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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と教皇の密談

「さて。話が公明正大に纏まった所で本題に入ろうか―――。」



新規事業の話が纏まり、エドワードとシャル君の2人が退室したのを見計らって私は話を切り出した。


2人には今回の話し合いの議事録を別室で纏めるように言い渡している。


それを教皇に確認、サインさせてから最終的に公正証書として契約書を作成する。


面倒臭い作業だが、話が進み出してからこの狸ジジイにごねられたくはないからな。



それに、エドワード達を追い出したのは話題が話題だからだ。


最終的にはあの2人やレオナルド達にも共有はするつもりだが一旦私が内容を確認してからだ。


何せ教会の内情の話である。

何やら動きが怪しい聖女と魔族関連の話なんかきな臭い以外何物でもない。


……しかし、改めて考えると教会は本当に怪しい組織だな。まさに疑惑の総合商社だ。


もういっそ物理的に潰しちゃう方がいい気がして来た。あー、駄目だ。教会には平民も多いしベスに怒られそうだ。



「公明正大……? 今ワシがお主の息子にボコボコにされた所を見ていなかったのか?

この歳で自分の孫くらいの子どもに頭を下げさせられるとか本気で泣きそうなんじゃが?」


「それを含めて公明正大だ。それに下衆なお前の事だ。利益の為なら平気でプライドくらい捨てれるだろう?」


「自分から捨てるのと捨てさせられるのは違うと思うんじゃが……。」



話が纏まったので本題に入ろうとした私に横からチャチャを入れてくる教皇。


エドワードにやり込められたのがそれなりに尾を引いている様だ。いい気味である。


しかし……。



「ふん。お前の事だ。早い段階でこうなる事は予想していただろう?」


「……概ねな。どうせ教会に入り込んだ魔族関連じゃろ? 正論を振りかざしたお主に武力で

責められたらどうしようもないからのう。

はぁ……。一矢くらいは報いられると思っとったが、それすら出来んのは予想外じゃった。」


残念そうに溜息をつく狸ジジイ。



そもそもこのジジイが教会と魔族の癒着を把握していない訳がないのだ。


なので、私がここに出張ってきた段階でジジイのとれる行動は、国と敵対するか私に協力するか、そして逃げて誤魔化すかの三択だ。



この結果はエドワードのお陰だな。



まぁこの煮ても焼いても食えないこの強欲ジジイは魔族を利用して利益を得る事はしても、魔族と心中するなんて事はしないだろうとは思っていた。


つまり、初手から逃げの一手。


あの子が事故の時にジジイを交渉のテーブルに付かせたあの時点でほぼ勝ち確だ。


敵対するなら即潰すし、協力するなら使い潰す。


後はどう勝つかだけだったが、見事話し合いだけで完封して見せたと言う訳だ。



「その様子だと魔族とつるんでいるのは聖女なのか?」


「……そうじゃ。正確に言えばあの子を旗印にしておる反教皇派閥の連中よ。」


憎々しげな顔をして吐く様な顔をする教皇。

聖職者のする顔じゃないな……。



手馴れた様子で懐から高級そうな葉巻が入ったシガーケースを取り出し、先端をカットして口をつけて魔法で火をつける。


教皇は口の中で転がすように煙を楽しんでから

ゆっくりと紫煙を吐き出した。


煙いからやめて欲しいんだがな……。



だがまぁいい。概ね私の予想通りだ。


この歳まで権力にしがみつけているのは、この強欲ジジイが最低限の線引きは出来る小癪なジジイだからだ。


やはり魔族と繋がっていたのは聖女派の方だったか……。



「聖女が主犯ではないにしても自分の派閥を管理は……いや、彼女はまだ15、6の子どもだな。そこまで言うのは酷か……。」


「そうじゃな。皆がお主の様な傑物ではない。それにあの子は絵に描いたような聖女じゃ。

