四話
食欲の赴くままに
食べることを至上として行動することを決定した私が起こした行動はそう大それたものではない。
単純に宇宙空間を漂うチリや岩を吸収していくだけの作業だ。
これがなかなかにうまい。
宇宙とはかくも広い、私の感知感覚外の範囲より遥かに広いこの宇宙は私にとってご馳走が宙を漂って存在しているようなものだ。
なくならないご馳走と寿命のわからない私。
一生を宇宙空間を漂いながら食べ続けて過ごすこともいいだろう。
ただの単細胞生物であればそれでよいのだろう。
自我を持たず、思考を停止し、宙に漂うチリと同様な宇宙を構成する一物質として生を全うする。それは間違いなくひとつの真実として正しい生のあり方だろう。
ただ私は宇宙を知りたいと思ってしまった。うまいという欲求のままにこれ以上の宇宙を知りたいと思ってしまったのだ。
そうして私という生命体は使命を持った。
使命というより欲求の延長線上にある私のエゴだ。
うまいから食べる、これ以上のうまさを知らない、ならこれ以上のうまさを知りたい。
単純で凡愚で明快な私の行動規範だ。
それより幾ばくかの時間の後
「*****・・・・****」
私はただ食事を続けていた。
ああ私の移動方法は球体の後ろから幾本かの触手を振らせて障害物やらを蹴って進んでいる。また恒星風などに乗って気ままに流れても行く。宇宙空間を漂うタコのようなものだ。
今しがた吸収した岩はどうやら今まで吸収したものより珪素が多く含まれているようだ。
そしてこの岩ができてそう長い時間は経っていないということもわかる。粘性が高く、少し熱いくらいだ。
この事から理解できる事は多い。近くに地表面で活動を続ける活火山を持つ惑星が存在すること。そしてその活火山が宇宙空間まで物質を巻き上げていること。あとはまぁ色々あるが大きくわかることはこの二点だろう。
今まで暖かいものを食べていなかった私にとって今の岩は言うなれば冬のこたつでおでんを食べるようなものだ。
ふよふよと体がその岩の流れてきた方向へ泳いでいくのは仕方のないことだ。
そう仕方のないことなのだ。
そうして私はその惑星と出会った。火山と溶岩が地表を埋め尽くした灼熱の惑星に。
もう暖かくなったけど冬ってのはおでんが食べたくなる。
これを書いてたときは寒い部屋の中でおでんをつつきながら書いてたから。
きっとこれからもグルメマン。
でもそのうちファンタジー。
ファン・・・タジー?
遠い未来のおはなし。