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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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夜会とお父様

「でも、リロイって実は強かったんだね。

私知らなかったからビックリしたわ!」


「いや、あの態度と見た目で強いとか完全に詐欺よ。クレーム先はどこよ? 公爵家? それともスチュアート家かしら? まぁJAROでもどこでも良いけど、強いなら強そうにしといて欲しいわ! 素直にお礼も言えなかったじゃない!」


「ほう! あの小男か! それはワシも見たかったのう。」


公爵家の所有する王都の屋敷。

その一角に並べられた色とりどりのドレス、アクセサリー、鞄に小物。


ジュリアを初めとした公爵家の面々の為に用意された夜会の衣装である。



姦しく話しながらもシャルとカーミラは手際よくジュリアの着付けをして行く。


磨き抜かれたジュリアの素肌をシャルとカーミラが仕立て上げた渾身のドレスが覆う。


大きくフリルをあしらわれ、所々金糸で彩られた煌めく長い赤のスカート。


赤のスカートの前面は大きく切り取られ、中からの輝く黒の短いプリーツスカートが顔を見せている。


金の刺繍を施された黒のタイツに包まれた足には上品な厚底のパンプス。


手には黒のレースで出来た手の甲から肘までを覆うグローブ。



それは中世から近代に似た価値観のこの世界からすると数百年先を行く未来のデザインだ。



「―――本当にこれで夜会に行くのよね?」


姿見で己の姿を見ながら怖々とした顔でジュリアが誰ともなく呟く。


美しい装いだとは思う。


エルフの秘伝である布地を惜しげもなく使い、

シャルの情熱とカーミラ達の経験と腕で作り上げられた珠玉の逸品。


そこに文句は付けようがない。


このクオリティはこの国の誰と比べても勝てると言い切れるだろう。


しかし……。



「ねぇ。私足太くない?」


「まだ言ってんの? ちゃんと美脚じゃん。」


「そ、そんなことないよ! ほら、太ももの辺りとか太くなってるもん!」


「そりゃあ太ももって言うくらいだしね……。

そもそもジュリアの場合はもうちょっと体重を増やして欲しいわ。貴女のBMIが14くらいだし、シンデレラ体重を考えるならもBMIは18くらい欲しいのよね。まぁ年齢を考えるとまだまだこれからだからそこまで気にする必要はないけど、食生活のバランスは気にするに越したことはないわね。」


「え? あ、う、うん。」


いつも通りシャルの謎の理屈で言いくるめられるジュリア。


「シャル嬢ちゃんの言っている事は相変わらず分からんが、ワシもジュリア嬢ちゃんはそこまで体型を気にする必要はないと思うぞ?」


そんな2人のやり取りにも慣れたもので、カーミラはさらっと流す。


「うーん。そうかなぁ……?」


何度も姿見の前でポーズをとって確認をするジュリア。 2人に何を言われても不安で仕方がない様子だ。



「いつまでも文句言ってないで覚悟を決めなさい! ほら! 指出して!」


そう言いながらシャルは薄いレースのグローブ

に包まれたジュリアの手を取りその指に細い銀

の指輪を右手の小指に嵌めた。



「これってあのドワーフさんのお店で買った指輪?」


「そっ。この為にわざわざ駄々っ子やってお祭りに行ったのよ? 私のお小遣いで買えて良かったわ。」


建国祭の夜会に出ると聞いた時から、シャルはこの指輪をジュリアに渡すつもりだった。


わざわざ指が出たグローブをデザインしたのも全てはこの為だ。


ちなみに、公爵家から給料は出ているが、仕事が趣味のシャルとしてはあまり使い道がないのでその大部分は親に渡しており、手持ちは毎月のお小遣いだけだ。



「わぁ! 可愛い! ありがとう、シャル!」



花開く様にほころんで笑うジュリア。

時折見せる大人びた女王の顔とは打って変わって、それは年相応の幼い笑顔。


ジュリアの心からの笑顔だ。



「イエス! 最高のイベントスチルゲットね!

あのドワーフのアクセサリーは装備アイテムとしても優秀なんだけど、最大級の好感度アップアイテムなのよね! 夜会に参加するって言われた時から絶対指輪をジュリアに渡すって決めてたんだからっ!あー、可愛い! 可愛いわよジュリアたん!」


