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ヒロイン=ヒーロー  作者: だっつ
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第13話 三つ目の覚悟

一つ聞いてください。

勉強したくない

前回のあらすじ

はぁい!私の名前はアミナでぇーす!!

前回はなんやかんやでゼーンさんが死んで、なんやかんやであたしがぶっ壊れて、なんやかんやで私があたしになったの!!

うん?わけわからない?はっはっは!!だったら前回を見ろよこのやろー!!




人間というのは一度楽な道を選べばなかなか戻ることはできない。それは勉強、仕事、そして己の欲の解消もだ。


特に中学生ぐらいの人間というのはその道を選びたがる。楽な道、楽な道。その先に待ってるのはほとんど誰も喜ばないバッドエンドと知りながら。


そしてそんな現状が今ここで起きている。場所は公園の公衆便所。ここにはあまり人が来ないのに、今日は5人も人がいた。だが、5人仲良く用を足しに来た訳ではない。


「おい、早く今月の友達料金出せよ」

「で、でも僕お金もう持ってない・・・」

「だったら親の財布から取ってこいっていただろ?お前はなんでそこまで使えないんだ?」


お友達料金。などと言っているが、つまりはカツアゲである。


今カツアゲされてる少年はなんでこうなったかわからない。本当にいつの間にかこうなっていたということしかわからない。もしかしたらこれは運命だったのかも知れない。


けれど、カツアゲされている少年は運命に背きたかった。けれど、何もできない。する勇気がなかったのだ。


「へぇ、友達料金払わないの・・・じゃ、もう友達じゃねぇな!」


そうリーダー格の少年が声を出すと同時に、他の3人が気持ち悪くニヤリと笑った。そして、勇気がない少年に向かって手を伸ばした。これから起きることを考え少年は目を閉じた。


そんな中、ある願いがあった。


(助けて・・・!!お願い・・・!)


虫のいい話であるが、彼は自分ができないことを他人に求めた。そんな声が届いたかわからないが


「ちょっと待った!!!」


と、子供の声が聞こえたかと思うと、トイレの入り口にコスプレをした幼女が一人立っていた


「なんだこのガキ・・・?」

「ガキじゃないよ?私はアミナと言うの。気軽に『%○$¥%>\|〒々〆』と呼んでね!」

「呼べねぇよ!なんて言ったかわかんねぇよ!!」


そんなことを言いながらその幼女は少年たちのところに歩いて行くと、彼らは一歩下がった。


「さっき、きみは、助けを求めたよね?」

「え・・・?」

「ま、お姉さんが守ってあげますから心配しなさんな!」

「さっきからごちゃごちゃ・・・ガキの遊びに付き合えれるかよぉ!!」


リーダー格の少年はそう言いながら、アミナという幼女に殴りかかろうとした。思わず助けを求めた少年は声を上げる。それを見たアミナは声を上げた少年を見ながら、そのリーダー格の少年の拳を受け止めた。


「うーん、君たち私が守る対象に何しようとしたのかなぁ?」

「は、なにって・・・いでぇ!?手が!手が潰れる!?」

「ま、私が守るものに手を出したあなたに与える判決は・・・」


と、アミナは口でドラムロールを刻みながらリーダー格の少年の腕をつかみ捻った。


「があっ!?」


アミナが少年の腕を離すと、その腕はだらんと垂れて骨が折れてるように見えた。


いや、事実折れていた。そんな現状を守られていた少年は理解できないというように見ていた。


「はい!それでは君たちにいう判決を言い渡します!!!!えーといろいろ考慮したら・・・」


そんな中異質な世界を作っている本人の、アミナは楽しそうに笑い、パンと、両手を叩いた。


「出ました!満場一致で・・・うん、判決は死☆刑!」


そんなことを言ったかと思うと、アミナはリーダー格の少年に飛びかかった。そして首に手をかけグルンと回す。


ゴキリ、と嫌な音が聞こえたら、髪の毛が下を向いた少年は後ろにばたりと倒れた。そのあと数秒、間があったあと、他の3人が騒ぎ出す。


それを見たアミナは狂ったような笑顔になった。だが、守られていた少年はその狂気の笑顔は天使の微笑みに見えた。


そこからは流れるような作業だった。逃げる3人の一人の足を払い倒したかと思うと、その首を掴み二人に向かって投げつける。その二人は避けるが、投げられた少年は壁に当たりグチャリという音を出してみるも無惨な姿になった。


