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ヒロイン=ヒーロー  作者: だっつ
3/17

第3話 二人目の魔法少女

番外編と言ったな?すまん。ありゃ嘘だった。

というわけで本編スタートです。まだまだあれですが、楽しんでいただけたなら幸いです。

やぁ。あたしはあかねだ。

前回エレンホスとかいう、敵の中でもかなり強いやつにあった。危うく洗脳されるところだったな。

そして強敵食欲とあたしは戦う。あたしは犠牲となる覚悟を背負い辛くも勝利する。

でも、春樹達に正体ばれちゃったなぁ。


◇◇◇



街灯に照らされた道を一人の男性がフラフラとした足取りで歩いていた。

その格好は一般人というにはあまりにもみすぼらしく、浮浪者というには清潔であった。

生気がない目で歩く彼はどこを見てるかわからない。だが、口は仕切りなしに動いていた。

「金・・・金・・・」

彼はそうブツブツ呟いている。彼は先ほどパチンコで全ての金を使い果たしてしまい、もうヤミ金に手を出すか、首を吊るかの二つに一つの選択しかできなかった。何故なら仕事をリストラされたから。

「いいですねぇ・・・その、欲」

するといきなり後ろから少年の声が聞こえた。男は後ろを振り向くとそこにいたのは手品師のような風貌の少年だった。

男は少し警戒をする。すると少年は子供のような笑顔で近づいてきた。

「そう警戒しないでください。僕はあなたの手伝いをしに来ただけですから」

といい、少年は男の肩に手を置いた。男は不思議とそれはいやではなく、むしろもっと置いて欲しいと願った。

それを見て少年はまたにこりと笑った。

「契約を交わしましょう。僕はあなたの欲を解放させてあなたを救います。代わりにあなたは『器』を差し出しなさい」

男はもう頭がボーとしていて、彼が何を言ってるかわからなかった。が、従うことが正しいと思えた。

男は頷き少年はまた笑う。

そして二人が光に包まれて、煙のように少年は消えていた


◇◇◇



「黒い魔法少女と、蒼い魔法少女・・・?」

ざわざわとみんなが騒いでいる教室の中あかねは春樹と会話をしていた。

先日あかねの正体が春樹と悟にばれた後、あかねは開き直り協力を要請した。

一度魔法少女のことを覚えたら基本記憶は消えないらしいので、協力者が欲しいあかねには丁度良かった。

案外二人ともノリノリで協力をしてくれた。

そして得た情報の一つがこの、新しい魔法少女の情報である。

あかねはその話を聞いて少し安堵する。なぜなら、一人で戦うより二人、三人で戦う方が確実にいいから。

当面の目標はこの二人に会うことと決めたあかね。

昼休みも終わりそうなのであかねは席に戻ろうとするが、後ろから悟が声をかける

「千鶴は、多分覚えてないぞ・・・それとなく聞いたが、わからないという顔しかしなかった」

あかねはその言葉は魔法少女の情報よりも深い安心感を抱かせた。

そして、少し喜びでにやけながら自分の席までトコトコ歩いて行った。

ドアがガラガラと開き、担任が教室に入ってきた。教壇の前に立ち、次に取り出したのは教科書ではなく、一枚の紙であった。

「えっと、ここ最近ひったくり事件が多発しています。しかも、された側は大怪我を負ってます。みなさんも気をつけてください」

教室がざわめき始めるが、あかね達は同じことを考えていた。

ディザイアの仕業だろう。なんの欲かよくわからないが、そんなことをして、なおかつ多発。これしかないと三人は考えていた。

と、同時に千鶴をあかねは見る。千鶴は少し神妙な顔になっていた。何を考えてるかわからないが、あかねは、千鶴だけでも日常を歩いて欲しいと心に決めた。



◇◇◇



「で、黒い魔法少女と蒼い魔法少女の話だが・・・」

と、いい春樹は紙とペンを持つ。

ここは三月パン。千鶴は用事があると言って先に帰った。

しかし、春樹は何も描かないし書かない。

それもそうだろうなんせ噂しか知らない。しかも、姿形を見た人はほぼいない。

三人は頭を抱えて唸り始める。

するとあかね達の前にコトンと、お皿が置かれる。

そこから香ばしい香りが漂う。それはこの店の定番メニュー。クロワッサンだ。

バターのいい匂いが鼻腔くすぐる。あかね達がちらりと見ると、杏子が、笑って立っていた。

「何してるかわからんけど、青春するならお姉さん応援するで」

彼女は少し寂しげな顔でそう声をかけた。

あかね達はそのクロワッサンをありがたくいただいた。一口食べるためだサクサクとした音がとても心地いい。そして口に広がるバターの香り。いつ食べてもやはり美味しい。

「いやぁ、今日もパンはうまい」

二人の魔法少女の事はとりあえず先延ばしにしようとかんがえる。

いくら考えてもわからないから。

でもこのまま終わるのは少し癪なので、とりあえずみんな口々にどんな人が魔法少女か話し合う

黒いからお姉さんだとか、蒼は知的っぽいとか、そもそもなんでお前幼女なん?とか、もはや友人間の雑談レベルだったが、それでもとても楽しかった。

こんな日が続けばいいとあかねは思う。でも、戦いに身を置くなら、いつか壊れる日常。なら今精一杯楽しまなければ。

青春を応援してくれる人もいる。

魔法少女でも、あかねは一人の少女・・・魔法少女?

ここであかねは引っかかる事を感じ、カバンから天使君を取り出す。いつも通りにぐったりしている。うん。ぐったりしてるのはいつも通りである。

あかねは魔法少女である。魔法少女は魔法を使えるから魔法少女なのである。つまり、あかねは何かの魔法を使えるはずだ。空を飛ぶのは基本だとしても、回復させたりハートのシャワーを降らせたり。

