6 地震が・・・
貯まった金貨をどうしようか考えた。
ここに置いておくのは、不用心では無いだろうか。異世界の人は大丈夫だろうが、本物の泥棒が来るかも知れない。周りは公園だけど、夜になれば殆ど人がいないのだ。
銀行の貸金庫へ預けよう。
かなりの重量だから、2回に分けて銀行に預けた。これで安心だ。
手持ちのお金はそんなに無いけれど、お客様がこなくなったので、食費は余り掛からなくなったし。
ぼんやり一人で誰も居ない家の中を見まわす。
「さて、何か美味しい物でも作りましょうかね。」
一人では、余り料理に気合いが入らないけど、今日はなんだか作りたい気分だ。
烏賊とジャガイモの煮物。キュウリとミョウガの甘酢和え。鮭のフライ。ナメコと大根おろしの味噌汁。デザートに牛乳寒。母が作ってくれた、田舎料理は懐かしい味がした。
食後、まったりとテレビを見ながら過ごして居ると、地震が・・・
急いで家の外へ逃げる。この家は、かなり老朽化している。地震対策のセオリーから外れるかも知れないが、いち早く逃げ出さないと家に押しつぶされる恐れがある。
外へ出てみたが、外では何事も無く平穏だ。
我が家だけが揺れていた?
「ああ、本当にこれでおしまいなのね。」
以前、神官が言っていた次元の繋がりが、切れてしまったのだろう。
もう、今後の人生を作り直す時期ね。この家を売ってしまおう。市の方から公園を広げたいから、売って欲しいと言われていたのだ。売ってしまおう。
不思議な体験だったけど、案外楽しかった。
今頃彼等は、新たなステージで活躍しているのだろう。
魔法がある世界か。私も行ってみたかった。きっと想像も出来ないような体験が出来るだろう。
「では行って見るかい?」
「えええええー!」
目の前にイケメンが立っていた。両手を広げて。
「早くしないと次元の扉が閉まってしまう。さあ!」
私はイケメンの手に自分の手を重ね、
「行きます!」と言った。