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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と次男の一日 お仕事編

午前8時、運輸部門長の嘆願。




「―――以上の事から、街道整備の早期対応を

否定する事は出来ません! 何卒! 我々運輸部門の鋭意発展の為! 引いては公爵領や王国の為!是非ご一考の程をお願いしたく!」


「―――そうだな。私も君と同意見だ。

だが、流石に今から今期の予算計画の変更は

無理だ。物流センター計画もあるしな。

まずは今期中に街道整備をする優先順位の選定をしろ。来期予算計画に入れておく。」


「はっ! お任せ下さい! 公爵閣下!

小生の命に替えても!!」


「あー、うん。運輸部門長? ちょっと顔近くない? それに命に替える必要はないぞ……。」


「それは異なこと! 小生達、巨人族(ジャイアント)は紛れもなく大戦の敗残兵! 公爵閣下の温情で生かされているゴミ虫! 気軽に使い潰して頂いて構いませぬ!」


「ふぅ……。これでも物持ちは良い方でな。

それに雇い主の私としては途中で死なれるより最後までやり抜いて欲しいものだ。巨人族(ジャイアント)風に言うなら、断末魔を捧げよだったか?」


「ぬはは! 然り然り! お任せあれ!」





午前9時 銀行部門長の定例報告。



「―――現在の預金と融資額の相関については46ページのグラフを参照下さい。借入金利については約30%から40%の間で―――。」


「……君たち銀行部門の有能さを否定する気はないんだが、流石に借入金利40%はアコギ過ぎないか……?」


「……前向きに検討する事を善処します。」


「……命令だ。せめて20%までにしたまえ。」


「……ちっ。承知しました。」


「え、今舌打ちした!?」


「それが何か? 我々、小人族(ホビット)から金儲けの機会を奪うのです。当然の対応かと。」


「……ここに保険業という新たな金儲けのアイデアを纏めた草案があるのだが?」


「おぉ!敬愛すべき公爵閣下に舌打ちをするなど、一生の不覚! 大変申し訳ございません。

この度の不始末は必ず仕事でお返しします故、そのアイデアを教えて下さい。」


「相変わらずよく回る舌と手のひらを持ってるな……。」




午前10時 服飾部門長との打ち合わせ。



「―――それで、こっちが冬服のデザインです。

基本的には高級特注品オートクチュールの路線で行くつもりですが、それだけですとブランドの裾野が広がらないので、セカンドラインとして、高級既製服プレタポルテにも手をつける予定です。」


「ふむ。まぁ確かに使っている素材が高級過ぎて今の価格帯だと侯爵や伯爵くらいなら何とか手が出るかも? と言った感じだしなぁ……。」


「ええ。ですがブランドイメージも大事ですし、セカンドラインは完全にブランド名を変えて別物として扱います。


プラダとミュウミュウのイメージですね。

……個人的にはクロエとシーバイクロエは名前が似すぎてて素人にはパッと見違いが分かりにくいと思うのよね。アルマーニとかも……。」


「うむ。まぁ異国のブランドはともかく、国内の文化促進の面からも賛成だ。採算も取れているようだし、職人も育って来ているようだ。

このまま拡大路線で行こう。


ふむ。販促用に何かイベントでもあると良いかもしれんな。」


「イベント、ですか?」


「貴族であったとしても下位貴族では新品の服を気軽には買わん。何か催し物をしてみてもいいんじゃないかと思ってな。私の方で何か考えておくよ。」


「ふふっ。ありがとうございます。公爵閣下?」


「……シャーロット嬢。言いたいことがあるならハッキリ言いたまえ。」


「いえいえ。親子仲がよろしいようで何よりですわ。」


「……ふん。」




午前11時 自動車部門長との会議。



「―――以上が今月の販売台数となっております。新規事業である自動車部門の評判は上々。

予約台数は予定数を240%で達成しておりますが、生産が追いついておらず、工場の拡張が今後の急務と考えております。」


「うん。数字も好調そうだし、なにより普通の報告で安心するよ……。」


「……それは私が地味という事でしょうか?

まぁ確かに他の部門長達と比べると私は影が薄いですが……。新参であんな幼い服飾部門長にも小娘扱いされる始末ですし。ううぅ……。」


「あぁ、いや! そうじゃない! えっと有能!

