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ヒロイン=ヒーロー  作者: だっつ
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第10話 そこに立つ蒼き者

最近もうすぐ書き終わりそうなので少し寂しくなってきは〜げんです。

まぁ、実はこれは三部構成だったりしますけどね

最後まで読んでいただければ嬉しいです

前回のあらすじ

また会ったな。天使くんだ。

前回、俺とあかねはマタルと戦った。死力を尽くした戦い。どっちが勝ってもおかしくなかった・・・が、俺らは一瞬の隙をつきマタルを倒した。

だが・・・何か忘れてる気がするんだよ。なんだろうな・・・





「・・・ふぁ・・・ねむいなぁ。けど、頑張んないと・・・」


クリーム色の猫耳フードを深くかぶった少女が眠そうにあくびをする。少し気を抜いたら寝てしまいそうな感じであった。


彼女の名前はテベリス。ディザイアの幹部の一人であった。幹部は他にはエレンホスと、マタルという者がいた.


いた。というのは、もうすでにこの世にいないからである。マタルは、魔法少女との戦いで死んでしまった。どう死んだかはわからないが、壮絶な死だったのだろう。


だからこそ、怠慢欲の彼女も何かしないといけないと思った。やることは仲間の発見。つまり、ディザイアを増やすことである。


テベリスはエレンホスには及ばないが、他人の欲をなんとなく見る事が出来た。が、流石にディザイアにすることはできない。テベリスがするのはディザイアの器となる存在の発掘である。


「こういうと・・・なんか、アイドルプロデューサーみたいだね・・・」


そう、小声でつぶやく。そして疲れたようにふっと息を漏らす。なぜか、汗をかいてきた。そんなに歩いてないし、今は秋の始まり。暑くはないはずなのだが。


「こんなに、あるくの、疲れた・・・っけ・・・?」


そして、疲れたようにベンチに座り込んだ。なぜか息が上がっており、どんどん疲れが増してきた。


「ああ・・・だめ・・・寝ちゃう・・・」


そう呟いたあと、死んだように眠り始め、口ですーすー寝息を立てていた。そして、そんな彼女を見つけた少年がいた。


「・・・ん?テベリス?なんでこんなところで寝てるんだ・・・?」


銀髪を揺らす、イケメンに分類されるクールそうな少年。名前は小野悟。


なんとなく、彼女の隣に座る。別に彼女の寝顔を見たいとかそんなわけではない。ただなんとなく座っただけである。そう自分に言い聞かせる。


チラリと、テベリスの顔を見る。目を閉じまるで人形のように眠る彼女は、本当に人間には見えなかった。


すると、彼女の口が動いてるように見えた。よく見たら大粒の汗をかき始めている。その汗のかきかたは異常なほどであった。


テベリスの声が少し聞こえてきた。もごもごと言っていた声がだんだん大きくなる。悟は耳を澄まして声を聞いてみた。


「・・・私は・・・あなたのためを思ったのに・・・頑張ったのに・・・ごめん・・・マヒロちゃん・・・」


マヒロ。聞いたことのない名前であった。いや、どこかで聞いたことがある。昔新聞で見たような、ニュースで見たような・・・


「んっ・・・あ、あれ・・・?悟?なんで・・・ここに?」


テベリスは目を覚まし、悟の方を見た。悟は少し恥ずかしそうにほほをかく。テベリスも、なんとなく顔が赤くなる。なぜか微妙な空気であった。


「さっきの寝言・・・聞いた?」


その空気を破ったのは、テベリスの方だった。悟は少し考えたのちに、聞いてないと言った。テベリスは、そう。とだけ呟き、ベンチから立ち上がる。そして、何かを考えるように目を閉じた。


悟もなんとなく隣に行き同じように目を閉じる。これは本当になんとなくだった。


「私ね・・・あなたに会えて本当に良かったと思う・・・私みたいな人間じゃない奴なんかに・・・こう言われても嬉しくないだろうけど・・・」


目をつぶりながら、テベリスはそう悟に言う。悟はそんなことないと言おうとするが、口を閉じる。そして、テベリスの手をそっと握る。


「俺も、お前に会えてよかったと思う。始めて他人のことを・・・あー・・・その・・・とにかく。会えてよかった。お互いにそう思えるだけ、すごいとは思わないか?」


悟はそう恥ずかしそうに言う。テベリスその言葉が嬉しくて。でも、悲しくて。けれども悲しみを伝えることはできず。


「ありがと・・・」


そう、笑いながら礼を言うのが限界だった。

そして、テベリスは逃げるようにその場から去って行った。その後ろ姿を悟はただ、見つめていた。また会いたいと思いつつ。そして、テベリスの方は顔を真っ赤にしながら。


「また、会おうね・・・悟」


お互い、同じことを考えていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「うーん・・・ファストフードも美味しいけどなぁ・・・」