それを見た二人は声にならない叫び声であげて一人その場にへたり込む。もう片方の一人はまた逃げようとするが、その前にアミナは立ちふさがる。するとアミナはその少年の口の中に手を突っ込んだと思うと、数秒間をおいてその口が光り、大きな爆発が起きた。


煙が出てる中、残った一人の少年は窓の存在に気づいて、そこから出ようとする。窓に手をかけて慌てて窓を開ける。助かったと思い顔を上げると


「はぁい♡お久しぶりからの、さ・よ・う・な・ら・♡」


アミナがそう言ったかと思うと、少年の頭を握り潰した。まるでトマトのように、周りに赤い血が飛び散った。


まるで嵐が過ぎ去ったかのようなことが起きたかと思うと、アミナは姿を消していた。残された一人の少年は、ただ地獄絵図を見ながら


「あは、あはははは、あははははははは!!」


嬉しそうに、楽しそうに笑い声をあげていた。


「あ、が・・・?」

「目撃者は死すべし、慈悲はない・・・てきな♡」


そんな笑い声も、一瞬のうちに聞こえなくなり、代わりに幼い少女の笑い声が聞こえてきた。


「あー、我ながら意味わかんないことしてるわー。でもそれこそがマイルールマイジャスティスマイレジェンド・・・レジェンドは違うかな?ねー、どう思う?エレンホスくん」


そうアミナが声を出すと、トイレの入り口からしかめっ面した手品師のような少年がやってきた。彼の名前はエレンホス。俗に言う悪の親玉のようなもの。


「どうときかれても・・・これが貴女の欲なのでしょう?ならば、特にとがめませんよ」


これ、と言って近くに少年だったものを摘み上げ、アミナに向かって投げつける。アミナはそれを受け止めて天井に投げた。ベチャリと音が聞こえて天井に張り付き、少量の血がたれてきた。


「でも、あたしの欲は防護欲だよ?でもなんも守ってないじゃん」

「それはそうですね。けれど、たまにあるでしょう。したいこと、やりたいこと、やらなければならないことをしたくなくなる時が・・・」

「成る程、確かにその言い分だったら」


と、いいアミナはエレンホスを見上げる。その瞳を見たエレンホスは先ほどより顔をしかめる。アミナはそんなエレンホスの顔を見て、ニヤリと笑い。


「今の貴方の状況も納得いくよね。支配されてる支配欲さん?」

「何が、言いたいのです?」


エレンホスはそう言い怪訝な顔でアミナを睨む。アミナは視線を合わせないように目を手のひらで隠して、また口を開ける。


「エレンホスくんってさ、なんでそんなに変わったのかな?前はみんなの事をなんやかんやで大切にしてたじゃない。けれど今は違う。本当に駒として扱っている。少なくともゼーンちゃんやブルーちゃんをあんな目に合わせるような人・・・いや、欲じゃないはずだよ」

「何を言うかと思えば・・・そんなことですか」


エレンホスはいきなりアミナが目を隠している手を払いのけて、顔を両手ではさんだ後、アミナの顔に顔を近づけた。


「僕は支配者なんですよ?いづれこの世のすべての上に立つべき存在。そんな僕が、下の存在のものもを文字通り捨て駒として扱って何がわ・・・」

「天界」


突如、アミナがそう言ってエレンホスの言葉を遮る。エレンホスは驚いたように目を見開いた。


「天界・・・確か貴方はそこで生まれたんだよね?この前アジトに行った時、テベリスちゃんに教えてもらったの・・・そういえば、ゼーンちゃんが死んだことは知ってるのかな?ま、いいか。兎に角貴方は天界に支配されて・・・」

「黙れ」

「ううん、黙らない。貴方は今天界に支配されている。生みの親の言うことは絶対なのはディザイアも人間も一緒なんだね。ゼーンちゃんが自分の欲に反して死んだのもそれが理由。親愛で最高で心酔している親の頼みだもんね。断れないもんね・・・で、いつ支配されたかというと、多分マタルくんが死んで、ブルーちゃんを倒す間・・・多分貴方は天界に抗議かなんかをしに・・・」

「だまれぇ!!!」


そう言ってエレンホスはアミナの首を持ち壁に叩きつける。アミナは少しむせるが、力強くエレンホスを睨みつけた。


「貴女は、僕の味方でしょう!?だったら・・・!」

「おあい、にくさ、ま・・・」


アミナはそう言いながらエレンホスの手を首から引き離し、どさりと地面に落ちて息を整える。そして、ゆっくりと立ち上がりエレンホスのほうをみて不敵に笑う。その時、エレンホスにはアミナとアナザーが重なって見えた。


