十七話
惑星巡り
この星団に来てからしばらくたった。
私は分体と共におおよそ目に付く惑星は捕食を行いいくつかの生命体の存在を確認していた。
やはり考察のとおり星団で旅をすれば生命体と出会う確率はぐんと高くなる。
他の星団へ向かわせている分体からも稀に生命体の捕食報告が入れられる。
詳しく説明すると多いので割愛する。
その惑星で独自に進化をした生命体は惑星ごとに特徴がありとても興味深い。
灼熱の惑星でガスとチリを主食としていたあのイソギンチャク。
氷の惑星で分厚い氷の下で静かに活動していたプランクトン。
ガスでできた惑星内で大気中に浮かびチリをエサにしていた微生物。
彼らは尽くその惑星でだけ生きるために進化をし続けてきた生命体だ。
それもまた生命の輝きで美しいものだ。
こういった惑星団の中心には大体中心となる巨大な惑星が存在する。
その引力によって惑星が公転し惑星団を形成している。
巨大な惑星があまりに大きくなりすぎて先日のあの穴のようになっている惑星団も数多い。
今私がいる惑星団もその一つだ。
ただ今中心となっているあの穴を捕食してしまうこの星団は崩壊してしまう。
それは私の主目的とは異なる。
食事は私のエゴではあるがそれによって食事場まで壊してしまうのはいけない。
何事も加減というものが大事なのだ。
私はあの灼熱の惑星でそれを学んだ。
あの時の私は食欲のおもむくがままに惑星を一呑みにしてしまったが、生物は進化するものだ。
あのとき絶滅させてしまわなければきっとあのイソギンチャクも進化をしていったのだ。
生命体は無限の可能性を秘めている。
いつどこで何が原因で自我が芽生えるともわからないのだ。
その最たるものが私だ。
あるとき宇宙空間で他者を捕食し生きる謎の生命体が無から生まれたのだ。
何が起ころうと私は驚かない。
あいにくこの星団に自我をもった生命体は存在しなかったがその内遭遇することもあるだろう。
この宇宙には知的生命体が必ず存在する。私はそう確信している。
私自身が知的生命体の証明でもあるし、今まで自我を持たなくとも生命体として進化してきているものは多くいるのだ。
であれば遭遇するのは自明の理といったところであろう。
楽しみだ。
------時は過ぎる------
私があの時いつか生命体と遭遇すると思考したのはいつの頃だったろうか。
宇宙を巡り、星団を食いつくし、星が生まれ、尽きていくのを観察し、そして次の星団へ向かう。
ある時は気まぐれに星を生み出した。
ある時は生命体が進化していく過程を観察していた。
しかし一番していたことはやはり欲のおもむくままに捕食を行ったことだろう。
飽きが来ない、食べれば食べるほど世界が広がるこの感覚をどう表現しようか。
世界へ私はここにいるぞと雄叫びを上げ、世界が私を認める。
世界が私という存在を認識せざるを得なくなる。版図は広げられる。
そして私は那由他の星と暗黒に広がるこの宇宙に私というネットワークを張り巡らせた。
そうしてしばらくした頃、分体の感知圏外からある生命体反応をキャッチした。
私達分体は基本的に捕食活動がしやすいように常にデブリ体に寄生しながら活動している。
その物体は不思議な形をしていた。
細い楕円形の白く長い物体だった。上方には出っ張りがあり、左右に薄く平たい羽のようなものが生えているのが確認できる。
その物体は後方から青い光を発して私の感知圏内に侵入してきた。
どう見ても不自然な物体だった。
私が今まで捕食した中で一番近いもので彗星があのように発光しながら進行していたがあの物体には意志を感じることができる。
進行方向を変え、速度を変え、そして何より熱感知反応では内部に数十の熱源体を確認できる。
・・・ドクン・・・
鼓動だ、熱惑星で地震を受けた時のような震えが私を襲う。
これは。
これは。
これは知的生命体だ。
私以外の私以上の知識を持った。
なぜ私以上かって?
私は私以外に捕食を通してでしか知識を持たない。
しかし彼らはどうだ、単身では宇宙空間では生存できない為にあの外殻を身にまといこの漆黒の宇宙で活動しているのだ。
あの外殻だけでも私には光り輝いて見える。
接触したい。
接触して、交流して、捕食したい。
観察すべきだ。逃すものか。絶対に逃さん。
彼らが群体なのかどうかは知らない、またあの進行している物体内だけにいる生命体なのか外界からやってきているだけで本星が存在するのか。
やっとだ。やっと私以外の知的生命体と遭遇したのだ。
彼らの目的はなんだろう。彼らは何処へ行くのだろう。彼らはどんな味がするのだろう。
きっと素晴らしい生の輝きを見せてくれるのだろう。
ようこそ私の宇宙へ。初めまして宇宙人の旅人。
初宇宙船
他者視点がやっと出る・・・かな
出ると思います