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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と貴族達

夜会。



特に正式名称はなく、単に夜会と呼ばれているこの国の貴族参加必須の催しだ。


舞踏会や晩餐会何かの貴族がワイワイやってる立食パーティー的な例のアレだ。



フォーマルなパーティーの場合は舞踏会だとダンスメイン、晩餐会だと食事メインなのだが、

夜会の場合は特にどっちと言う訳でもない。


建国祭の夜会の場合は、言ってしまうとダンスも食事も芸術鑑賞もあるごった煮宴会だ。


貴族風の夏フェスと言ったらイメージが近いかも知れない。



取り敢えず貴族のパーティーっぽい要素を全部

ぶち込んでみましたと言う原作ゲーム制作会社

の雑な思惑が透けて見えるパーティーだな。


主催者側としては色々と要素が多過ぎてダルい催しだが、ジュリアやシャルの様なパーティー初心者からするとイベント盛り沢山だからそれなりに楽しめるとは思う。


問題は私だ。


開場早々から続々とやって来る貴族の対応に追われていた。



「これは公爵閣下!」

「ご無沙汰しております!」

「お初にお目にかかります!」

「か、かか閣下!? せ、先日はどうも……。」


受付の前に立って切れ目なくやって来る各貴族達と軽く挨拶を交わす。


朝の登校時に校門前に立っておはようを言い続ける生活指導の先生みたいなもんだ。



ウィンドブルム君。

君は荷物検査するからそこにいなさい。


何? その魔力素材ゴリゴリの派手な衣装?

また他種族搾取してるんじゃないの?


ホント大丈夫なの?

私がエルフ達に頼み込んで譲歩させなかったら

ぶっちゃけ、君呪い殺されてたんだからね?


ウチの国が原因で起きた他種族の貴族殺しとか裁く方の身になってくれよ。


法整備もまだ色々追いついてないんだから、

問題を起こさないでくれ。マジで。


ほんと頼むよ?



この国の貴族、男爵以上のいわゆる世襲貴族は500家くらい。


この500家が今回の来賓になる。

夫婦や家族で来る奴等もいるが、色々立て込んでいるからと名代だけのパターンもある。


外国からの使者なんかも含めると、なんやかんやでパーティーの規模感としては毎年3000人

前後に落ち着く。



「ガッハッハッ! フィンスターの坊主がまたぞろ小間使いの真似事をしておるわ! 」


「全くだ。 いつまで経っても最高位の公爵である自覚がないと見える。」


「そろそろ彼には人を使う事を覚えて頂かねばなりませんね……。」



何やら騒がしい一団が到着した様だ。


日に焼けた肌をカラフルな衣装で包んだ派手な

3人組を筆頭に、同じ様な雰囲気の貴族がゾロゾロとやって来た。


南部貴族の一団だ。


日に焼けた浅黒い肌と濃いめの髪色は南部貴族の特徴である。


逆に北部貴族は色素が薄く金髪が多い。

黒髪の私が目立つ訳である。



「おやおや、南部の三羽烏(三馬鹿)のご到着ですか。

田舎から遠路はるばるご苦労なことで。」


私も軽口を言いながら彼等と対峙する。


周りに緊張が走る。

どちらともなく、ニッと口を歪めた。



「ご健勝な様で何よりだ! 毎年のつまらない恒例行事だが、早々に貴殿と挨拶が出来るのは面倒がなくて良いな! ガッハハハハ!」


「ええ。私もパーティーが始まるとすぐに挨拶だなんだと取り囲まれるのが嫌でね。 嫌な事はさっさと済ませてしまおうと言う魂胆です。」


そいつは良い! と私の肩を叩く大男。

ヴァスコーニ侯爵が笑う。



「全く……。その気安さは貴方の美徳ですが、大戦の最中に南部からの援助を増やせと直談判しに来た頃から何も変わっていないではないですか……。」


「ははっ。まだまだ小僧でしてね。

グレカーレ侯爵。」


「ふふ。羨ましい限りですよ。

私などだいぶと老け込んでしまいました。」


あの時からもう17年くらいか?

