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探偵マイク  作者: 光翔
25/35

20 衛星暗号

マイクは、ユータの家を出ると、あてもなく車を走らせた。

頭の中は真っ白で、これからどうすればいいのか、全く見当もつかなかった。

あらゆる手段を講じてカイを探していたが、一向に成果が上がらない。

意気消沈しながら街並みを眺めていると、突然、マイクの目に「アカアリ」のマークが飛び込んできた。

マイクは、一気に目が輝き、車を近くの駐車場に慌てて停めた。

そして、足早に「アカアリ」のマークの方向へと向かった。

「アカアリ」のマークが指し示したのは、なんと一軒の古書店だった。

マイクは、期待を胸に扉を開けると、中は以前と変わらない古びた雰囲気だった。

レジの奥の椅子には、一人の男が雑誌を読んでいた。

派手な水着姿の女性が表紙を飾る雑誌が男の顔をすっぽり隠しており、マイクは男の正体を確認できない。

マイクは、そっと声をかけてみた。

「…アカアリ?」

すると、雑誌を読んでいた男は、ゆっくりと雑誌を下ろし、見知らぬ顔をした。

「…ここにはアカアリはいない。

…俺は、カンポノトゥスだ。

…何の御用だろうか?」

男は、無愛想な声で答えた。

マイクは、あっけにとられた様子だったが、すぐに切り替えて言った。

「…情報が欲しい」

男は、怪訝そうな表情を浮かべながら、マイクを改めて睨みつけた。

「…なるほど、旧客か。何の情報が欲しいんだ?」

「…カール・ギャングのカイに関する情報だ」

マイクは、まっすぐと答えた。

「…カイの情報か。古い話だな。いつものルール、現金取引だ」

カンポノトゥスは、ぶっきらぼうに言った。

マイクは、金額を確認しました。

「…いくらだ?」

「…旧客ということで、特別価格だ。

…100万だ」

カンポノトゥスは、平然とした様子で言った。

マイクは、目を剥いて叫んだ。

「…100万!? そんな馬鹿げた!

…そんな大金、持ち合わせていない!」

マイクの狼狽ぶりに、カンポノトゥスは呆れたような表情を浮かべた。

「…現金を用意してから来るといい。

…この情報は、2月5日まで有効だ」

カンポノトゥスは、無感情に告げた。

「…2月5日? って、明日じゃないか!

…もう夜の10時だというのに、期限切れ間際の情報に100万も払えっていうのか!」

マイクは、納得がいかない様子で訴えた。

「…情報の価値は鮮度だけで決まるもんじゃないだろ?

…我々の信用は知っているはずだ。

…この情報は絶対に100万の価値がある」

カンポノトゥスは、自信満々に言い切った。

マイクは、悔しそうに唇を噛んだ。

「…そんな大金、持ち合わせていない。

…もう少し安くならないのか?」

と、食い下がってみた。

「…じゃあ、いくらなら出せるんだ?」

カンポノトゥスは、興味なさげに言った。

「…今、10万円なら…何とか…」

マイクは、もごもごと言い訳をした。

カンポノトゥスは、声を荒げた。

「…10万!? 10万でこの情報は買えないだろう!」

「…じゃあ、10万を前金として払うから、残りの90万は後回しにしてもらえないか?」

マイクは、必死に頼み込んだ。

「…ダメだ。

…ウチの店のルールは一括現金払いだ。

…後払いなんてありえない。

…しかし、常連さんということも考えてやる。

…10万払えば、情報の一部を渡してもいい」

カンポノトゥスは、渋々ながらも提案してきた。

「…不完全な情報なんて役に立たないじゃないか!

10万出して、不完全な情報って、これは詐欺じゃないのか!」

マイクは、不平を漏らした。

カンポノトゥスは、不快そうに眉をひそめた。

「…同意できないなら、もう結構だ」

と、あっけなく商談を打ち切ろうとした。

頭の中では、イライラと焦りが渦巻いていたマイクだったが、

情報が無いよりは、不完全な情報でもマシだと考え直し、

「…わかった。 取引条件を受け入れる」

と、渋々ながらも承諾した。

そして、財布から10万円を取り出して、カンポノトゥスに差し出した。

カンポノトゥスは、現金を確認すると、

「…この情報は、衛星だ」

と、一言だけ告げた。

そして、ニヤリと笑みを浮かべてマイクを見た。

マイクは、呆然とした表情で、

「…衛星? 衛星だけ?

そんな情報で何が分かるっていうんだ!」

と、声を荒げた。

「…言っただろう? 不完全な情報だ。

…全ての情報が欲しければ、残りの90万を用意しろ」

カンポノトゥスは、相変わらずの不敵な笑みを浮かべていた。

「…詐欺師め!

あなたはどうして情報が飛行機やロケットだと言わないのですか?」

マイクは、悔しさで唇を噛み締めた。

しかし、その時、突然頭の中に閃光が走った。

衛星、ロケット…もしかして、この断片情報はゼウス1号と関係しているのか?

