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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第一章 長男入学編

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メイドとお父様と悪役貴族

本日は3話公開になります

パパンっ!と再度、庭に破裂音が響く。


私は本能に従って咄嗟に距離をとる。

これは―――金属の礫?


私がいた場所に複数の小さな金属の塊が突きささり、まるで溶けるように消えた。


魔力で形成されている……?



御館様の方に目をやると、さっきから同じ位置に立って油断なく私を見ている赤い瞳と目線が重なる。



これが御館様の魔法か……!


無動作無詠唱超高速で飛ばされる魔力で生み出された金属の礫。


恐らくあの小さな破裂音は速過ぎる礫が空気を裂く音!



「ほう。私の『黒の弾丸』を避けるか……。」


御館様は無感動に感想を呟くが、その間も絶え間なく弾丸を射出し続ける。


バン!パパン!グシャッ!パパン!バン!

パパパン!グシャッ!


「―――ぐぅ……!!」


切れ目なく射出される弾丸。


次第に逃げ切れなくなり、私の身体の一部が弾け飛び堪らず声を上げる。


即座に弾け飛んだ身体を再構築するが、どこまでもジリ貧だ。


防御したり反撃をしようにも御館様の魔法が速過ぎて手の打ちようがない。


なんせあの弾丸は360°全方位から私に向かってくる……!



「―――最大射程距離300m。指定した範囲内に自動でばら撒かれる極音速の黒い弾丸……。

私が黒輝の死神と呼ばれる所以になった鏖殺結界魔法だ。」



……殺意が高過ぎるっ!

上位魔族の私の身体を軽々貫くあの攻撃をこんな気軽にばら撒くなんて!


徹底的に無駄を排除し、自分は安全に、かつ敵だけを一方的に害することだけを突き詰めた様な魔法だ。


大戦の英雄と謳われた公爵なのに、死神なんて陰気な2つ名だと思っていたが……。


確かに死神としか形容しようがない……!



パパァンっ!


「―――っつぅ!!」


一瞬、御館様の言葉に気を取られた瞬間に私の両足が吹き飛ぶ。



吸血鬼(ヴァンパイア)は不死の魔族だと謳われてはいるが、どうやらその不死性にも上限はあるようだな。普通に考えれば魔力量辺りか……。」


独り言を言っている様に見えるが、陰険なこの公爵の事だ。


私の反応を見て、自分の考察が正しいかどうかを推察しているのだろう。


悔しいが、正解だ。


私の不死性は魔力を使った瞬間超速再生。

ここまでボロボロにされれば、そう遠くない内に魔力切れで殺されてしまう……。


その証拠に、先程までは一瞬の内に再生されていた身体が中々元に戻らない。



「―――な、なんで!? 何で私を殺そうとするのですか!? 御館様!」


ダメ元で声を上げる。

策なんか何もない。純粋な命乞いだ。


ほんの少し……、ピクリと御館様が反応を示し、黒の弾丸がその動きを止めた。


「わ、私には確かに魔族の血が流れております! しかし、それだけで殺される言われはないはずです!!」


そう。確かに不可解なのだ。

何せ御館様はディエス・イレの誓いに代表される様に、人種や産まれで差別をしない博愛主義者で知られている。


でも、博愛主義と言うのは間違いだと思う。

多分、この陰気で合理主義そうな公爵の事だ、

人種や産まれなんか心底どうでも良くて、使える者は気にせず使おうと言うだけだろう。



「―――『|魔族の理想のための組織オディマ』、この名前に心当たりは?」



オディマ……?

聞いたことがある名前だ……。


確か魔族達のテロ組織、だったはず……。


セーデルホルム伯爵家には数代前に魔族の血が入っている。


その伝手を伝って半年くらい前にそんな名を名乗る魔族達がウチに協力を求めて来ていた。



「私は君こそがオディマの工作員で、レオナルドを誑かしこの国を、引いては人類を裏切らせようと画策している存在だと思っている。」



―――!?