「私はあたしであたしは私なの・・・貴方は私を生み出したけど、育ててくれたのはあたし。人間風に言うと、貴方はやり逃げした夫であたしはそんな私を懸命に育ててくれたの。だから、私はあたし。あたしは私なの・・・」

「いみが、わかりません・・・ただこれだけは言えます」


エレンホスそう言いアミナの前に手をかざした。その時周りが光だし、アミナは思わず目を瞑る。


光が収まりアミナは目を開ける。すると変化が見えた。両手両足が魔力のような物で拘束されていた。


「今、モルモットくんの実験結果が役に立ちますね。暫くそこにいなさい。この辺りに結界でも貼りますから人は来ないと思いますよ」


と、言いながらエレンホスはトイレから出て行った。アミナは少し焦ったように汗をながすが、諦めたように後ろに倒れた。


「まったく、こんな可愛い幼女をトイレに拘束なんて、どこのエロ漫画なんだよーってね」


と、いつものように軽口を叩いた後静かに目を閉じ、深いため息をついた。いつまで耐えられるか、自分自身に質問しながら。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「・・・あかねちゃん・・・」


ぽつりと口からある人間の名前が漏れる。手に握りしめてるのはあかねという少女が写っている写真。昔無理やり写真を撮ったのだ。


あかねが、ディザイアに乗っ取られて早1ヶ月。あかねの母の増穂には、千鶴や春樹の家にに泊まってると説明してるが、そろそろ限界かもしれない。いや、限界だろう。増穂が向ける視線が最近痛くなってきた。


「早く見つけないと・・・ね」


千鶴は、そう自分に言い聞かせる。と、言ってもこの言葉は36回目。そんなに言い聞かせても見つからないことに少し焦りを感じる。


いま公園のトイレに拘束されてることなど彼女は知らなかった。そもそも予想などつかなかった。だからこそ


「・・・ん?メールだ・・・小野くんからだ・・・なんだろう」


そう言い千鶴はメールを見る。そこに書いてあったのは、一言のみ。


「あかねは〇〇公園のトイレにいる」


その言葉を見た瞬間千鶴は嬉しさのあまりに崩れ落ちた。写真も添付されており、その写真には、見たことがある公園と、トイレの中に一人の幼女が拘束されてる写真であった。


(・・・?でも、なんで小野くんあかねちゃんの場所知ってたんだろ・・・?)


一つの疑問が浮かぶが、見つかったからいいやと考え頭を振る。いまはとにかくあかねに会いたい一心だった。


「早く見つけないとね!」


37回目のその言葉をつぶやき、千鶴はその公園に向かって走り出していた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



一人の少年。小野悟はいま焦っていた。一月前ほどに突然のあかねが乗っ取られた、その時悟は何もできなかった。だから、捜索には本気を出していた。だが、何も見つからなかった。


「どこかに・・・何かあるはず・・・!!」


そんな希望的観測を述べながら、町中を走った。そんな時だった。


「まって・・・悟・・・」


そんな、意識してないと無視してしまいそうなほど、ゆっくりとした声をかけられた。意識してしまったのは、他でもない彼女の声だったからだ。


「テベリス・・・?なんだ?」


猫耳フードを被った少女。テベリスが悟に手を上げながら近づいてきた。歩くたびに首に下げてある枕のネックレスが揺れていた。


「アナザー、探してるんだよね・・・?私、知ってるよ・・・」

「なに!?そ、それは本当か!!」


突然の告白。あまりにも突然すぎて悟はテベリスの方に飛びついた。テベリスは少し驚いたように目を見開き、顔を下に向けた。


「教えるけど・・・顔近い・・・ちょっと恥ずかしいかな・・・?」


そう言われると、確かに目の前にテベリスの頭があった。猫耳フード越しだが、なぜか甘いいいにおいがした。が、すぐに我に帰り、バッと、とびのいた。


「うわっ!す、すまん!・・・で、どこにいるのか教えてくれないか?」


そう、悟も少し視線をそらしながら言うと、テベリスはこくりと頷き、ゆっくりどこかに歩いて行った。悟はそれを見た後、隣まで走り、しばらく一緒に歩いた。


どれぐらい歩いただろう。どこかの寂れた公園まで来ていた。そこにテベリスは足を踏み入れて、悟もそれに続こうとしたが、なぜか足が進まない。この公園に入りたくないのだ。


