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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と狂人の最後

多目的ホール『創世の間』。

2階奥の控え室。


王族やそれに連なる来賓用の控え室となっており、やろうと思えば数十人規模の人数が生活出来るほどの広さと高級な調度品が置かれた豪華な一室だった。


しかし、今や私と指揮者(コンダクター)の戦闘で見るも無惨な有様になっている。


一脚金貨数十枚はする椅子は全て粉々になり、レアな石を使ったマーブル模様の机は砕かれ、

職人が手間隙かけて作った壁の彫刻も無事なところは一切ない。


部屋の真ん中は大きく陥没し、何なら部屋自体がかなり歪んでいた。



この部屋の補修だけで総額どれくらいになるのか想像すらしたくない。


ましてや、さっきから1階のメインホールでは

雷鳴やら爆発音やらが響いている。


先程から通信魔法でジュリアやシャル君が騒いでいるので、レオナルドが頑張っているのだろう。


もうこれを切っ掛けにこの税金を垂れ流すしか能がないこのホールともお別れだな。



王とリロイはまだ指揮者(コンダクター)の異空間に囚われているが、アイツらは大丈夫だ。


指揮者(コンダクター)から異空間への魔力供給がなくなれば、自然と外に放出される。


空間魔法は確かにチート魔法だが、無駄に魔力を喰う燃費の悪い魔法の代表格だ。



「はぁ……。個人的には清々したが、また明日から会議の連チャンだ……。」


今回のオディマ達の攻撃の中で、ある意味一番私にダメージがあるかもしれん。



さらに付け加えるなら、他種族を見捨てる判断をしたとジュリアに思われたっぽい。


いや、事実そうなのだが……。



魔喰菌。


私が大戦時に発見・培養したファンタジー細菌なのだが、実は兵器としての致死率はそこまで高くない。


感染して発症するまでは早いが、1週間の無治療状態でせいぜい3割ほどの致死率だ。



病気としてみれば高い致死率だが、兵器としては結構微妙な数字だ。


炭疽菌なんかは致死率9割とかって話だし。



そして何より治療方法が確立している。

魔法が使えれば対処療法も簡単だしな。


なので、私としては見捨てたと言うより、対処を後回しにしたくらいのつもりだった。



しかし、エルフのカーミラ女史を筆頭に、あの子は他種族と仲が良い。



仮に私が、


大丈夫! すぐ死なないから平気だよ♪

昔ぶっ殺すつもりで細菌を散布したんだけど、一週間放置しても全然死ななくてさ!

結局倒れて呻いている所を爆撃したんだ☆


とか説明しても、お父様の冷血漢! 人でなし!

加齢臭キツイんだよ!


とか言われるかもしれん……。


あぁ、クソ。オディマめ……!



「く、くくく。何やらお悩みですね? 閣下。

ごふっ……。」


「まだ生きていたのか……。」



陥没した部屋の真ん中で大の字で倒れている

指揮者が笑う。


奴の胸は私に踏み抜かれ陥没している。


『白の刃』で腕はズタズタで、明らかに出血は致死量を超えている。


いくら魔族とはいえ、もう助かる見込みはないだろう。



って言うか、誰のせいでこうなったと思っている?


敵の嫌がることをするのが戦略の秘訣だと言うが、その点で言うならお前は大戦略家だよ。


全く……。




「ご、ご安心を。魔族とはいえこの怪我です。

もう幾許もなく私は死ぬでしょう。

お陰様で、私の望みは叶いました……。」


満足気な顔で笑う指揮者(コンダクター)


そりゃあ満足だろうさ、なんせコイツの望みは言ってしまえば自殺だ。


実に傍迷惑な奴である。



「……他に道はなかったのか?

戦いたいだけなら他にいくらでも選択肢は

あっただろうに……。」


「ある訳がない……。私は戦場で戦って死にたかった。ごふっ。じ、常勝軍である貴方の下では叶わぬ望みです。わ、私を殺してくれるのは貴方以外思いつかなかった……。」



狂人の理屈だな。


実に自己中心的な我儘だ。

他人の立場になって考えるという人間関係の基礎が欠落している。



―――まぁ、私も同じ穴の狢かもしれんがな。



ドカりと指揮者の横に腰を下ろし、奴の目を見る。



「……さっさと逝っちまえ。

そして、戦友達に裏切り者と罵られ、ぶん殴られて来ればいいんだ。」


「あ、ああ、それ、は良い……。

きっとその日の晩の呑み代は、わ、私の奢りになって、しまいますね……。」


「ふん。丁度いいだろう? どうせ大事な嫁さんと息子に会えるのは何十年も先になるんだ。

精々、それまでは戦友達にたかられていろ。」


「え、ええ。ええ、そうですね……。

妻は倹約家でね……。の、呑んでばかりいたのがバレると、き、きっと大目玉だ。」


「ウチも似たようなもんだ。

きっと金玉が震えあがるくらいに怒られる。

今からご機嫌取りを考えておけ。


……嫁さんや子どもの好きな物は覚えているか?」


「あ、あいつは、マリーはアップルパイが好きでした……。後、こ、紅茶です。少し良い紅茶の茶葉を、だ、大事に飲んでいました……。


む、息子はケントは、あの子は、わ、私みたいな騎士にな、なるんだと……。いつも剣を振り回して……。」


「―――分かったよ。最後を看取った義理だ。

私から二人には謝っておいてやる。」



両手で顔を隠し、ポロポロと滂沱の涙を流す

名もなき男。


「あ、ありがとう、ご、ございます。閣下。

ほ、本当に、ありが、とうございます。」



戦場に囚われ、闘争に壊された自殺志願者。

全てを捨て去り、何もかもを裏切る事でしか自己を保てなかった哀れな男。


流すその涙が歓喜なのか後悔なのかは、

私には分からなかった。



「……他に言い残すことはあるか?」


「お、オディマの目的……。基幹的破滅カーディナル・クライシスの、せ、世界の危機の回避……。」


C・Cカーディナル・クライシス!? それは―――!」



原作ゲームのタイトル!?


待て待て待て!

何で突然のタイトル回収が起こるんだ。


世界の危機!?

そんなもん聞いてないぞ!


シャル君から聞いていたのは、人間と魔族の争いという社会構造が主人公達の働きのお陰で変わるとかそんな流れだ。


いや、今の人間族一強の社会構造は魔族にとっては望ましい状態ではないから、という事か?


くそっ!分からん。


指揮者の言い方だと、魔族単体と言うより世界全体の危機のような気もする。



「お、おい。 何で今際の際にそんな意味深な事を―――!」



「……ああ、友よ。 私もそっちに―――。」



マジか……。


最後に大きな謎を残し裏切り者の名もなき狂人はその生涯を終えた……。


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