もしゃもしゃとどこかくどいが、慣れ親しんだ味が口いっぱいに広がる、テリヤキバーガーを食べている。彼女の名前はあかね。


「なんだろう。手作りパンとか食べたいなぁ。でも、このあたりにないし・・・」


このバーガーは学校近くのチェーン店で買ったやつ。慣れている味だが、どこかくどい。もっと美味しいものを食べてたようなきもしなくもない。


今、場所はいつもの公園のいつものベンチ。なぜか、ここに来ないといけない気もした。なんでだろう。


「・・・あの・・・」


すると、前の方から幼い声が聞こえてきた。あかねは少し視線だけをあげそこを見る。そこには、一人の少女が立っていた。


少女。というのにも幼いその子は、黒いゴシックロリータに身を包み、左目に黒い薔薇の眼帯をつけていた。そして、赤いカチューシャで茶色い髪をあげていた。


そして、手にはウサギの人形を持っていた。それは右目が潰れていて、不気味に笑っていた。


「お姉さんは誰ですか?」


その声はまだ幼さが残ってるが、どこかしっかりした声だった。あかねは頭を少しかき。


「あたしはあかね。西園寺あかね・・・お嬢さんは?」


名前を教えた後、優しく名前を聞く。そのゴスロリ幼女は少し悩んだ後


「ゼーンですわ。以後お見知り置きを・・・あかね様」


そしてぺこりと頭を下げた。あかねもつられて頭をさげる。そして、ゼーンと名乗った幼女は、とてとてと、あかねのそばに歩いてきて、隣にストンと座る。


ウサギの人形をぎゅっと抱きしめてるその姿は可愛らしく、あかねは思わず頭を撫でる。


「むぅ、なんですの?いきなり、頭を撫でるなんて・・・」

「いや、悪い。あまりにも可愛いもんだからつい・・・」


ははは、と大声で笑うあかねをゼーンは少し複雑な表情で見つめていた。が、いきなりあかねは笑い声がピタリと止め、公園の入り口を睨みつける。ゼーンもそこを見ると、そこに一人の女性が立っていた。


「何の用だ?テベリス」

「キミは・・・そうか、アナザーか・・・いや、私はアナザーに用があるわけじゃないの・・・」


そう言いながら、テベリスはトコトコとあかねの近くに歩いてきた。あかねは立ち上がり、そして身構える。


「そこの・・・女の子。キミから何か感じるの・・・」


そこの女の子と言われて、指をさされたのはゼーンだった。ゼーンはさっきより強く人形を抱きしめていた。


「キミ、名前は?私は・・・テベリス」


と、テベリスは名前を聞いた。するとゼーンは立ち上がり頭を深く下げてこう名乗った。


「わたくしはゼーンと申します。そうですわね。もっと深く言うならば・・・ゼーン。生存欲。ゼーンですわ・・・以後、お見知りおきを。テベリス様」


ひゅうと、風が一つ吹いた気がした。あかねは思わず、ゼーンの方に近づき、肩を激しく揺らした。


「生存欲って・・・そ、それは本当なのか!?」

「騙すつもりはありませんでしたわ。ただ、わたくしも生まれたばかりで右も左もわからない・・・そんな時にあか・・・いや、アナザー様を見つけましたの。なぜだか貴女と会話しないといけない気がして・・・あ、安心してください。わたくし、今『は』戦うつもりはありませんわ」


揺らされながらも冷静にそう答える。そして最後の方を喋った時、目が赤く光った気がした。なんだか心の奥を見透かされてるような、そんな目だった。だからあかねは彼女が人間ではないと瞬時に悟り、距離をとった。


