糸
はじめましての方もそうではない方も……佐倉ハルキですm(__)m
今回は久々に短編です(笑)
日曜の奇蹟のスピンオフ作品になりますが、知らないかたでも読める作品になってるとおもいます
長々と語るより、読んでみてくださいm(__)m
それでは、お楽しみくださいm(__)m
少女の母は泣いていた。少女は無邪気にかけよった。少女は母に話しかける。
少女の母は抱き締めた。少女の母は泣いていた。少女は母に尋ねた「どうして泣いてるの?」
少女の母は語りかける「ごめんね……ごめんね。」
少女はまた尋ねる「どうして謝るの?」
少女の母は答えた「辛いことを背負わせてごめんね。」
少女は訳がわからず目を丸くしている。少女がこの言葉の意味を知るのは後のことである。
少女の母は最後に言った「これだけは覚えておいて?」
何も知らない少女は母の言葉を待っていた。それが…最期になるとも知らず。
「『言葉は力』なのよ。」
少女は……無邪気に笑っていた…。
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私は疲れていた、この運命から逃れたかった、だから…今ここにいる
「何やってるんだ交野ー!」
声がしたので後ろを振り返ってみると、担任の岡先生が教室の入口に立っていた。私は今1年3組…自分のクラスにいる。別にこれはおかしくもなんともないし、ただいるだけなら担任もあんなに叫んだりしないだろう。
けれど叫ばれているということは何か問題があるのだろう。いや、分かってるんだけどね。
「早く教室の中に戻りなさい!」
岡先生がまた叫ぶ。私は教室にいるけどいない。正確には、教室の窓から飛び降りようと……自殺しようとしているのだ。
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「何を考えているんだ!早く戻りなさい!」
岡先生がさっきからずっと叫んでいる。どうでもいいけど、『岡先生』って呼び方なんか堅苦しいなぁ。何か呼び方考えようかなとか考えかけたけどやめた。どうせ死ぬんだし。
「答えなさい交野!」
「自殺しようとしています。」
「そんなことは見ればわかる!」
そりゃそうだ。3階だし…まさか遊んでるとは言わないだろう。じゃ何を答えろと?
「何が理由なんだ?!イジメか?!家庭内のトラブルか?!」
あ、そういうことね。理由………か…。
「クラスの友達は皆優しくて大好きですし、家も概ね平和です。」
自分が担任してるクラスに原因がなくてよかったね岡っち。なんかこれだとサッカー好きな芸人みたいだなぁ。やめておこう。と、それはさておき…
「もう、疲れたんです。」
「疲れた?……何に?」
「……運命に」
ただ、運命を見ることに。
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たしかお母さんが死んじゃったのが3歳か4歳の頃だったから……もう10年近くになるのかな…私は運命を見続けた。
人の人生って線みたいなのがいっぱいあって、それがくっついたり離れたり、交差したり…色んな風に動いているの。初めの頃はそれを見るのがとっても大好きだった。常に動き、変化し続ける線たちはまるで生き物のように私の目に映っていたから。
だから、忘れていた。お母さんが死ぬ10日くらい前に私に言った謝罪の言葉を。私がその言葉の重さを思い知らされたのは小学校5年生のときだった。
当時一番仲良かった友達がいて、私たちはいつも一緒に遊んでいた。ある日その子が『明日の土曜日に近くの森へ探検に行こう!』と言い出した。次の日予定があった私はその誘いを断ったのだが、他の子達は乗り気で結局3人~5人で行くことになった。別れ際、皆は私に向かって『月曜に報告するからー!』と言ってくれた。帰宅したあと、いつものように線君…人生のグラフを見てみるとあの子のグラフが途切れていることに気付いた。急に不安になって電話で止めたけど逆効果……喧嘩になって電話を切られてしまった。私は何もできずに土日を過ごし……彼女たちから探検についての報告を聞くことは叶わなかった。彼女の線は二度と動かなかった。
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「運命って…お前はまだ中学生だろ?これから人生は色々あってだな……その中には楽しいことや…………」
