お父様と会議室
倒れたリロイはドミニクとシャル君に任せ、私はレディ・マキシマムと会議室に来た。
会議室には我が公爵家が誇る第三騎士団のメンツが揃っていた。
ちなみにウチの持つ騎士団はこの第三騎士団だけだ。
第一と第二は戦死した私の兄達の騎士団で、いわゆる永久欠番と言うやつだな。
「ご足労頂きありがとうございます。御館様。」
慇懃な態度で団長である『斬魔戦鬼』ゲラルド・フォン・ガーランド子爵が頭を下げる。
相変わらずの山賊親分フェイスだ。
会議机には既に各隊の隊長が席に着いていた。
ちなみに、ここにいる隊長格は4人だ。
半分は後から王都に来るベスとエドワードの護衛である。
「すまんな。少し遅れた様だ。
あー、リロイの奴は諸事情で欠席だ。」
「そうですか。まぁ問題ありません。」
うん。リロイだしな。
あいつの魔法はそこまで先の事は分からない。体感1時間前とか2時間前くらいだ。
なのでリロイがここに座っていても残念ながらあんまり意味がない。
会議室のホワイトボードには大きな王都の地図が貼り付けられ、細々とした警備状況が書き込まれている。
「―――さて。状況を説明しよう。
話は聞いていると思うが、建国祭の警備についてだ。 今回は王都守護騎士団と我々の合同だ。
建国祭で使われるのは中央大通とその先にある白の広場、王城だ。これらは王都守護騎士団が警備にあたる事になる。」
全員が揃った事を確認するとガーランド団長が話を切り出す。
「おいおいおい。そいつはつまり、全部アイツらがやるって事じゃねぇか。 団長よぉ。それなら何で俺らが駆り出されてんだ?
そもそも王都は王都守護騎士団の縄張りだ。
アイツらにとってもそれは横紙破りもいい所じゃねぇか?」
F隊の隊長である『爆炎』トニー・エイブラムが質問する。
相変わらずのチンピラ口調だが、トニーはこの手の縄張りや上下関係等は気にするタイプだ。
「確かに。それに王都守護騎士団と拙者達でそこまで連携が取れるとは思えん。そこなヤンキー狐と同意見なのは業腹だが、その辺はどうなっているのです?」
形の良い顎に手を当て、眉を顰める武士。
E隊隊長の『剣豪』ヴァーリ・イクサベだ。
ジャパンファンタジー作品には高確率で出て来る極東にある謎の島国。
彼はそこ出身のサムライだ。
何でも父親が外国の生まれらしく、世界を知る為に国を飛び出したと言うフロンティアスピリット溢れる戦闘狂である。
つまり、大真面目に俺より強い奴に会いに行くをやらかしたのだ。
そして紆余曲折を経てウチの騎士団に入った変わり種である。
「誰がヤンキー狐だっ!? この根暗剣士!」
「ほう! お主の事を言ったと気付いたのか?
中々成長しているではないか。」
「燃やすぞ!?」
「やってみろ。そのちゃちな炎もまとめて斬り刻んでやろう。」
歳も近く入隊も同じタイミングだった2人はこんな感じのライバル同士だ。
「2人の懸念通り、基本的に我々は会場の警護には参加しない。我々に求められているのは目標の速やかな排除だ。」
2人の諍いを無視して団長が話を続ける。
「目標……ですか。
具体的な敵を想定していると?」
ゴーウェンが呟く。
「その通りだ。 そもそも私達を警備に組み込むなど愚の骨頂だろうよ。」
自分で言いながら鼻で笑う団長。
縄張り争い的な問題もあるのだが、1番の問題は人数が違い過ぎるのだ。
王都守護騎士団はその名の通り、王都を護る為の王都騎士団、王都の治安維持を目的とした王都警備隊、そして王家直属の武装組織である近衛隊の3つの組織が集まった巨大組織だ。
総数1万人を超える武装集団。
対してフィンスター=ヘレオール公爵家第三騎士団は確かに質は高いが、300名程度しかいない少数組織。
ウチが警備に参加した所でどこまで意味があるのかは疑問である。
むしろ異様な火力を持つ我々を警備体制に組み入れると、他との連携が取れずに足を引っ張る事すら有り得るだろう。
「つまり、王都守護騎士団が盾で我々は剣と言う役割だ。」
そう言いながら団長がいくつかの資料をホワイトボードに貼り付ける。
「『|魔族の理想のための組織』。
春先に大時計塔からの狙撃を企てた奴等だ。 今回もコイツらがこの王都でテロを企ている可能性が高い。」
「確度はどの程度を見越していれば?」