「そっか、エレンホスが結界張ってるのか・・・少し、待ってて・・・」


そうテベリスがいうと、トテトテと公園の中に小走りで入っていき、何かをケータイで撮影し始めた。

しばらく待っていると、テベリスが、肩で息をしながら悟の元にやってきた。


「こ、これ・・・この写真・・・み・・・て・・・」


その時、悟は驚きで声が出ないというのがよくわかった。あかねがトイレの中で拘束されていたのだ。見た感じ、少し汗をかいてるように見える。もう秋の終わり頃。こんなに暑いとは思えない。


「多分、アナザー・・・限界が近いのだと思う・・・早く、助けないと・・・」

「わかった・・・そうだ、その写真送ってくれないか?ラインかなんか教えるから・・・」

「えっと・・・あの・・・」

「なんだ?ラインやってないのか?」

「ち、違うの・・・その・・・」


テベリスはずっともじもじしていた。悟はなんでそんなに恥ずかしがってるかわからなかった。とにかく早いとこ、あかねの写真が欲しかった。


「あのね、ラインもいいけど・・・その、メールアドレスと、電話番号を交換しない・・・?だめ、かな・・・?」

「メアドと電話番号?構わないが・・・何故だ?」


悟はそう聞いた。するとテベリスはとても顔を赤くしてフードを深くかぶり、そして蚊の泣く声でこう呟いた。


「メールアドレスと、電話番号の方が・・・特別に見えるの・・・だめ、かな・・・?」


そう顔を赤らめて涙目の上目遣いで言われてノーと言われる人間はいない。悟は少し震える顔で頷き、メールアドレスと電話番号を交換した。ラインはあえて交換しなかった。


ピロりん、と交換を終了したことを知らせる音が鳴り、画面にはテベリスのメアドなどが入っていた。


それを見たテベリスはケータイを大事そうに抱え、うふふと嬉しそうに笑顔で微笑んだ。悟はその顔に見とれてしまうが、すぐに千鶴たちにあかねがいる場所の名前と、写真を送りつけた。


「助かった、ありがとうなテベリス」

「ううん、いいの。とても、嬉しい・・・!」


またニコリと微笑む。柄ではないが、やはりどきりとしてしまい恥ずかしさのあまり話を変えようと、悟は口を開ける。


「なぁ、俺にこんなことしていいのか?エレンホスとかいうやつに歯向かってるんじゃ・・・?」

「・・・エレンホス・・・」


すると、テベリスは悲しそうにその顔を曇らせる。もしかして、聞いてはいけないことを聞いたかと思い、悟は気まずそうに頬をかく。


「エレンホスは、変わった・・・昔は・・・私を助けてくれた時は・・・もっと優しかった・・・私は、そんなエレンホスを助けたい・・・それに必要なのが、アナザー・・・彼女なの・・・」


そう言い、画面の中の写真をなぞる。


「だから、勝手な願いだけど・・・アナザーを助けて・・・!」


そう大好きな人に言われて断るほど、悟はひねくれてない。自分では何もできないことは知っているが、それでも頷くしかなかった。


「・・・任せろ。まぁ、俺は何もできないけどな・・・」

「そんなことない・・・私みたいなやつの頼みを聞いてくれて嬉しい・・・!」


すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。おそらく千鶴たちだ。テベリスは少し驚き、そして悟から飛び退く。


「じゃあね。また・・・」

「あぁ、また会おう」


そう言うとテベリスはどこかに飛んで行った。その後ろ姿は何故か少し悲しく見えた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



(みんな、アナザーを助けてくれるかな・・・?)


悟と別れたテベリスは、一人とぼとぼと道を歩いていた。悟という少年ともっと会話していたかったが、他の人が来るなら面倒なことになる前に逃げたほうがいいと考え、名残惜しいがその場から立ち去った。


(また会いたいな・・・悟・・・♪)