担任は私をどうにか説得しようとしていた。BGMにもならないことに少しガッカリ。
あの子……もう名前も忘れてしまったけど、確かに親友だった。救いたかった、でも救えなかった。結局、わかったのは私は線が動くのをただ見つめ続けることしか出来ないということだけ。自分の運命を見ることも、ましてや運命を変えることなんて絶対に出来ない。
「…………だから先生と一緒に頑張ろう?な?」
OBGM(岡の背景音……何かのホラーみたい)も止まったみたいだし…もう終わりにしよう。それにしても、この先生はなんだか親近感あって好きだったなぁ。
「もういいです岡先生。」
「よくないよ……先生の話を聞くんだ、つむぐ。」
「……………………。」
あぁそっか。そりゃ親近感もわくはずだ……私の意思は変わらないけど。
「ありがとう……岡ちゃん、ごめんね」救えなくて。
死ぬのは怖くない。私の線が動きを止める、ただそれだけ。
「……何やってるんだ君は。まだ…いやしかし…。」
どうしたのだろう……入口の方が騒がしいな…。
「あ、ちょっと!」
岡ちゃんの制止を振り切って教室に入ってきた少年を見て私は目を見張った。なぜならその少年は、おそらくこの世界にいるはずのない人物だったのだから…。
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この世界は選択で出来ていて、選択の数だけ世界が存在する。それはパラレルワールドとは違う異世界……。確かお祖母ちゃんがそんなことを教えてくれた気がする。本で読んだだけかもしれないけど。
その異世界のうちのいくつかは、条件を満たせば交わることもあるらしいし、実際に何度か経験済みである。なんとなく、感覚でわかるのだ。前に1度それをお父さんに言ったことがある。そしたら『お前は母さんに似てるからなぁ。』と言われた。お父さんは元々この家系と全く関係ない、『外の人』らしい。まぁ、つまり何が言いたいかというと、私には異世界の介入を察知する力があるっていうことで、目の前の少年はその異世界感を強烈に放っているのだ。条件が合っているなら問題はないはずなんだけど……
「…………っ?!」
目眩で崩れ落ちる……いや落ちる…?!
「…………?」
あれ……生きてる…?どうして?
「えっと……大丈夫?」
声をかけられて我にかえる。見ると、少年が私の体を支えていた。
「大丈夫……ですか?」
「…………して」
「え?」
「どうして……?どうして?!」
どうして助けたの?どうして放っておいてくれないの?!どうして……
「どうして死なせてくれないのよ!」
私は初対面の少年相手に叫んでいた。少年はいとも簡単に、さも当然のように答えてみせた。
「死にたくなさそうだったから。」
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少女は絶望の淵にいた。友の死に直面し、無力な自分に直面し、そして母の言葉の意味を知る。
「あぁ……。」少女はつぶやく。
「もう、こんなの……嫌だ。」
そう言って少女は死を選ぶべく進む。これで楽になれる……そう、思っていたのに。
「……たくない。」え?少女が耳を傾ける。
「死にたくない、死にたくない、死にたくない!」
それは、どこからか聞こえてくる声。少女は戸惑い、畏れ……振り払うかのように叫ぶ
「……………………!!」
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「そんなことない!!」
「そんなことより、1つ聞きたいことが…あ、俺今日からこの学校に来ました。よろしくお願いします。」
「え?あ、どうも……じゃなくて!」
何で向こうのペースなんだろう……無視したいのにあいつのどこか濁ったように見える黒い目に吸い込まれそうになる自分がいる。
「…………質問って、何?」
顔や背は…普通ね。けれど、どこか他の同級生たちとは異なる雰囲気を醸し出している。おー、私難しい言葉知ってるーと少し喜んでしまう。
「なんで自殺するの?」
「…………。」
私を現実に連れ戻しやがった。答える義務は無いと思うし、どう答えていいかもわからない。向こうはいつまででも待つつもりなのか、私の視界にはいるように椅子に座る。
「…………逃げたい……から。」