「と、いうわけ・・・ゼーン・・・私達のお家に帰ろう?」

「それは素晴らしいですわ。わたくし、なぜかエレンホス様にとても会いたいのです」


そして、テベリスとゼーンは公園から出て行った。それを見送ったあかねはどさりと、ベンチの上に座り込む。


「おいおい・・・あいつ敵だったのか・・・」


あかねはそう呟き、右手で顔を隠すように抑える。それは悲しみではない。耳をすませばくつくつと、笑い声が聞こえてきた。場所は、あかねからだった。


「ははは・・・そりゃ、いいや。あいつが敵なら遠慮する必要なんてないもんな・・・いいじゃんいいじゃん・・・そうだろ、私?だって・・・」


そしてあかねはすっと立ち上がる。そして足元に落ちている石を拾い上げて上に投げる。それを何度も繰り返し、突然飽きたというようにその石を握りつぶす。


「みーんなを守ることができるからなぁ・・・」


そして手を開き、赤く染まった石の破片がパラパラと落ちてきた。だが、その手を閉じた後また開くと、なぜか傷口は癒えていたのであった・・・



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



カタカタ・・・と、キーボードを指で弾く音が暗い部屋に響く。パソコンで何かを調べてるのは、中性的な顔立ちの、少年。名前はエレンホス。


「モルモットくんの部屋から、このパソコンなるものを持ってきてて良かったです・・・」


そう呟き、調べたことは終わったというように電源を落とし、肩を伸ばした。マタルが死んでから、まだあまり日は経っていない。そして、最近なぜかテベリスがよく外に出かけている。このままいけば最悪・・・


ここまで考え、エレンホスは今のことを忘れるように顔を横に振る。仲間はもう失いたくない。マタルは身をもってそれを教えてくれた。


「ですが、もし・・・僕が・・・」


そして、その考えのほうが最悪だと気付き、深いため息をつく。


すると、扉が開く音が聞こえて、エレンホスはそこを見る。見覚えがある少女、テベリスと、見たことがないゴシックロリータの幼女がいた。


そうすると、その幼女が飛びかかってきた。エレンホスは避けることができずに、もろに腹に受ける。


「エレンホス様ー!会いたかったですわぁ!」


エレンホスはむせながらこの子は誰だという視線をテベリスに向ける。テベリスは大きなあくびをしながら、エレンホスにこういった。


「ゼーン・・・欲は生存欲だって・・・」

「そうですわぁ!わたくしはゼーンです!エレンホス様、覚えてくださいましたか?」

「あーそうですか生存欲です・・・か・・・!?」


エレンホスはガバッと起き上がり、ゼーンの顔を見る。ゼーンは少し顔を赤らめるが、エレンホスはそんなことなど関係ないというように見続ける。


「生存欲・・・そうか・・・そういうことですか・・・天界め、ふざけた真似を・・・!!」


エレンホスはそう呟く立ち上がる。顔が少し怒りに染まっていた。


「ブルーさん!ブルーさん!いるんでしょう!!」


そう叫ぶと、扉の奥から一人の魔法少女が歩いてきた。ジッと目でエレンホスを見つめる。そして何です?と声を出した。


「貴女にはそろそろ本格的にアナザーさんと戦ってもらいます。こっちにはあれがいることをお忘れなく・・・」


そうブルーに言うエレンホスの顔は、怒りはなく、黒く。それもどす黒い色になっているように見えた。ブルーはそれを見た後、小声でつぶやく。


「この、外道が・・・」

「外道?面白いことを言う・・・それに、もし僕が外道だとしたら」


エレンホスは冷たい目で、ブルーを睨みつける。ブルーはその瞳に射られて思わず、後ずさりをする。そして、エレンホスはその瞳のままブルーに近づく。


「天界の方が、ドがつくほどの外道ですよ・・・」


そのまま扉から外に出て行った。ブルーはすこし、怯えた表情になるが、すぐにエレンホスを追いかて、外に出て行った。


部屋の中に残されたゼーンとテベリス。テベリスは大きなあくびをして、またベッドの中に入ろうとする。ゼーンはおやすみなさいといい、テベリスはおやすみなさ。まで呟きそのまま声が聞こえなくなり、逆に寝息が聞こえてきた。