「おや、随分と楽しそうですねぇ?・・・テベリス」

「んっ・・・あ、エレンホス・・・」


ふと、視線を上げると一人の少年。エレンホスがたっていた。テベリスはいつもの通り声をかけ、そのまま横を通り過ぎようとした。


「待ってください・・・少し、お話があります」


突然、エレンホスからそう言われた。いつも以上に冷たいその声にテベリスはごくりと生唾を飲んでエレンホスの言葉に頷くしかなかった。


「貴女、最近人間の男とよくあってますよね・・・?」

「・・・それが、どうしたの?」


その質問はどう考えても悟との関係についてのものだった。テベリスは少し緊張で汗をたらりと流した。


「いいですか?貴女や僕は人間ではないのです。これ以上会うのはやめたほうがいいですよ。『お互い』の身を滅ぼしますよ?」

「・・・ご忠告・・・ありがとう。でも、私は・・・これからも変えるつもりはないから・・・」


エレンホスと違って。という言葉を生唾とともに飲み込んだテベリスは今度こそエレンホスの横を通り過ぎようとした。


「残念です・・・」

「・・・?なに、が・・・」


その時、エレンホスはテベリスに手をかざし、数多くの弾幕を飛ばした。テベリスはとっさに手を前に突き出し、その攻撃から身を守った。


「い、いきなりなに・・・!?」

「だから、残念と言ったでしょ?僕の言うことを聞いてくれない奴は、死ぬしかないですよね?」


と、言いながらエレンホスはテベリスに無数の弾幕をぶつける。テベリスは手を前に突き出し小さいバリアーを作って全ての攻撃をはじき返した。


「うーん。流石他人と関わることを恐れているテベリスですね・・・バリアーのみ一級品です」

「エレンホス・・・!少しおかしい・・・!!」


テベリスはそう言いながらバリアーを少しずつ、広げていく。もうすぐ自分の周りを囲むほどのバリアーが完成する。そうなれば、エレンホスと落ち着いて話し合いができる・・・!


「おかしい?おかしいですか・・・確かに、僕は少しおかしい。ですが、それがなんだというのです?そもそもこのおかしさのお陰で天界の皆さんを楽しませる事ができる。だったらこれぐらい、どうってことないですよ・・・!!」

「そんなの・・・間違ってる・・・!!天界のことを全部最優先にしてはいけない・・・!!一番大事にすべきは自分!自分のことを大切に出来ない奴に・・・他人を大切にする価値なんて・・・!」

「確かに、貴女は自分のことを大切に出来なくて大切なご友人を不幸に落としましたからね」

「っ・・・!今は・・・マヒロのことは・・・関係・・・ないっ!!」


そしてエレンホスの猛攻は止み、テベリスもバリアーを周りに展開した。テベリスは兎に角話し合おうと口を開けて、エレンホスを見る。その時のエレンホスは何故か、冷たい目でテベリスを睨みつけていた。


「ま、どうでもいいですけどね・・・テベリス。貴女はもうすでにチェックメイトにはまってるんですよ」

「・・・な、なにを・・・!?」


その時だった。テベリスは体の真ん中あたりにぽっかりと穴が開いた気がした。そこを手で触ってみると、べっとりとディザイア特有の緑色の血が付いていた。


「か・・・はっ・・・」


たまらず膝から崩れ落ちるテベリス。なにに体を貫かれたかわからず、頭が混乱する。そのせいかせっかくはったバリアーが、ボロボロと崩れ落ちていく。エレンホスはそんな光景を見ながらゆっくりとテベリスに近づいていく。


「さっき大量の弾幕を飛ばした時・・・一個だけ、自分の意思で操れる弾幕を飛ばしたんですよ。なんでしたっけ。なんとかボールのあの技を少し真似してみました」

「フー・・・フー・・・!」


そして、エレンホスはテベリスの頭をがしりとつかみ乱暴に持ち上げる。テベリスは顔には緑の血がたくさん付いており、口から荒く息を漏らしていた。


「僕の支配から逃れるからこうなるんです。ギリギリ殺さないようにしてますけどね」

「私は・・・私は・・・!!」

「どうしました?何か言いたーーー」


その時、テベリスはエレンホスに向けて小さなバリアを飛ばしてぶつけた。とっさのことで回避できず脳天を弾かれて、後ろに飛ばされる。


「っーーー!!テベリスッ!貴女って人は!!」

「ねぇ・・・一つ、質問していい・・・?」

「はぁ!?なにを言ってーーー」


エレンホスは言葉を続けようとするが、何故か口が動かない。まるで『何か』にしゃべるのを止められてるような。そんな風に見えた。それを見たテベリスは少し笑い、そして口を開けた。


