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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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黒雷の勇者と死者の操人

「『飄々と吹き荒ぶ黒き水。汝は悠久の時、死者の声を聞くだろう。その声―――』」


「『黒雷双牙(ボルトファング)』!!」



ネビロスの詠唱をかき消す様にレオナルドが魔剣を振るい、放たれた黒雷がネビロスを襲う。


黒雷を纏う二対の斬撃がステージを切り裂き、暴れ狂う黒雷がステージごとネビロスを焼く。



「『黒雷暴風(タイフーンボルト)』」


さらに追い討ちとして放たれた黒雷を纏う竜巻が美しく彩られた会場の壁を吹き飛ばし、ネビロスを呑み込み荒れ狂う。



その両目を赤く光らせ、更に魔力を練り上げるレオナルド。


その表情に余裕は一切ない。



―――相手は上位魔族。

歴戦の英雄でお父様や騎士団の連中と同格だ。


俺なんかと比べればその経験値は雲泥の差。

守りに回れば絶対に負ける……!



チラリと背後にいる貴族達と彼の妹達に視線をやり、障壁が彼等を守っているのを確認する。



「おぉぉおおぉっ!! 『黒龍雷轟(ブラックボルト)』っ!」



放たれた極太の黒雷がまるで黒い龍のように進行方向にある全てを焼き尽くしながら真っ直ぐと突き進む。


数ある属性魔法でも特に速度と攻撃力に優れた雷属性と闇属性を併せ持つ稀有な属性。


―――黒雷。


黒雷属性の大魔法三連撃。

その威力たるや超位魔法にすら届き得る。


ネビロスを呑み込んだ黒雷の龍はその余波で会場の半分を完全に破壊し、外に張られた結界と衝突する。



「このまま結界ごと吹き飛ばすっ!!」



さらに魔力を送り込むレオナルド。

黒龍はその勢いを増しその顎がドーム状の結界に食らいつく。




「―――無理だよ。君と僕の属性は水と雷の違いはあれど同じ闇属性。君の黒雷じゃあ僕の黒水を打倒し得ない。」



会場を覆う結界。


そこからボタボタと湧いた黒い水が黒い龍にまとわりつく。



「まったく……。君たち人間族(ヒューマン)の簡易詠唱や無詠唱は嫌になるね。

効率ばっかり求めて雅さがないよ。」



いっそこの場には不釣り合いな少年の幼い声。


黒い水の量が増大し黒い龍を呑み込む。



「分かるかい? 水の属性はあらゆるエネルギーを呑み込む。君の雷が放つ電気も熱も僕の黒き水の前では無力さ。」



その言葉通り、黒い龍の勢いは完全になくなり

黒い水に溶けて消えた。



「嘘、だろ……。」



呆然とするレオナルドを楽しそうに嗤う声。

まるで仕掛けたサプライズが成功した子どもの様に。


「ふふっ。君もたいしたものさ。

お陰で回復に使うつもりだった木偶の肉片も血も全て焼き飛んでしまった……。」



黒い龍と結界の衝突した地点。

ズブズブと不気味な音を立て、ネビロスが黒い水から姿を現す。


彼我の距離は優に数百m。


いくら赤眼とは言え一足飛びに辿り着けない距離。それは魔法戦の距離だ。



―――嫌らしい奴だ……。


同じ闇属性混じりの雷と水。

力量差は向こうが上。


魔法の撃ち合いなら負けないと思ってるんだ。


その通りだよ! ちくしょうめっ!



「『電磁加速(アクセルボルト)』っ!!」



赤眼状態での雷を纏った超加速。

それはロベルトですら防ぐ事しか出来なかった神速の一撃。


しかし―――。



ドプンと音を立てレオナルドの周囲に黒い水の壁がそそり立つ。


慌てて急停止した無防備なレオナルドに、壁から打ち出された水の散弾がばら撒かれる。



「ちぃっ!!」


レオナルドは舌打ちをしながら障壁を張り、堪らず後ろに飛び退く。



「近接戦闘なら自分に分があると考えたのかい? ふふっ。正解だよ人間君。 だから僕は君に近付く気は一切ない。

このまま削り殺して―――、あぁ駄目だ。


僕達の目的は君や君の妹なんだ。

殺したら不味いな……。」


ネビロスの蘭々と赤く光る眼が、獲物を痛ぶって嗤う蛇の様に細められる。



「まぁ二人もいるんだ。最低限、危険な君の手足はもいでしまおう。運が良ければ死なないはずだ。」


ナイフのような歯をギラりと光らせ、その口元を三日月に歪める。



「『飄々と吹き荒ぶ黒き水。汝は悠久の時、死者の声を聞くだろう。その声、その怨嗟、逃げ出すこと能わず。』」



種族問わず、魔法には詠唱が必要だ。


魔力というエネルギー、詠唱となるシステム、

それらを一つにパッケージしたものが魔法術式になる。



大戦中、ロベルトが前世のファンタジー作品の

知識を持って詠唱を簡略化し、無詠唱の術式を

開発した。


圧倒的速度での術式展開、赤眼を初めとした能力差を埋める為の新術式。


そして生物兵器を初めとした前世知識による大量破壊兵器群。


それらを駆使して、能力でも数でも他種族に劣る人間族(ヒューマン)は戦争に勝利した。



ロベルトは言う。


我々は弱者だ。

相手の油断を誘い、弱点を突き、寝首を掻く。


そうやって大戦を生き抜いた。


何故なら、まともに戦えば人間族(ヒューマン)に勝ち目はないからだ―――。



「『闇水の行進曲を聴け』」



ネビロスの力ある言葉と共に黒い水が湧き出し、人形(ヒトガタ)を形作る。


ゆらゆらと動く1000を超える人形の群れ。



「ふははははは! これだ! これが魔法だ!

分かるかい? 君達の単純な射出魔法とは違う!超常の現象を引き起こす奇跡の御手!


僕が手ずから殺してやった1000人の魂を黒い水に封じ込めて使役する高等術式!


さぁ人間君! どうする?

接近戦なら君の方が強いだろう。認めるよ!

しかし、この千の軍勢を超えて僕にその魔剣を突き立てられるかい?


ははっ!守る者の多い君には難しそうだね!」



「クソ野郎め……!」


数百m先に立つネビロスを射抜くように睨みつけ、レオナルドが唾を吐く。


魔剣ノーザンクロスの柄を握り直し、魔力を練る。



―――守る者を背に1000の敵に挑む。

その先にいる魔族の英雄を倒す為に。


三発の大魔法を放った直後で魔力も心許ないこの状況で? 敵は格上。 お父様と同格だ。



頭では絶望しかないと理解している。

きっと勝ち目はない。


しかし、自然とレオナルドの口が吊り上がる。


魔剣からバチバチと黒い雷が迸る。

まるで剣から力が流れてくるように。



―――アルの奴が言ってたな。

俺達の剣は意志を力に変えるんだって。


アルの聖剣は護る意志。

きっと俺の魔剣は戦う意志を力にする。



ははっ。アルの事を馬鹿だ馬鹿だともう言えないな……。この絶望的な状況で戦意を失わないなんてよっぽどの馬鹿者だ。


ハッ! いいさ。やってやる……!


死線を越えろ。限界なんか知ったことか。



黒い稲妻が轟音と共に走る。


レオナルドが黒い雷光を纏い剣を構える。



目指す先(お父様の背中)はあの向こう側だ!


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