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十四話

---ドウタ---



宇宙に空いた穴はぽかんとその大きな口を開けて周りの物質を吸収している。



近付くにつれ途方もない大きさを実感する。



中心へ落ちてゆく物質は同心円状のある地点を越えると私の感知範囲外に行くのか消滅するのかわからないが感知できなくなる。



そしてその地点付近の引力が凄まじいのだろうあらゆる物質は引きちぎられその原型をとどめてはいない。



円状に回転しながらすべてを飲み込む口はどこまでも強欲で傲慢で平等だ。



すべての物体は大小多寡に関わらず分解され吸収されている。



私の仲間だと言われてもなるほどと信じてしまいそうになる。



しかもその捕食形態は私よりも美しいと言っていい。


私は所詮食欲のままに捕食を行うので飽きたら捕食をやめるし、食い散らかす方だ。


しかし彼はどうだ。

食べ残しはしないそれがどんなに大きなものであっても。そして吸い込みチリ一つ残さずに丸まる消化するのだ。



関心な穴だ。



素晴らしい。



また一つ真実を悟った。

出されたご飯は残さずに食べよう。


それが礼儀なのだ食べられる糧に対しての。



やはり宇宙はすごい。

すごいとしか表現できない私の語彙が悔やまれるが。まだまだ私には学ぶべきことがあるのだと教えてくれるのだ。


確かに確かに私は未だ宇宙を漂うタコでありすべての真実を知ってはいない。


これからも宇宙は色々なことを教えてくれるだろう。


また一つ楽しみができた。


生には娯楽が必要だ。

必然性だけでは生きてはいけないのだ。


なるほど。





ひとしきり感心した後私は本格的に穴への侵入を開始した。



穴と言っても当然実際に宇宙に穴が空いているわけではない。



入っていくと分かるがどうやら重力によって空間が捻じ曲げられている。

穴に侵入してしばらく経つが上下左右の区別をつけることができない。



私が回転しているわけではない。逆だ。

宇宙が回転している。回転は正しくはないな。不規則に伸縮歪曲している。



この空間が捻じ曲げ元に戻る引力によって物質が細切れにされているのだろう。



丁度私と同時に侵入した、岩が粉々に分解して行く様が感知できた。



なるほど物体とは引きちぎるだけではなく伸縮させながら歪曲させることによって分子間結合が弱まるのだろう。



これはなかなかに使える。



やはり物事はやって見ないとわからないものだ。入ったからこそこの動きを観察できるのだ。



そろそろだ例の地点が近づいている。



あの地点を超えると私の感知範囲外なってしまっている。



これは不思議だこれほど近づこうとあの先がどうなっているかわからない。


まさに未知だ。



そうして私はある地点を通過した。




・・・・・・ぶつ・・・・









---マザー---



調査に向かった分体の一体がどうやら消息を絶ったようだ。



群を消えた感覚はないまた、分体を感じることはできる。



つまり生きている。


おそらくこの宇宙とは違う平行宇宙に行ったか現在の私がいる3次元空間には存在しないのだろう。



ならば問題は…もんだ?…もん…




・・・・・・ザザ・・・・・



***Cation---Cation---Cation****


群体間において情報因子の隔絶を確認


再起動----失敗


再構成----失敗


分体再統合後起動---失敗


分体因子反応途絶


分体因子反応の再検査---失敗


・・・・・・・・・・・・・・


分体因子反応の検出まで外部からの干渉を遮断







・・・ザザ・・・ザザザ・・・


分体因子反応確認


・・・適応



・・・・・・・感知



情報因子反応拡大



再適合---成功




同一化を行います。



・・・・・・・


・・・・・・


・・・・・


・・・・


・・・


・・



私が再構築されるまで幾ばくの時間がかかったのかは定かではないが、再構築される前に感知していた惑星がその生を終える程度には時間が経っているらしい。



なんということだ。



ああ今の気分はそうだな。



正しく生まれ変わったと言っていい。



意味がわからない?そうだろう私もだ。



どうやら私の体を現在の最新の情報因子に適合するように私の体が勝手に私を再構成した。

簡単にいえばこうだろう。

もっと詳しくはマザーの私よりか分体からの説明がわかりやすいだろう。



分体へフォーカスする。



---ドウタ---


私はあの地点を通過した途端に異変を感じた。


異変の発生自体は想定範囲内だ。


しかしその異変は私の想像の上をいった。


X線や赤外線が返ってこれない時点で予測をしておくべきだった。


その地点を過ぎるとまずマザーとの連絡が取れなくなった。