「エレンホスって、私たちのこと・・・本当に・・・ただの駒だと・・・『使い捨ての駒』って・・・思ってるの・・・?」


その質問に対してエレンホスは少し馬鹿にするように鼻で笑った。


「なに言ってるんです・・・?貴女たちなんて僕が、天界の人達の目的を達成するための駒ですよ」


そういうエレンホスは『首を横に振っていた』


それを見たテベリスは満足そうに微笑んで、でもどこか悲しそうに見える表情を浮かべ、その場から逃げ出した。


「逃がしません・・・!?」


エレンホスはもちろん追いかけようとするが、何故か足が動かない。そのせいでテベリスはどこか遠くに行き、やがて見失ってしまう。


「・・・ま、いいです。計画は上々。精一杯暴れてブルーさんたちを殺してくださいね・・・アミナさん」


そういった後エレンホスは、狂ったように高笑いを始めた。しかし、本人は気づいてなかったと思うが、頭から流れる血に混じって、一筋の涙が地面にポツンと落ちた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



暗い部屋の中に、一人の少女がポツンと体育座りで座っていた。何かをブツブツ呟いている。


「まったく・・・まだ引きこもるつもりなの?あたし」

「・・・あぁ、私か・・・」


その少女しかいないのに、少女の声が聞こえた。その声に少女。あかねはボソリと答える。すると、あかねの目の前に見覚えがある少女が現れる。全身が黒いが、おそらくはアミナであろう。あかねの、防護欲。


「何しに来たんだ・・・?早くあたしを食えよ。そしたら本当に完全体になるんだろ・・・?」

「うーん、却下」

「・・・は?」


あかねは意味がわからないという顔をして、顔を上げてアミナの方を見る。


「だって、今のあたし食っても美味しくないし・・・というか、なんかこう・・・私の防護欲が囁くんだよね。『守れ』って」

「あたしを守る・・・?あたしはもともと守る立場だった・・・けど、人を殺した。名前は知らないが、師匠を・・・そんなあたしは生きる意味がないんだ・・・」


そういうあかねアミナはやれやれというように頭を振り見つめる。いつの間にか黒いモヤモヤがはれ、アミナの姿がよく見えた。


「ねぇ、あたし。守るって何?」


突然、アミナがあかねに質問を投げつける。あかねは暗い顔を上げて、しばらく時間考えたのちに口を開ける。


「守るってのは・・・自分を犠牲にしても、他人を傷つけないことだろ・・・?」

「・・・はぁ・・・だめだねぇ、あたし・・・っと・・・」


その時、アミナの体とあかねの体がキラキラと光り始めた。あかねはなんとなく察した。アミナが欲を一定以上解消したか、逆に欲をためすぎたか・・・兎に角、外の世界に出てしまうということだ。


「私じゃ、説得は難しいな・・・んじゃ、彼女たちに任せるよ」

「・・・は?何言って・・・」


そんな言葉を遮るように、当たりが強い光に包まれる。アミナはあかねの方を見て、親指を立てた。


「グッドラック!あたし!!」


その声を最後に、二人の姿は完全に消えた。




「・・・・ん!」



「・・あ・・・ん!!」


「・・・さん!・・ねさん!目を覚ましてください!!」

「・・・ふぁ・・・?ここは・・・」

「よ、よかった!目が覚めたか・・・おーい!ブルー!!あかねが目を覚ましたぞ!!」

「マジで!!やっほぅ!!」


あかねが重い体を起こすと、そこには見覚えがある顔があかねを心底心配したぞと言いたいような表情を浮かべていた。そして、そんな空間の中に二つ異様なものがあった。まず一つは青い服に身を包んだ魔法少女がいた。彼女の名前はマジックブルー。正体は池内千鶴である。


そしてもう一つ、何か大きなものが、ブルーと戦っていた。その体、その頭が何もかも大きく、見た目はまるで・・・


「・・・トリケラトプス・・・?あれが、防護欲・・・?」


そう、トリケラトプスのようなものがブルーと戦っていた。ブルーはしゃぼんを飛ばして攻撃をするが、一切ダメージは通ってないように見える。いや、実際通ってないのだろう。ブルーは逃げるのに手一杯であった。