有能って事! いやぁ、有能な部下を持てて私は実に幸せ者だなぁ!」


「ううっ、ほ、本当ですが? 御館様……。」


「ホントホント! だから取り敢えず来期までに工場増やそっか? 」


「ひぇっ……!?」




正午 国王陛下とのランチミーティング。



「なぁロベルト。やはり国家の顔として創世の間の復旧は急務だと―――。」


「はぁ……。国王陛下はお疲れのご様子だ。

さっさとつまみ出せ。」


「あ、ちょっ!? 余は王であるぞ!?」



私の一言で屈強な兵士達がカーライル王の両脇を抑え、部屋の外へ連れ出す。


余は諦めんぞー!と言うなんだか切ない断末魔が聞こえ、無情にも扉が閉まる。


さっさと諦めたらいいのに……。



「ふぅ……。さて、次の予定はなんだ?」


「一旦、ここで休憩となります。

14時より商工会との打ち合わせ、公爵領の今期の税収についての報告会、王国予算運営委員会の草案の確認で本日は終了となります。」



有能執事である小人族のオーギュストが、手際よく紅茶を出しながら午後からの予定を伝えてくれる。


これでようやく一息つけるな……。

今日は比較的楽なスケジュールで助かる。



しかし、我が部下達ながら実に濃いメンツだ。

馬鹿キングは部下じゃないけど……。


ウチの屋敷にある食堂の椅子に深く腰掛け、

やれやれとため息を1つ。



「お疲れ様です。お父様。」


オブザーバーとして朝から私の横で仕事を見ていたエドワードが話しかけて来る。


シャル君がニヤニヤしていた理由がこれだ。



「エドワードも疲れただろう。少しゆっくりしよう。話を聞くだけでも気疲れするものだ。」


「いえ、僕など話を聞いて分からなかった単語をメモしていただけですので……。」



私達の会話を必死に聞いて何某かをメモしていると思ったが、聞いていて分からなかった単語や状況をメモして後で調べるつもりらしい。


見せてくれたメモ帳には、様々な単語やエドワードが疑問に思ったことや知らない状況などが細かく書かれていた。



「ふむ。この物流センターについてだが、一時的に荷物を集め、保管する集積所の事だ。

物流の効率化の為の設備なんだが、かなり大掛かりな箱物になる予定でな。今期の運輸部門の予算の半分は使う計画だ。」


「なるほど! そんな計画が!」


「後、シャーロット嬢の話は半分は聞き流して構わん。テンションが上がると意味のわからん謎の言語を使う困った奴なのだ。」


「そ、そうなのですか……?

色々と理論建てて事業計画をしていた様に思えたのですが……。」



まぁ前世知識によるチート計画だけどな。

あの子を放っておくと勝手に産業革命を起こしそうな気すらする……。



「まぁ優秀なのは認めるがな……。

人としては変人の部類だよ。いや、それについては全員がそうなるか……。」



「やはり優秀さは、大事ですよね……。」



何となく含みのある言い方をするエドワード。


やはりシャル君の言う通りかもしれんな……。



ゲームでのエドワードは一言で表すなら、完璧主義の腹黒貴公子。


理想が高く、それに向かって邁進する天才。


この世界での兄であるレオナルドと似たタイプだったらしい。


しかし、天才故の打たれ弱さがあり、理想と現実のギャップに苦しんでいたのだそうだ。


何かしらの躓き―――、恐らく自分への不信感が募り、引きこもりになってしまったのではないかというのがシャル君の予想だ。



……これは当たりっぽいな。



「勇将の下に弱卒無し。それだけお父様が優秀な証左なのでしょうね……。やはり、人の上に立つにはそれに相応しい優秀さが必要なのですよね。」


まるで、自分がどれだけ求めても手に入らないモノを眩しく見るようにエドワードは言う。



「優秀さね……。まぁ能力が高いに越したことはないが、一番ではないな。」


「そ、そうなのですか……?」


「ああ。私が人の上に立つ人間に一番大事だと思う要素は“真剣さ”だよ。」


「真剣さ……ですか?」


「そうだ。効率良く部下を使う者は多い。

部下を大事にする者もまぁそれなりにいる。


―――しかし、部下に真剣な者というのは案外

少ないのだ。


部下の性格や考え方、在り方を把握し、どうやれば一番能力を発揮出来るかを真剣に考える。


私が理想とするトップとはそれが出来る、

それをしようとする者だ。」



……なんて格好を付けて良いことを言ったみたいな顔をしているが、そうしないとすぐ暴走するアクの強い部下しか私にはいないからだ。


巨人族(ジャイアント)達は何だかよく分からない死生観の元、すぐに命を懸けたがるし、小人族(ホビット)は驚くほど金に汚い。


シャル君はシャル君だしな……。


残念ながら何も言わずとも全ての物事に対し、完璧に起案し運用し成果を出してくれるスーパーマンの様な奴はいないのだ……。



「それは思いやりとも言えるし、上手く利用しているとも言えるだろう」


そう言いながら、エドワードのメモ帳を捲る。



“お兄様は甘味がお好き。効率の良い栄養補給食と王都と公爵領付近の甘味処を調べる”



「―――ただ、少なくともエドワード。

お前は真剣に家族を見ていると思うよ。

それこそ、私などよりずっとな。」



みるみると顔が赤くなるエドワード。



「…………もしかして、ずっと僕の部屋にいました?」



「王都毎朝新聞だったか? 私もあの新聞は二度と買わん事にした。」



エドワードは可哀想なくらい顔を真っ赤にして俯く。



「さて。次は気合いを入れねばならん。

何せ商工会の奴らは、自分の利益に真剣だ。

足元を掬われんようにせねばな。


お前も気になる事があれば発言を許可しよう。頼むぞ? エドワード。」


「―――は、はい!」



真っ赤な顔でエドワードは心底嬉しそうに、

くすぐったそうに笑った。

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