その趣旨を天使君に伝えると呻きながら答えてくれた。

「お前が・・・使える魔法か?・・・自爆かな」

自爆!?と、思わず声を上げそうになるのをあかね達はすんでのところで抑えた。

そもそも自爆は魔法なのだろうかとか色々言いたい事がある。それを察してか天使君は

「そもそも、お前の魔力はほぼゼロに近い。だから、幼女になるんだ。

でも、魔力の濃度は高い。だから、それを一気に出したらかなりの威力になる。ま、その代わりにお前の体はボロボロになって多分死ぬ。

空を飛べたのは奇跡みたいなもんだ・・・そ、そんなに気を落とすな」

最後の一言は天使君なりの気遣いだろうが、つまり、奇跡がなければあかねは空を飛べなかったのだ。恐らく空を飛ぶのは魔法少女では常識なのだろう。

自分はまだひよっこだと痛感しあかねは机に思いっきり頭を叩きつける。

春樹達の心配した声が聞こえるが、耳に入ってこなくて、ある一つの事を考えていた。

あかねはまだひよっこ。なら、それを指導してくれる人。つまりは師匠に出会おうと。

黒か蒼。どちらかか、両方に教えを請うかと考えた。

そんなあかねを杏子は優しくて、どこか切ない目を向けて見守っていた。

かすみが心配そうに杏子を見上げる。それを見た杏子はなんでもないというように首を振り、仕事に戻っていった。



◇◇◇



とても薄暗い個室の中に2人の男女が座ってた。

ガタイが良い男性は赤いパーカーをきてジーパンを履いていて、イヤホンをつけて音楽を聴いていた。

髪の毛はボサボサで真ん中の髪だけ赤く染まっていて、左目が傷があり右目しか見えなくなっている。

女性は緑色の髪の毛をツインテールにしていた。そして、長くて黒いシャツの上にボロ布のマントを羽織っていた。黒くいハイソックスを履いていて、退屈そうにしている。

すると男性がつけてるイヤホンから音楽が聞こえてきた。その歌を男性は口ずさんでいた

「O Freunde, …nicht diese Töne…Sondern …」

それは、モーツァルトの歓喜の歌だった。男性は目をつむり心地よく歌っている。

「マタル・・・うるさい」

そう女性から文句を言われたマタルと呼ばれた男はイライラに任せて壁を殴って大きな穴を開けた。

そしてイヤホンを外しギロリと女を睨みつける

「なんだぁ?テベリス・・・雑魚のくせに調子乗るんじゃねぇぞ」

テベリスと言われた女性はそうマタルの威圧にわたしは関係ないというようにゴロンと寝転がった。

マタルはもう一度壁を殴るが、テベリスは心地いい寝息を立てていた。

マタルは額に青筋を浮かべるが、軽く舌打ちをしてまたイヤホンで歓喜の歌を聴きながら口ずさみはじめた。

「おや、みなさん自由ですね」

すると、いきなり扉があき、エレンホスが少し呆れた顔で入ってきた。

それを見たマタルは喜びで立ち上がり、テベリスはゆっくりと立ち上がり少し微笑む

マタルが両手を広げてエレンホスに近づき抱きつく。それをエレンホスは笑顔で迎い入れる。

「・・・収穫あった?」

テベリスがゆっくりとエレンホスに聞く。エレンホスは少し苦しそうな顔で頷いた。

