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第32話「新たな試練と足場固め」

 最上級学年に進んでから幾週かが過ぎ、学院では新たな月例試験が告知された。今度の試験内容は、M級魔物への対処を前提とした「拠点防衛」らしい。特定のエリアを確保し、資源を守り抜く課題だと説明を受け、ワシは気合いが入る。




 既にM級相当へランク認定されたことで、ワシはM級魔物に対してある程度の安定感を得た。だが、拠点防衛となれば、ただ倒すだけでなく、持久戦や継続的な対応力が問われる。短期決戦が得意なワシも、今回は少し戦術を改める必要がありそうだ。




 朝食後、校庭でリールに話をする。「今回は拠点防衛って話だが、M級相当になったとはいえ、ワシは主に瞬発力と奇策で勝ってきた。持久戦なら、光や音だけじゃなく、魔物の再出現を想定した休息や物資管理も考えなきゃならない。」


 リールは頷き、「確かに。あんたは一撃必殺や誘導戦術が得意だけど、持久戦なら魔力や体力をどう温存するかが鍵。光も無限じゃないし、音による惑わしも連発すれば敵に慣れられるかも。」


 ワシは苦笑し、「一理ある。となると、今回は地形や拠点設備を活かすのが賢いかもしれない。障害物を盾にして、無理なく魔物を捌ける位置取りを常に確保する。M級魔物は強いが、こちらが冷静に立ち回れば消耗を減らせる。」




 その日の午後、ワシは拠点防衛の基礎戦術を学べる特別講義に参加する。指導教官が「M級相手の防衛戦では、いかに相手の突撃パターンを読み、必要最小限の動きで封じるかが重要だ」と説く。短期決戦で一匹ずつ潰すのは理想だが、続けて出現する場合、最低限の消耗で時間を稼ぐ戦法も必要になる。




 講義後、リールが近づいてきて、小声で「バル、拠点戦とはいえ、あんたにとっては新しい挑戦ね。どうするの?まさか『ワシ』と言われるたびにツッコむみたいな妙な策があるわけじゃないでしょ?」


 ワシは呆れた顔で彼女を見る。「そんな変な策あるか。あんた、また『ワシ』呼びか!いい加減やめろって。」


 リールはクスッと笑う。「ごめんごめん。でも、ちょっと場が和むかなって思って。まあ、それはさておき、今回は持久戦だし、あんたの誘導戦術を持続的に使うため、音や小技を節約する工夫がいるわよね。」


 ワシは苦笑しつつ頷く。「そうだな。限られた手札を効率よく使うことを考える。強引に倒すばかりじゃなく、魔物が少しずつこちらに消耗させられ、最終的に余裕を持って制圧できるような戦い方を試したい。」




 夕方、訓練場で一人で練習。短剣を振るだけでなく、地面に目印を置いてステップワークを反復する。相手がM級で連続戦闘を想定するなら、無駄な動きを減らし、最小限の移動で相手をいなし、疲れさせる術が不可欠だ。まだ完全ではないが、この一年で使える戦術を増やしていけば、卒業時にはK級近くまで行けるはず。


 「焦らず、一歩ずつだ。M級相手には既に安定を感じ始めている。今月の試験で、より安定した持久的戦法を確立すれば、次にはL級への再挑戦にも繋がる。」心の中で確認する。




 夜、寮の部屋でノートに書き込む。今回は短期決戦中心だったやり方を、持久戦対応にシフトする挑戦だ。月々の試験で異なるテーマが出るなら、あらゆる状況に対応できるようになる。


 「あんた、できるでしょ?」先ほどのリールの顔が浮かぶ。彼女の応援は常に心強い。からかわれても、それが会話に温かみを添え、集中しすぎないで済む。気負いなく柔軟に考えられることが、戦術面でも強みになっている気がする。




 M級相当となり、Lに近い評価を受けた今、あえて違う方向の戦術を試すことで底上げを図る。卒業までの一年、こうした多面的なアプローチを積み重ね、やがてK級相当の領域を視野に入れる。その計画が頭の中で確かな形になりつつある。




 「まずは拠点防衛試験、持久戦でも通用する戦術の確立が目標だ。」ワシは自分に言い聞かせるように呟く。


 灯りを消して目を閉じる。あのL級戦士との対等な時間を思い出し、必ず再びその舞台へ上るために、日々の試験や実践で全方位的な成長を遂げようと心に誓う。




 外では静かな風が吹き、星が瞬いている。明日からの準備に手を抜かず、M級を安定させてK級に近づく足がかりを掴むつもりだ。長い一年が始まったばかりだが、ワシは決して立ち止まらない。





読んでいただきありがとうございます。

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