「あかねさん!早く戦ってください!!」


美冬がそうあかねに急かすように声を投げる。あかねはしばらく考えた後、ゆっくり立ち上がりそのまま防護欲のほうに歩いて行く。


「・・・まて。西園寺」

「・・・なんだ?小野・・・?」


そんなあかねの後ろ姿を、悟が呼び止める。あかねはゆっくり後ろを振り向き、悟の顔を見る。悟はあかねを睨みつけていた。


「おまえ、死にに行くつもりだろう・・・?」

「そうだけど」


あかねはそうきっぱり答えた。まるでそう答えるのが当たり前なように。その答えを聞いた悟は苦虫を噛み潰したのような顔をした。


「だって、あたしは誰も守れない。そんな奴さっさと死んだほうがこの世のためだろう?」


あかねはそう言い、また防護欲のほうに歩いて行く。そう、あたしは何も間違ってない。何も・・・


「待ってください」


そんなあかねの歩みを止めたのは、美冬の声であった。あかねはさその声を無視して歩き続ける。美冬はそれでも口を開けてこう言った。


「あかねさん。守るってなんですか?」


その声を聞いて、あかねはピタリと足を止める。そんな中でも、ブルーは防護欲と戦っていた。


「もしかして、自分の身を削ってでも、他人を守る・・・とか言いませんよね?」


図星だ。


「・・・あかねさん。それは素晴らしい考えです。けれど・・・」


あかねは美冬の声に先ほどと違い耳を傾けていた。そして、美冬は目を瞑り口を開ける。


「けれどボク達はそんなこと頼んでませんよ」

「・・・あたしは、誰も守れない・・・そんな奴なんだぜ・・・」

「あかねさん。何を勘違いしてますか?ボクは。ボク達は、あかねさんにいつそう言いました?『守ってくれないから死ね』?そんなこと、一言も言ってませんよ」

「で、でも・・・」

「でももだってもそんなの関係ない!」


そう言うと美冬は突然駆け出し、あかねに抱きついた。あかねは久しぶりに人の温もりを感じたような気がした。


「守るって言葉・・・あかねさんは、自分の身を削ってでも、人を守ると捉えてるみたいですが、ボクは違います。ボクは・・・」


そう言い、美冬は強くあかねを後ろから抱きしめる。あかねは何故か体が震えていた。


「守るってのは・・・絶対にまた顔を合わせて笑うって意味・・・だと思います・・・あかねさん。後ろを振り向いてください」


あかねはゆっくりと後ろを振り向いた。そこにいたのはーーーー


何も変わらない。いつもと同じ顔であかねを見ているみんなであった。


たとえ、あかねが化け物を生み出しても。


たとえ、あかねが化け物でも。


必ず、味方になってくれる顔が、そこにはあった。


その顔を見たとき、あかねは目を閉じて考えた。何故か、頬を水のようなものが伝った気がした。


ドゴン!!


そんな時、大きな音がなったかと思うと、ブルーがとうとう直撃をくらい、壁に叩きつけられていた。それを狙い、防護欲は勢いをつけて突進する。


「あっーーーー」


美冬達は声にならない叫び声をあげそうになった。だが、出さなかった。『出す必要がなかった』


また、もう一度先ほどのような大きな音が聞こえた。大きな煙を巻き上げ、周りを見えなくした。


その煙がはれたとき防護欲は壁に当たってなく、その前に何かに当たっていたように見えた。その何かは、とても小さな壁か。いや、マントをはためかせた、とても小さな少女。


「ひとーーーつ!!

からなず人を守るという覚悟!!

ふたーーーつ!!

その身を削ってでも、助けるという覚悟!!

みっーーーつ!!」


その少女は、そう言いながら防護欲のツノを持ち、遠くに投げとばす。それを見たブルーは、まるで救世主が来たかのような顔をした。そして、少女は高らかに口を開けた。


「必ず!!生きて!!笑いあう覚悟!!

そしてあたしの名前をその脳に刻め!!あたしの名前はーーーー

ーーーーマジカル☆アナザーだ!!」

「アナザー・・・遅いんだから・・・もう・・・」

「すまねぇ、ブルー。でもわかったんだ。あたしはあたしなんだ。私じゃない・・・それに」


アナザーはブルーの顔と、美冬達の顔をちらりと見る。そして、最後に目の前の防護欲をキリッと睨みつけた。


「新しい覚悟。背負っちまったからな・・・」


そう力強く宣言したアナザーを見て、防護欲は安心したような顔になり、笑ったように見えた。


「後は、あたしに任せーーーー」


だが、敵は敵。防護欲は当然走り出し、アナザーの体をツノで貫いた。そしてそのまま、勢いをつけて壁にぶつける。すると、先ほどより大きな音がなり、アナザーは口から血を吐き出す。


「アナザーさん!?大丈夫ですか!?」

「・・・てぇ・・・」

「・・・?」


美冬が心配して声をかけると、その声に反応するように、アナザーは小声で何かをつぶやいた。そして、次の瞬間堰を切ったように、声を荒げて、こう叫ぶ


「いってぇええぇええぇえぇぇぇぇええ!!!???」

「ア、アナザーさん・・・?」


痛みに対して吠え始めた。それもそのはず、今まで痛みの大半は防護欲がいたから、あまり感じなかった。防護欲なきいま、アナザーはただの女子高生になってしまい、痛いものは痛いと感じるようになった。


