第三章:差出人を探せ・上
「ねえ。見てよ、コレ」
放課後。誰もいない2ーCの教室。燃えるゴミを漁っていた桜庭凛が嬉しそうに、燃えないゴミを漁っている僕を呼んだ。
勘違いされない為にも言っておくけど、これは係の仕事だ。僕と凛の2ーCでの社会的地位は『ゴミ係』なのだ。
……多少“個人的思惑”が入っている事は認めるけど。
「何だよ」
真面目に仕事をしていた僕は、多少不真面目に仕事をしている凛に応える。
「ほらコレ。ラブレターを見つけた」
凛の手の中には、本人の述べた通りの物――くしゃくしゃになったピンクのラブレターがあった。
「誰が出したか分かるか?」
はっきり言って僕は、ラブレターなんぞに興味は無い。それでも一応聞いておいた。
「分からない。差出人の名前、どこにも無いや。それにしても、今時ラブレターかあ。うんうん、風流だね」
「アドレス知らなかったんじゃね?」
凛はピンクの紙切れをまだ見ている。やけに楽しそうだ。
「それで?誰宛なんだよ」
僕は、一番大切な事を言わない凛を訝しみつつ、大事な事を質問した。このクラスの中には確実に、アレを貰って、そしてゴミ箱の中へ捨てた人物がいるのだ。男子であれば、からかってやるつもりだった。
凛が口を開く。
「ん〜とね。2年C組、斎藤淳くんだって」
何だって?!
一瞬固まった後、思わず僕は吹き出した。C組の斎藤淳。ソイツの正体は――
「俺かよ!」
何を隠そう、この僕自身だ。
「よっ、色男!流石にモテるねえ」
「ちょっと貸せ」
僕はヘラヘラしている凛の手から、ピンクの紙を奪い取った。急いで中身を確認する。
『拝見 2ーC斎藤淳くん
私は、入学式であなたを見て以来、ずっとずっと好きでした。今、この気持ちを伝える事が出来て、とても幸せです。
ただ誤解して欲しくないのは、私は別に付き合ってもらいたいなどという、おこがましい考えは無いという事です。 それではお元気で。 かしこ』
僕は、頭が痛くなった。僕の読解力では、これを書いた人が何を言いたいのか、さっぱり理解出来なかった。
「何だ、この支離滅裂な文章は。手紙の書き方が全然なってない。会ったら説教してやる」
「それ、突っ込むトコ違う」
僕も堕ちたものだ。凛にまで突っ込まれてしまった。
それにしても、ラブレターを発見してからの凛は、どこかおかしい。普段なら、凛が突っ込むのは、地球のどこかに隕石が堕ちる確率にも等しい。つまりそんな事は有り得ないのだ。何か気になる事でもあるのだろうか。
「ねえ、そのラブレターの差出人を探してみない?」
凛が目を輝かせながら言う。僕もこれを書いた人物と、そしてそれが何故ゴミ箱に入っていたのかが大いに気になる所だ。
「ああ。俺も、ソイツに説教してやらなきゃだしな」
「だから、突っ込むトコ違うってば」 今確率の上で、地球に二個目の隕石が堕ちた。