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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様とヒロイン

「―――こ、このバカタレっ!!!!」



開口一番、女児特有の高音の叫び声が部屋に響き渡る。


「あーあーあーあー! 何なのこのメイク!?

ヅカ!? ヅカなの!? そう思ってるなら全世界のヅカファンに土下座して来なさいっ!

先ずは手始めに私からよ! ジュリアっ!」


「え、いや、えっと、私なりにシャルに言われたようにしたんだけど……。」


「限度があるでしょうがっ!限度がっ!!

確かに化粧覚えたては濃いめになりがちだけどもうちょい抑えなさいよ!? そもそもアンタは顔面偏差値高いんだからこんなにゴテゴテやる必要ないのよっ! 元々目もパッチリ二重だし、まつ毛も長いのにこんなに色々塗りたくっちゃってまぁこの子は……!」



一に対して十を返す勢いで捲し立てる少女。


彼女は少しウェーブのついた長い金髪を振り乱し、ジュリアの惨状を見て怒っている。


しかし、そのサファイアの様な蒼い瞳には怒りではなく親愛の光が輝いていた。


浪速のオカンかな?



彼女はジュリアを捲し立てながら手から小さな水球を生み出し、取り出したハンカチを濡らしてジュリアの顔を拭き出した。



―――ぬ。無詠唱の水魔法か……。

中々の練度だ。



「何このなっがいつけ爪!? ジュリア、アンタこんなのどうしたのよ?」


「えっと、オーギュストに相談したら用意してくれたんだ。何でもマッドシザーってB級モンスターの爪なんだって……。」


「モンス……!な、なんてもん付けてんの!? すぐ外しなさい! むしろ呪われそうだしさっさと捨てちゃいなさいっ!」


「えー。でもこれ1本金貨10枚くらいするらしいし勿体ないよ……。」


「むっ!だっ! なんてモンになんて無駄なお金掛けてんの!? 何!? 毎日銅貨1枚のお小遣いの為に態々アンタの所までパンを届けてる私に喧嘩売ってんの!? 買うわよ!? もう貴族とか平民とか関係なく買うわよ!? その喧嘩!」


「え……、シャルがウチに来てくれてたのって私に会いに来てくれてた訳じゃないの……?」


「あー、もう泣くな泣くな! 最初はお小遣い目当てだったけど、今じゃもうアンタに会う為に毎日来てるわよっ! ほら!ちゃんとホントのこと言ったからもう良いでしょ!?」



ため息をつきながらもその手はジュリアの顔を拭くのを止めない。


一通りジュリアの化粧を落とし終えると彼女は満足そうに頷く。



「うん。 今日もしっかり可愛いわよ! 親友!

―――しっかし、何でまたあんな奇天烈なメイクをしたの? 普段はちょっとチーク付けるとかリップ塗るくらいじゃない。」


テキパキと少女はジュリアの服を整え、髪を整えながら事情を聞く。


かなり手馴れた様子だ。


普段からジュリアの世話を焼いていると言うのもあるだろうが、彼女の手元からは熟練の経験を感じる。


美容系の仕事をしていたのだろうか?



「えっと、この間シャルがデザインしてくれた靴が仕上がって来てさ……。お父様とお母様が帰って来るから気合いを入れようと下ろしたんだけど……。」


「あー、あるある! 気合いが空回りして―――って限度があるわっ! え、ちょっと待って?

あの靴出来たの!? 先にそれを言ってよ!

今履いてるこれ!? あー、いい! めっちゃ良いじゃん! 流石公爵家ねぇ。腕の良い職人抱えてるわ。ハイブランドの職人レベルよ!」


ジュリアの履いている靴をうっとりした顔で眺める少女。


それは黒い厚底のピンヒールだ。


厚底部分は5、6センチくらいか?

側面には金箔でかなり精緻なデザインが入っている。


素材にもかなり拘っているのだろう。

まるで上質な漆器の様な光沢のある黒だ。


黒と金は成金趣味的な下品になりやすい配色だが、デザインの上手さか職人の腕かは知らないが上品にまとめられているな。



「……確かにかなりドレッシーなこの靴に合わせるなら、パンチの効いた服や化粧が欲しくなるわね。 正しいわ、ジュリア。アンタの考えは何も間違っていない。ただ、圧倒的にメイクの腕が追いついてないだけよ。」


「……それ、私褒められてる?」


「褒めてるわよ! 腕なんか磨けば光るのよ!

