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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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64/93

お父様とその頃のおっさん達

夜会の開催を宣言する王の演説。


それは毎年の恒例だ。


しかし、その日時間になっても王は会場に現れなかった。


いないなずがない。

そう会場で知り合った王子は言う。


次第に騒ぎ出す会場の貴族達。


1人また1人と消えて行く関係者。


特例で夜会に参加していたヒロインは偶然にも不審な動きをしていた使用人を見掛ける。


それが切っ掛けに事件は動き出すのだった。




「―――って感じな訳か……。

何か微妙そうなイベントだよな。」


「そうね。サスペンスをやりたいのかミステリーをやりたいのかよく分からなかったわ。

それっぽい感じの導入な割にオチも魔族に使用人達が操られてて、王様が異空間に閉じ込められていたとかそんなしょーもない感じだったしね。特に謎解き要素がある訳でもないし、サスペンスホラーと言えるほど緊張感もないし。

そもそも首都のど真ん中でやってる3000人もいるパーティーでやる事じゃないって言うかさ? やるなら人のいない隔離された絶海の孤島とかでやる少人数のパーティーとかじゃない?」


元々概要はシャル君から聞いていたが、あらためて聞いても面白くなさそうなイベントだ。


シャル君がストーリーはクソと言い切るのも頷ける陳腐な感じがする。



「ふむ。原作がクソなのはいいとしてだ。

人を操る魔族であるネビロスはもうステージの上でスプラッタ―――」


「やめて。あの魔族の事は言わないで。

もう完全にトラウマになってるから。」


全力でステージから目を逸らしながらシャル君が言う。


「って言うかやる事がえげつないのよ。何?

マシンガン乱射って?過程はファンタジーな癖に結果が全然ファンタジーじゃないのよ。

やるにしても、もうちょっとフワッと出来ないの?私やジュリアがいるのに突然目の前でスプラッタなゴア表現入れるのやめてくんない?

映倫に怒られるわよ?」


めちゃめちゃ怒られた。

ファンタジーっぽくフワっと殺せとか、どないせえと言うのか……。



別に私とて好き好んでやった訳ではない。


そもそもあの傷痍騎士達だって助けれるなら助けたかったのだ。


しかし、身体が変異するほど魔力に汚染されていたのだ。あれはもう助からない。


私に出来るのは速やかに楽にしてやる事だけだったのだ。



「まぁ、それは今後の課題としてだ……。

あー、つまり君が言いたいのは、今の状況が5年後の原作を前倒した結果なのだとしたら、違和感があると言う事だな?」


操られていたのは使用人ではなく傷痍騎士達。


閉じ込められてはいるが、基本的に頑丈な結界にであって異空間なんて高尚な魔法ではない。


確かに変と言えば変だ。



それに原作ゲームの事は棚上げするとしても、

奴等の行動は確かに違和感がある。


自分を囮にして生物兵器を撒いて私達を攻撃するのは良い。


しかし、奴等の目的は王族の拉致。


王なり王子なり私なりを回収出来なければ意味がない。



「そう言う事よ。

これさ、もう1人魔族がいるんじゃない?」



あー、やっぱりそうなる?


王も気になるが、リロイが行方不明なのも気になるんだが……。


ま、彼奴らなら大丈夫か。



―――――――――

――――――

―――



「ひ、ひぃいぃ! お、お助けぇ!?」


情けない声を出しながら白刃を避けるリロイ。

十重二十重と繰り出される斬撃をみっともなく転がりながら避ける。


敵対者の数は8人。

全員が目を血走らせ、まともな状態ではない。


メイド服や執事服に身を包んだ人間達。

手には武器を持ち、明らかに操られているであろう王城に務める者達だ。



「よぉし! 良いぞ! そのまま引き付けていろ!

水球よ(ウォーターボール)』!」



カーライル王の周辺に水で出来たバスケットボール程の球が幾つも浮かび、ドポンっと粘着質な音を立てて敵の頭を覆う。


「ぐっ!?」「がはっ!」「ごぼっ!」


リロイを襲う敵対者達の顔を次々と水球が覆い、絶妙なタイミングで水球を消す王。


単純に水球で覆うだけだと窒息死させてしまう為、使用人達が意識を失ったタイミングで水球を消し昏倒させている。



「はっはー!どうだ? スチュアート卿!

