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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と越後のちりめん問屋ごっこ

「お、俺達にこんな事してタダで済むと思ってんのか!? あぁん!?」


「そ、そうだ! テメェら分かってんのか!?」


「か、隠すと酷い目に合わせんぞっ!」



慌てて店の前に戻って来ると、そこには3人のむくつけき男が転がされていた。


大柄なのとガリとチビの3人組だ。



……うん。普通のチンピラだな。


ウチの護衛騎士達に秒で倒されたのだろう。


簀巻きにされて拘束されている。



一応、念の為に3人の頭に手を置いて魔力を探ってみるが、特にアラン君のような異様な魔力を持ってる訳でもないし、ユーリア君の様に魔族と言う訳でもなさそうだ。



「一応、我々の方でも確認しましたが、完全に普通の平民ですね。―――ただ、懐からこれが……。」



H隊(ホテル)の隊長であるゴーウェンが私に手渡して来たのは3冊の小さな手帳だった。


その表紙には王国の紋章である竜と剣の図案。

そしてハンマーを持つ手が描かれていた。


この紋章は……!



「おい、お前達。この手帳をどこで手に入れた?」



「お、俺たちのだよ!」


「そ、そうだよ! 裏にちゃんと名前と似顔絵が描いてあんだろうがっ!」


「てめぇ! 俺達が誰だか分かってんのか!?

おぉん!?」


3人組が代わる代わる答える。

こいつら、3人一緒にじゃないと質問に答えられないのか……?


しょうもない事に疑問を覚えつつ、改めて手帳を見ると、確かにそこにはこの3人組の似顔絵と名前が書かれていた。


取り敢えず名前を控えておくか……。



「お父様、こいつらは……?」


訝しげな顔でレオナルドが3人組を睨む。


アラン君と2人、いつでも攻撃出来るよう油断なくその腰の聖剣と魔剣の柄に手を掛けている。


うん。中々成長しているようだ。



「あー、うん。 非常に認めにくいのだが、この3人は労働者ギルドの職員らしい……。」


「……え? ろ、労働者ギルドですか?」


目を見開いて驚くレオナルド。



そう。労働者ギルドだ。

その主な職務は労働者へのサポート全般。


職に困った民の仕事を斡旋したり、その管理をする以外にも、労働者を募集している職場を探したり必要な人材の条件をヒアリングしたり、住む所がない労働者の為に住む所を手配したりしている。


