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右手に殺虫剤、左手にハエ叩きを

作者: 宮古奈都

深く考えないで頭を空っぽにして読んでください。




白い三角巾を逆さまにして鼻と口を覆い隠す。



右手に殺虫剤、左手にハエ叩きを装備していざ出陣。





ターゲットは、黒くカサカサ動くゴキブリに私の視線はロックオン。




抜き足、差し足、忍び足。



抜き足、差し足、忍び足。




一歩、一歩



ヤツに近づく。




緊張の瞬間。




私は右手に持った殺虫剤を噴射。




白いジェット噴射で黒い物体は見えなくなる。




スーパーで398円の特売品で買った殺虫剤の威力はいかほどか!




その効果は、




ゴキブリは動かなくなり、足をひくつかせていた。




効果は抜群に効いている!




バシンッ!!




私は最後の一撃を左手に持つハエ叩きで叩き息の根を止めた。




ったぁ〜」



私の宿敵であるヤツを仕留めて私は気が緩んだ。




ガッツポーズをとりながら歩いた拍子に足を滑らせ私は意識をなくした。






**


何もないただ白い空間。



「ここは、どこ」



上も下も左右がどこまでも白く透明だ。



「初めまして、芽衣子めいこ



私の目の前にとても美しい女神様が現れた。



光輝く髪に優しそうな海の瞳をしていて、ひまわりのような明るい色のドレスを着た女神様が私の目の前にいた。



「芽衣子、あなたはグラッドワールドの救世主として選ばれました」



「グラッドワールド?救世主?」



「グラッドワールドとはここ、地球とは違う世界。異なる世界でいま妾がその世界の神様をしています。あなたのゴキブリ退治の雄姿を見て、この世界の救世主に相応しいと思い決めました」



「あの女神様が私のこと救世主として選んだことは光栄に思いますが、謹んでお断りします。私のような普通の女子中学生には荷が重すぎます」



「大丈夫です。妾も芽衣子に力を貸します」



女神様は微笑んで私の答えを待つ。



「女神様の力を貸して頂けるならとても心強いのですが、私に一体何ができるのでしょうか?」


「グラッドワールドへ行けばわかります。きっと芽衣子ならば上手くいきます」



女神様の姿が薄くなっていく。



「あの、女神様、私はまだ、救世主やるなんて一言も言ってないですよ!」



「もう、時間がないから、頑張ってね」



女神様は私に手を振って消えていった。



それと同じように私もまた、意識をなくした。





**




数人の神官と王族達が儀式の間に集まっていた。




すると、




どすンッ!




芽衣子が突然、姿を表して尻餅をついた。




「痛った〜」




「貴様は誰だ!怪しい奴だ引っ捕らえよ」



男の声が鶴の一声となって芽衣子にジリジリ近づいていく。




芽衣子の格好は確かに怪しい。



セーラー服に白い割烹着を着て、白い三角巾を逆さまにして鼻と口を覆い隠している。さらに、右手に殺虫剤と左手にハエ叩きを持った状態で異世界から来た芽衣子の存在は怪しさ100パーセントだろう。




「ちょっと、待ってください!」




芽衣子は何とか捕まるのを逃れようとするが、あっさり捕まってしまった。




「貴様、いつこの場に忍びこんだ」



先ほど、芽衣子を捕らえろ言った男の人が前に出てきた。



茶髪に灰色の瞳をもつ美形な男。白い法衣を着た神官だ。




「えっと、グラッドワールドの女神様に救世主に選ばれて来ました」




「女神様だと、神のお告げは確かにあったがこんな小娘だとは……」



「私だって、まだ信じられないけど、選ばれちゃったんです!」



「貴様の言い訳を信じるとでも思っているのか、甘いな。しばらく、牢屋にでも放っておけ」



「ええ〜!待って下さい。私、何もしてないですよ〜」




「貴様はすでに不法侵入だ」




神官はそう言い捨てて芽衣子は牢屋へと送られた。






**



(あ~あ!どうしてこんなことになちゃったんだろう。)



