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第四十三章 ファイターズハイ ~中編~

「君とは一度、戦ってみたいと思っていた」


ゆっくりと間合いを取ったまま回り歩く。シュナウザーがいつ仕掛けて来ても対処可能にする為。

ウェルシュ達とは次元の違う実力者だと思ってはいたが、聖剣の勇者と身分を明かされた以上、勝てると分かっていても警戒しなければならない。

ただ強いだけならばまだしも、奇っ怪な技でも使われれば、致命的なダメージを受けることも有り得る。クダイにとって、シュナウザーは最終的な目的ではない。勝てる自信があるからこそ、一矢も受けずに倒さねばならない。


「クダイ………お前の目的はなんだ?遥か久遠の彼方から、時空を超えてこの世界に来たその目的は!」


「知ってどうするんだい?まあ、聞きたいなら教えてやらないでもないが」


「他の世界でも叶う目的なら、この世界から出て行け!邪魔をするな!」


「あははは!」


「何がおかしいッ!?」


「そんなに心中したいのか?たったひとつの魔法を使ってすることじゃないだろ」


「心中心中と………そんな安っぽいものではない!」


「心中だろ。永劫的な存在意義を共に無にしてしまおうなんて」


「お前には分からんことだ。あの日、セルバを止められなかった為に、時間に閉じ込められたオレ達の気持ちなど」


あの日………その単語がクダイの記憶に波紋を立てる。

誰にでも思わずにいられない人生の中のたった一瞬がある。 クダイが時空を超えて旅をする理由、その原点の日。懐かしく、彼の全て。


「分かるさ」


「何?」


「僕もそうさ。あの日、あの不思議な出会いがなかったら、今の僕はいない。きっと、とっくに寿命を終え、生まれ変わる時を待ってただろうね。僕は、時空に散らばった世界の破片から、想い人を探したい。たった一瞬の出来事が、流れに流れ人を惑わし狂わせる」


「ならばお前もオレと変わらんな。生を求めようと、死を望もうと、誰かを探そうとも、個人のエゴである以上、誰に否定される筋合いはない」


「違う。僕と………シュナウザー、君とでは違い過ぎる。君はセルバ卿を殺す役目を負いながら、役目を放棄した。だが僕は逃げなかった。僕と君は違う!」


クダイが何を言っているのか、シュナウザーには分からない。しかし、クダイもまた立ち向かった運命があり、果たすべき役割と引き換えに想い人を失い、探す為に時間の理論さえ超越して生きて来たのだと。

真剣な眼差しは、力の差よりも存在の重さを知らしめようとしている。


「時間がない。セルバを一人には出来ないからな」


「お互い様だよ。君を倒しても、後から追って来る連中がいる。………始めよう。互いのエゴの為に」


手垢に塗れし欲は、戦士達に鼓舞する。


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