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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と妻と娘の優しさ

梅雨も明け次第に暑くなってきた今日この頃。


長期休暇を途中で切り上げ、王都でボロボロになるまで働いた私は寸暇を惜しみ、逃げるように王都から自分の領地へ帰って来た。



ウィンドブルム領で起こった事件の後、私を待っていたのは事後処理という名の絶望だった。



全国の労働者ギルドの運営状況の確認と対策。

各国営組織の採用基準の見直し。

書類の扱い状況の確認とルールの厳格化。

そして全国民を対象にした教育制度の提案。


などなど、その他にも関連する法案や基準の

何やかんやが山の如しだ。



いや、やると言い出したのは私なので仕方がないのは分かっている。


しかし、誰もここまでやるとは言っていない。


何せやればやる程どんどん問題が発見されるまさにフィーバータイムと言うか、最後の方は賽の河原の石積みのような心境だった。



10代の少年少女が主人公の作品あるあるで、大人の不正を子ども達が暴いたり解決するなんて話がよくある。


非常に胸が踊るストーリー展開で個人的にも好きなのだが、実際に起こると最悪だ。


特に今回は子ども達の行動が法律的にも問題ないように立ち回ったり、後処理に奔走したりと裏方に徹していたから本当に辛い。



何より類似の案件が多過ぎた。



ウィンドブルム領と同じ様な問題は程度の差はあれど、どの領地でも見受けられたのだ。


やはり他種族と人間族の能力の差は明確にある為、どの貴族もそれを利用して金儲けに走るのは自明の理だろう。


実際、私もその類いなのは間違いないしな。



問題は自領の人間と他種族との扱いに差があり過ぎる事だ。


じゃあ他種族を重用すれば良いか?と言えばそうでもない。


今度は元々の領民達から反発される。

我々を蔑ろにするのか!ってな具合だ。


これは前世でも問題になっていた移民問題と同種の問題だろうな。



約2ヶ月の白熱した議論の末、取り敢えずの結論は、騙したり陥れたり犯罪は駄目というごく当たり前の結論となった。


為政者としては人々の遵法意識に期待し過ぎるのもどうかと思うのだが、地道な啓蒙活動を頑張るしかないだろうな……。



え? ウィンドブルムの労働者ギルド元支部長と拉致実行犯の4人?


あー、そんな方々もいましたね。


詳しくは伏せるが、エルフ達の呪術は本当に恐ろしいとだけ言っておこう。


エルフを怒らせると本当に怖い。

大戦ではエルフは魔族側だったのだが、我々人間はよく勝てたものだ。


大戦の勝者だからと言って増長して傍若無人になるのは駄目。絶対。


あの惨状はウチの貴族連中にはいい薬になったかもしれないな……。




「あら、ロブ! おかえりなさい!

色々大変だったみたいね? お疲れ様。」


屋敷に帰ると唯一私を愛称のロブと呼ぶ、我が愛妻エリザベート・ジュリア・フォン・フィンスター=ヘレオールが朗らかな笑顔で出迎えてくれた。


「あぁ、ありがとう。何とか一段落したよ。 ……その格好は―――。」



彼女が着ていたのはチャイナカラーと呼ばれる立襟と腰上まである深いスリットが特徴的な上着と、ゆったりとした長ズボンを組み合わせた前世の民族衣装。



「アオザイ、だったか? 綺麗な青の生地に君の金髪が映えて良く似合っている。」


「あら、お上手ね? 品のある動きやすい服が欲しいとリクエストしたらあの子が作ってくれたのよ。 ふふ。当分これで過ごそうかしら?」


確かに品という意味では、アオザイは世界で1番美しい民族衣装と謳われた程だ。


これは間違いないチョイスだな。



落ち着いた青地に金糸の美しい刺繍がよく映える。これはエルフの職人の仕事だろうか?


思った通り、シャル君とエルフの職人達はよろしくやっているようだ。



あの事件の後、当然の如くエルフ達はウチの領地へやって来た。


彼等を雇用する事はなんの問題もないが、いきなり300人もの人を住まわせる事など出来ない。


どうしようかと悩んでいると、彼等のリーダー的ポジションのカーミラ女史が土地だけ貰えるなら問題ないと言ってくれたのだ。


森や山があるとありがたいと言っていたので、ウチの北方にある森林地帯を渡したら何故か3日後にはエルフの村が出来ていた。


奇跡を操るエルフの精霊魔法の理不尽さを感じたエピソードだ。


今後は公爵家のお抱え職人としてその腕を奮ってもらうつもりである。



「おかえりなさい! お父様!」


声のする方に目を向けると、そこには大和撫子がいた。



臙脂色の袴に黒いブーツを合わせ、薄紫と白の小振袖が黒髪に良く似合う。


長い髪をポニーテールに纏め、女学生風にしているのも良いな!