まだまだ腕は衰えていないだろう!?」


「ひー!ひー! も、もう駄目だァ……!

シ、シャル! 伯父さんは最後にお前にもう一度会いたかっただよ……!」


息も絶え絶え、脂汗どころか涙や鼻水、ヨダレを撒き散らしながら廊下にへたり込むリロイ。


「……うむ。まだまだ元気そうだな!」


そんなリロイを見て笑顔で頷くカーライル王。



王はロベルトと同じく戦場でその青春時代を過ごした剛の者だ。


当然、リロイと同じ戦場で戦った事もあるし、彼がどんな人間であるか正確に把握していた。



「ひ、ひぃい! あ、新たな敵5名!

えっと、じ、12時方向? きょ、距離5cm?」


「敵と口付けする気か? 了解だっ!」


テンパったリロイの意味不明なクロックポジションと距離感を理解した王がニヤリと笑う。


リロイの目線の先、5m程離れた空間が歪んで

新たな敵が現れる。



目を血走らせヨダレを垂らしながら狂った様に

2人に襲いかかる使用人達。


ドポンっ!と彼等の頭を水球が覆う。



「スチュアート卿。いや、リロイ。俺が相手だからと言って変に畏まる必要はない。

……そうだな、昔お前が住んでいた田舎のお隣さんくらいの接し方で来い。」


首尾良く操られた使用人達を昏倒させた王はリロイに向けて笑う。


「だ、だども、お、王様は王様ですし……。」


「何を言う! 俺はお前の戦友だろ? 友だ!

むしろお前が来てくれたから俺はまだ死なずに済んでいるんだぞ? 」



王とリロイがいるのは殺風景な四角い部屋だ。

出口も窓もない広いだけの部屋。


先程から散発的に操られた使用人達が空間の歪みから襲いかかって来る。


殺す訳にもいかず、カーライル王は彼等を昏倒させ続けていた。



「たった一人でこんな状況だったと思うと流石にゾッとするな……。」



王は創世の間にある控え室にいたのだが、突如部屋の空間が歪み、この部屋に放り込まれた。


天啓魔法に導かれたリロイが来てくれなければ、カーライル王はいつ襲われるとも知れない状況に精神をすり減らし、今頃殺されていた事だろう。



「お前はもっと恩着せがましくして良いんだ。リロイ。 お前のボスを見てみろ。 親戚とは言え俺の事なんか鼻糞程度にしか考えてないぞ?」


「そったごどね!こ、公爵様は優すいがただ!王様の事もうんと尊敬すてら!」


つい感情的になって方言が濃く出るリロイ。

そんな彼に頷くカーライル王。


「ははっ。そんきの物しゃべりでい。リロイ。

力抜げずごどさ。頼むだ?相棒。

―――こんな感じで合っているか?」


「え、あ、な、何で……?」


「王様だからな。国の方言くらいは把握しているさ。そんな事よりコイツらを運ぶのを手伝ってくれ。」



なんでもない事だと肩を竦め、カーライル王は

倒した使用人達を部屋の隅に運ぶ。


2人はこの部屋に放り込まれてから差し向けられた使用人達を既に50人は倒している。


手足は簡単に拘束こそされているが、丁寧に寝かされていた。



「ケイト、ジョンソン、ボビー、この子は……

あぁ、カイルだ。男爵家の5男でな。城に務めれると嬉しそうに喜んでいたのを覚えている。」


「み、皆の名前を覚えでるだか?」


「顔と名前くらいはな。何とか全員助けてやりたいんだが……。」


珍しく力なく笑うカーライル王。

流石の王も打開策のない状況に少しずつ心が折れかけていた。



「や、やっぱす王様は王様だぁ。なんぼオヤグマギでも(いくら親戚でも)、公爵様はつぼけはあらげね(無能には厳しい)。」


リロイにしては珍しく、ニヒルに笑う。


「あー、つまりロベルトは親戚でも無能には厳しいから、俺が王様をやってるって事に自信を持てって事か?」


「んだ。まんだじぐなしなら(もし自信がないなら)オラにまがへろ(オラに任せてくれ)。王様。」


任せろと笑いカーライル王の前に立つリロイ。



「こ、こ、公爵家騎士団A隊(アルファ)隊長『千里天眼』リロイ・ダミアン・フォン・スチュアートが何とかしてやるべ!」



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