そして、マタルを引っぺがして、ゴホン。と、咳払いをした。

咳払いをしたのを皮切りにいそいそとテベリスたちはその場に座りだす。

その光景を見て満足そうに微笑んだエレンホスは、ゆっくりと口を開け

「ええ、一人ディザイアの候補を見つけました。彼が器を差し出すことを願います」

と言った。

そしてそう喋るエレンホスの瞳笑ってはいるが、瞳の奥底はとても冷たかった。

エレンホスは考える。人間というのはやはり面白いと。

欲が多種多様であり、そのために理性という鎖を外せるのは人間のみ。中には外せないものもいるが、それはエレンホスが少し手を出してあげれば簡単に外れる。

人間の意志の強さなどその程度なのだ。

だが

「ククク・・・ふふっ」

思わず笑みがこぼれるのを抑える。

マジカル☆アナザー

先日あった魔法少女の名前を頭の中で繰り返す。彼女は変身してないのにもかかわらず、エレンホスの支配から逃れることができた。そんな人間など見たことがなく、エレンホスはかなり興味を持ち始めた。

アナザーを支配したい。

これが今の彼の欲であり、人類の支配の前に越えるべき壁でもある

そのためには力が必要だ。仲間を増やさないといけない。アナザーと、黒い魔法少女には邪魔をされるが、他の魔法少女の情報は聞いてない。いや、一つ聞いている

蒼い魔法少女

とても強い力を持っていた強敵だった。

エレンホスはくすりとわらい、壁をトントンと叩く。

すると一人の女性がエレンホスの近くにやってきた。その格好は少しふわりとした袖に大きなリボン。そして真ん中が分かれてるスカートを履き、その真ん中はフリルでかわいらしくしてある。

髪は後ろで大きくツインテールにしている。

その格好はまるで魔法少女のソレだった。

窓から月の光が差し込み、彼女を明るく照らす。そこには光に映えるような蒼い色の服を着ていた。

「よろしくお願いしますよ。蒼い魔法少女さん」


◇◇◇



ひったくり犯の話や二人の魔法少女の件は特に進展がなくダラダラと時間が過ぎていった。ディザイアも数は少ないらしいので、あかねも戦うこともなかった。

いつも通り千鶴たちと一緒に帰ったり遊んだり・・・そんな日常を繰り返していた。

そんなのが続きながら一週間が経った。あかねはパンを食べながらテレビをぼーとみていた。

何かないかとチャンネルをコロコロ変えるが、面白そうな番組はなく、仕方ないから録画したものを見ようと録画ボタンを押そうとするが、テレビの画面の上にニュース速報と書かれた字幕が出てきた。

そこにはこう書いてあった

【銀行爆破。金塊が盗まれる】

その字幕を見てあかねはむせる。

苦しそうに胸を叩きながら水を一気に飲む。ゲホゲホと咳き込みつつ息が落ち着くのを待つ。

銀行爆破。これはどう考えてもディザイアの仕業。頭が変な奴がやる可能性はあるが、多分違う。

その意見に賛成するかのようにあかねのケータイが鳴り始める。ケータイには悟と春樹からメールで一言、今回の事件に対する考え。つまりは犯人はディザイアの一員と考えているという内容だった。