まるで私の心の底を射抜くように御館様の真紅の瞳が光る。



……それは確かにありえた未来かもしれない。


あの時―――、この東屋でレオナルド様に謝罪されるまでの私なら……。


あの方が堕ちてゆく様を悦ぶだけの私だったならきっとそうしただろう。


全てを裏切らせ、どこまでも1人になったレオナルド様を望んだ事だろう……。


何なら今の私でもそんなレオナルド様は見たいまである。


ありよりのありだ。



「……その反応。当たらずとも遠からずと言った所か?」



―――不味い! 思考を読まれた!


御館様の赤眼がいよいよとその赤みを増し、魔力の圧が跳ね上がる。



「その可能性が少しでもあるのなら、君の命はここまでだ。」


それは怒り。


我が子を守ろうとする、どんな生物も根源的に持つであろう本能。


初めて感情を顕にした黒輝の死神の真っ赤に燃える双眸が私を貫く。



こんなの、人間が放つ圧じゃない……。

は、ははっ。本当にこの人は死神だ。


それは全てを諦めざるを得ない力量差。


あぁ、そっか。私はここまでなんだ……。

しょうがないか……。



何もかもを諦め、私は目を瞑る。


でも、もし叶うなら最後にあの方にお別れを言いたかったな―――。



ガギィン!!!



硬質な鉄を引き裂くような音が響く。


目を開くと白い豪奢な剣を構えた赤い髪が目に入る。


アイツが持つ白い剣から何やら神聖な結界が出ているように見える。


―――って言うかお前か……。



ある日突然現れた平民。

羨ま……不敬にもレオナルド様をレオと呼び、四六時中あの方と一緒に過ごし、あまつさえ1ヶ月もの間レオナルド様とお泊まりをし、アランなんて短い名前の癖にアルと愛称で呼ばれているあの泥棒猫。


あぁ、思い出すだけで腹立たしい。

って言うか、もういいから放っておいてくれ。


そもそもアンタ何してんのよ?

アンタは御館様に逆らっちゃ駄目でしょ。折角、いい条件で雇ってもらってんだし……。



「―――ふむ。聖剣の守護結界か……。中々どうして使いこなせているようじゃないか。

しかし、アラン君。私の記憶が確かなら、私は君の雇用主だ。そんな私に歯向かうつもりかな?」


「オレとしては非常に心苦しいですが、そうなってしまいますね……。何せ―――、」


対峙する2人。

共にその瞳は赤く燃えている。


その時、ふわりとボロボロになった私の身体をローブが包み、そのまま抱き抱えられた。


……え?



「友の頼みですから。」



夜よりも黒い漆黒の髪、あの黒曜の瞳はルビーの様に真っ赤に燃える。


それはまるで夜空に映えるアンタレス。


私を抱きとめるそのお身体は、無駄な贅肉を削ぎ落とした戦士のそれ。


あのぽっちゃりしたお身体も捨て難いが、これはこれでヤバい。とってもえっちだ。


私の全てを捧げるべきあのお方。



そんなレオナルド様が私を抱き抱えていた。


え? 好き。



「すまない、ユーリア。来るのが遅れた。」



あまり私の方を見ずに謝罪するレオナルド様。

これは……、少し照れてる?


よく見ると、御館様の情け容赦ない攻撃のせいで着ていた寝間着はボロボロ。


既に服の意味をなしておらず、私の身体が色々と見えてしまっていた。



「間に合わせの俺のローブで悪いが、これで身体を隠してくれ。」



紳士過ぎない? 大好き。


大丈夫です。なけなしの魔力で再生は何とか間に合っていますし、見て頂いてもOKです。私身体にはちょっと自信あるんで!


何なら触って頂いても、いえ、触って下さい!

あぁ、何だか下腹部がキュンキュンする……!



「―――安心してくれ、ユーリア。君は俺が必ず守る……!」



やっば……。

もうホント好き過ぎる。


自分で分かるくらい情緒が急上昇している。

あぁ、何だかもう全てがどうでも良い。


自分が人間じゃなくて魔族―――、お母様とお姉様が普通の吸血鬼(ヴァンパイア)で、私だけが何故か真祖として産まれてしまったとか、オディマの連中の事、何なら現在進行形で御館様に殺されかけている事すら全てがどうでもいい些事だ。



あぁ、レオナルド様。

愛しております。

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