第35話「変則的対峙と進化する戦術」
最上級学年での日々は、より変則的な試験やイベントが増える傾向にあった。今月の試練は、今まで以上に複雑な構造を持つ戦術演習で、魔物と生徒の動きがランダムに変化する特殊フィールドが用意されると告知された。参加者には、M級魔物相手に安定対応するだけでなく、予想外のタイミングで出現する追加要素にも対処する柔軟性が求められるという。
朝、ワシは集合場所で状況を確認する。他のN級者やM級相当の強者たちも、慣れた様子で着々と準備を進めている。
「今回のフィールドは、時折地形が変わるギミックや、一時的に魔力が乱れるエリアがあるらしい。」横で聞き耳を立てたリールが、小声でワシに教えてくれる。
ワシは腕を組み、「地形の変化か…常に足場や障害物が動くなら、誘導戦術が簡単じゃないな。M級魔物への対応も、いつもの定石が通じないかもしれない。けど、こういう状況でこそ、あらゆる条件下で戦える力が育つ。」
リールが「ま、あたしは光魔法で即応するけど、あんたはどうする?また音やトラップ利用か、それとも今回は力を温存して確実に仕留める路線?」と聞いてくる。
ワシは少し考え、「今回の試練は短時間で色々な変化があるらしいし、むやみに小技を多用すると混乱するかも。基本は確実性重視。魔物を見極め、動きが乱れた瞬間に素早く倒して消耗を抑える方がいいだろう。M級相手なら今は正面から安定して制圧できる力がある程度身についている。この安定性を武器にする。」
時間になると、参加者がフィールドへ配置され、試練がスタートする。足元の床がわずかに振動し、壁や岩が周期的に昇降する。M級魔物が一定時間ごとにランダム出現し、その都度対応しなければならない。
最初の魔物出現、ワシは様子を見ながら、無駄な音を立てず、相手の動きをじっくり観察する。床が少し沈み込んだ瞬間、魔物がバランスを崩す気配を感じる。ここで一気に距離を詰め、短剣を急所へ突き込む。スムーズに1体目を仕留められた。
続く魔物出現は、対角線上の高台。上昇する岩を利用し、魔物が足場を選ぶ際に隙ができる。ワシは前回までの試合で培った動きで、最小限のステップで岩陰に回り込む。別方向で魔物が跳ね回る音が聞こえるが、焦らず待機。魔物が狙いを定めにくい状態になるのを待ち、こちらが先に仕掛けて一撃で仕留める。
地形が変化し続けても、ワシは落ち着いて対応する。M級魔物が予想外の位置に出ても、基本は変わらない。相手の動きを観察し、不安定要素が相手に不利に働く瞬間を狙う。余計な誘導が要らないなら使わない。必要なら光源を一瞬かざし、魔物が注意をそらした瞬間に斬り込む。
他の参加者が苦戦する様子が、視界の端に見える。複雑な環境とランダム出現のせいで、慌てて無理な攻撃を仕掛け、逆にダメージを受ける者もいる。ワシはその対照的な落ち着きで、マイペースに魔物を処理し、規定数の魔物を倒して任務を達成する。
時間終了後、集計でワシはまたも上位に入ることができた。M級相当になった実力と、状況に合わせて手を変えられる柔軟性が評価されているようだ。
フィールドから出てくると、リールが駆け寄って、「あんた、また上位でしょ?安定感が増してる気がする。以前は誘導戦術が目立ってたけど、今は状況に合わせて使い分けて、M級魔物を簡単に倒してる感じ。」と感心する。
ワシは肩をすくめ、「M級相当の力が身についたから、前ほど小細工に頼らずとも対処できるようになった。もちろん小技は温存しておいて、必要な時だけ使う。そして、地形変化に合わせて動きを調整すれば、余計な消耗も減る。」
リールは微笑んでうなずき、「この調子なら、この一年でK級まで近づけるかもしれないわね。あたしも負けてられないな…次はもっと光魔法の応用で追いつく。」
夜、寮でノートを開いて反省点を記す。今回の試練で、ワシは地形変化と魔物のランダム出現にも対応できることを証明した。M級相当としての実力は確固たるものになりつつあり、あらゆる環境での戦術を確立中だ。
K級へ行くには、これをさらに洗練し、L級対応の下準備を整える必要がある。L級と対等に渡り合うには、単なる安定性以上に、全く予測不能な状況下での即興対応や、魔力制御のさらなる精密化が欠かせない。
明日からも、学院は次々と新たな特別試験や講座を提供してくるはずだ。ワシはそれらを利用し、一歩ずつ前へ進むつもりだ。
窓の外、星がきらめく夜空を見上げ、ワシは瞼を閉じる。「まだ始まったばかり、この一年でK級相当へ行く目標は揺るがない。」心中で自分に言い聞かせ、静かに眠りにつく。
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