あかねはじっとしていられなかった。急いでご飯を食べ、外に飛び出した。

銀行の場所はここから少し近い。野次馬に見えるかもしれないが、怪しまれないとも言える。

案の定銀行の前には数多くの人間がいた。そこには春樹や悟もいた。

あかねは軽く手を振り挨拶をしながら春樹たちのところまで歩く。春樹たちも手を振る

ざっと周りを見渡すが、怪しい人物。そもそも化け物みたいな奴は一人もいない。

春樹たちをちらりと見るあかねだが、彼らは首を横に振る

つまり春樹たちも見てないというわけだ。捜査は完全に手詰まり。頭をかきながらため息をつくあかね。

いや、一つわかったことはある。それは相手の欲。大方金銭欲とかそういうのだろう。ひったくりや、銀行爆破の理由はそれだ。

しかし、それがわかったからといってどうすればいいのだろう。

「あら〜あかねちゃんたちやない。どないしたん?」

いきなり後ろから声が聞こえあかねは振り向く。そこには三月パンの店主。杏子がいつもの格好でそこにいた。

杏子はこういうのに興味がないとあかねは考えてたのでいることに驚いた。

いや、いつもの割烹着を着てるから店の宣伝に来たのかもしれない。

「最近物騒やけん、あかねちゃんたちも早く家に帰りぃやぁ〜」

まるで母親のようにあかねたちに声をかける杏子。ニコリと微笑むその顔はあまりにも美しくて、一瞬見とれてしまった。

だが、あかねたちにはしないといけないことがある。

この事件が起きたこの場の近くにきっと手がかりがあるはず。

「・・・危ないことだけはせんでよ?」

今から何かをするかわかってるかのように杏子はそう声をかける。思わずあかねたちは驚いた顔をしてしまった。

杏子はうふふと笑い、あかねたちの前から去っていった。

「杏子さんってお母さんみたいだよなぁ」

春樹が後ろでそう言ってるのが聞こえ、あかねは思わず頷いた。

あかねはとりあえずその場から離れバックの中にいる天使君に声をかける。天使君ならディザイアがどこにいるかわかると思ったからだ。

案の定天使君はぐったりした顔で、それぐらいならわかるといった。

なんでも魔力の波長が微妙に違うのがディザイアらしい。兎に角天使君の案内でディザイアがどこにいるか探しに行くあかね達。

しばらく探したが、結論から言えば見つからなかった。どこを探してもディザイアがいたという形跡はなかった。代わりに多く見つけたのがあった。それは

「魔法少女の、魔力だな。これは・・・」

そう。魔法少女の魔力だった。点々と続いていたり途切れている。

ディザイアがどこにいるか探しに行くあかね達。

しばらく探したが、結論から言えば見つからなかった。どこを探してもディザイアがいたという形跡はなかった。代わりに多く見つけたのがあった。それは

「魔法少女の、魔力だな。これは・・・」

そう、魔法少女魔力だった。点々と続いていたり途切れている。

ソレは一見普通に見えるが、まるで捜査をかく乱しているような印象を受けた。

しばらく考えるが、金銭欲と魔法少女が戦った時にできた形跡だと結論付けた。

しかし、同時にあかね達はまた完全手詰まりになったというわけであり、これからどうすればいいか悩み始める三人。

すると後ろから声が聞こえてきた。あかねたちは少し震えながら振り向くと、そこにいたのは1人の可愛らしい少女であった。

「美冬ちゃんか・・・」

ホッとしながらその少女の名前を呼ぶ。美冬は少し怪訝な顔で

「ボクの顔を見てなんでそんなに驚くのです。わけわかめです・・・と、そうだ。何してたのですか?」

「ちょっとした捜査をね。美冬ちゃんは危ないから早く帰りな」

「いや、ボクが危ないなら、皆さんも危ないでしょう」

「いやいやいや、あたしたちは大丈夫」

「いやいやいや、多分大丈夫じゃないでしょう」

お互いが譲らない謎の押し問答が始まった。

この言い合いが15回目になった時天使君がポツリと声を漏らした

「美冬を囮に使えば、早く見つかるがな・・・」

この後天使君はまず真っ先にやってしまったと思った。あかねが無言で睨みつけながら、天使君の近くに大股で歩いて近づいてきた。

「お前さぁ・・・ふざけてるの?美冬ちゃんを危ない目に遭わせないためにやってんのにそれじゃ意味ないじゃんか。他の案考えろ」

「しかし、それが一番簡単なんだがなぁ・・・」

「あのさぁ・・・」

「ボクは構いませんよ。」