私は、今まで起こったことを整理して考えてみた。



まず、ゴキブリを退治していたところ。

グラッドワールドの女神様に、気に入られて救世主に選ばれた。



女神様は、こちらの世界に来れば判るといっていたけど、

すぐに不法侵入で牢屋に入れらて気がつけば、この世界に来て二日目の朝にを迎えてた。



牢屋は薄暗く、ひんやりと冷たくて私がいるところは、石造りの壁で手で触ると、ざらざらしていた。



昨日も寝床はござを一枚敷いた上に何日も洗っていない掛け布団をかけて寝る羽目になってしまった。



すると、がたーん!!と大きな音がして先ほどから外が騒がしい。


こつん、こつん、と足音が聞こえてきた。


私の前にはあの美形の白い法衣姿の神官が立っていた。


「おい、小娘。昨日は救世主として女神に呼ばれてきたと言っていたな」


神官は、私を見るなり高慢な態度で言ってきた。


「……」


むかついたので私は黙り込んだ。


「お前を牢から出してやる。その代わり、救世主としての証拠を見せてみろ」


(何よ!その上から目線な態度。むかつく!)


「救世主としての証拠ってどうやって見せれば、いいのよ」


「簡単だ。今、城を徘徊している黒悪くろあくを退治すればいい。それだけの話だ」


「黒悪って何?」


「貴様、黒悪も知らないのか。まあ、時間がない。ここから、出ろ。ついて来い」



神官は私を牢から出すと、城の外を見るように言ってきた。



**



「……あれって巨大ゴキブリ!?」


城の外壁から身を乗り出している。巨大なゴキブリがそこにいた。



「あれが黒悪だ。さあ、退治して来い」


「そんなの、無理絶対、やだ!」


私はおもいきり首を横に振った。


「道具ならここにある」


神官は私が持ってきた殺虫剤とハエ叩きを袋から出して渡してきた。


「ひょえーー!やだぁぁぁ!!何でこんなことしないとアカンの!!!」


気味が悪くて、怖い。私は泣きそうになる。


「あれは悪霊だ。その中でもたちの悪い黒悪というもの。貴様のことは元から期待などしてない。

俺が祓う。貴様はどこか安全なところにでも逃げろ。」


そう言い捨てて、神官はゴキブリの方に向かっていった。




**



(聞こえますか。芽衣子)


「頭の中で声がする」


(芽衣子、その殺虫剤を使ってあの黒悪を退治するのです)


「女神様、私にはそんなことできません」


(大丈夫よ。芽衣子、あなたならできるわ。自分を信じるのよ)


「……女神様」


(それに妾がついています。さあ一緒に立ち向かうのよ)


「分かりました。女神様」


女神様の姿は見えないけれども、女神様の声が私に勇気を与えてくれた。



**



三角巾を逆さまにして鼻と口を覆い隠す。

右手に殺虫剤、左手にハエ叩きを持っていざ出陣。


ヤツに気づかれないように


抜き足、差し足、忍び足。


抜き足、差し足、忍び足。



一歩、一歩。



ヤツに近づく緊張の瞬間。



狙いは顔。


私は、周りの声や音に一切耳を貸さず。


自分を信じて、右手に持つ殺虫剤を噴射。



ブシュ----


すごい勢いで白い霧が辺りに巻かれる。



(これは、特別な女神様の殺虫剤なんだわ)



効果のほどは、



黒悪はひっくり代えって足をひくひくさせている。


効果は抜群に効いている。


止めに、左手に持ったハエ叩きをぎゅっと握り締めて、



パシン!!!


痛恨一撃を食らわせた。



(すごい、叩く瞬間大きくなった)



ゴキブリこと黒悪は灰のようになり、大地へと帰っていった。



**



この黒悪との戦いで芽衣子は実質的にグラッドワールドの救世主として、この世界で名を馳せた。


日本では『ゴキブリバスター』と呼ばれた芽衣子であったが、


グラッドワールドでは『悪魔狩りの天使』という二つ名がついていた。


芽衣子の活躍を讃えて、白い三角巾を逆さまにして鼻と口を覆い隠し、


セーラー服に白い割烹着姿に右手に殺虫剤、左手にハエ叩きをを持ち、


スリッパを履いた姿の芽衣子の肖像画が城に飾られることになった。




それから、芽衣子は世界を救済すべく世界を旅することになった。



そして、あの時、芽衣子を牢から出してくれた俺様な青年神官とは旅のパートナーとして、


一緒に旅をすることになり、芽衣子の生涯の伴侶となるのまた先の話であった。




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