「なんで、エレンホス様は天界をああも嫌うのでしょうか・・・?何かあったのでしょうが・・・その何かがわかりません。テベリス様に聞けばわかったのでしょうか?」


そう、無意識のうちにつぶやいてたのだろう。テベリスがベットから体を起こしていた。ゼーンは慌てて謝ろうとするが、テベリスは謝るなというように顔をゆっくり振る。


「エレンホスは・・・天界の在り方が嫌いなの・・・だから、あんなに嫌う・・・」

「在り方?まるで、行ったことがあるみたいな言い方ですわね」


ゼーンはそう疑問を問いかける。まるでエレンホス自身が自分の目で確かめたかのように聞こえたからだ。


そう聞かれテベリスはすこし悩んだ後、口を開けて呟いた。


「エレンホスは・・・天界で生まれた、最初のディザイア・・・だから、天界をよく知っててるし、だから。だからこそ・・・天界が大嫌いなの」


そう呟いたテベリスはすこし悲しそうに見えた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「はむっ・・・うん。チョベリグですよ。あかねさん」

「おお、確かに美味い。すげぇな、お菓子作りが趣味って本当だったんだな」


あれから。ゼーンと会ってから何日かたった。あかねは自分で作ったお菓子を二人(?)に振る舞っている。


ひとりは、あかねと契約した天使。天使くん。口は悪いが根は良いという、一昔前のヤンキー漫画の主人公を思わせる設定であった。


彼は天使と名乗るように、人間ではない。では、小動物みたいな感じかというと、そうでもない。丸い球体につぶらな黒く丸い瞳と、顔文字によく使われそうな口に、羽が生えている存在。それが彼だった。


そしてもう一人。すこし青みがかった緑色の髪を揺らし、あかねが作ったクッキーを美味しそうに食べる少女。歳は10〜11ぐらいといったところか。


名前は小峠美冬。彼女は彼の兄、小峠春樹がバイトで忙しすぎるときに、あかねの家に泊まりに来たり、夜、春樹から連絡があれば家に帰る。


そして、美冬は実を言うとかなり魔力があり、敵を引きつけやすくて、常に危険と隣り合わせだったりする。


(それが、有り難いんだけどね・・・)


あかねは考える。守る存在がいるというありがたさを。守れることで、覚悟を背負うことができるということを。だからこそ、彼女は命に変えても守らねばならぬ。


ふと気づくと外は暗くなり、時計の針も10時付近を指していた。美冬も大きなあくびをして、今にも寝そうだった。


「美冬ちゃん。明日は休みだけど・・・泊まっちゃうか?」


あかねはそう美冬に聞く。美冬は瞼をこすりながら、こくんと頷く。そして、フラフラとした足取りで風呂場に向かっていく。その後ろ姿をニコニコした目であかねは見ていた。


「あかね・・・お前、最近変じゃないか?」

「あ?そんないきなり失礼なこと言うなよ。私はただ・・・」


そう言ってあかねは先ほどからの笑顔を崩さずに喋りだした。天使くんはそれが恐ろしかった。


「だってよ、守れるってすごいことなんだぞ?あたしが誰かのために死ねる。なんて素晴らしいんだ!!あたしの生きる道を教えてくれた私には感謝しないとな・・・」


くつくつと笑うその姿が、やはり天使くんは恐ろしく見え、落ち着かせるためにか、クッキーを一つ口に含んだ。なぜか口の中がとても乾いていた。いつの間にか水分がほとんどなくなっていたことに驚く。まさか、緊張でか。


その時だった。


「きゃぁああぁああ!!」

「み、美冬ちゃん!?どうした!ゴキブリでも出たか!?」


美冬の叫び声が聞こえ、あかねたちはお風呂場に直行する。最悪の事態。それを想定するのをあかねは頭を振ることで忘れようとする。


「美冬ちゃ・・・!」


風呂場まで行き、そして勢いよくドアを開ける。そこには美冬の姿はなくあったのは美冬がいつも着てたパーカとミニスカート。そして、窓から風が入り込んでいた。


「多分、あの窓から逃げて行ったんだな。とにかく追いかけないとな・・・変身!」


そうあかねは叫ぶと体が光に包まれ、姿が変わる。その姿は先ほどの私服とは変わり、とてもファンタジックな服装になり、そして何より大きい変化があった。身長が縮んだのだ。まるで、5歳児のように。