「そうだ、構わないよな美冬ちゃん・・・!?」

あかねは驚いたように美冬の肩に手を置き、美冬をグラグラと激しく揺らす。そしてとても焦った顔で唾を飛ばしながら早口で考え直せとまくしたてる。

美冬はハンカチであかねの唾を拭き取りそして少し俯きつつ

「ボクだって、役に立ちたいんです・・・もう、守られるだけは嫌だ」

と呟いた。

その言葉を聞いたあかねは美冬を揺らす手を止めた。そして手のひらを閉じた後、また開いた。その行為には多分意味はない。あかねは無意識のうちにとっていた。

そして美冬のおデコをピンと弾いた。美冬は弾かれたところを両手で押さえた。少し涙目になっていた。

「あー、すまん。そんなに強くしたつもりはなかった・・・」

と言って美冬の頭を優しく撫でた。そしてにこりと笑った。

そして春樹のほうをちらりと見た。春樹は少し苦笑しつつ

「俺からもよろしく頼む。折角美冬が自分からやりたいと言い始めたんだ。兄として応援してやりたい」

と言った。そしてあかねの肩にポンと手を置いた。それをされたあかねは任せろと言うように自分の胸を叩いた。

そんな四人の姿を遠くから見つめる一つの影。

全体的に黒い色で腰の部分に大きめなリボンをつけてふわりとしたフリルがついたスカートをはいている。黒いウェーブヘアーで、小さなシルクハットをかぶっている。

その手に握るスティックをぎゅっと握りしめて、その少女はその場から去って行った。



◇◇◇



「うぅ・・・ぐぅ・・・」

呻き声を上げながら1人の男性が道を歩く。するとチャリンと、ポケットから硬貨が落ちていく。それをその男は拾って、何を思ったかそれを口の中に入れ、口を動かした。

バリ、バリ。

硬貨が割れる音と歯がぶつかる音が奇妙な音楽を奏でた。その男の目や、その音楽でここはとても不気味というか異様というか。普通の人では到底直視できない状況だった。

がさり。

何かが動く音が聞こえその男はその音をしたところを見る。そこには小さな女の子が怯えた目で男を見ていた。そして後ろに走り出す

男は目をギロリとそこに向けて少女を追うために走り出す。

その男はとても足が早く、目の前の少女をだんだんと追い詰める。そして遂に少女は行き止まりに追い込まれてしまう。

「かねを・・・よこせ・・・!!」

そう言いながらじりじりと歩み寄っていく。そして少女に触ろうと手を伸ばす。

が、少女は震えながらも男を睨みつけた。その瞳は安心しきってる目であった。

「まて!!」

すると後ろから幼い少女の叫び声が聞こえてきた。男はゆっくりと後ろを振り向く。

するとそこには1人少女がマントをはためかせながら仁王立ちで立っていた。そして人差し指でおことを指差す。

そして大きく息を吸い込んだ。

「ひとーーーつ!!!

助けを求める声が聞こえたら!!

ふたーーーつ!!

どこからでも駆けつける!!

みーーーーつ!!

そしてこの名を胸に刻め!!あたしの名前は・・・!!」

と、ここまで叫んだ後、一度息を整えて、人差し指を天に向けた

「魔法少女マジカル☆アナザーだっ!!」

その声に男は少し身が固まった。その隙をついて美冬がアナザーの近くまで走り寄ってくる。

そしてアナザーは少し背伸びしながら美冬の頭に手を置いた。

「よくやった。後は任せとけ」

その言葉を聞いた後美冬は糸が切れた人形のようにその場に座り込んだ。

歩きながらアナザーは天使くんと会話をする

「あいつ、本当にディザイアか?人間にしか見えんが」

「多分あいつは契約したばかりなんだろう」

「・・・契約?」

「そうだ。ディザイアは人間の欲を利用するために契約を持ち込む。欲を解消させるから器をよこせとな」

「器?なんだ、それ」

「器は器だ・・・!ちょうど欲が成長するぞ・・・!!」

と、天使くんが言うと目の前の男は苦しそうにうめき出した。だが、顔はとても満足そうにも見えてアナザーは少し恐ろしくなる。

次の瞬間、男の体から光の粒子が飛び出してきた。そして男は倒れその粒子は一箇所に集まり始める。

その粒子はだんだんと大きくなり、やがて形を成してきた。

そして少しづつ光が引いていくとそこには巨大な金に光るカニがいた。

「金銭欲はカニか?・・・まさか、貯金、チョキンだからか?」

と、少し呑気なことを考えているアナザーだが、次の瞬間目を見開いた。

金銭欲が男に向かってハサミを振り下ろそうとしているーーー!!

