー。何故かディザイア側についてる魔法少女である。


「さて、役者は揃いました・・・では、アナザーさん。もう一度質問をしてもいいですか?」


エレンホスはいつもとかわらない優しい声でアナザーに語りかける。だが、やはりどこか恐ろしい声でもあった。


「あなたはどっち側ですか?」

「だから、あたしは・・・!?」


と、ここまで言うとある異変にに気づく。美冬がいなくなってる。アナザーはあわてて探す。そして見つけたが、美冬は何故か空に浮かんでいた。いや、何かに入ってる。それは透明だが、ふよふよ漂う、シャボンのように見えた。その中で美冬は苦しそうに顔を歪めていた。


「美冬ちゃん!?て、てめぇら!どこまで汚い真似を!!」

「なんとでも言いなさい・・・さて、僕達はあなたに聞いてません。あなたに聞いてるんですよ?早く目覚めたらどうです?」

「な、何を・・・?」

「あー魔法少女の真実を教えたら目覚めたりします?いや、それは無いか・・・ま、いいです。ブルーさん。もう殺すつもりでやってください」


とエレンホスがいうと、ブルーはこくりとうなずき杖を大きく振る。すると、美冬はさらに苦しそうに顔を歪め始める。顔は青く染まり涙を流し、口から泡を吹き始めていた。


「やめろ・・・やめろ・・・」

「さぁ、早く目覚めなさい。守りたいのでしょう?守るのでしょう!!なら早く目覚めなさい!!」


するとエレンホスは美冬に向かってまっすぐ魔力の塊を飛ばした。


「やめろぉぉおおぉぉおぉぉぉおおお!!!」


と言ってアナザーは駆け出す。そして美冬に魔力の塊が当たるのを身を挺して守った。だが、その衝撃に飛ばされ壁にぶつかってそのまま地面に落ちてしまう。


それを見たエレンホスはニヤリと笑い、ブルーに何かの合図をした。すると、ブルーはゆっくりと美冬を地面に下ろした。それを見たエレンホスは満足そうな顔で頷き、アナザーが倒れてるところに向かって無数の弾幕を、これもまた微笑みながら放った。


花火が爆発したかのような爆発音が洞窟に響き、煙が広がる。だんだんと煙ははれていき、その場所には、一人の少女が立っていた。しばらくしたあと、その少女は口を開けた。


「あれあれぇ?皆さんお揃いでなんですかー?今から何が始まるのですー?もしかしてこの私をこの洞窟であんなことやこんなこと・・・きゃー!変態だー!!」


と言って恥ずかしそうに体をくねくね動かした。その少女は先程までとはまるで別人のように変わっていた。それを見たマタルとブルーは驚いた顔でアナザーであろうものを見つめ、エレンホスはとても嬉しそうに笑いながら、口を開けた。


「ところで・・・あなたは何者ですか?」

「私ー?そうだねぇ・・・」


と、その少女は今度は礼儀正しく頭を軽く下げながら、こう続けた。


「お久しぶり?それとも初めまして?私の名前はアミナです!!」


と、頭を上げたあと勢いよく、敬礼しながら無邪気にそういうアナザー・・・いや、アミナをエレンホスはとても嬉しそうな顔で見ていた。まるで、これから楽しいことが起きると言っているようであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



《次回予告!!》

「私はーあたしとは違うのよん」 「あたしがママを守るから」 「後悔しないって決めたのに 」 「あたしって死んだほうがいいのか・・・」

第8話『あたしが変わったわけ』

お楽しみに!!



まずすいません。魔法少女対魔法少女してませんね。すいません。

今回で、マタルさんの過去がわかりました。結構伏線は配置したつもりですが、わかりにくかったらすいません。

では、次回もお待ちください

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