「この日だけだ、こんなに小さくなれるのが良いって思ったことはっと!」


そしてアナザーは、窓から飛び出して行った。手には一応パーカーとミニスカートを持ちながら。


天使くんも慌てて追いかける。きっと、先ほどまで感じていた違和感は気のせいだと、自分に言い聞かせる。そうしないと壊れてしまいそうだった。


「さぁて、早速・・・」

「私が守りに行かないとね!この命にかえてもー!!」


天使くんはその能天気な声を聞いて、体を震わせた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「う、うぅん・・・?ここ、は・・・?」

「おはようございます。わたくしはゼーン。あなたの名前は確か・・・美冬様ですね。そうですよね?ブルー様」


肌寒さにより目を覚まし美冬。周りを見渡すと、異質な空間が広がっており、これはディザイアの空間の中だと瞬時に理解する。


そして目の前にはゴスロリ幼女。名前は確かゼーンといった。あと一人は見覚えのある魔法少女。名前はマジックブルー。


「・・・ボクをどうする気ですか?」

「ん?んー・・・どうするのですか?ブルー様。わたくし。エレンホス様に頼まれて連れてきただけで、これからどうするべきかは聞いてないのです」

「これは、アナザー・・・いや、あかねちゃんを呼ぶための罠です」


そう、ブルーは呟き、息を大きく吐く。美冬はそんな彼女をどこかで見たことがあるような気がした。だが、頭につっかえができ、思い出せそうになるが、誰かはわからなかった。


その時、後ろから爆発音が聞こえた。3人はそこに視線を向ける。


「ひとーつ!!

世界の秩序を乱すものいれば!

ふたーつ!!

あたしがそれを正してやる!

みーつ!!

そしてあたしの名前を胸に刻め!!あたしの名前は・・・

・・・マジカル☆アナザーだ!!」


ドーン、と後ろから爆発音が聞こえそうなほどの名乗り。もう何回もやって慣れてきたのだろう。顔はとても誇らしげに見えた。


そして、ブルーは一歩生み出して戦闘体制に入ろうとする。が、それをゼーンが手で制し、ウサギの人形を強く抱きしめる。


「ここは、私にお任せあれ。戦うのは苦手ですけどね」

「ゼーンか。いいよ、手をぬかねぇ・・・どっちにしろ、美冬ちゃんを守るためには、あんたらを倒さないといけないか・・・な!!」


そう言うと、アナザーは一気に駆け出す。腰を低くし拳を握りしめ、迷いなくゼーンを狙う。


「えらく一直線な攻撃ですね。ま、いきますよ・・・お願いいたします!ウサギさん!わたくしを守ってくださいませ!」


すると、ゼーンはウサギの人形を前に突き出す。アナザーはそれを見ても、なおも拳を突き出す。所詮は人形。この攻撃を耐えれるはずなどない。一度きりの防御。それだけだ・・・!!


が、その考えは攻撃が当たった瞬間に覆される。アナザーの攻撃は受け止められた。そう、他でもない『ウサギの人形によって』


すると、その人形はだんだんと巨大になっていく。アナザーは驚き、一度後ろに大きく飛ぶ。顔を上げるとゼーンの半分もなかったウサギが5メートルは超えてるであろう大きさになっていた。そして、そのウサギにゼーンは飛び乗る。


「大きなお人形と、わたくしみたいに可愛らしい幼女の組み合わせ・・・あぁ、エレンホス様も気に入ってくれますでしょうか?」


そう顔を赤らめながらしゃべるゼーン。確かに、大きな人形の上に乗る幼女というと聞こえはいい。が、実際の人形は片目がなく、巨大になりさらに不気味に笑ってるように見えた。


一瞬、その人形の目が光ったかと思うと、腕をいきなり振り下ろしてきた!アナザーはとっさのことに対応できずに腕を前に突き出し受け止める。押し込まれて、地面に足がめり込んでいく。


それを見たゼーンは可愛らしく微笑みながら、細く白い指をクイっとしたに振ると、人形の力が上がったようになり、さらに押し込まれる。


「ぐっ、ぐぉおおぉぉ!」

「どうしましたか?さっきの威勢・・・もう無くなりましたかぁ!?」


人形がニヤリと笑ったような気がした。すると今度は左手を振り上げ、アナザーの小さな横腹を払い飛ばす。


グギョ。と、嫌な音がなり横に吹き飛ばされる。アナザーは叫び声を上げる暇もなく、さらにウサギの人形の攻撃を受ける。今度は腹に思いっきり爪が深々と突き刺さり、その勢いのまま上に打ち上げられる。


そして、ウサギの人形は高くジャンプをした。そして手を合わせてアナザーめがけて振り下ろす!