アナザーは男に向かって駆け出した。そして少しハサミの攻撃を擦りながらも男を抱きかかえ、安全なところに下ろした。

「あれが、器だ。ディザイアは、成長した後成長元の人間を食す。そして欲を解消したら、その成長元の人間になるんだ」

「はっ、胸糞悪いな」

と、アナザーは吐き捨てる。そして音のをちらりと見る。

満足そうな顔で眠っている男は先ほどまでの異様な雰囲気は消えていた。

アナザーは次に金銭欲に目を向けて、息を整え始める。そしていつものように拳を開いては閉じる。

「行くぞ・・・バケモノ!!」

と、言い金銭欲に向かって駆け出すーーー!!

金銭欲も馬鹿ではない。アナザーに向かってハサミで攻撃を仕掛ける。が、大きな図体なため攻撃に時間がかかりアナザーにはあたりもかすりもしない。

そしてアナザーは一気に飛び上がった!!

「マジカル☆インパクト!」

そして金銭欲の腹に魔力を込めた拳で攻撃をする。

だが

「聞いてねぇ・・・!?」

そう、金銭欲の固い甲羅を前にしてあかねの攻撃は通用しなかった。

「やば・・・」

少し動揺してしまった。その隙を突かれアナザーは金銭欲のハサミが横腹に思いっきり突きさささる---!!

「ぐぅぅううぅ!?」

アナザーは壁に叩きつけられて、口から血を吐きそのまま地面に落ちる。

口から荒く呼吸をしながらアナザーは震えながら立ち上がる。痛いが、ここで逃げるわけにはいかない。おそらく内臓も潰れただろうが、魔力で治っていく。

アナザーな目を閉じて考える。お話の中でこういうときどうやってたか。

「一度でダメなら、100回殴る!!」

と、叫びアナザーはまた駆け出した。

金銭欲は今度は何もしない。自分は耐えれる自信があるから。

それを見てアナザーは好都合と言うように笑い、また魔力を込めた。

両手に。

そして先ほどと同じように飛び上がり両手で金銭欲の腹を狙う!!

「新技!!マジカル☆マシンガン!!」

両手で繰り出される無数のパンチの嵐に金銭欲は押されていき、次第にその甲羅にヒビが入っていく。

アナザーは止めと言わんばかりに思いっきり右の拳で金銭欲の腹を殴った!!

すると、甲羅が割れる音がして金銭欲は少しよろめく。アナザーはその隙を見逃さないという風に一気にそのヒビが入ったところに近づく。

「・・・あ、あれ!?」

なんと、金銭欲のどこにもヒビがなかった。どこを殴ることができずに少しだけ止まってしまう。そこを金銭欲に突かれハサミをもろに腹に食らってしまい後ろに吹き飛ばされる。

(あ、あいつも体を修復できんのか・・・!?)

そんなことを考えながら、勢いよく背中を壁にぶつけてしまい、今度は地面に落ちずめり込んでしまう。先ほどよりも多くの血を口から吐いてしまい、また、怪我も多くしてしまった。

体は修復されるが、それでも痛いものは痛い。アナザーは痛みで震える腕で壁から離れようとした。

すると、いきなり体が軽くなり中に浮かぶ。いや、掴まれていた。

金銭欲のハサミに。

もちろん助けたわけではない。金銭欲は挟む力をだんだんと強くしていった

「うぐぁ・・・!!」

絞り出したかのような呻き声を上げてアナザーは体を潰されていく。

鋭利なハサミにより腕がだんだんと切れていく。徐々に痛みが増していき、赤い血も滴り落ちていく。

すると金銭欲がニヤリ笑った。

金銭欲は何もしてないもう片方のハサミを振り上げた。そして。

ぐちゃり。

「ながぁぁぁあああぁぁああっ!!!」

何か柔らかいものが潰れる音が聞こえ、アナザーは叫び声を上げた。

金銭欲はアナザーの右目を潰したのだ。

右目から流れる赤い鮮血はまるで涙のように流れていく。アナザーの頬を、肩を、そして金銭欲のハサミを伝い血が流れていく。

「あ・・・あ・・・ああ・・・」

下をうつむき呻き声をあげるアナザー。それでも金銭欲は挟む力を緩めない。逆に強くしていく。

そんな光景を美冬は遠くから吐き気を抑えながら見ることしかできなかった。

あんなに力強かったアナザーが、今はあんなにも弱々しく見える。

「くそ、回復できても、それ以上のダメージを負って気絶なんかしたら・・・!!」

天使くんが美冬の横で焦りながらそう言う。自分では何もできないからこそ、焦りが強い。

「誰か・・・助けて・・・!」

美冬はそう叫ぶ。それは誰も聞こえてない。アナザーも声が聞こえないほど叫んでいるからだ。それでも美冬は涙を浮かべながら助けを求める。

すると金銭欲が今度はアナザーの首めがけてハサミを突き出そうとするーーー!!

