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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第一章 長男入学編

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お父様と炎の狐と蛇

大時計塔(グレートベル)


元ネタは前世で言う所の英国の名所だろう。

高さ96.3m。所謂ゴシック建築様式の四角い塔で4面に大きな時計が設置されている。


本家と少し違うのは国会議事堂ではなく王城に併設されており、学校のチャイムよろしく一定時間が来ると鐘の音が鳴る。



「まさか王城に忍び込むとはな……。」


王城内ではなく付帯設備の時計塔とは言え、城の警備は一体何をしているのか……。



F隊(フォックストロット)を引き連れて王都の街通りをひた走る。


私達を見て驚く通行人達をすり抜け、屋台の上を飛び越え、王都の南にある学術区画を抜けて王城がそびえ立つ中心区画へ。


魔力のあるこの世界では馬や馬車を使うより走った方が早い。



「大将。どこまでならぶっ潰しても問題ないんっすか?」


私のすぐ後ろを追走しながら、赤髪、と言うよりオレンジの派手な髪色をした粗野な男が口元を歪めながら尋ねてくる。


……良いわけないだろ。

王城だぞ?


あそこは無関係の民間人も多いのだ。

そんな所を戦場にする訳にはいかないのがわからんのか?



オレンジ髪の男―――F隊(フォックストロット)の隊長である『爆炎』トニー・エイブラムを睨みつける。


「いや、分かってるんですよ? 流石に王城を爆破するのは不味いって! でもですね! 範囲攻撃特化の俺達としちゃあ、そこは死活問題っつぅか……!」


見た目こそ粗野だが、トニーは割りと小物っぽい所がある。


睨んだ私に慌ててペラペラと言い訳をする。


まぁ言わんとすることは分かるが……。



ウチの騎士団は全部で10の部隊がある。

それがA隊(アルファ)からJ隊(ジュリエット)までの10部隊。前世の軍隊で使われていたフォネティックコードを元に構成されている。


ちなみに、フォネティックコードを使っているのは単に私の趣味である。


単にアルファベットでAやBと呼ぶより、アルファやブラボーと呼ぶ方が格好良いと思う。



何故か各部隊の隊長に似た性質の部下が集まりやすく、例えばこのF隊(フォックストロット)は広範囲攻撃、特に炎の魔法を得意とする。


性格も割りと大雑把な人間が多く、騎士としては割りと問題児と言うか、田舎のヤンキーみたいな奴等ばかりだ。


揃いの黒の軍服を着て公爵家の紋章である交差する黒鍵の紋章が描かれたマントを羽織っているのだが、何だが暴走族が特攻服を着ているみたいに見える。


彼等の軍服の胸に縫い付けられている部隊章にはデザインされたFの文字と焔を纏う九尾の狐が描かれているのが見えた。


なんて言うかチーム腐汚苦棲斗露斗って感じ。



「―――馬鹿なことを言っていないでそろそろ警戒しろ。もうつくぞ。」


皆揃って赤眼状態。

たかが10kmなんて数分だ。


目の前にはどこかで見たことのある大きな時計塔が見えて来た。



適度な距離を保ち、近場の建物の屋根の上から時計塔を監視する。


「敵の位置が分からないのが痛いな……。

トニー。何とかならんか?」


「リロイの旦那みたいな事を期待されても困るんですがね……。『炎蛇』! やれるか?」


トニーが炎蛇に華麗に丸投げをする。


炎蛇はF隊(フォックストロット)の副隊長だ。

ギョロりとした蛇っぽい目が彼のチャームポイントである。



「やれるだけやってみますがね……。

熱い奴はいねぇか(サーマルアイ)』!」



炎を操る奴の詠唱ってなんでこんな何だろう……。アラン君も大概だし……。


炎蛇の力ある言葉と同時に、彼の目に魔力が集まる。蛇のピット器官を模した熱感知魔法だ。


普通は数mくらいしか効果範囲がない補助魔法だが、ウチの炎蛇クラスになるとその効果は劇的に変わる。



「時計塔にはざっと十人以上はいますね。

ありゃあ、機関部の調整をしているのか?」


ふむ。そいつらは無関係かな?

