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第16話:「出発前夜―N級2人タッグの絆」

 商隊護衛まであとわずか数日。学院側は我々N級2人組に、簡易的な報告書を書かせている。どんな戦術を取るか、応急処置や避難ルートはどうするか。あくまで練習用の思考実験だが、これが実戦で活きるはずだ。


 放課後、リールを誘って図書室へ行き、地図を確認する。商隊が通る道は森に囲まれ、Mクラス魔物が生息しているらしい。MクラスはN2人で対等だから、安心はできるが独りでは無理。2人が連携して初めて正面から対処可能になる。


 「もし森でM級の獣型魔物が出たら、どうする?」とワシが尋ねると、リールは指を顎に当てて考える。「あたしが光魔法で相手の目を眩ませるから、その隙にあんたが急所を狙う形がいいかも。M級相手なら硬すぎることはないでしょ、斬り込めるはず。」

 「なるほど、それならオレが正面で囮になる必要ないな。リールが光で混乱させ、背後から斬り込む方法もある。M級はN2人で対処可能だから、一撃必殺を狙えるなら迅速に片付けるべきだ。」


 リールは笑顔。「そうね、短期決戦で魔物を倒せば、商隊を守るのも楽になる。守りだけでなく、こちらから積極的に畳みかける戦法も考えられるわ。」

 彼女が素直に意見を出すようになったのは嬉しい。遺跡調査以降、2人でいる時間が増えるたび、彼女の態度が柔らかくなっている。視線が合うと微笑み合うことも多くなった。


 「今回2人だけど、本番では覇刀連の監視員が後方支援するって話もある。まあ、N2人がいればM級は問題ないはずだけど、保険があるのは助かるよね。」

 リールは「ふふ、あんたと2人なら大丈夫だと思うけどね」と茶化す。もうワシを「負かしてやる!」なんて言わなくなった。代わりに「一緒なら安心」みたいな発言が増えている。


 夜、寮の廊下でガルスに会う。彼は別の中級クエスト候補に選ばれ、N級2人チームでM級魔物対策を学ぶという。「オレは先輩と組むことになりそうだ。N2人でM級相手なら問題ないとはいえ、実戦で成長したい。」

 ワシは頷く。「お互い頑張ろう。N級になったばかりで、次はM級への対応力を磨く段階。経験を積めば、いつかLやKにも安定して対処できる日が来る。」

 ガルスは「当たり前だ!オレはいつかお前より上に立つ!」と笑う。良いライバル関係だ。


 部屋に戻ると手紙が一通届いている。学院内の通知で、商隊出発日は週末、早朝集合とのこと。持ち物リストや注意事項が書かれている。N級とはいえ学内の訓練以外でフィールドに出るのはこれが初めてだ(遺跡調査は学院主導だったが、今回はほぼ実戦と同じ状況)。緊張感が高まる。


 (卒業後にはもっと厳しい世界が待っている。今は学校在籍中にN級として基礎固めを行い、M級に対処する経験を重ねるステップだ。この点は文中で特に説明しないが、ワシは理解している。ここで得た経験が将来を左右する。)


 翌朝、庭園でリールと軽く打ち合わせ。「荷物は最小限、素早い行動が基本ね。M級モンスターが来たら、まず視界を奪うか動きを止めて、その瞬間に一撃で仕留める。それが2人のコンビネーションね。」

 「そうだ、息を合わせて短期決戦。N級2人ならM級相手に引き延ばす必要はない。」

 リールは微笑んで「頼りにしてるわよ、バル。」と言い、少し顔を赤らめる。


 ワシも軽く笑う。「任せろ。互いをカバーし合えば何も怖くない。」

 2人で雑談しながら歩くと、周りの生徒がやけにニヤニヤ見ている。もう“天才対決”という関係から“信頼し合うパートナー”と見られているのかもしれない。リールが気づいて恥ずかしそうにうつむくが、手には微かな嬉しさが滲んでいるようだ。


 





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