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第28話「新学期と挑むべき高み」

 総合戦術大試験が終わり、あれから幾日かが過ぎた。ワシは準優勝という成果を得てM級に近い実力を示し、学院中にその名が知れ渡っている。まだ2年生、卒業まであと一年。ここからさらに鍛え上げてK級相当へ至る道のりを考えると、内心でわくわくが止まらない。


 朝、寮の食堂でパンとスープをかじりながら、窓越しに校庭を見ると、リールが珍しく朝から器具を使って魔力制御の練習をしている姿が見える。あの総合戦術大試験でワシらは別ルートで戦ったが、彼女も見事な戦術で上位まで進出していた。今こうして日常に戻った朝に、精力的に動くリールを見ていると、何か新しい幕開けを感じる。


 「おはよう、ワシ――じゃなくて、バル。」不意に耳元でリールの声がした。いつの間にか戻ってきていたらしい。いや、今のは「ワシ」って呼んだぞ。

 ワシは苦笑いしてツッコむ。「おい、リール、その呼び方やめろよ。ワシは自分でワシって言ってるけど、あんたまでワシ呼ばわりはややこしいだろ。」

 リールは肩をすくめ、「ふふ、だってあんた、自分で『ワシ』って言うんだもの、ちょっとからかいたくなるわよ。」

 この軽妙なやり取りに、隣で食事中だったガルスが吹き出す。「ぷっ!確かにややこしい。お前自身がワシなんて言うから…」

 ワシは頬をかいて苦笑する。「はいはい、分かった。リール、頼むから時々にしてくれ。」


 そんな軽い笑いを交えつつ、ワシとリールは今日の予定を確認する。新学期が始まり、学院はより上位ランクへの成長を目指すカリキュラムを用意しているとの話だ。これまではN級中心の訓練だったが、大試験後にはM級対応や、さらなる高みを狙うための特別講座が増える。

 「これから1年、鍛錬や学内イベント、定期的な試合が入るみたいね。」リールが渡されたスケジュール表を見つめる。「M級を安定して倒せるようになれば、あんたはK級相当へ行けるかもって話、先生たちもしてたわよ。」

 ワシは頷く。「卒業時にK級まで上がるのが目標だ。それには日々の訓練、戦術のブラッシュアップ、さらには学内大会や特別試験で実力を証明していく必要がある。」


 そう、これからの1年は地道な鍛錬の積み重ねだ。M級相当への安定対応は必須。そのうえで、さらなる知略と技術を磨いていく。例えば、L級相手と戦った経験から、ワシはもっと動きの精度や読心術に近い洞察力を鍛えねばならないと痛感している。リールとの連携は非常に助かるが、今回は一人で受ける試験や大会も多いだろうから、単独戦での戦術も拡充しなければ。


 「そういえば、近々『対M級上級訓練』が始まるって話、聞いた?」リールがスープをすすりながら質問する。「M級魔物との実戦形式で、より複雑な環境下での対処法を学ぶんだとか。」

 ワシは頷き、「ああ、聞いた。魔物相手に戦うだけじゃなく、資源確保や他の生徒との情報戦が絡むミニ試合もあるらしい。短期決戦や誘導戦術、今まで培ってきた知略をそこで試せるだろう。毎月そういうイベントがあるなら、着実にレベルアップできる。」


 リールが微笑み、「ワシ…じゃなくてバル、あたしもその訓練コースに申し込む気よ。K級を目指すなら、M級対応は通過点。お互い切磋琢磨して、もっと強くなりましょう。」

 ワシは目を細めて笑う。「その意気だ。あんたと競い合えば、嫌でも上を目指せる。」


 昼下がり、学院の武器庫で短剣のメンテナンスを行う。刃先を微調整し、余分な重さを落とす。L級戦士との戦いで学んだ教訓の一つは、武器の最適化だ。ほんの数グラムの違いが、ステップや斬撃軌道に影響する。K級へ行くには、このような細部へのこだわりが必要になるだろう。


 整備室を出たところで、ガルスが声をかけてくる。「お前、これから1年でK級相当とか、本当に狙ってるのか?」

 ワシは笑顔で頷く。「ああ、狙うさ。誰もやれないなんて言ってないだろ。M級へ近づいた今、K級だって夢じゃない。鍛錬と戦術で可能性は広がる。学内にはまだ未知の特別試験や卒業試験もある。その度に力を引き上げていけば、届くはずだ。」


 ガルスは苦笑しながら「そりゃあ楽しみだな。またあんたに追いつけるよう、オレも頑張るぜ。」と拳を軽く突き出す。ワシはその拳にコツンと合わせ、「共に高みを目指そう。」と応える。


 夕暮れ、リールと校庭の一角で今後の計画を話し合う。

 「鍛錬回ではM級安定撃破を目標にし、学内大会では変則的な戦術や複雑な地形対応を試す。時にはわざと他のN級者と戦い合い、逆転戦術を編み出してみるのもいいかもな。」

 リールはくすりと笑う。「やっぱり知略が好きなのね。それに、あたしが時々『ワシ』って呼ぶと、慌ててツッコむから面白いわ。」

 ワシは鼻を鳴らして「からかうなよ。ややこしいんだ。」と言いつつ、心中ではこの軽口の応酬が心を和ませてくれると感じている。


 夜、部屋でノートに今日の話し合い結果を書き留める。これから1年、鍛錬、学内イベント、特別講座、日常の訓練、そして次第に試される上位魔物対応。

 学内には月単位で小さな大会や試験がある。M級に安定的に対応できるようになれば、さらなる挑戦が可能だ。卒業試験ではK級に近い領域を求められるかもしれない。それを見据え、毎月のように実戦的な試合や作戦を練っていく。


 「明日も鍛錬だな」と小さく独り言。「行くぜ、K級までの道、一歩ずつ踏みしめてやる。」

 こうして新学期の最初の一日が終わり、ワシは決意を胸に瞼を閉じる。弛まぬ努力と奇抜な知略で、この一年を駆け抜けてみせるつもりだ。



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