七話
最初の惑星(いろんな意味で)
私は最近思っていることがある。
私の体は今まであらゆる存在を吸収分解してきた。
こういってはなんだがわけのわからない体をしていると私自身で思っている。
しかし今現在もイソギンチャクを捕食しているがこの生命体のように生命体とは郡をなして発生するものなのだ。
単細胞生物ですら自身を分割しながら増殖していくのだ。
ましてやこのイソギンチャクのように有形生命体をなした存在においては雌雄が存在する。
つまり何が言いたいかというと私はそのどちらでもないということだ。
雌雄は存在しない、しかし単細胞生物かと言われればそれはありえない。
単細胞生物にこうした思考プロセスを踏むことはできない。
単細胞生物とは名のとおり単細胞でできている。
単一の機能を持ち、それ以外は試行することなどできない。
できることは持ちうる単一の機能の実行と必要であれば細胞分裂を行うことだけだ。
では私とは何なのだ。
つまりどういうわけか私は思考できる生命体でありながら、交尾を行う相手がいないのだ。
イソギンチャクですら交尾を行っているというのに。
ふむふむ。しかしだ、どうにも私にはそこらへんの危機感を特にもっていない。
孤独であるという感覚は環境によって感知することができるものだ。
会社のオフィスで皆が仕事をしているときに自分の仕事をしていて人は孤独を感じるだろうか。いや感じないだろう。
しかしながら遊園地で他の家族がはしゃいでいる所に一人でいれば孤独を感じるのだ。
そして私は今孤独を感じていない。
つまり私は郡体であるということだ。
いやはや間違った解釈であり結論なのだろう。何がつまりなのか。
しかしながら自分で出したこの結論が間違いでないと本能でわかった。
本能で解かってばかりだ。いい加減体の機能くらい正しく開示すべきだと思うぞ私の体よ。
単一であり郡なのだ。
なるほどなるほど、私がイソギンチャクを捕食する度に自身の郡が増える感覚にあったのはそういうわけなのだ。
食べることによって私と同化し、私が増えるのだ。
しかしながら体に語りかけようと<私>が答えることはない。
体の中に確かに感じる私は私とは違うのに私とは応答ができない。
ふむふむなるほど。
不便だ。
同じ私ならば応答すべきであろう。
私が思考したのはそんなわけのわからない感情だった。
そして私の体はそれを実現した。
「・・・・・??????」
体に異変を感じたのはその思考に行き着いたときだ。
体から何かが出ようとしている。
正確にいうならば私が出ようとしている。球体の背面から。
これはつまりなんだ。
私は細胞分裂によって増える単細胞生物だったのか?
いやはや驚愕だ。生物学が根底から覆るだろう発見だ。
驚愕だと言いつつも背面から出てくるそれを私は特に違和感なく生み出した。
それは球体であった。
マルイ黒い球体であった。
私だ。そう自然と感知することができた。
(初めまして私)
ああ初めまして私。
他者とのコミュニケーションが自身というおそらく宇宙で初めての事例が発生した。
試したいことはまだ。
他者(笑)とのコミュニケーションに成功した彼女。
褒め称えるべきなのだろう素晴らしい進歩だ。