ドゴォン!!


大きな地響きがなり、アナザーが叩き潰させる。そして土けむりが舞いゼーンは勝利を確信し笑う。が、その笑みは一瞬で疑問の顔に変わり、その次の瞬間に引きつった顔になる。


「これで・・・やっと、チャンスが来たな!」


アナザーはボロボロになりながらも、ゼーンの目前まで飛び上がる。ゼーンは突然のことで何もできず、アナザーの攻撃をもろに受け、大きく吹き飛ばされる。すると人形が小さくなり、引き寄せられるようにゼーンの近くまで行った。


「うっ・・・ぐっ・・・」


ゼーンは震えながら立ち上がる。嗚咽を漏らしながらも、人形を抱き寄せる。が、次の瞬間、何かが切れたように大声で泣き始めた。


「うぇぇぇぇん!!なんで!なんでわたくしがこんな痛い目にあうのです!!ひどいですぅ!!」


そして、ゼーンは外に走り出して行った。それを頬をかきながら見送るアナザー。少し悪いことしたかもしれないと考える。


その時背筋がぞくりとした。殺気を感じ前を振り向くと、ブルーが殺意のこもった目でアナザーに杖を振り下ろしていた。


「て、てめぇ・・・同じ魔法少女同士仲良くしようと考えないのか!?」

「その質問には『不可能』と答えます。なぜなら私はあなたを殺さないと、いけないのですから・・・!!」


すると、杖の先端から多数のしゃぼんが出てきた。アナザーは当たってはいけないと知ってるため、後ろに飛んだ。


いや、飛んでなかった。アナザーは逆に相手の懐に潜り込み、腹に一発パンチを打ち込んだ!


それにより打ち上げられるブルー。だが、すぐに体勢を立て直し、杖をふるいしゃぼんを周りにばらまいた。触れたら爆発するしゃぼん。アナザーはしばらく様子見に徹した。


その時、ブルーの顔をなんとなく見たら口がもごもごと動いていた。アナザーは耳を澄ましてなんと言ってるか聞こうとする。


「・・・仕方ない、これは仕方ないことなんです・・・1人を救うためには1人に死んでもらうしか・・・」


その言葉は聞き間違えではない。もしかしたら、彼女は悪い奴ではないのかもしれないという淡い期待がアナザーを包む。それならば、その期待にかけてみよう。守る戦いは好きだが、やはり戦いたくはない。


アナザーはそして、目を閉じる。すると、アナザーは変身が解けいつもの姿になった。それを見てブルーはおもわずすっとんきょうな声を上げる。


(美冬ちゃんの近くには天使くんがいる。最悪な事態にはならんだろ)


あかねは美冬の方にちらりと視線を向けると、その近くに天使くんがいるのが見えた。それを見て満足そうに頷き、あかねはゆっくりと胡座で座る。


「さて、お前はまさか、丸腰のあたしを殺すほどの悪じゃねぇよな?悪じゃないなら少しお話ししようや」


それを見たブルーは少し悩んだ後、ゆっくりと下に降りて行き、足を地面につけた。


「確かに私はあなたが言うような悪ではないです。少しお話をしましょう」


そして、礼儀正しくちょこんと正座で座る。それを見たあかねは満足うにな顔で微笑みそして話を切り出す。


「あたしはあんたが悪人には見えないんだよな・・・なんか、理由でもあるんだろ?教えてくれないか?」


そうあかねはブルーに言った。なんとなく彼女は悪人に見えなかったのだ。恐らく、何か理由があるのだろう。というか、そうであって欲しいと考えていた。それに、何故かブルーは合う前に何処かで見たことがあるような気がした。


「その質問、僕がお答えしましょうか?」


その時聞き覚えがある、少年の声が聞こえた。あかねは後ろを振り返る。そこにいたのは、手品師の風貌の少年。ディザイアの事実上のトップ。


「エレンホス・・・!」

「おや、アナザーさんですね?そんなに怖い顔しないでください・・・」


くすくすと笑いながら、ブルーの方に歩いていく。その姿をあかねも、美冬もみんなが見ていた。ブルーはエレンホスが近づくたびに、目を細め睨みつけた。


「さて、まずはどこからお話ししましょう・・・そうですね、ブルーさんは元々僕たちを倒す魔法少女だったんです。ですが、ブルーさんたちは僕たちに手も足もでずに負けましたね・・・と、言ってもマタルがほとんどやってくれくれたんですけどね・・・」


