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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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29/68

お父様、領地へ帰る

本日より第二章を投下します

お時間がございましたらお付き合いくださいませ

フィンスター=ヘレオール家の領地は広い。



寄子の貴族家も多いので、ざっくり言えば王国の真ん中から上半分はウチの息がかかっていると言える。


そして領地が広いからか、無駄に屋敷も広い。


屋敷と言うか城だ。


日本人がイメージする様な西洋の城。

尖塔を寄り集めた外観、青と白を基調としたファンタジーな配色。


うん。何度見てもこれ千葉のファンタジーなランドで見た事ある奴だ。


あれより大きいが、シルエットはほぼそのままである。



王都からえっちらおっちら、うちのカミさんであるベスと1週間かけて帰って来た久しぶりの我が領地、我が城である。



「おかえりなさいませ。御館様。」



馬車を降りると目の前にピシッと90度の最敬礼を行う背の低いナイスシルバーが目に入る。



「長い間留守にしていて済まないな。

変わりないか?オーギュスト。」


「ええ。全て滞りなく。」



オーギュスト・ロウ。


彼は我が家に数代前から使えている執事だ。

私とベスが王都に行っていた留守を彼が預かってくれていた。


身長は140cmほどとかなり小柄な彼だが、白髪を丁寧に撫で付け、油断なく燕尾服を着こなす老紳士だ。



「やはり交通網の整備は必須だな。いちいち王都に行くだけで1週間もかかるなんて無駄の極みでしかない。」


テキパキと私達の荷物を馬車から下ろす使用人達を横目にオーギュストを連れて屋敷に入る。


「例の自動車でしたか? 馬の産地への影響を考えて話を止めておりましたが、そろそろ話を動かしてもいいかも知れませんね。」


自動車の開発自体はこそこそと進めていたが、既存の馬業界への影響を考慮して止めていた。


しかし、いい加減物流を加速させないと色々と不便過ぎる。



「そうだな。関係者を集めて話を進めたい。

今週中を目安にスケジュールの調整を行っておいてくれ。」


「承知しました。」


「あなた。それも良いですが、銀行業務のうち融資や国債発行の打ち合わせがあります。あなたにはそちらを優先して欲しいですね。」


「ああ、それもあったな。戦災復興費も後5年でなくなる予定だからそれに合わせて予算繰りが出来る様にしなければならんか……。」



ベス―――、我が愛妻エリザベート・ジュリア・フォン・ヘレオールの言葉に頷く私。


彼女は領地を空けがちな私の代理として様々な事業の補佐をしてくれている。


名実共に私のパートナーだ。



王のワガママと私のノリで戦災復興費が5年でなくなる予定になったから、それに代わる施策を進ませねばならない。



くそ! 何で私はあの時あんな事を言ってしまったんだ……!


いや、南部貴族の事を考えるといつまでもダラダラ戦災復興費を徴収するのも考えものだ。


北部貴族も援助される事に慣れきってしまっているので、喝を入れる為にも復興費はどこかで打ち切る必要があったのは間違いない。


あぁ、また仕事が増えてしまう……。



「それでしたら市民会と商人ギルドを合わせて呼び付けて会合を開くのはいかがでしょう?

定例議会はまだ先ですが、彼等にも関わる話ですし。」


「……だな。国債や融資は言ってしまうと金融商品だ。商人達も必ず興味を持つはずだ。

何ならこのまま以前から計画していた株式市場を開いてもいいかもしれんな。」


「昔に仰っていた信用経済の創出ですね?

全く新しい経済概念の創出! つまりは利益!

ふふふ。 この老骨に流れる小人族(ホビット)の血が騒ぎます……!」


オーギュストがニヤリと笑う。

その笑顔は完全に悪代官に対する越後屋のソレだ。


うん。お手柔らかにね?



オーギュストは小人族(ホビット)だ。


指輪物語なんかに出てくる背の低い一族だが、彼等は寿命が長く非常に頭が良い。

この世界では商人を生業としている事が多い。


特にオーギュストは頭が良く、私がまだ小さい時にポロリと漏らした貨幣や株式などの断片的な話から信用経済の概要を読み解いた傑物だ。


江戸時代に生きているのに、私の一言で一気にその考えを令和まで飛躍したある種の化け物。


それが彼だ。


彼がいなければ、銀行業務を初めとした私の様々な思い付きは形にすらならなかっただろう。



ベスとオーギュストを引き連れ、打ち合わせをしながら屋敷に入る。


屋敷のロビーに2人の男の子がいた。



「お父様! おかえりなさい!」

「お久しぶりです! お父様!」


ウチの次男であるエドワードとドミニクだ。



ドミニクがドスドスと足音を立ててこちらに飛び込んで来る。


―――くっ!?