「やめてーーーー!!」

泣きながらそう叫ぶのと同時に金銭欲がハサミをアナザーの首めがけて一気に伸ばす。

美冬はおもわず目を瞑る。その時涙が一雫地面に落ちた。

その涙が地面に落ちるた。すると、

「ローズ・シャワー!!!」

何処かからかその声が聞こえ、無数の黒い弾丸が金銭欲に襲いかかるーーー!!

そして、金銭欲のハサミにあたり爆発する!!

金銭欲は声をあげて後ろに少し飛んで距離を取る。

美冬は顔を上げると、目の前に黒い服に身を包んだ一人の女性がいた。その格好はまるで。

「黒い魔法少女・・・?」

そう、美冬が助けを求めた黒い魔法少女だった。

黒い魔法少女は手を開くと、そこが黒く光ると杖を握っていた。そしてそれを一度大きく振る。

そして優雅にアナザーの元まで歩いていく。

「あとは任せて。あかねちゃん」

と、アナザーに声をかけた。

「なんで・・・名前を・・・?」

「ウチの名前は、ブラックローズ・・・大事な人を傷つけたあんたは・・・許さへんで・・・!!」

その声。その喋り方。そして、あの聞き覚えがあるエセ関西弁。

「杏子さん・・・!!」

「せーかい。杏子おねぇさんや」

杏子こと、ブラックローズはもう一度ニコリと笑い金銭欲に向き合った。

その背中なら見られるオーラは、とても優しげだが、どこか激しさも混ざっていた。

ブラックローズが、手に握る杖を右から左にゆっくり払う。

ギュン!!

すると後ろに無数の黒い薔薇が現れた。それを見たアナザーは少し見とれて金銭欲は顔が青ざめた。

ブラックローズは今度は杖を金銭欲に向ける。

すると後ろにあった黒い薔薇が金銭欲に襲いかかる!!

金銭欲はハサミでガードするが勢いに押されて後ろに倒れる。

それでもブラックローズは攻撃を止めない。まだまだ黒い薔薇を出し続ける。

それを見ていたアナザーは驚きのあまりに声が出せなくなっていた。なんせ、自分じゃできないようなことを彼女は平然とやってのけた。ますます自分がひよっこだと実感していく。

そして攻撃が止んだとき、ブラックローズはアナザーに手をかざした。

するとアナザーの体の傷がだんだんと治っていった。そして、体の疲労感も取れていく。

「これがウチの能力。浄化や。多少の傷なら簡単に治せるんやで」

そう言いながら彼女はアナザーの頭に手を置き優しく撫でる。

もう戦わなくていいと言ってるようだった。

アナザーはしばらくボーッとしていたが、その撫でる手をつかんだ。

そしてアナザーは立ち上がり、ブラックローズの前に立つ。

「ありがたいけど、守られるのはしょうに合わないですからね。それに考えがある」

そう言いながら拳を握りしめ、右足を前に出してそこに体重をかけて戦う姿勢をとる。

ブラックローズはため息をもらしながら、杖をまっすぐ前に向ける。

そしてゆっくり起き上がる金銭欲。その目は怒りでどす黒く濁っていた。

暫くの間、ゆっくり時間が過ぎていく。そんな中アナザーが口を開けて。

「さぁ。第二ラウンドだ・・・!!」

そう声をかけると同時に2人の魔法少女と一体のバケモノは一気に前に駆け出した!!

ブラックローズは後ろから弾幕を展開して金銭欲を攻撃する。金銭欲も応戦するためハサミでブラックローズを狙う。

アナザーの攻撃はもう効かないとわかってるからだ。だからまずは危険が高いブラックローズを狙う。

もうすぐでハサミが当たるというときに右足に違和感を感じた。すると金銭欲はぐらりと右に倒れる!!