マタル。その単語をつぶやくとエレンホスは途端に暗い顔になる。そして、エレンホスはブルーの後ろに立ち、肩に手を置いた。その時ちらりと近くにいる美冬の方を見てニコリと笑った。その時の笑顔は、完璧な笑顔だったが、完璧すぎて恐ろしかった。


「ま、ここまで言えばわかりますよね?彼女は僕らに負けて命乞いをし、そして忠誠を・・・」

「まて」


あかねはエレンホスの言葉を止めた。エレンホスは少し訝しげな顔であかねを見つめる。彼がつけてる片眼鏡がキラリと光った気がした。


「ブルーさん『たち』ってことは・・・少なくとも後1人、仲間がいるんだろ?」

「くくっ、よーくわかりましたね。そうです、ブルーさんはコンビを組んだ魔法少女です。ブルーさんの能力はサポート向きでしたからね・・・」


愉快そうに笑うエレンホスとは対照的に、ブルーは不愉快な顔で俯いていた。そしてあかねは考える。2人いたのに、今は1人。つまりは


「つまり、あんたはもう1人の魔法少女を人質にとって、ブルーを嫌々戦わせてるってことか?」


「まぁ、そういうことになりますね・・・確か名前は・・・」

「サツキ」


すると、今まで黙っていたブルーが口を開いた。サツキという名前。おそらくもう1人の魔法少女の名前だろう。心なしかブルーの体は震えてるように見えた。


「サツキ。それが人質の名前。彼女を助けるために、私はあなたを殺さないといけなーーーー」


ブルーは武器を構えて立ち上がろうとした。その時、エレンホスはブルーに向けて手をかざす。その時のエレンホスの顔はとても歪んだ笑顔だった。あかねは気づかなかったが、それを近くで見た美冬は背中に氷水を入れられたような感覚に陥った。すると、周りが明るい光に包まれた。


ドゴォンーーーーーーーー!!


瞬間、周りに爆発音が響いた。その爆風で吹き飛ばされた美冬。壁にぶつかりそうになるが、アナザーが受け止めた。


「な、なにがおこっ・・・ブルーは!?ブルーは無事なのか!?」


爆発が起こったのは、ブルーがいたところだった。そのためブルーに何かあったことは明確。その爆風の中からエレンホスが口を押さえながらトコトコと歩いてくる。とても楽しそうに歩く姿は、この場所の雰囲気に合わなかった。


「そういえば、アナザーさん。ブルーさんの正体を知りたくないですか?知りたいですよねぇ!だから特別に・・・教えてあげますよ!!」

「な、なにを・・・!?」


その時、煙がだんだんとはれていく。アナザーは見てはいけない気がしたが、なぜか目を凝らして見てしまう。怖いもの見たさとでも言うのだろうか。


そして煙が完全にはれて、そこにいたのは、蒼い魔法少女ではなく1人の少女が倒れていた。その姿はどこかで見たことがあり、そして、震える声で名前を叫ぶ。


「ち、ちちち・・・千鶴・・・!?」


その少女は、茶色い髪で見覚えのあるロングスカートを履いている。どこから見ても、彼女がよく知る人物池内千鶴そのものだった。


「どうです?今まで戦ってきた敵の魔法少女・・・その正体は、あなたの親友・・・うーん、ベタですが、ベタはベタなりにいいですよね?」

「・・・」


アナザーはいまの状況が理解できなかった。それを見たエレンホスはまたニコリと笑い、千鶴の首にぶら下がっているペンダントを引きちぎり、あかねの方に投げ飛ばす。


カランと音がなりアナザーの足元にそのペンダントがおちる。それを震えながら、拾い中身を開けてみる。


そこに入ってたのは子供の頃の千鶴と、あかねによく似た少女の写真。あの時見た写真と同じだった。


「その写真に写ってるのは、千鶴さんと、その相棒さんのサツキさんです」

「・・・ごめん、なさい・・・」


千鶴はそうポツリと謝る。アナザーはそれを見て頭を掻く、そして大きく息を吐いた後千鶴に指をピシッと突き出す。


「なぁ、千鶴。あたしはそんなに頼りない人間か?相棒が人質になってるなら、一言言ってくれればあたしは手を差し伸べるんだけどな・・・と、いうわけだ千鶴。あたしはどうすればいい?言ってみてくれないか?」