でも、センスを磨くには時間が掛かるの。

アンタはそれをもう持ってる! 安心なさい!

この天才ビューティアーティスト、シャーロット・スチュアート様がアンタを世界で一番の令嬢に仕立ててあげる!」


「……スチュアート? シャルってホプキンスじゃないの?」


「……え、あっ! ご、ごめん! 間違えた!

シャーロット・ホプキンス様よ!」



語るに落ちるとはこの事だな……。


ホプキンスとはウチの領地にある村の名前だ。


平民には苗字はないので、名乗る時は生まれた村や町の名前を名乗ることが多い。


ホプキンス村のシャーロットくらいの意味だ。



後は代々生業としている職業を家名っぽく名乗ることもある。


例えば、鍛冶屋ならブラックスミス、飯屋ならダイナーと言った具合だ。


日本で言うなら大工の源さんみたいな感じ。


ちなみに、大工の源さんをこちら風に言うと

ゲン・カーペンターとなる。



しかし、スチュアートは違う。


スチュアートはウチの寄子のひとつ。

スチュアート侯爵家しかない。


これはあれだな。


小説やゲームでよくある、平民だと思っていたら実はどこぞの貴族のご落胤だったと言うやつだろう。


私は詳しいんだ。



……え? そうなるとこの子ってリロイの親戚になるの?



「ま、まぁ私の家名なんてどうでもいいの!

今大事なのはこの靴に合うドレスよ!

7月に王都で開催される夜会に出たいって言ってたじゃん! それに合わせてドレスを作ろうよ!

私が本気でデザインしてあげるしさ!

ほら、丁度ジュリアのお父さんやお母さんが帰って来るんでしょ? この靴見せてアンタがおねだりしたら一発で解決よ!」


「え、あ……! う、うん。そ、そうだね。」



ジュリアは私の存在をようやく思い出したのか、何とも言えない気まずい顔をしてこちらに目配せをする。



7月の夜会……?


ああ、王都で開催される建国祭の夜会か!

そう言えばそんなイベントもあったな……。


基本的にパーティーは面倒なので断り気味な私だが、あれは断ると立場上不味い。


毎年嫌々出ていたからすっかり忘れていた。



そんか私にまだ気付かずに新しいドレスのデザインを熱弁するシャル君。


ふむ。まだ気付かれてないみたいだし、ちょっとイタズラをしてみよう。



「折角良い感じの靴なんだし、ドレスは出来たら足は見せるデザインにしたいんだけど、新し過ぎるかな? 基本的に今くらいの年代だと足元を隠すくらいのスカート丈よね?」


「―――ふむ。そうだな。女性は足元を隠したデザインのドレスが良しとされている。

確か女性が足を見せるデザインの服を着るようになったのは1900年代だったか?」


「そうよね。 ギリシア時代から何千年も足元を見せるのはタブーだったんだもの……。

マリーアントワネットなんて例外はあったけど足を見せるデザインになったのは1900年代初頭のポール・ポワレやガブリエル・ココ・シャネルまで待たなきゃいけないわ。

まぁ今回の場合、デザイン的にはそこまで足を出す必要はないわね。足首下くらいまでのロングスカートならいける、はず……。」



そこでバッチリとシャル君と目が合う。



美しい子だ。


緩くウェーブの掛かった髪は黄金。

青い瞳はまるでサファイアの様だ。


まだ細いその身体は陶器のような美しさと触れれば壊れてしまいそうな儚さが同居している。



彼女はぎぎぎと壊れたロボットの様に首を動かし、ジュリアを見る。



「あ、あー、ジュ、ジュリア様? こ、こちらのナイスミドルな紳士はどなたでしょうか?」


「え、えっと……、わ、私のお父様……。」



バッとシャル君は身を翻し、美しいまでの土下座をかます。



「ご挨拶が遅れて大変失礼しましたっ! !

ジュリ……じゃない! ご息女には日頃から非常にお世話になっております!!」



うん。私は結構この子好きだな。

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