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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と家族旅行

投稿時間ミスりました

今日は9時半と50分になります

「素材がない。」



全てはシャル君のこの一言で始まった。


まるで何かに取り憑かれたように新しいドレスのデザインや採寸、型紙を起こしたシャル君。


全ての準備が整ったと思っていたのだが、そもそもの服を作る素材がないと来た。



発覚したのはゴールデンウィーク3日目が過ぎた頃、最近私のサボりスペースとなっているシャル君のアトリエ。


そこで私達が新たなドレスの打ち合わせをしていた時の事だ。



「いやいや、本末転倒もいい所じゃないか。

シャル君? 君この仕事して何年目? デザインをするのは良いけど、ちゃんと使う素材の事も考えてくれなきゃ困るんだけど?」


「いよーしっ! その喧嘩買ったァ! 昔同じ様なことをチーフデザイナーから言われて大喧嘩した私に死角はないわっ!」


「いや、つまり全く反省してないじゃん!

スポンサーとしては本気で困るんだけど!?」



何せどれだけ素晴らしいデザインをしても作る素材がないのでは正に絵に描いた餅。


今までの作業が全く意味のないものになってしまっているのだ。



「前から当たりをつけていた素材なんだけど、ここの所、全く市場に出回ってないのよ。

調べた感じ希少ではあるけど、ここまで手に入らない事なんてないはずなのに……。」



口では何と言っても、自分のミスだと自覚しているのだろう。 悔しそうにシャル君は親指の爪を噛む。



なるほどね。


彼女は狂ったレベルの速度と正確性を持つ日本の物流常識で物を考えていたのだろう。


世界が変われば常識も変わる。


この世界からするとあそこの物流は正しく異世界レベルなのだ。


彼女自身、頭では理解出来ていても感覚がズレていたのかもしれないな。



「ふむ。恐らく、ウチの領地の市場在庫数が少なかったんだろうな。この世界の市場在庫は貧弱だからちょっと数が出るとすぐに欠品してしまうんだ。 ちなみに素材の名前は分かるか?」


星絹(ステラシルク)風花綿布ウィンドブルムコットンよ。」



あー、なるほどね。

確かにレア素材だ……。


どちらも王国北部のウィンドブルム伯爵領で生産されている希少な布生地だな。



ステラシルクは文字通り、(ステラ)の様に輝く不思議なファンタジー素材。


何でも特定の魔石を蚕に食べさせる事でシルクが魔力を帯び、キラキラと輝くらしい。


金属鎧よりも頑丈で魔法耐性も強く、錬金術を使って任意の色に染める事も容易。


主に最上級の礼服に使われている素材だ。



ウィンドブルムコットンも同じ様な魔力を帯びたファンタジー綿花だな。


非常に頑丈かつ美しい繊維が特徴で、吸湿性があって下手なシルクよりも肌触りもよい。


しかも、通常の綿と違って縮みにくい。


取り敢えず困ったらこれを使えばハズレがないと言う万能素材である。



「夜会は7月だから汗が大敵のシルクもどうかと思うんだけど、そこをファンタジーコットンでカバーしてさ! 素材的にもイメージにピッタリだし、どうしても使いたいのよ!」


うん。 それは理解出来る。


私も折角作るのであれば良い物を使いたいし、シャル君がデザインしてくれた親子でお揃いの夜会服は私も気に入っている。



「この辺りで探して見つからないのであれば、原産地域のウィンドブルム領まで行く必要があるかもしれんな……。」


「やっぱりそうなるわよね……。」



残念そうな顔をするシャル君。


ウィンドブルムまではここから馬車で約10日。

下手をすると材料を買って帰って来るだけで、おおよそ1ヶ月はかかってしまう。


そうなるとドレスの作成期間が取れずに7月に開催される夜会に間に合わなくなる。


夜会が開催されるのは王都だから向こうへ行く移動時間もあるしな……。



「仕方ないわね……。この事は今後の学びって事にして、他の素材で何とか構成するわ。

普通のシルクやコットンなら手に入るし、季節外れだけどベルベット何かで要所要所を代用すれば何とかイメージに近付けるはずよ。

安心して、スポンサー様! ちゃんと納期までにはイメージ通りの物を仕上げてみせるわ!」



ミスは誰にでもある。

そのミスを呑み込み、すぐに立て直すのは流石プロだな。


しかし、異世界生活の先輩としては後輩を助けてやるのも大事だと私は思うのだ。



「……あー、話は変わるがシャル君。

君、ジェットコースターとか得意だった?」


「え? え、ええ。 大型バイクにも乗ってたからあの手の絶叫系は得意だったけど……?」


「なら丁度いい。 異世界に来てからの初仕事でファンタジー素材が使えないのもデザイナーとしてつまらないだろう。」



不思議そうな顔をするシャル君に私はニヤリと笑う。



―――――――――

――――――

―――



さぁ! ここで今回の旅の道連れたるイカれたメンバーを紹介しよう!



まずはこの私!


レオナルドの入学式からこっち、馬鹿みたいに忙しかったからゴールデンウィークは何もしないと言い放って、全ての仕事をキングと部下にぶん投げた最強公爵!


