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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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エピローグ

「―――ねぇ、お父様どうしたの?」



雑踏の中、少し先を歩いているジュリアが振り返って私を見る。


今日は仕事の合間を縫ってジュリアと王都で買い物をしに来た。



オディマの事件から1週間。


明日ジュリア達が領地に帰るので、最後に買い物に来たのだ。


幸い都市部へのダメージは軽傷で、目抜き通りの往来もいつも通りごった返している。



シャル君? あのじゃじゃ馬娘はトレンド調査よ! とか言って走り去って行った。


エルフ達もいるからまぁ問題はないだろう。



「……何がだ?」


なんだがジュリアには色々と見透かされている気がしないでもないが、父親のプライドとして何でもない様子で尋ねる。



「んー、何だか最近元気がないように見えたから。この前、王様が遊びに来た後にお出掛けされてからくらいからかしら?」



ホントよく見ているな……。


女の子とはそういうモノなのだろうか?

ベスにもすぐ考えが読まれるし、もしかしたら血のなせる技かもしれない。



「まぁ、そうだな……。」




戦友の死を家族に伝えたのは初めてではない。


数え切れないほど手紙も書いたし、遺品や遺髪を持って直接伝えに行ったこともある。


これだけは本当に慣れないし、慣れてはいけない事だと思う。



あいつの奥さん、マリーと言ったか。

彼女はとても気丈な女性だった。


唇を噛み締め、震えながら私に礼を言った。


そんな彼女に私は言付けられた品を渡し、

奴の今際の際の言葉を伝えた。


ただ、すまないと。


その一言で塞き止められていた感情が決壊するように、何故、と呟き大粒の涙を流した。



何故、死んだのか?


何故、今更?


何故、こんな事に?


何故?


何故?



あらゆる疑問や憤りが彼女の中に渦巻いているのが伝わった。


泣き崩れる彼女を前に私はただ立ち尽くすしか出来なかった……。




「―――なんと言うか、私は何にも出来ないんだなと改めて実感していたんだ。」



きっと、私はあの日の事を生涯忘れられないだろう。


永遠に忘れる事の出来ない思いをまた1つ胸に刻みつけ、言い知れぬ想いを込めて溜息をつく。




「んー、そうかしら? 少なくとも、お父様は私に充分特別な事をしてくれていると思うわ。」


キョトンとした顔で首傾げるジュリア。


「……そんな事はないだろう?


私は仕事ばかりにかまけて沢山ジュリアに寂しい想いをさせてばかりの駄目な父親だ。


……しかもその仕事も上手く行っていないという始末だ。」



今日はいつもより心が弱っているのだろう。

普段言わない泣き言を娘に言ってしまう。



「ねえ、お父様。 春先に久しぶりに会った時、私が酷い格好をしていたの覚えてる?


今思うと自分でもどうかしてるって思うんだけどさ。でも、お父様だけが、酷い化粧をした私を否定しないでくれた。


……シャルだって全否定したのにね。」


クスクスとジュリアが笑う。


ああ、確かにそんな事もあったな……。



「シャルの事もそう。誰にも言えなかった私の初めての友達を認めてくれた。


一緒に買い物だって行ってれた。

ウィンドブルムの事は私、一生忘れないわ。


それに、私の我儘をきいてくれて、カーミラお婆ちゃん達を受け入れてくれた。」



ウィンドブルムか……。まぁ、あの事は私も一生忘れられないだろう。


なんと言うか、嫌な事件だったな……。



「―――私、今の日々が大好き。

そして、そんな日々を認めて支えてくれているのは他でもないお父様よ。」


少し困った顔をして私の手を握るジュリア。


「いつもお仕事を頑張ってて、でも私達の事を気にかけてくれてるの、ちゃんと分かってる。


世界で一番、大好きだよ。お父様。」



―――くっ。ヤバい。涙腺に来た……!



ジュリアのあどけなさの残る眩しい笑顔が

私の疲れた心に突き刺さる。


あかん。やっぱりうちの子が聖女や。

教会をボコボコに虐めて聖女認定させな。



「あ、あー、弱った人間が縋りつきたくなるような事を言うもんじゃない。

そんな手管どこで覚えて来たんだ?」


潤んだ目をつぶり、心にもない台詞を言う。


あまり褒められた態度ではないが、私にだってプライドがあるのだ。



「あ、バレた? シャルがこんな感じで話すと、

どんな男の人でも落とせるって教えてくれたんだ。どお? 落ちた?」



―――あの女……!


くそ! もう絶対お土産代は払ってやらん!



「ふ、ふん。まだまだだ。10年、いや、20年は早いな!」


当然、強がりである。


「あら、それだと私、30歳よ?」


何を言うか。30歳なんてまだまだ女盛りの年頃だぞ? 小娘には出せない大人の色気と言うのがだなぁ……。


「まぁ、私はお父様と結婚するからいっか。」



……へ?


「あら? 何を驚いた顔をしてるの?

世界で一番大好きって今言ったじゃない!


お母様から聞いたわ。結婚はお互い好き同士でするのが一番よって!


だから私は大きくなったらお父様と結婚する! 良いでしょ? お父様。」



「え、あ、あぁ。うん。」



「ふふっ。やった! 」



屈託なく笑う愛娘。

その笑顔は花がほころぶ所か、満開の笑顔だ。


……まったく。どこまでこの子は本気で言っているのやら。



―――あぁ、でも、きっとこれが私なのだ。


娘の何気ない言葉に右往左往する、どこにでもいる父親。


それが私だ。


英雄だ公爵だと持て囃されて、どうやら勘違いをしてしまっていた様だ。



出来ることを一つ一つ。

そして、それが家族の笑顔になるなら、

頑張るかいもあると言うものだ。



「ねぇお父様! シャルに聞いたんだけど、男女で出掛けるのをデートって言うんでしょ?

これってデートよね?」


「ああ、そうだな。お買い物デートだ。」



楽しそうに手を差し出すジュリアの小さな手をそっと握る。



「私、色々見たい所があるのよ!」


「ああ、全部見て回ろう。今日は、いや。

いつでも付き合うよ。」



そうだ。 悪役令嬢でも聖女でもしたい事を好きにしたら良い。



ジュリア、君が何になっても私の娘なのは変わらないんだから――――。







二章終了になります。

ここまでお付き合い頂き誠にありがとうございました!


励みになりますので、ブックマークやポイントなど頂けると幸いです!


三章はこの後すぐになります

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