アナザーは先ず最初に、痛みを思ったことでかおをゆがませ、次の瞬間にはこれが普通のことだと思い出し、今度は笑い出した。


「痛みを耐える。なんてできないけど、だからこそあたしは私の力なしで戦い続ける・・・!」


ガラリと音を立てて立ち上がったアナザーは、自分の力を確かめるように手を開いたり閉じたりを繰り返す。まさに、いつものあかねだった。


そんなアナザーを狙い、一直線に防護欲が突進してくる。アナザーは少し後ずさりするが、震える足を叩き震えを止めた後に、両手に魔力を込める。


「ーーーーーー!!!???」


突然、防護欲の足が止まった。よく見ると、足の周りにシャボンがまとわりついていた。そのしゃぼんは、ブルーが出した防護欲を足止めさせるために作ったもの。


「ナイス、ブルー!」


そう言い、アナザーは壁に足をつき、バネのように足を曲げて、一気に飛び出した。その途中魔力を込めた右手と左手を重ね合わせる。すると、いつもの拳より数段大きくなった。


「マジカル・ツイン・インパクトォォオオォオオ!!!!」

「ーーーーー!!!!」


両者の力が正面から激突する!その時の雷鳴のような轟は結界の中ですら響き、周りの壁を破壊した。美冬達も気を抜いたら吹き飛んでしまいそうだった。


「っーーーあかねさん!」


アナザーは少し押し負けていた。手のひらがバキバキと、嫌な音が鳴り響き、アナザーは思わず声をあげる。最強の盾の前には最弱の矛など叶うはずもない


「いってぇえええぇ!!けど!!けどなぁ!!」


それでもアナザーは歩みを止めない。たとえ最弱の矛だとしても。最強の盾には勝てないとしても。


「けど!ここで負けたら一生後悔する!後ろで支えてくれる仲間がいるから!!それを失いたくないから!!あたしは!あたしは!!」

「ーーーー!!!!」

「守るんだ!!前に進めるんだぁあああぁあ!!!」


その時ピシリと音がなり、小さな最弱が、大きな最強を貫いた。


「ばいばい、私・・・」


そう小声で呟いたアナザーの声は誰にも聞こえなかった。それと同じようにアナザーの耳元に声が聞こえた。


(どういたしまして・・・頑張ってね。あたし)


その声は、優しく。とても温かい声だった。その声を聞いたあと、アナザーはゆっくりと閉じていた手を開いた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「・・・!?防護欲が・・・まけた・・・!?」


テベリスとの戦いのあと、エレンホスは防護欲が負けたということを直感的に感じ取った。そのままふらふらと動き、電柱に手をついた。


「ばかな。ばかなばかなばかな!!アミナは僕が手塩にかけて育てたディザイア!!それがこうもあっさりと・・・まるで最初から・・・まさか!!」


エレンホスは防護欲の考えがわかり、電柱をおもいきりたたく。拳から血が流れだすが、エレンホスは気にしてない。それ以上に防護欲が負けたことを気にしていたのだ。


暫くそうした後、深く深呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻した。


「・・・まぁ、いいです。次の手をうちに行きましょう・・・ん?」


エレンホスは動こうとするが、電柱を持っている手が頑なに動こうとしなかった。まるで、自分の意思とは意図的に反してるような。そんな感じに見えた。


「・・・ふん。まだ、残ってるのですか・・・早く消えてくれませんかね『僕』」


エレンホスは電柱についていた手を何度も叩いた。まるで、ゴキブリを見つけた人間のように。何度も何度も。


やがて、その手がもう動かなくなったのを確認して、エレンホスは不敵に笑う。


「何もしない愚かな雌猫には、最期ぐらい働いてもらいましょう・・・」


そう言いながらエレンホスはどこかに消えていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《次回予告!!》

「時はまさにクリスマス!!」

「働きなさい」

「俺は、お前のことが・・・」

「ごめんね、悟」

第14話『人とディザイアの恋は成立するのか』

お楽しみに!!




アミナさんとあかねさん。二人がやっと一つになりました。

わかりにくいかもしれませんが、簡単に言えばアミナさんは「私が死んでみんなが助かるなら死ぬわ」で、あかねさんは「私が死んでみんなが助かる?いや、私はみんなが助かる道を探す」という感じです。

次回はテベリスさんの回です。お楽しみに

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