「そのジュリアたんってやめてって前に言ったじゃん……。何かヤダ。」


一気にその表情は曇り、眉をひそめてシャルをジトッと睨むジュリア。


「あ、あら? 折角上がった好感度下げちゃった!? まぁでもジト目も可愛いから良し!」


無敵である。



「ふむ? 前から思っとたが、シャル嬢ちゃんは女子(おなご)が好きなのか?」


「あー、別に同性愛を否定する気はないけど、私自身はノーマルよ。 人でも物でも単に可愛いものが好きなだけ。」


よく誤解されるけどと笑ってカーミラの疑問に答えるシャル。


「ほお? ならシャル嬢ちゃんも夜会に参加したらどうじゃ? 夜会は男女の出会いの場なのじゃろう? どうしてもワシらは女所帯じゃから出会いなんかないじゃろうよ。」


ジュリアとシャルを中心に動いているせいもあり、公爵家のアパレルチームは女所帯だ。


助け出されたエルフにも男はいるが、あまり関わる事がない。


まだ幼いとは言え、2人に男性の知り合いが少な過ぎる事を気にしていたカーミラが提案する。



「いやいや、私平民だから。 夜会は貴族のパーティーよ? 私なんかが行ける訳ないじゃん。」


「行けるなら行きたいと言う事で良いかの?」


「ま、まぁね? 着飾るのも好きだし……。」


やけに粘るカーミラに違和感を覚えつつ正直に答えるシャル。



「なら問題は解決ね! しゃぁるたん?」


「……え? じ、ジュリア?」



先程の無垢な笑顔とは変わって、いっそ嗜虐的ですらある笑顔。


そこには家臣に有無を言わさぬ女王がいた。




―――――――――

――――――

―――



王城とは単に王様が住む家ではない。


私が時々缶詰めにされる忌わしき議事堂等の複数の会議室、他国の使者を招く外交館、国を護る為の騎士団の本部、最先端の魔法理論を研究する宮廷魔法使いの本部、様々な国営組織の本部、そして王都の都市機能を管理する役所等。


様々な官公庁の本部を兼ね備えた国の心臓部となる重要施設だ。


そして当然、そこには貴族達の社交の場としての機能も兼ね備えている。


王城の敷地内にある巨大多目的ホール。

通称、創世の間。



煌めく星空をイメージした天井に浮かび、輝く無数の魔導シャンデリア。


そして天井には神々の物語を描いた天井画で埋め尽くされており、これらはこの世界の創世を表す1つの芸術作品となっている。


美しく彩られた数々の調度品。

並べられた全ての物が国家の威信を掛けたと言っても過言ではない1級品揃い。


特にホールの随所に並べられた女神を形どった80体もの飾り大燭台が目を引く。


その荘厳な有り様はまさに―――。



「―――まさに金食い虫だな。」



受付(レセプション)の一角に備えられたソファにドカりと体重を預け、つい口からボヤきが出てしまう。


「お父様、あまりそう言う事を大きな声で言うのは……。」


私のボヤきにレオナルドが慌てて諌めて来る。


「そうは言うがな、レオナルド。ここの維持にどれだけ税金を注ぎ込んでるか分かるだろ?

国の予算管理をする私からすると害悪だよ。」



正直、こんな無駄に豪華なホールはさっさとなくしてしまいたい。


前世であったヴェルサイユ宮殿の鏡の間みたいに城の部屋と言うならギリギリ理解もするが、ここは独立したホールだ。


城の敷地に野球ドームがある様なものなのだ。


しかも、野球場なら各領地で野球チームを作って試合をさせれば興行収入を得れるが、ここまで豪華なホールだと格式の高過ぎるパーティーくらいにしか使い道がない。


貴族だからと言ってもそんな毎日パーティーをする訳がない!



「言いたい事は分かりますが……。

王城の管理維持を仕事としている民もいるのです。あまり何でも廃止するのも良くないのではないですか?」


くそ。ベスみたいな事を……。

言う事が段々と母親に似てきたな。



「―――しかし、お父様。良いんですか?

もうすぐ開場なのに、俺達がこんな所で休憩していて……。」


会場の受付では忙しなく王城の使用人達や関連する担当者達が走り回っている。


開場20分前と言った所か?

色々とチェックに余念がない様子だな。


レオナルドとしてはそんな中でただ座っているだけなのは居心地が悪く感じている様だ。


あの傲慢ぽっちゃり君が変わったものである。


まぁ、私とて別に今の状況が落ち着く訳ではないが……。



「私達の役目は来賓者への挨拶役だからな。

気の早い奴等はもう来場しているから、私達もいつでも対応出来るようにここにいるしかないと言う訳だ。」


建国祭の夜会の主催者は当然キング。

つまり王家だ。


当然、王家筋である私達にも様々な役割が割り振られている。


私達公爵家の役目は、受付に立って来場者を歓待すると言うのが役目だ。


そうでないなら私とてギリギリまで家でダラダラしていると言うものだ。



「……受付での挨拶役の話を聞いた時から不思議だったのですが、それなら俺達だけが挨拶すると言うのは変じゃないですか?

普通ならお父様とお母様。もしくは公爵家全員とかだと思うのですが―――。」



実に勘のいい子どもである。


そのうち犬と合成されないか不安になるな。

いや、あれは錬金術師の兄の方だったか?


まぁいい。レオナルドも知っておいた方が良いだろう。



「それは私達が囮だからだ。」

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