その頃の白炎の勇者 アランの決意
王都のいたる所で戦闘が行われている。
それに気付いたのは夕食後、孤児院の皆と食事を終えて皆で片付けをしていた時だった。
感知能力の低いオレでも察知出来るレベルの
大きな魔力が王都中に散らばっている。
これは……!
「どうしたんだよ? アラン兄。」
「……なんか怒ってる?」
「きっとジョンがアラン兄ちゃんのオヤツ食べた事バレたんだよ!」
「あ、言うなよ! キース!」
「それともフランが嫌いなグリーンピースをアランお兄ちゃんのお皿に入れてた事?」
「しー!しー!」
口々に騒ぎ出す弟妹達。
つい表情が固くなってしまい、怒っていると勘違いさせてしまった。
元々孤児だったオレの弟妹達。
そのせいか他人の感情には人一倍敏感だ。
努めて何でもないような顔をする。
「―――大丈夫、怒ってないよ。
約束を忘れていた事を思い出したんだ。」
そう言って手に持っていた皿を棚に直し、付けていたエプロンを外す。
「約束?」
「それはダメだぜ? アラン兄。」
「そーそー! 神父様がいつも言ってるじゃん!」
「うん! 約束を破ってはいけませんよって
いつも怒られるもん!」
「ああ、そうだな。……だからちょっと行ってくるよ。今から行けば間に合うと思う。」
一度気付いてしまえば間違えようがない。
まだ戦闘は続いている。
場所は王城を中心とした王都の中心部―――。
レオ達がいる場所だ。
弟妹達にオレのおやつは食べても良いが、皆で分けるように、嫌いなものでも頑張って食べろとジョンとフランに言いつけ食堂を出る。
準備なんて悠長にしている時間はない。
着のみ着のまま、ただし愛剣だけは忘れずに腰に差し玄関の扉に手をかける。
「アラン……? こんな時間にどこへ行くの?」
シスターに声を掛けられた。
もう寝ようとしていたのだろう。
寝巻きに着替えたシスターが簡素なランプを持って立っていた。
肩より少し長い茶色の髪。
少しタレ目な大きな瞳には心配そうな色が映っている。
不安そうな顔をしているからか、普段はオレ達の母親役として大人っぽく振る舞う彼女が何だか少し幼く見えた。
普段はママ姉ちゃんなんて呼んでいるが、
シスターはオレと5つも変わらないのだ。
そんなものかもしれない。
「あー、ちょっとそこまで。友達との約束があるんだ。」
「約束……? 友達って例の公爵家の?」
「そう。 レオの奴と約束したんだ。
大丈夫、すぐ戻るよ!」
「え、あ、アラン!?」
そう笑ってオレは夜の王都に飛び出した。
―――そうだ。約束だ。
あの入学式の決闘の時、約束したんだ。
それはあの素直じゃない親友の頼み事。
最強の領域を目指すのは二人揃ってだ。
きっとレオは戦ってる。
なら、相棒のオレが行かなきゃ始まらない。
そう心で強く叫び、夜の街を駆け出した。
「――――――と、言う訳なんです。」
「そ、そうか……。青春だな……。」
「いや、なんと言うか。こう……、ケツが痒くなるでござる……。」
拘束されて転がされたオレを見下ろしながら、スキンヘッドの山賊の親分みたいな男と異国の剣士風の男が何だかソワソワしている。
公爵騎士団の団長ゲラルド・フォン・ガーランド子爵とヴァーリ隊長だ。
魔力を頼りに王城に近付いた瞬間、オレは捕捉され拘束されてしまった。
一応頑張って逃げ隠れしたのだが、そこは多勢に無勢。
反撃する間もなくあっという間に取り囲まれてしまったのだ。
拘束されて連れ込まれたのは王城付近の広場。
そこには様々な物資が運び込まれ、簡易の野戦指揮所になっていた。
「―――君は確かアラン君と言ったな?
よく我々の追跡から20分も逃げれたな。
ウィンドブルムでの調査能力も悪くなかった。学園を卒業したらH隊に来ないかい?」
唯一顔見知りの隊長格、H隊のゴーウェン隊長が優しく声を掛けてくれる。
いや、光栄ですけど今はどうでもいいので拘束を解いてくれませんか?
と言うか、顔見知りを問答無用で拘束するとかどうなんです?
「あら、ゴーウェン。抜け駆けしないでくれる?この子、細身だけど引き締まった良い筋肉をしているわ。どお?I隊に来ない?」
何か筋肉をやけに強調した服を着たお姉さん?にも勧誘される。
そっか……。 レディ・マキシマムって本当にこんな感じなんだ……。
「―――アラン君、だったわね?
レオナルドと仲良くしてくれて嬉しいわ。
……でもここは既に戦場。護衛を付けるから貴方はもう帰りなさい。」
張り詰めた雰囲気の貴婦人。
エリザベート・ジュリア・フォン・フィンスター=ヘレオール公爵夫人。
レオのお母さんだ。
隊長達が気さくに話しかけてくれて少し緩んだ雰囲気が一気に引き締まる。
5月の長期休暇に会った時は温和な印象だったが、殺気すら纏った剣呑な雰囲気をしている。
多分これが大戦の英雄、氷乱の姫騎士としての顔なのだろう。
そこには有無を言わせぬ迫力がある。
しかし―――。
「―――嫌です!」
思わず真っ向から奥様の言葉を否定する。
先程まで気さくに話してくれていた隊長達の目付きが険しくなる。
……あれ? これって平民が貴族に楯突いたって事になるのだろうか?
無礼討ちなんて言葉が頭をよぎる。
いや、知ったことじゃない。
ここで指をくわえて見てるなんてオレには出来ない。
「確かにオレは未熟かもしれません。
邪魔になるなら見捨ててくれて構いません。
オレも戦わせて下さいっ!」
「なりません。どれだけ貴方が力を持っていようと、戦いとは貴族の義務です。平民である貴方には―――。」
「貴族の義務なんて頭の悪いオレには分かりません。親友が……、レオが戦っているならオレも戦う。それだけです。」
身体中に臨界魔力を張り巡らせ、後ろ手に縛られたまま立ち上がる。
そうだ。この場にレオはいない。
どう考えてもレオは戦ってるはずだ。
ならオレが行かなきゃどうするんだ!
燃えろっ! オレ! 燃え上がれっ!
このまま何も出来ないなんて認められるかっ!
ゴウッ!と音を立てて燃え上がった白炎がオレの全身を包み込み、手を縛ったロープが焼き切れる。
「白い……炎……!?」
白炎に包まれたオレを見て驚く大人達。
「友達の為に命を張るのに、平民も貴族も関係ない。」
驚きながらも油断なくオレを取り囲む。
流石は2つ名持ちの英雄だ。
拘束された時に聖剣を取り上げられた事を思い出すが、そんな事どうでもいい。
剣なんかなくても構うもんか。
「どうしても駄目だって言うなら……!
貴方達全員を倒してでも、オレは行く!!」
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