足元を見るとアナザーが右足を破壊した後だった。アナザーは悪戯っ子のように笑っていた。

それが金銭欲の怒りをさらに加速させた。標的をアナザーに変えやみくもにハサミで狙う!!

アナザーは擦りながらも避けるが、ついに捕まってしまう。

それを誇らしげに持ち上げる金銭欲。そして挟む力をあげてアナザーを苦しめる。

ブラックローズ今は遠くから見つめることしかできなかった。杖を強く握りしめている。

アナザーは苦しみながらも考えた。自分のせいでブラックローズは攻撃ができないし、美冬たちも悲しませてしまう。

それだけは嫌だ。何がなんでもみんなを守る。守る。守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守るまもるまもるまもるまもるまもるマモルマモルマモルマモルーーー!!

プツン。と、アナザーの中で何かが切れた。そしてゆっくりと笑った。

その光景は天使くんたちの背中に悪寒が走るほど不気味だった。

「あたしが犠牲になればいいんだよね」

そう呟くと同時に、アナザーの体が光りだし、段々と輝きを増していく。そして。

ズドーーーーン!!!!

アナザーが、爆発した。そして金銭欲のハサミも消し飛んだ。

ブラックローズは叫ぶのを抑えた。アナザーが作ったチャンスを無駄にしてはいけない。先ほど自分に考えがあると言ってたが、まさかこんなことだとは!!

杖にありったけの魔力を込めて金銭欲に向ける。狙うは治りかけているヒビの間。

「ローズ・・・」

と、言うと杖の先が魔力で作られた黒い薔薇の形になっていき、その先が黒く光り出す---!!

「バスター!!!!」

と言うと同時に黒い薔薇から、極太のレーザーが、爆発音とともに金銭欲に向かっていく。

そのレーザーは金銭欲を貫き、そして金銭欲の断切魔と共に爆発した。

金銭欲は跡形もなく消し飛び、光の粒子が空に舞っていく。

ブラックローズはアナザーの名前を叫びながら走り出す。もう瓦礫などは修復されている。アナザーはすぐに見つかるはず。

結論から言えばアナザーはすぐに見つかった。だが、両腕がなくなっていた。幼い体の肩見える骨がとても生々しかった。

ブラックローズは慌てて浄化をする。痛みはだんだんと引いていくが、アナザーの額には脂汗が滲んでいた。

それもそうだろう。アナザーは自分の両腕を爆発させたのだ。ただでさえ体にダメージを受けていたのに、自分から体を傷つける。その狂気とも取れる行動にブラックローズは思わず生唾を飲み込んだ。

「な、なぁ、ブラック、ローズさんよ・・・」

突然アナザーが喋り出した。それは、苦しそうにしている中で無理やり出している声であった。

「あたしは、まだまだひよっこだ・・・だか、ら、戦い方を、おしえ、てくださ、い・・・あたしが、みんなをまもる、から」

その声は生まれたての子鹿のように震えているが、覚悟だけは感じられた。

それがブラックローズにとっては恐ろしかった。彼女はまだ女子高生なのに、この覚悟はなんだ。

自分が見ないといけない。彼女は直感的にそう思った。

だから、普段なら断るこの話をアナザーの前に手を差し出すことで了承を表した。

アナザーも、笑顔になりその伸ばされた手を掴む。

「だけど、うちの修行はきついで?ついてこれるか?」

ブラックローズ・・・いや、変身を解き、杏子になった彼女がそう問いかける。アナザーの変身を解いてあかねに戻る。

「もち、ろん。その方、がいい、じゃん、か」

こうして奇妙な師弟関係が生まれた。



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《次回予告!!》

「無理はしない。それからや」

「魔力をコントロールする!!」 「てめぇ・・・忘れたとは言わせねぇぞ!!」

「なんで、貴女が・・・!!」

《第四話 蒼き魔法少女》

お楽しみに!!


第3話おわりました。お疲れ様でした。

師匠としての魔法少女。ブラックローズこと小森杏子さんが仲間になりました。

某魔法少女作品では第3話で魔法少女が死にましたね。今回は第3話で魔法少女が増えました。

次回は蒼い魔法少女がでてきます。なぜ、敵側なのかはそれはいつかわかると思います。

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