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マジなんや……

「いってこーい!!」


 タイショウさんは僕を正確にタピオカミルクティーの方に飛ばした。

 あまりの速さに数秒で目標物が目前となる。

 僕は何とか蓋に刺さっているストローに掴まり通り過ぎることだけは防げた。

 タイショウさんに掴まれたスーツの左袖はさよならした。初任給で買った、ちょっと良いやつだったのに……。

 悲しむ間もなくミルクティーが暴れ出した。僕を振り落とそうと容器をシェイクする。僕は必死にしがみつく。

 すると頭上から何かが降って来る気配がした。


「気をつけろー! 爆発するぞー!」


 遠くでタイショウさんが叫んでいるのが聴こえた。

 見上げた先にあったのはタピオカだった。しかしサイズがアホほどでかい。

 それが僕の目の前に落ち、着弾と同時に閃光を放ち爆発した。


 ああ、終わった……。短い人生だった……。


「勝手にエンドロール始めんじゃねぇよ」


 胸元のハートのブローチから声が聴こえた。確かに、痛くはない。

 煙の中、自分の身体に目を凝らすと、無傷であった、スーツ以外は。しつこいか。


「歴代魔女っ娘の力を舐めるんじゃねぇよ。そんな爆弾で死んでたらなんとかキュアなんて何人も必要だろうが」

「夢を壊すような発言は控えた方が良いと思います」

「現実みろ。あの爆弾厄介だな。ヒロト、も一回ポシェットに手突っ込め。テボあるから」


 マジかよ、と思いながらポシェットを(まさぐ)ると、確かにありました、木製の取っ手が。手に馴染む使い古されたテボが出てきた。


「これでタピオカ(すく)えってことですか? 小さくないです?」

「そこに+/-ってボタンあるから」


 確かにあった。+を長押しすると、テボの大きさが徐々に変化し巨大化した。

 僕は縋りついていたストローから手を離し、ひらりと宙返りをしてみた。あっさり出来た。

 そして蓋の縁を両手で掴み、力任せに上方に押し上げる。タピオカミルクティーはロープのような手で必死に抵抗したが、こちらが勝った。

 蓋とストローを地面に捨て去ると、僕は巨大化したテボを振るい、ミルクティーの中のタピオカと氷をザバザバと掬っては投げ、救っては投げた。

 地面はタピオカの爆発で悲惨なことになったが、もうどうにでもなれって感じだった。

 再びブローチから声がした。


「よーし、掬ったな! よく見ろ。なんか浮いてるだろ」

「浮いてるって……」

「あの、鍋でよく見る、カレーのルー入れる前に出てくるアク、ああいうの浮いてるだろ!」


 僕は容器の縁に立ち、ベージュ色の海に目を凝らした。

 確かにあった。もやっとして、ぶくぶくした半固体のようなやつが、容器の縁に沿ってわんさか浮いていた。


「あれ。あれをお玉で取るんだよ」

「え、どこに捨てるんですか」

「その辺しかないだろう」

「えぇ! 汚れるじゃないですか。なんかボウルとか出ないんですか、このポシェット」

「あぁ!? タピオカはその場に捨てたくせに面倒くせぇな。……ほらよ」


 そばにタイショウさんがパッと現れ、大き目のボウルを出してくれた。

 僕は暴れるミルクティーの中で何とかアクを取っていった。

 出来るだけ丁寧に取れ! とのお達しのため、かなり神経を使ってミッションを遂行した。


「うわぁ……。なんかベタベタする……」

「そりゃ、砂糖たっぷり入ってるだろ。加齢臭隠しのいい香水だろ?」

「そこまでの歳じゃ、まだありません」


 ボウルの中はいっぱいのアクで満たされた。タイショウさんが僕からボウルをもぎ取ると、それを自分の腰エプロンのポケットに流し込んだ。


「え? そこって何次元かに繋がってます?」

「いや、うちのラーメン屋の流しに繋がってる」


 僕が首を捻っていると、足元でミルクティーの容器が縮みだした。

 みるみる容器は小さくなり、やがて普通サイズとなり、足元にゴトンと音を立てて転んだ。

 いつの間にか、周囲の破壊された建物は元通りとなり、僕の恰好も左袖の無いスーツを着た、ただのミルクティー香るおじさんとなった。

 急に目の前が暗転し、気づけば再び僕はラーメン屋のカウンターに座っていた。

 僕のラーメンは汁を限界まで吸い、在りし日のコシは見る影もなかった。



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