表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

十八話

私に発見される前の彼らのおはなし

---ウルキオスク帝国第5師団直属 第5連隊所属 第3中隊 ギュンター・ヘッケベルト中隊長---



面倒な事になった。


俺たちがこの未到達地域への偵察を命じられたのはつい先日の事だった。


家族との幾ばくかの緩やかな休暇の時間が終わり、本星の司令室にて次の任務先を伝えられた。



「未到達地域での探索任務・・・ですか」



そう告げたのは俺の上司であるヘルマー司令だ。


俺よりも身長はかなり小さい。ジェス星での特徴だ。手足は2本ずつだがずんぐりむっくりの体と幼い容姿、ファンタジーのドワーフのようなものだ。


俺の容姿はというと手足は2本ずつ、トカゲの体といったところだ。

キューレイス星という俺の故郷の特徴である。



「そうだ。本星では100年ほど前から他種族の併合を行ってきた、そして保護下に入った種族は50を超える。それのしわ寄せだな。簡単に言えば住む場所がないのだよ。我々が住むにはこの宇宙は狭すぎる。欲というのは傲慢でエゴの塊だな。パトリオティズムを勘違いしているといっても言い。」


「そのための未到達地域ですか。」


「分かっているなら復唱はいらない。」


こいつ。


まぁいい。


「しかし、本当に中隊一つを派遣したところで新惑星や星団を発見できると上は考えているのでしょうか。」


「考えてなどいないよ。本星の連中は自身が保護されているならその重い腰を上げることなんかしない。しかし、やつらはその重い腰の座り場所を守るためには手を上げることはあるのだよ。」


「なるほど下からせっつかれましたか。」


「体裁というのは大事だ。私たちは鋭意努力中ですというな。」


報告書にはどうせ第5師団が全力で調査を続行中などと書かれるのだろう。


率直に言えば左遷に近い。


未到達地域での偵察任務。居住可能な惑星、惑星域、燃料資源の探査及び、外宇宙での異文化種族の探査報告。


お笑いもいいところだ。


ふぅ、と俺は小さくため息をつきながら司令に言った。


「ギュンター・ヘッケベルト中隊長、命令を畏まりました。」


「よろしい、期間は半年だ。そう長いあいだではない。貴官の後は他中隊が引き継ぐ。長い旅行だと思って行ってきたまえ。詳しいことは後ほど情報部より指令書が渡されるのでよく目を通しておくように。」


何もない宇宙を漂うことがはたして旅行かと言われれば甚だ疑問だが。





なんでこんなことになったのか。



俺達第5師団は言うなれば雑用を行う遊撃師団だ。

第1軍所属のエリートさん達は戦場でドンパチするのが仕事だが、こちらは主に偵察や後方での戦闘教習、稀に戦場で随伴援護師団としてちまちまと戦力のカサ増しをするくらいのものだ。


とは言ってもここ100年単位で戦争なんて起こっちゃいない。


本星は大きくなりすぎた。ウルキオスク帝国に楯突く国家はまずいない。


そういう俺の星も大昔に帝国の保護下に入っている。


なに支配下といっても辛辣な扱いは受けない。


物語の帝国と言うのはどこもかしこも悪の枢軸のように書かれるが大国となるには恐怖では支配しきれないものだ。


武力には武力で対抗される。これは自明の理だ。


ウルキオスクはそれをよく知っていた。宰相がいい腕なのだろう。


確かに支配を行うが、市民というのは生活が良くなれば頭が変わろうが文句などはないのだ。


その上で国がなお反抗を繰り返せば市民によって革命が起きる。


ウルキオスクの情報部の手の者はすべての国に入り込んでいると言われている。


確かに本星での一等市民にはなれないが二等市民であっても普通の会社でのデメリットなど存在しないし、軍内での昇進も一等市民と同格だ。現に今の少将は他星の種族だ。


確かにレイシズムな優秀民族支配論を持つ者は存在する、が現代においてはナンセンスだ。



それはともかく。


そんな指令をもらい、出港し2ヶ月現在に至るというわけだ。


今は亜空間を抜けたようだ。


各ポイントで探査波による調査を行い跳躍航法を繰り返しここまでやってきた。




昼食の後、コーヒーを艦長席に持ち込み部下へ指示を出す。


「定時報告。」



---ピピ---



「管制制御良好、艦に異常なし。全天レーダー、及び電探不審な傍受なし。」


「ご苦労。」



本日も快晴なり。


このやり取りも何度目になるか。いつもと変わらない定時報告を受けると眼前に表示されているディスプレイを眺める。航路を可視化しているこのディスプレイは宇宙において上下の区別がつかない俺たちに地面を認識させてくれる。



「全く。まだ3分の1しか過ぎていないのか。嫌になってくる。」


「艦長お疲れのようですね。」


声を掛けてきたのは副長のヨハン・ウィリス中尉だ。同じキューレイス星出身の彼は俺と同じようなトカゲの容姿だ。


「当然だウィリス。いつまでたっても黒い海を漂っているだけだしな。たまにレーダーに引っかかるのは惑星干渉帯のデブリとくる。こんな暇な業務はないぜ。」


ははは、小さくウィリスは笑っている。


「しかし艦長もうすぐ例の干渉地帯じゃないですか。何か発見できるかもしれませんよ。」



ウィリスのいう干渉地帯というのは俺たちが観測を行っていた巨大なブラックホールが先日突然消滅した干渉域の事だ。



ブラックホールの消滅自体はそれほど珍しいものでもない。俺たちはこれまで居住域を増やすためにブラックホールを反応物質弾頭を搭載したミサイルによっていくつも消してきている。



しかし件のブラックホールは巨大でありすぎたために観測だけが行われていたブラックホールだ。寿命も観測結果ではまだ30億年はあるので暫く手は出せないと言われていた。

そのブラックホールが突然消滅したのだ。

観測班は間違いと何度も計測を行ったが感知波は同じ結果を返した。

直ちに要塞の建築をと喜んだ上層部と違い、情報部はあまりの事態に探査を要求。


事態が事態であるので上層部もこれを承認。

そしてこれは好機だと以前より上がっていた新居住域の探査を行おうというわけだ。



「ブラックホールが突然消えるなんてどういうわけだよ、観測班はうちと同じような兵器が使われた可能性はないと言っているが。」


「んー・・・私にも分かりかねますが少しワクワクしませんか?今はなんでもわかっちゃう時代ですからね。未知なる存在がまだ存在しているなら解き明かしてみたいと思いますね。」


「お前はそう言う奴だったな。」


苦笑しながら俺は副官へ返答する。


それから二日ほどでこの宙域での探査を終えた。



「そろそろか。さてと、総員ワープ準備。」


---ピピ---


「了解。ワープ準備に入ります。」


けたたましい警報音と共にワープに動力を回すために全艦内が暗くなる。


「亜空間フィールド展開、展開完了。近辺大質量体なし、斥力安定。

エンジン内エネルギー上昇率正常。70%、80%、90%、100%。エンジン稼働安定。

飛べます。」



「ジャンプ。」



「ジャンプします。」



そうして俺たちの白亜の船は干渉域へと旅立った。



人間なんて出てこなかった。


猿からここまで進化できた人間はすごいと思う(小並感)


名前のつけ方なんて適当です。


中隊長だってドイツ型の名付けだしね。


ドイツ語の名前の響きが世界一かっこいいと思ってる厨二集まれー^^



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