平和の象徴たる白い鳩達が我先にと肩に止まり、そして糞をしよる。


しかし、どれだけ糞にまみれようとあの子は健気にも聖女として立ち続ける。

これを哀れと言わずなんという?」



あぁ、原作ゲームでもそんな感じだったな。

力のない無辜の民の為、どれだけ傷付いても立ち上がり平和を訴える聖女。


教皇風に言えば、哀れな聖女。


それがソフィア・グレン・フォン・マルドゥーナという少女だった。



「その結果、不埒な鴉共があの子の肉を啄んでおる始末。ワシは不憫でならんよ。」


なるほどな。

ゲームと印象が違うのはそれが理由か……。


ただでさえいっぱいいっぱいな状況に加えて、魔族まで絡んで来ているのだ。


自ら率先してやっているのか、なし崩し的に魔族に協力させられているのかは分からないが、ストレスはヤバそうだ。


やさぐれた厨二病になってもおかしくはないだろう。


今までは立ち位置は違えど、原作ゲームに出て来た奴は性格はそう変わらなかったが、どうやら状況が変わり過ぎると性格にも影響が出て来てしまうらしい。


アラン君やレオナルドに絡んで来たのは彼女なりのSOSだったのかもな……。



「……いや、ジジイ。派閥は違うかもしれんが教会のトップはお前だろう。他人事みたいに言うな。」


神妙な顔をするジジイの教皇フェイスに危うく流される所だったが、良く考えれば教会はコイツの組織だ。


つまりこのジジイの責任なのは間違いない。



「はっ。あんな気持ち悪い奴らと一緒にされたくないわい。奴等の教義を知っておるか?

今世で苦労すれば来世で幸せになれるとか言うとるんじゃぞ?」


「あー、輪廻転生みたいなものか?

現世で良い行いをすれば天国、悪い行いばかりだと地獄に落とされる的な?」


つい前世での知識で話してしまう私。


現世や来世という単語は転生者である私としては非常に気になる。



「テンゴクやらジゴクは知らんが、輪廻転生とは面白い表現じゃな。


あらゆる世界を支える世界樹には様々な世界がある。そんな世界を人々は生きて死んで、そして魂となり新たな世界へ循環するというのが、ワシらユグドラシル教会の考え方じゃ。」


ふぅん。仏教とかの思想に近いな。

ライフサークル。生命は流転するという訳だ。


「お主風に言うならば、世界樹とは輪廻転生を司るこの世界の根源よ。そこに人の善悪や幸不幸なんぞと言う感情やら気分を持ち込むのは烏滸がましいとは思わんか?」


ファンタジー作品でよくあるヤツだな。

神の尺度から見ると人間の善悪などは小さな物差しでしかない的なヤツだ。



「それが烏滸がましいかは知らんが、そこには命を懸けて戦う聖女達や魔族なりの理屈があるんだろうな。」


「ふん。どんな理由でも教義を理由に現世利益を投げ打って命を懸けさせるのは傲慢じゃ。

宗教や教義とは困難に生きて立ち向かう者の

助けになるものでなくてはならん。」


狸ジジイが教皇面して何やら言っている。



「……だからと言って悪事に手を染めるのは違うと思うがな。今期のスフォルツエンド公爵領の税収、ちょっと数字がおかしくないか?」


「……我等は皆、世界樹の子。しかし、現世での幸せを追求せぬ他責思考の愚か者は決して救われる事はない。ワシはそう思うのじゃ。」


真面目な顔をしながら視線を逸らすジジイを私はジロリと睨む。



この国の全体予算管理は私の仕事だからな。


どうにもこのジジイのお膝元であるスフォルツエンド公爵領の税収が少ないのが気になっていたのだが、どうやら思い当たる節がある様だ。



「まぁ、私とて領主だ。法律さえ守っているなら多少の誤魔化しは目を瞑る。税収の申請漏れがあるなら早目に処理しろよ?」


「……最近忙しかったから申請漏れがあったかもしれんな。早々に確認させて頂こう。」



この糞ジジイ……。

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