素晴らしい!私の日本人の部分にクリティカルヒットだ!



「良く似合っているよ! ジュリア! とてもハイカラだ。」


「あ、お父様。シャルと同じ事言ってる。

それってどんな意味? 褒め言葉?」


ぬ。ハイカラの意味?


確か高い襟(ハイカラー)の略語で西洋かぶれとか揶揄する意味だったような……?



「い、いや、褒めているつもりなんだ。

なんと言うか大正浪漫的な……!」


「あ、それも一緒! タイショーロマン!

ほんと2人とも不思議な言葉を使うよね!

ゴドーキョーとかゴドーハイとか言い合ってるし、何か特別な意味なの?」


「ご同郷? ご同輩? 貴方は生まれも育ちもこの国よね……? それにシャーロットさんはジュリアと同じ歳のはずよ……?」


訝しげなベスの視線が突き刺さる。



やっべ……。聞かれてたのか……。


別に転生の話がバレても問題はないのだが、いかんせんここは現実なのだ。


私達、前世では同じ国出身の同年代なんだ!

マジミラクルロマンス!なんて事を言うと頭のやべぇ奴扱いされる事受け合いである。



「あー、いや、何と言うか……。あの子とは、

こう、魂的な?」


「「魂……?」」


落ち着け私! 何だ魂って!

ええっと、ええっと……! 駄目だ! 上手い言い訳が思いつかん!




「そう! 魂ですわ! 奥様! ジュリア!」




玄関ホールに甲高い女児特有の声が響く。


声の方を見ると北欧風の黒地にカラフルな花柄の刺繍が入った民族衣装を着たシャル君が仁王立ちしていた。


ポーランドとかあっち系の衣装だっけ?

長い金髪を三つ編みにしているし、何だか高原とかにいそうなイメージだ。


うん。似合ってるけど、何で他人の家でコスプレパーティー楽しんでんの? 君。



「確かに、御館様と私は身分も歳も違います! しかし、同じ魂のパッションを持つ者同士なのです! つまり、同郷であり同輩と言っても過言ではありません! ―――いいですか!?」


何やら訳の分からない事を言いながら私の前に立ちはだかるシャル君。


え、な、何!? なんなの!?



「飛ばない豚は?」

「え、あ、た、ただの豚?」


「真実は?」

「い、いつも一つ?」


「僕と契約して?」

「魔法少女になってよ。」


「パンツじゃないから?」



「―――恥ずかしくないもん!」



シーンとした空気が流れる。


沈黙という名の刃が私の心を滅多刺しにするかのような、それは永遠にも感じる一瞬。


―――いや、何を言っているんだ私は。


何にせよ、私の中にある大切な何かが死ぬのを確かに感じた。


ど、どうすんの?この空気……。



「どうです!? 奥様!」



なぜこの空気でベスに話を振れるんだ!?

シャル君。ハートが強いにも程があるぞ!



「え、いや、そ、そうね。あー、うーん。

ロブ? 貴方疲れてるのね……。」


「そ、そうね。お母様! 私、オーギュストに今日は早目にご飯にする様に言ってくる!」


「そうね。そうしてちょうだい。」



―――な、なんだ? 胸が痛い……?



「今日は早目に夕食をとってお風呂に入ったらゆっくり寝ましょう。 ここ最近ずっと働き詰めだったと聞いているわよ?」


「私お兄様達にも伝えてくる! シャルも行こ!

今日はご飯食べて行くでしょ?」


「そうね!ご相伴にあずかろうかしら!」



3人は話しながら部屋の方へ歩いて行く。


まるで優しさという名の棍棒で殴られているような気分で玄関ホールに取り残される私。



なるほど……。


どうやら私の転生者問題は、シャル君の機転で無事致命傷で済んだらしい。


……これ普通に私は転生者だと伝えた方が傷は浅かったんじゃ……?



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