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5 イケメンが来た

異世界からのお客様は、なかなか来なくなってしまった。

これで、金貨も打ち止めか。残念。

この家を売って、どこかマンションでも探そうかしら。お金も十分あるし、スキルアップのためにゆっくり考える時間も必要だ。このまま、異世界のお客様が来ないのなら、ここに居ても変わりは無いのだが。悶々として出口の無い考えに振り回されていた。

この家は両親が残してくれた家だ。一人っ子同士の両親は親戚も祖父母ももう居ない。

両親が生きていたときは、早く結婚しろと五月蠅かったが、今となっては、あの時結婚しておけば良かったと、後悔している。

長年付き合っていた彼の浮気が許せなかった。信じて居たのでなおさらだ。

彼とは大学1年からの付き合いだった。就職して仕事が安定したら、結婚しようと言っていたのに、浮気をして、それを知って別れた。

今、彼は2人の子持ちだ。幸せそうで羨ましい。もしあの時、私が癇癪を起こさなければ、今頃は私が2人の子持ちになっていたかも知れない。

相手の間違いを許せない私が、だめだったのかしら。一人、悲しくなって椅子の上で膝を抱えて泣きそうになっていると、

「もしもし、お嬢さん。何か悲しいことでもありましたか?」

異世界人がまた来た。折角感傷に浸っていたのに、邪魔が入ってしまった。

「いえ、何でもありません。」

返事をして顔を上げると、とんでもないイケメンが目の前に居た。

銀色の長い髪を後ろで束ね、金色の目でこちらを覗いている。背が高く細身で、白いローブを着ていた。

腰には何やら複雑な模様の入った、豪華な金色の刺繍の入ったサッシュを巻いている。

指には大きな宝石の付いた指輪を一杯付けていた。

金色の目の周りは長い金色のまつげ。色素が凄く薄いが、キラキラしていて存在感は半端ない。

余りのイケメンぶりに気が引けてしまう。年齢は三十前後だろう。

「あの、少し待っていて下さい。直ぐ、食事の用意をしますから。そこにある本でも読んでいて下さい。」

「ありがとう。では遠慮無く本を読ませていただきます。」

イケメンは、本棚から「魔女魔女ソラシド」の漫画を出して、暗記シートにかざして読んで居る。

異世界人は漫画がお好きなようだ。例外なく皆漫画を見て行く。

偶にニヒルな笑いをしている。かっこいい!漫画を見ていると思わなければ、なんと絵になる姿だろう。

「あの、お食事が出来ました。」

「ああ、かたじけない。なんと、これが噂のカレーか!」

レトルトのカレーに狂喜乱舞だ。この頃誰も来ないと思って、何も買い物もしていなかった。レトルトで申し訳なく思ったが、こんなに喜んでいるので、まあ良いか。

イケメンがカレーを食べている。白い高価な服に少しカレーが刎ねて、黄色いシミが付いてしまった。

カレーは洗ってもなかなか取れないだろう。見て見ぬ振りをする。

「とても美味であった。ありがとう」と言って金貨を5枚置いて消えて仕舞った。

「え?二十四時間居なくて良かったの?」

然も金貨が5枚。私は金貨を手に持ったまま呆然として立っていた。


次の日もまた次の日も、イケメンは毎日家に来てカレーを所望する。

イケメン用に少しリッチなレトルトのカレーを用意して置いた。何種類もある中から、今日は何味にしようかな、とかっこよく悩む姿は眼福だ。

イケメンの名前は未だに分らない。聞かない私も悪いのかも知れないが、敢えて、名乗らないのかも知れないし、その内来なくなって仕舞うのだ。名前を聞いても意味が無い。

イケメンが来始めてから二十三日目、イケメンは今日で最後だと行って、金貨を10枚置いて消えて仕舞った。

「これで最後か。寂しくなるな。」

でも、私はお金持ちになった。かなりの金貨をイケメンが置いていってくれたのだ。

金の相場を見て高値になってから、売りに行こう。


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