鷹の様な目をしていたグレカーレ侯爵もかなり丸くなった気がする。



「しかし、貴殿からすると自分でやった方が効率が良いのかも知れませんが、貴殿に頼られたいと思っている者は南部でも多いのです。

頼りないかも知れませんが、ね。」


「相変わらずの皮肉屋ぶりですなぁ……。

スフォルツァーノ辺境伯。

それなら陸路の輸送改革をしたいのでご助力頂けませんか?」


「その他人行儀な敬語をやめて頂けるならね。両侯爵は貴殿より年上なので分からなくはないが、私は貴殿と同年代だ。自分より立場が上の貴殿に敬語を使われるのは収まりが悪い。」


「分かったよ、マーク。頼めるか?」


「ええ! 勿論ですとも!」


笑顔でマークと握手をする。

その手はしっかりと鍛えられた戦士の手だ。



こんな感じで続々と来賓達がやって来ては挨拶してを繰り返した。


時にはユーリア君のお母さんとお姉さんが私を

見掛けるなり土下座をしようとしたのを必死で

止めるなんて一幕もあったが、何とか案内と挨拶を終えることが出来た。


って言うか、何したら再生力に優れた吸血鬼のお姉さんが包帯でグルグル巻きになるの?


拷問どころの騒ぎじゃない暴力の片鱗を感じて震えるんですけど?



開場から開演まで3時間でスケジュールを組んでいたのだが、一瞬で過ぎてしまう。


次からはこのシステムはやめよう。

私への負担が多過ぎる……。



「お疲れ様です。お父様。」

「いやぁ辛いわ。パーティー舐めてたわ。

なんて言うの? 圧がヤバい……。」



レオナルドとシャル君が揃って労ってくれる。


結局私だけでは手が足りなかったので、レオナルド達にも来賓対応を協力させてしまった。


リロイ? あいつは人の波に呑まれて消えた。

いつも通りである。



「助かったよ。 思い付きで受付を私が担当するとか言ってしまったが、失敗だったな……。

次からはもっと楽な方法を考えよう。」


ボヤきながら人が居なくなった受付のソファに座り込む。


あー、駄目。もう立てない。



「しっかし、パーティーなんてもっと華やかで楽しいものだと思っていたけど、ビジネスマッチングとか合同営業大会みたいなものね。

公爵閣下への売り込みに目が血走ってる人の多さにドン引きなんだけど。 意見嘆願って言うのかしら? ヤバくない?」


「あー、お父様は立場上どうしてもな……。

シャーロット嬢もかなり目立っていたじゃないか。 なんか求婚されてなかったか?」


「ええ、まぁ……。どう見ても公爵閣下よりも

歳上の男性でしたけど……。

レオナルド様もされてましたよね?」


「あー、うん……。 婚約者がいるとは周知しているはずなんだが……。」



心底疲れた顔をするシャル君とレオナルド。


レオナルドは初めてと言う訳ではないが、去年までよりも周りからの圧が凄かった。


シャル君は言わずもがなだ。


男性も多かったのだが、存外沢山の女性からも声を掛けられていた。


どこで作ったドレスなのかを聞かれていた時なんかは嬉しそうだったな。




「縁談ねぇ。 レオナルドやシャル君はいいとして、ジュリアはどうだ? もし気になる相手がいるなら話をしてみてもいいんだぞ。」


……ん? ジュリア?


「あ、あれ? ジュリア?」

「ジュリアがいない……?」



「―――な、なんだその格好は!?」


「そんな事言われる必要―――!」



なんだか会場の方が騒がしい……。


この声はジュリア?

ジュリアが誰かと言い争っている?



レオナルドとシャル君と顔を見合せ、

慌てて私達は会場の方へ向かった。

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