次にその地点からはあらゆる物質、光すら逃げることができず、全ての事象の時間が止まったかのようにゆっくりになった。


そして私はそこに見た。


その空間をどう言葉で表現すればいいのか。


光ある世界というべきか闇に閉ざされた世界というべきか。


確かにそこに物体はあったのだろう。


その点。いや点どころか粒子ほどに小さくなっていたその惑星。


自重により潰れ、小さくなり、全てを飲み込んだ愚かな惑星。


点でありながらそこは無限であった。


その点から私が落ちてきた穴を見上げればなんということだろう、空が止まっているのが見えた。


あらゆる物質が粉砕され吸い込まれ流星のようになって穴へ落ちてくる様がすべて止まって見えた。


流星から放たれる光は空間の歪みで歪曲されスペクトルが狂い、虹色の流星を形作っている。


その向こうに見える宇宙空間では漆黒の空にあまねく光が瞬いていた。


幻想的で非常識的でどこまでも破滅的だった。


頭上には光溢れその光が降り注ぐ下界はどうしようもなく淀みきっていた。




素晴らしい。


綺麗だ。


このように素晴らしい情景を見たことは今までなかった。


外部から覗けばただの穴でしかなく全てを飲み込むゴミ箱の様なこの空間は、この宇宙で最も美しい場所であった。


当然私の目的はこの空間の調査のためだ。


何がこの現象を引き起こしたなど、あの地点を通過した時には理解していた。


結局は大質量の惑星が自重に耐え切れなくなりすべてを飲み込む粒子となって周りの物体を飲み込んでいた。


文に起こせばなんということはない真実だ。



調査は完了。


あとはこれを食べるだけだ。


そう思い。私はその粒子へ触手を触れさせた。


その瞬間から私の記憶は飛んでいる。


おそらくあまりに大質量過ぎた為に消化に時間が掛かりすぎ自己保全を最優先に行ったのだろう。


そして私が吸収した瞬間、その空間は崩壊したはずだ。


私が目を覚ましたとき、吸収した位置よりはるかに遠方の宇宙で私は目を覚ました。


崩壊した空間ともとに戻ろうとする空間の反発力で全ての物質が外部へ放出したと思われる。



そして最も重大な事象が発生していることが確認できた。


私の眠っていただろう時間を合わせてもあまりに時間が経ちすぎている。


簡単に言えば未来に来ている。


---ザザ----


そうして疑問に思っている私に吸収した物質の分析結果が分かった。


そこで私は真実を見た。


いや宇宙すべての真実ではない。しかしその分析結果は凄まじいものだった。


あの吸い込む穴の状態となってから既に途方もない年月が経っている。


その間に吸い込まれた物質は枚挙に暇がない

あの穴は私の師匠となるべき惑星だ。


この得た知識はあまりにも膨大すぎる。


平行世界やワームホール、亜空間に多次元宇宙。


並べた言葉は簡単ではあるが全て私が第一に掲げた目標の達成例と言える。


ああ素晴らしい。


こんなにも早く第一の目標を達することができるとは。


そうして感動した私は早速私へと連絡を取ろうとした。


その結果がマザーの再構築だ。


あの穴に吸い込まれあの地点をすぎた段階で私は未来へと飛んでいる。


情報量にあまりに違いがありすぎるのだ。


またこの宇宙空間に戻ってあの大質量を分析しなければいけなかった。


その為にはマザーであろうと機能を停止する必要があった。


ただそれだけだ。



今回の収穫は大きい。


大きすぎるほどだ。


満足だ。


そうだろうマザーよ。



---マザー---


分体からの報告を受けた私はその結果に大満足していた。


なるほど素晴らしい結果だ。


愚かな惑星でどうしようもない穴であったがその溜め込んだ知識には目を見張るものがある。


私の目標の達成まで大幅にその歩みを進めてくれた。


そして私自身の進化にもなった。


どうだこれ以上の結果があり得るだろうか。


惜しむらくは分体が観測した虹色の流星群だけは我目にて感知しておきたいと思っただけだ。


こればかりは仕方あるまい。情報を共有できようと所詮感知波を通した幻影と同じだ。


しかしまぁ今回の大成果を考えれば微々たるものだ。


では食事を済ませたところで。



御馳走様でした。








ブラックホール食べるの巻

味は分からなかったよ。

今回のブラックホールさんの寿命は大体30億歳だよ!


でも私たちの銀河の真ん中にあるっぽいブラックホールはもっとすごいよ!どれくらいすごいかわかってないくらいすごいよ!


ある地点=シュバルツシルト半径

あらゆる感知波の向こう側にある領域=事象の地平線

ただある地点を抜けると時間がゆっくりは嘘です。

フィクションです。

知らないってのが正しい。

フィクションだから流して読もうね。



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