ロベルト・マクスウェル・フォン・フィンスター=ヘレオール!!



2人目!


日本人転生者にして金髪碧眼ロリおかん!

コイツのせいで愛娘どころか最近カミさんからもロリコン疑惑の目で見られつつある家庭崩壊の元凶! 後、コイツと話してると同郷・同年代で話しやすいから私のキャラも崩壊している気がする!


素材の選定は任せた!


シャーロット・ホプキンス!



3人目! 4人目! 5人目!


折角実家に帰って来ても鍛錬しかしていないので無理矢理連れて来た我が家の跡取り息子!

ちょっと前まで自堕落な生活をしていたのに、何でそんなに極端なの?


レオナルド!


レオが行くなら俺も行きますね!とか言って、気軽にノコノコ着いてきた白炎の勇者!

お前絶対ドラゴン退治の時もそのノリで戦ったろ!? 時には引く事を覚えろ!


アラン!


レオナルド様が行くなら当然私も行きますね?と言ってベッタリ着いてきた吸血鬼! この子が関わると一気に血生臭くなる気がするから嫌なんだよなぁ……。


ユーリア・ヴラド・フォン・セーデルホルム!

(まだ正式結婚前なので家名はそのまま。)



そしてフォローは任せた!

公爵家騎士団 H隊(ホテル)



そして―――。



―――――――――

――――――

―――



「ほんとフットワークが軽いわねぇ。むしろ、落ち着きがないと言えばいいのかしら?」


「家族サービスと考えれば当然だと思うがね。しかし本当に良かったのか? 早目に行きたいとは言え、1日くらいなら待てるぞ? 」



ゴールデンウィーク4日目の朝。


朝食を食べながらベスは苦笑する。



「騎士団の演習に着いて行ったエドワードとドミニクを待ってたら1週間の休み(ゴールデンウィーク)なんてすぐ終わっちゃうわよ。 明日には帰って来る予定だけど、演習の行程が1日、2日ズレるなんてよくある話でしょ? 」



そうなのだ。


ゴールデンウィークの直前からエドワードとドミニクはウチの騎士団の演習について行ってしまったのだ。


個人的に次男のエドワードが長男のレオナルドに会いたくなかったから、三男のドミニクを巻き込んで無理矢理予定をねじ込んだ様に思うのだが、その辺の話し合いはまだ出来ていない。



エドワードは公爵家の次期後継者としてレオナルドを意識しているっぽいんだよなぁ。


どうせ後数年もしたらフィンスター公爵家とヘレオール公爵家に別れるんだし、どっちかの当主じゃダメなんだろうか?


この辺の貴族男子の機微は前世が一般人の私には今ひとつピンとこない。


お家騒動とかに発展したら嫌だなぁ……。



「だから私が残ってエドワードやドミニクと話をするわ。 どうせ貴方の事だから、進んで当主になりたがるエドワードの気持ちが分からないなぁ何て考えてるんでしょ?」


あれ? ウチのカミさんってエスパー?



「……そんなに私は分かりやすいか?」


「ふふっ。何年一緒にいると思ってるのよ。

―――逆にあの子の事はお願いね? 私にはあの子の気持ちがよく分からないもの……。

ホント、あの年頃の貴族の女の子って理解出来ないわ……。」



あぁ、そうだね。君はそうだろうね。


ベスとは産まれた頃からの付き合いだ。

あの頃のベスはよく覚えている。


今でこそ貞淑な夫人面をしているが、10歳くらいのベスなんて毎日剣を振り回してた山猿みたいな女の子だった……。


むしろガキ大将?



「……ねぇ? 貴方の考えは分かりやすいって話、ちゃんと聞いていた?」


え、このレベルでバレるの!?


「どうせサル山のガキ大将を気取った生意気な男女だったくらいに思ってるでしょ?

まぁ、正解よ。武門の一人娘だからドレスより武具みたいな教育されてたしねぇ。そういうのが性に合ってたし……。」


うん。完全にバレてるね。

何かもう私が転生者だとバレててもおかしくないレベルである。


ま、私にはこれくらい理解してくれる嫁さんの方が良いのだろう。



「適材適所……かどうかは分からないが、私にとっても初めての家族旅行だ。 出来るだけあの子との距離を縮めてみるよ。」


「ええ、期待してるわ。ロブ。」



そう、最後の同行者はジュリア。


乙女ゲーたるC・Cカーディナル・クライシスのライバル女子。

王家との婚姻をどうするかのか?ドレスは完成するのか?そしてこの前のドギツイメイクは?


彼女の前にあるのは不確かな未来しかない。


しかし、私のやることは変わらない。

ベスの夫として、ジュリアの父親として精一杯やるだけだ。



チラリと食堂のドアを見る。

ドアの隙間からこちらを伺っていたジュリアと目が合ってしまう。



「…………………………。」


「…………………………あ、あのジュリア?」



バタンとドアが閉まり、パタパタとジュリアが走る音が響く。



―――そう。私のやる事は明確だ。


先日のシャル君ショックから口をきいてくれなくなったあの子と会話をする事からだ……。

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