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第1話【第3部:強制執行と、新たな旅の始まり】その聖剣、実質破綻につき差し押さえさせていただきます

眼前に迫る鋭い切っ先。だが、タクは動かない。

振り上げられた刃の残像を見つめながら、彼の脳裏には、あの白い空間で女神ゼノが浮かべた不敵な笑みが蘇っていた。

> 『いい? 佐藤くん。この世界の物質も、魔法も、命も、私たちが管理する「帳簿」上の数字に過ぎないの。

> 君の持つその電卓は、神の帳簿にアクセスするための特権端末。

> 君が計算し、導き出した「正解イコール」は、即座にこの世界の理として反映されるのよ』

>

(……なるほど。世界は神が管理する単一のデータベースというわけか。なら話は早い)

タクは、前世で培った神速のタイピングで、猛然とキーを叩いた。

視界に映る聖剣のデータが、電卓の演算と同期していく。

(対象を「資産」として認識。ただし実態は価値なき模造品――よって、計上額を実価に修正。ショートカット【C】、全消去)

タクの指が、決定打となる**【=(イコール)】**を鋭く弾いた。

「――確定フィックス。その負債、消去します」

パキィィィィィィィン!

鋭い音と共に、伝説と言われた聖剣が、まるで安物のプラスチックのように粉々に砕け散った。帳簿上で「価値0」と定義された物質は、もはやこの現実世界に形を保つ理由を失い、因果の彼方へ消え去ったのだ。

「わ、私の聖剣が……!? バカな、一撃も交えずにか!?」

「維持費を正しく支払っていない資産は、ただの『負債』だ。……清算の期限ですよ、レオポルドさん」

タクが【=】を再度叩く。

瞬間、王宮の地下から重厚な金庫が、物理法則を無視して空間から「転送」され、タクの足元にドスンと積み上がった。帳簿上の数値を物理的に移動させる、差し押さえの執行である。

【返済状況:12,000,300 / 100,000,000,000,000 G】

「……ちっ、端数にもならないな」

タクはため息をつき、指先で眼鏡のブリッジを押し上げた。

「陛下。この国の帳簿、今日から俺がすべて書き換えます。不服なら、今すぐこの国を『倒産』させますが、どうしますか?」

「お、お任せします! 好きにしてください!」

「よし。……行くぞ、ルミエ。次は魔王軍だ」

「えっ、ちょ、佐藤様! 唐突すぎませんか!? まだこの部屋のシャンデリアの資産価値を測ってないですよ!」

「……さっきのBSを見ていなかったのか? 国防費という名目で、この国の資産の8割が魔王軍との戦いに吸い取られている。だがその実態は、誰かが戦争を長引かせて利益を得ている『巨大な粉飾』だ。……最大級の赤字部門から潰す。それが経営再建の鉄則だ」

こうして、史上最強の経理マンによる、異世界の「強制清算」が始まった。

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