恐らく普通の作業員っぽい感じがする。


オディマはそう人数の多い組織ではない。


「……単独かそれに近い人数で動いている奴はいないか? ここから競技場を狙うとすれば、大時計塔(グレートベル)の屋根とか高い位置に潜んでいると思うのだが……。」


少なくとも10km先の競技場をここから狙うのならば、かなり大掛かりな魔法になる。


それこそ魔法陣を敷いたり、何か仰々しい触媒をいくつも用意する必要がある。


だからこそ、犯人はなるべく人の少ない所、かつ競技場を狙える位置にいるはずだ。




「―――いますね。屋根の上に1人。」


本当か!?


「身長は180cmくらい。結構ガタイの良い男ですね。魔族かどうかは分かりませんが、少なくとも戦士なのは間違いありません。

この感じ、革鎧を着込んで武装をしてます。」


なるほど……。

現状、限りなく黒だな。



「―――よし。とりあえず撃て。」


「は!? 警告もなしにぶっ放すんスか!?」


目を見開いて驚くトニー。


「馬鹿かお前は。警告なんかしたら気付かれるだろ。」


相変わらず見た目はヤンキーな癖に、変な所で常識人だな。


「少なくとも王城の施設の屋根上に潜む不審人物なんだ。いきなり撃っても問題はない。」


「いやいやいや! 時計塔の機関部には民間人っぽい奴等もいるんですよ!?

それに王城をぶっ潰したら駄目だって……!」


「ちっ。平和ボケしたか? 『爆炎』。民間人に当てないように目標だけ燃やせ。 出来ないとは言わせんぞ。」



この程度の綱渡りなんか日常茶飯事だった。



こいつらは元々当時公爵家の三男坊だった私が集めた者達だ。


実力はあるが周りと上手く馴染めなかった者。

騎士になりたかったが、家柄が低くどこにも雇って貰えなかった者。

行き場のない者。成り上がりを目指す者。


そんなはみ出し者達を拾い集めて組織したのがフィンスター公爵家第三騎士団だ。


公爵家とはいえ、所詮は三男坊の私設部隊。


誰からも認められることはなかったし、正直に言えば、私を含め鼻つまみ者の集まりだった。


だからなのかは知らないが、私達に与えられる作戦は常に過酷なものばかりだった。


ただその日を生き残る為に我武者羅に戦った。


失敗も多かったし、手痛いしっぺ返しを食らうこともあった。


しかし、私達は何とかそれらを必死に乗り越えてきた。


そして、その結果が今なのだからそれは大したものなのだろう。


しかし―――。



「英雄扱いされて日寄ったか? 『爆炎』。

思い出せ。私達は所詮、スペアのスペア(公爵家の三男坊)とその私設部隊。綺麗な軍服を着てパレードをするのが私達の役割じゃあない。」



そう。私達はあの頃、綺麗な軍服を着ることなんかなかった。


いつもボロボロの汚れた雑巾みたいな軍服を着ていた。―――私達の本質は雑巾なのだ。


しかし、私はそれを卑下するつもりはない。

雑巾には雑巾なりのプライドも役割もある。


私達は私達だからこそ、綺麗な服を着た奴等には出来もしない事が出来るのだから。



「―――あぁ、そうでしたね……。

雑巾には雑巾の役割とプライドがある……でしたよね? 大将。」


力なく笑うトニー。


あぁ、その通りだ。覚えているじゃないか。


昔は見た目ほど火付けがよくないトニーにこうやって発破を掛けていたっけな……。



「ははっ! 懐かしい。大将はよく尻込みするトニー兄貴にいつもそう仰っていた。

すみません、大将。 トニー兄貴は久しぶりに大将と仕事が出来て甘えているんです。」


ニヤニヤと蛇の様に笑う炎蛇。



「ち、違いますよ!? くぉら!炎蛇! テキトー吹かしてんじゃねえぞ!!」


顔を真っ赤にして照れるトニー。


えぇ……。私達もいいオッサンなんだから止めてくれよ。オッサンがオッサンに甘えるとかキモイだけだろ。



「―――はぁ、何か疲れた。もういいや。

とりあえず撃ち込みますわ……。」


何やら投げやりな態度だが、トニーはこれくらいのテンションの方が丁度いいのだ。


口数が減ってからが本番の男である。



「焼き滅ぼせ。『爆炎纏う九尾の狐ナイン・バースト・フォックス』……!」



トニーから静かに放たれた力ある言葉。

それと共にトニーの前に大きな魔法陣が展開し、炎で形作られた九尾の狐が現れる。


『爆炎九尾』トニー・エイブラムの代名詞。


まるで意志を持つ獣の様な炎の狐が放たれた。

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