現代日本で言うなら、職安に福祉事務所とか派遣会社とかその辺をごちゃ混ぜにした組織だ。


間違えてもこんな借金取りモドキでもチンピラでもない。


……しかし、何故かこの馬鹿共はギルド職員用の身分証明書をしっかりと持っている。


そして労働者ギルドは国営。


……そう。このチンピラ共は残念ながら本物の国家公務員なのだ。





「―――帰ったら取り敢えず全ての国営組織の採用基準を見直そう。」


「あー、そ、そうですね……。」


反応に困ったレオナルドが苦笑いをしながら同意をする。


何せこの国の全ての国営組織のトップは私だ。


正確に言うならば、トップになるのはカーライル王なのだが、アイツの扱いは日本で言う天皇陛下に近い。


この国の象徴的存在であり、残念ながら実務のトップは私になる。



「はぁ、取り敢えず休み明けの仕事がまた増えた事は置いておいて……、お前達は何をしにここへ来た?」



「あぁん!? さっき言っただろ!」


「ここの借金の債権は俺達労働者ギルドが持ってんだ!」


「明日までに返せないなら派遣労働者になって貰う! 逃げねぇ様にクギ刺しに来たんだよ!」



あー、なるほどね。

確かに労働者ギルドの仕事に、借金の肩代わりと言うのがある。


簡単に言うと債権をギルドに1本化して無理なく借金を返しましょうと言う制度だ。


でも、あの制度は問題が多いんだよなぁ……。


ぶっちゃけ踏み倒す奴が結構いるのだ。



労働者ギルドの主な運営資金はギルド支部が置いてある領地貴族の援助で成り立っている。


領主からすると、民の為を思って自分の懐を痛めて借金の肩代わりをしてやっているのに踏み倒すとは何事だ!みたな事を思う奴も多い。


まぁ元を辿ればそれも税金なんだが……。



ともあれ、その結果がこの場末の借金とりみたいな3人組と言う訳だ……。



「―――ねぇ? オジサン達。カーミラ婆さんの借金っていくら?」


私の後ろに隠れていたシャル君が尋ねる。

表情は見えないが、その声はかなり冷たい。



はぁ……。まぁそうなるわな……。


何となく事態を察した私は内心ため息をつく。



「んだァ!?このちびっ子!」


「金貨100枚だっ! それがどぉした!?」


「俺の懐に証文も入ってる! 嘘じゃねぇぞ!」



喚く3人組の1人の懐からゴーウェンが証文を探し当てて私に渡してくれる。



うん。確かに本物っぽいな。


……って、これ原本じゃん。コイツら何で証文の原本何か持ち歩いてるの?


なくしたら取り返しつかないんだよ?

これが借金をしましたよって証拠なんだよ?


馬鹿なの? 死ぬの? って言うか死ねよ。


借金踏み倒す奴が多いのはギルド職員が証文をなくしてるからってのもあるんじゃね?これ。


やはり教育か。教育を徹底せねばならんな。



「―――いい?」


公務員の服務規程制度の見直しに頭を抱える私をシャル君が真摯な瞳で見てくる。


……仕方ないにゃあ。



「二言はない。あの時、言い値で買うのを認めたのは私だ。」


そう言いながら懐から小切手を取り出し、そこに金貨100枚の文字を書く。



「―――これでこの話は終わりだ。」


そう言って小切手を3人組の前に投げ渡すと、借金の証文をレオナルドとアラン君の前に出す。


ニヤッと2人は笑い、腰の剣に手を掛けて証文を細切れに切り裂く。


バラバラになった証文は剣が纏った黒雷と白炎に焼かれ一瞬で消えた。



「さて、もうお前達はここに用はない。

―――そうだな?」



「「「は、はぃいいぃいいいっ!!」」」


少し圧を掛け、赤眼を見せ付けると3人組はほうほうの体で店から逃げ出した。



「―――さっすが!」


「お礼はいらんよ。仕事で返したまえ。」


「あいさー! スポンサー様!

……でも、ホントありがとね。ご同輩。」


「ま、私が原因を作ったと言えなくもないしな。しかし、あまり首を突っ込みすぎるなよ?ご同郷。ここは日本とは違うんだ。」



先輩からの忠告半分、照れ隠し半分くらいの割合でシャル君と内緒話をする。



「……あ、あんたらは一体……?

やっぱり貴族……なのかい?」


驚いた顔をして目を剥くカーミラ女史。


そりゃあ驚くだろうな。

いきなりふらっとやって来て金貨100枚を取り出して釣りは要らねぇと来たもんだ。



「ふふ。越後のちりめん問屋よ。」


シャル君はカーミラさんに笑いかけ、店を後にしたのだった。



大通りに戻ると、日が落ちたからだろう。

先程までの活気はなりを潜め、随分と人通りも少なくなっていた。



「さて、今日はこのまま泊まって帰るのは明日にしよ―――。」


「ああっ!!!」


突然、シャル君が叫ぶ。


こ、今度は何だ!?


「生地っ! 金貨100枚も出したのに婆さんの店に置きっぱなしだった!」


「……ああ。忘れていたな。」


越後のちりめん問屋ごっこに夢中で生地の存在をすっかり忘れていた。


我が事ながら、締まらないなぁ……。



「ちょっと取ってくる!」


「あ、私も行く!」


言うが早いか駆け出すシャル君とジュリア。



「―――よろしいので?」


「まぁ、あの裏路地を入ってすぐだしな。

私は2人を待つからゴーウェン達は宿を手配してくれ。」


そんな会話をしながら2人を待つ。




―――しかし、どれだけ待っても2人が戻ってくる事はなかった。

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