H隊隊長のゴーウェンの義眼が団長と私に向けられる。
情報収集特化の彼としては気になる所だろう。
「襲撃は確定として動いて欲しい。
詳細は秘匿とするが複数筋からオディマの関与が示唆されている。」
「ほう? 余程確度の高い情報なのですね?」
「ああ。我々が王都内で武力行使を許可される程にはな。」
複数筋からの情報。
つまり、私とシャル君の原作知識、そしてユーリア君の実家からの情報である。
先ず、私のB・Bの知識だと建国祭の日中に事件は起こる。
パレードの山車に爆発物が仕掛けられ爆発。
その混乱に乗じてオディマのテロリスト達が王城に侵入すると言った流れである。
次にシャル君のC・Cの知識だと事件は建国祭の夜、夜会で起こる。
パーティーに紛れ込んだオディマのテロリストによる王家関係者誘拐事件が起こる様だ。
勿論、これはあくまでも原作ゲームでの話だ。
既に私が知らずに好き勝手改変してしまったこの世界線で、どこまで原作知識が通用するかは謎であった。
しかし、そんな時ユーリア君の実家であるセーデルホルム伯爵家からここ数ヶ月オディマ達の動きが活発化しているとの情報が入ったのだ。
やはりセーデルホルム伯爵領にいる魔族の一部はオディマと繋がりがあり、資金や物資の援助をしていた様なのだ。
この事から建国祭でのオディマ出没を確定情報とし、私達が王都で武力行使を行える様に取り計らったのだ。
……本当を言えば、セーデルホルムに潜伏する援助者達はさっさと抑えたいのだがこちらは難航している。
5月にもウチの騎士団で遠征を組んでセーデルホルム領を視察に行っていたのだが、中々巧妙に隠れているらしい。
「少し気になるんだけど、そのオディマの目的って何なのかしら? 」
「何言ってんだマキ姐。破壊工作だろ?」
「姉御が言いたいのは破壊工作によって何を得ようとしているのか、と言う事だろう。
よく考えろ。ヤンキー狐。」
レディの呟きに反応するトニーとヴァーリ。
何故いちいち喧嘩腰になる?
君達もいい歳なんだから落ち着いてくれ……。
「―――奴等の目的は魔王の復活だ。」
そう私が発言をすると、全員がこちらを向く。
「魔族に王なんているんですか? 確かあそこは大統領とかそんな感じでしょ?」
トニーの言う通り、魔族の国は分類すれば共和制であり、彼等の指導者は大統領と呼ばれる。
「最も強き者が国を総べる。 個人的には賛同出来る体制だ。」
……まぁ脳筋な君はそうだろうね? ヴァーリ。
魔族の国、デモンズランド共和国は名前の通り共和制だ。
前世の知識だと王政や帝政より革新的な感じがするのだが、あそこは4年に1回の武術大会で優勝した者が大統領となる脳筋民主主義なのだ。
「なぁに言ってんの? ヴァーリ。 強さと統治能力はまた別よ。御館様クラスがそう何人もいる訳ないでしょ。
―――それで? 居ないはずの魔族の王の復活って言うのは何なのかしら?
単なる革命って訳でもなさそうだけど。」
不敵な笑みでこちらを見据えるレディ・マキシマム。
こういう顔をしていると絵になる彼女だが、如何せん上半身は裸である。
取り敢えず君は服を着ろ。さっきから筋肉がうるさいんですけど?
「古の時代、魔族を統べたとされる魔王。
奴は封印されているのだ。 この国の始祖の血によってな。」
それはこの国の建国神話だ。
魔王の脅威に対抗する為に、有力な豪族達が連合を組み魔族達と戦った。
そして見事魔王を封印したヴァリエント家の若者が初代国王となり、連合は国となった。
原作ゲームでもさらっと出た程度だし、歴史的にも古い話なので真偽の程は定かではない。
いわゆる、諸説あると言うヤツだ。
しかし、この封印自体は実際にあった話なのは間違いない。
「つまり、魔族復活の鍵は初代国王の血脈。
―――王族の血だ。」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
第二章はこのまま建国祭編まで続きます。
父と子、そして国の在り方が大きく動く章になりますので、ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです。
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