まるで砲弾のような衝撃が私の身を襲う。

瞬間的に赤眼になり、ドミニクを支える。


危なかった……。

もう少し赤眼になるのが遅かったら吹っ飛ばされていたところだ。



「い、良い子にしていたか? ドミニク。」



努めて冷静にドミニクの頭を撫でる。

身長差があるので頭を撫でるのも一苦労だ。



「はい! 最近は騎士団の皆とチャンバラをしてるんです!」



声変わりをしていない少年の声で元気いっぱいに頷くドミニク。


短く刈り揃えた黒髪。

少しタレ目がちな翡翠の瞳は母親のベス譲りだ。


しかし、その見た目は180cmオーバー。

体重は100kgを越すマッチョマンである。



あー、まぁアイツらなら大丈夫だろう。

全員赤眼使えるし……。



「そうか。 まぁ怪我をしない(させない)ようにな?」



ミオスタチン関連筋肉肥大。


言ってしまうと、ドミニクは筋肉が異常発達してしまう病気だ。


さらにファンタジー要素である魔力も絡んでいるのだろう。


まだ赤眼すら使えないのに、ドミニクは赤眼状態の私と張り合える程の身体能力を有している。



「はい! でも、僕は戦うのが苦手なので最近はI隊(インディア)のマキシマムと一緒に筋トレをしているんですよ!」


「そ、そうか……。筋トレを、ね。」



あ、あのI隊(インディア)の筋肉信奉者共め……!

ウチの子をどうするつもりだ!?



「あ、あー、ドミニク。それ以外は問題ないか? 例えばこの国や世界を破滅させたくなったりしていないか?」


何せこの子は、原作ゲームでは復讐鬼としてこの国や世界を相手にたった一人でテロ行為、いや、戦争を仕掛けたのだ。



「あはははははは! 嫌だなぁ、お父様!

そんな恐ろしい事、考えもしないですよ!」



ズシンっ! と右肩に衝撃が走り、踏ん張った私の足元の床がピシリとひび割れる。



「そ、そうか。なら何よりだ。」


「……だ、大丈夫ですか? お父様」


こっそりとエドワードが聞いてくる。


「あぁ、問題ない。」


「最近、ドミニクはまた力が強くなっているので本当にお気をつけ下さい……。」


「そうだな。身をもって体験したよ……。」


「注意をしたいのですが、あまりはっきり言い過ぎるとドミニクが泣いてしまうので……。」


申し訳なさそうな顔をしてエドワードが謝る。


別にエドワードのせいではないのだが、この子は昔から責任感の強い所があった。



「色々心配をかけて済まないな。エドワード。」


そう言いながらエドワードの少し長めの黒髪を撫でてやる。


エドワードはその大きな黒い瞳を細めて擽ったそうに笑う。



「いえ、これくらいは当然です!」


「王都ではレオナルドも頑張っているしな。

ふふ。我が家は安泰だよ。」


「―――え? お、お兄様がですか?」


驚いた顔をするエドワード。


うん、まぁここ最近レオナルドは酷かったみたいだから仕方のない反応だろうな……。


「ああ。こっちにいた時は少し腐っていた様だが、随分変わったよ。……見た目もな。」


見た目なんかほぼ別人だ。


「そ、そう、ですか……。」



ふむ? 何やらエドワードはショックを受けている様だが……。


え、……あ! もしかしてエドワードは当主の座を狙ってたりするのだろうか?


そう思うと、何やら肩を落としているようにも見えるエドワード。


これはフォローをした方がいいのか?

いや、でも何と声を掛ければ……?



「御館様。そろそろ執務室に……。」


オーギュストが耳打ちをして来る。


そうだな、そろそろ仕事に入らねば……。



いや、待て。これが駄目なのだ。

レオナルドと同じく、私も父親として変わらねばならない。



「―――あー、オーギュスト。すまないが、折角久しぶりに帰ってきたんだから今日は家族サービスをしようと思う。」



ベスから聞いていたジュリアの件もある。

先ずは子ども達と話を―――。




「おかえりなさい! お父様っ!!お母様!!」




玄関ホールの奥にある螺旋階段。


その上段からまるで千両役者のように女の子が降りてくる。


しゃなりしゃなりとワザとらしいシナをつくり、芝居がかった動作が鼻につく。


その長い黒髪はツインテールに結ばれ、先端は伝統のドリルテール。


そして何より問題なのは顔だ。


元々は母親(ベス)似の可愛い顔をしているのだが、顔中を白粉で塗りたくり、口元はドギツイ赤い紅が引かれている。


まつ毛は長くバッサバサ。きっと瞬きの度に風を巻き起こす事だろう。


目元は舞台女優なんか目じゃないくらいに縁を黒とラメで彩られていて普通に怖い。


鼻を高く見せる為に立体的に施された化粧は、本来は可愛らしい彼女の鼻をまるで絵本の魔女の様なワシ鼻にする事に成功している。



―――うん。 我が不肖の愛娘だ。



と言うか誰だ!?

うちの子にあんな異次元の宝塚メイクを施したのは!?


チラリとオーギュストを見ると、彼はサッと目をそらす。


「ジュリア様は美容に目覚めたと仰り、様々な化粧法を学ばれ……その、最近はご自身でお化粧を……。」


「……そうか。」



まさかの自爆だったでござる。


いや、そりゃそうだよな……。

ウチの使用人はほぼ全員貴族の出だ。


オーギュストの様な他人種もいるが、その出自は貴族相当の確かなもの。


化粧ひとつにしても幼い頃から厳格に仕込まれており、間違ってもこんなお笑い芸人みたいなメイクをする事はない。



……駄目だ。これは駄目だ。


ドミニクの事やエドワードの事も色々と気になるし、仕事も山積み。


しかし、これは放置出来ない。




「……オーギュスト、すまんが今日の予定は全てキャンセルだ。喫緊で解決しなければならない特大の問題を認識した。」


「……ご武運を。」



まるで戦場に出立する戦士を見送る様に、恭しくオーギュストは頭を下げた。

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