あーもうやだ。何で初対面の男子にこんなこと言ってるんだろ…。
「ふーん…………で?」
で?…………で?って、えっ?何も答えられない私に彼が続けて放った言葉は、色んな意味で衝撃だった。
「逃げた先に何かあるの?」
逃げた……先?ていうのは、つまり死んだ後ってことで……。そんなこと考えたこともなかった……いや、考えたくなかった。
「それ、は……」
逃げても、どうにもならないの?何も考えられない考えたくない!逃げた後も、死んだ後も考えないといけのないの?!押さえていた感情が目から形となって溢れだす。
「えっちょっ……大丈夫?」
彼が私を心配して駆け寄ってくる。私はもう何が何だかわからなかった。
「どうして!」
私の声を聞き、彼が立ち止まる。
「なんで!生きてても死んでも…私にどうこうする力なんてないのに!!逃げることも許されないの?!」
自分でも何を言っているのか理解できていなかった。それでも彼は静かに聞いてくれていた。
その後、何を言ったのか覚えていない。『運命』とか『傍観』とか叫んだ気もする。気付くと私は肩で息をしていた。体力のなさすぎだろうよ…私。
「あの、さ…。」
彼が声をかけてくる。声を返す気力もなかったので目だけで返事をしたつもりだ。彼は少し距離をとったところで止まる。しばしの沈黙。その沈黙を破ったのも彼だった。
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少女の決意は揺らいでいた。しかし、少女に後はなかった。謎の声はまだ続いていた。しかし、もう彼女の目に恐怖はない。
少女は静かに端末を取り出す。それはポケベルとも携帯とも言い難かった。少女は無言で操作する。その横顔はとても美しかった。
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「逃げれば?」
開口一番、彼がそう言った。
え?待って、逃げたところでって話をさっき……え?何?私また泣くの?泣かないといけないの?
「逃げたいなら逃げればいい。逃げて、向き合えるお思える力をつければいいんだ。前に進むだけが正義じゃないんだから。ただし、逃げ方を間違えちゃ駄目だ。向き合う準備を出来なきゃ駄目だ。生きて、前を向く力をつけるんだ。」
彼が一気に捲し立てた。私の頭は混乱していた。だけど同時に、心の何かが少しだけ形を変えたように感じた。
そうか、死を選ぶだけが逃げじゃないのか……なら…
「逃げ方を探すために生きる、か…。」
我ながらバカらしい、けれど面白そうだ。ならまずは……この事態の収拾を、かな?
「岡ちゃん!」
いきなり名前を呼ばれた岡ちゃんがビクリと反応する。面白いなぁ。
「な、なんだ……?
「私、自殺やめます。ご迷惑おかけしました。」
早口でそれだけ言って教室の出口に向かう。いや、出入り口同じだけど……気分的にさ。
「あ…………。」
出口まで来たとこらで彼の存在を思いだした。言っておきたいことがあるんだった。
「ありがとう……また会おうね。」
もう会えないだろうけど。いや、何となく会いそうな気もする。
「…………あぁ。」
彼の返事を聞くことなく教室から出る。後ろから岡ちゃんが呼び止めた声が聞こえたが無視だ。
どうして彼がこの世界に飛ばされたのか……今ならわかる気がする。端末を取り出して見てみると…やっぱり。世界が1つ消えていた。
「……ありがとう、私。」
さぁ、逃げ方を探すために生きようか。今の私ならなんだってできそうだ。だって、「『言葉は力』なんだから。」自然私は走り出していた。
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やがて操作を終えたのか、少女は端末をジーパンのポケットに片付ける。どこか晴れ晴れと、しかし儚げな少女がゆっくり、吐き出すように言った。
「言葉は力……どうか、あなたが生き延びることを恐れませんように。」
そして、1つの世界が消えた。
お読みいただきありがとうございます
いかがだったでしょうか?もし、これを読んで他のやつも、読んでみたろうかと思っていただけたなら嬉しく思います
色んなところに色んなキャラが見え隠れなので、もう一度読んで探してみてください(笑)
それでは、またどこかの作品でお会いできることを心の底より楽しみにしておりますm(__)m
See you again/~