そう優しくアナザーは千鶴に言う。千鶴はその言葉を聞き、目に涙をためて口を開ける。


「助けて・・・助けて!私と一緒にサツキちゃんを助けて!!」

「よっしゃ、じゃ・・・まずは、お前を倒さないとな!エレンホス!!」


アナザーはそう叫び、戦闘態勢に入る。それを見たエレンホスは少し考えた後口を開けた。


「はて?存在しない人間を助ける、ですか?なにを言っておるのです?」


その言葉を聞いたとき、しばらくエレンホス以外は口をぽかんと開けていた。なにを言ったのか理解しようとする。もう存在しない?


「いや、そんなはずないよ・・・!?サツキちゃんは生きて・・・」

「なぜそう思うのです?千鶴さん」


エレンホスはそう言い千鶴の頭をぽんぽんと叩く。千鶴は青ざめた顔でエレンホスを見上げる。エレンホスはいつもと変わらない笑顔を向けていた。無邪気な。無邪気すぎるゆえの恐怖。それを今千鶴は感じていた。


「あなたの相棒だった、サツキさんは僕らが殺しましたよ?えーと・・・たしかあなたが仲間になった少し後。ん?どうしてって顔してますね。だって、サツキさんは引換券。引き換えた後はすぐに破り捨てるでしょ?そういうもの・・・」

「え、じゃ、じゃ・・・つまり・・・」

「や、やばい!それ以上喋るな千鶴!!」


アナザーが何かを感じ、千鶴が喋るのをやめるように叫ぶ。が、千鶴は青ざめた顔になって、アナザーの声が聞こえてないようだ。そして、エレンホスがニコリ。いや、ニヤリと笑った。


「じゃあ、私はなんのために戦ってるの・・・?」


その声を待ってましたと言わんばかりのエレンホスは千鶴の肩に手を置いて、座り込んでいる千鶴に視線を合わせる。


「千鶴さん・・・貴女は僕に自主的に操られていたんですよ・・・つまり、まぁ、貴女がやってきたことはすべて・・・」

「や、やめろぉおおぉぉおお!!」


「無意味な行動。だったんですよ・・・」


千鶴はその言葉を聞いて、深くうなだれる。アナザーはそんな千鶴に近寄り抱き寄せる。エレンホスは少し遠くにおり、指をくるくる回していた。


「ですが・・・僕にとっては無意味ではない行動でしたよ?つまり、貴女は僕に必要な人間ということです」

「ひ・・・つよう・・・?」

「千鶴!耳を貸すな!」


千鶴は、ドンと、アナザーを突き飛ばしフラフラと立ち上がる。それをみたエレンホスはまたニヤリと笑う。千鶴の瞳はもう生気をうしなっておりどこを見てるかわからなかった。


「ひつよう・・・ひつようなんだよね・・・」


そうボソリとつぶやいた千鶴の体が光に包まれる。その光が消えていくと、蒼い魔法少女がそこに立っていた。


「はい!必要なんです!ですから・・・」


そういい、エレンホスはアナザーを指差した。アナザーは怒りに震えて、エレンホスを睨みつける。それを見たエレンホスは無邪気な笑顔ではなくなり、悪魔のような微笑みになった。


「僕のために働いてくれせませんか?」

「うん・・・ひつようだもんね・・・しかたないよね・・・」

「エレンホスウゥゥウウゥウ!!ゆるさねぇ!!」


そうアナザーの叫び声が響くのと、蒼い魔法少女がだしていたしゃぼんが破裂し、アナザーがいたあたりが爆発したのは同時だった。


エレンホスはそんな中でも楽しそうに笑っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




《次回予告!!》

「ひつようとされたの」

「戦わないといけないのかよ!」

「さぁて、どうなるのでしょうか?」

「私は、あかねちゃんにひどいことをした。だから・・・」

第11話『一羽の鶴が飛び立つ時』

お楽しみに!!

やべぇ。また前編後編構成になっちまった。こんな感じのは苦手なんだよな。

おっと愚痴はこれまでにして・・・どうでした、まさかの魔法少女の正体は千鶴さん・・・え?以外でもない?うそぉ・・・

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