10万円を失った上に、完全な情報すら手に入れることができなかったマイクは、

心の中で悔しみながらも、書店を後にした。

ホテルに戻ると、マイクはすぐにリンに「情報」を伝えた。

リンは、地図を広げながら、

「…TASA R&Dセンターとオリンピック・ローンチセンターは、ここ。

…距離にして80キロもある。

…カイがどちらに向かうのか分からない」

と、淡々と状況を分析した。

「…TASA R&Dセンターとオリンピック・ローンチセンターに電話してみたんだけど、どちらにも繋がらない」

マイクは、苛立たしそうに言った。

「…もう遅いし、連絡は明日だな」

リンは、冷静に判断した。

「…標的範囲が広すぎて、僕たちだけでは監視しきれないな…」

マイクは、深刻な表情で呟いた。

「…まずは、明日、警察署に行って署長と話し合ってから、方針を決めるしかないな」

リンは、状況を打破すべく提案した。

マイクは、ため息をつきながら、

「…そうだな…」

と、渋々ながらも同意した。

翌朝、マイクとリンは早朝から警察署を訪れた。

しかし、署内は慌ただしい雰囲気だった。

午前9時から第三回国際貿易発展会議が開かれるため、署長は全ての署員を動員して警備にあたらせていた。

マイクは、集めた情報を署長に報告し、

「…この情報を元に、標的地域を監視する人員を手配してください」

と訴えた。

しかし、署長は顔をしかめながら答えた。

「…冗談だろ? 衛星の標的範囲は広大だ。

…車や飛行機のように、簡単に操作できるもんじゃないぞ。

…それに、カイの目的がゼウス1号機とは限らないだろう?

…それはあくまで君の推測だ。

…捜査がはっきりするまで待とう」

署長の反応に、マイクは焦った様子で食い下がった。

「…ですが、もしカイが衛星に対して何らかの行動を起こせたら…?」

「…心配するな。 TASA R&Dセンターとオリンピック・ローンチセンターには、万全なセキュリティ対策とそれに対応する警備員が配置されているはずだ。

…電話をかけて連絡するだけで十分だ」

署長は、気にも留めないような態度で言った。

諦められないマイクは署長をさらに説得しようとした。

署長は、

「…今は第三回国際貿易発展会議の警備が最優先だ。

…他のことは、後で話そう」

と、話題を打ち切った。

そして、

「…マイク、リン、お前ら二人は当番として警察署に残るように」

と、二人の同意も得ずに、管理官は去っていった。

署長の様子に、不快感を覚えたマイクは、当番所の警官に尋ねた。

「…剣持を見ましたか? 剣持も警備任務に出たのか?」

当直の警官が答えた。

「…剣持は、警察本部に応援勤務で呼ばれました」

当直警官の話を聞いて、マイクは喜びを隠せない様子だった。

リンが、

「…TASA R&Dセンターとオリンピック・ローンチセンター、どちらも電話が繋がらないわ」

と、情報収集の難しさを伝えてきた。

マイクは、

「…リン、俺は剣持を探すために警察本部にいく。

…お前は、引き続きTASA R&Dセンターとオリンピック・ローンチセンターの担当者に連絡を取り続けてくれ」

と、分担を決めて、警察本部へと向かった。

警察本部に乗り込んだマイクは、歓談している剣持と一人の女性警察官の姿を見つけた。

マイクは、剣持に声をかけると同時に、

「…剣持、何で警察本部に?」

と、不思議そうに尋ねた。

剣持は、マイクの姿を見ると驚いた様子だったが、すぐに笑顔を取り戻し、

「…マイク! お前か!

…実は、第三回国際貿易開発会議の警備のため、部署の大半が警備任務に駆り出されてしまってな。

…それで、応援でここに呼ばれたんだ」

剣持は、事情を説明しながらマイクに近づいてきた。

そして、横にいる女性警察官をマイクに紹介した。

「…あ、そうだ。紹介しよう。

…こちらは、警察本部の情報課長・花子はなこさんで、俺の警察学校時代の同期だ」

マイクは、花子に軽く会釈し、

「…初めまして、マイクです」

と、挨拶をした。

花子も、笑顔でマイクに会釈を返した。

マイクは、剣持の肩を叩きながら、

「…ちょっと話したいことがあるんだけど」

と、切り出した。

それを察した花子は、

「…それでは、失礼します」

と、そっとその場を離れた。

残されたマイクと剣持は、お互いの顔を見合わせた。

剣持は、

「…どうした?」

と、マイクの様子を伺った。

マイクは、少し声を潜めて、

「…前回、市民の通話を監視する申請をしたことを覚えてるか?」

と、確認した。

剣持は、一瞬考え込んで、

「…覚えてるぞ。 署長が却下してたよな?」

と、答えた。

「…実は、その件で剣持の協力を仰ぎたくて…」

マイクは、切り出した。

「…今、俺達は警察本部にいるんだ。

…それで、監視装置を使いたくて、情報課に忍び込もうかと考えているんだ」

マイクのとんでもない提案に、剣持は目を丸くして驚いた。

「…正気か? バレたらクビになるぞ!」

剣持は、マイクの無謀な考えを強く否定した。

マイクは、慌てる剣持を落ち着かせようと、

「…ちょっと待て。

…昨日、衛星に関する情報を入手したんだ。

…内容を聞けば分かると思うけど…」

と、剣持を引き止めた。

マイクは、衛星に関する情報と、書店で支払った高額な費用について、一息に剣持に話した。

そして、

「…見ての通り、部署のほとんどの人は出払っている。

…バレる心配はない。

…そして、情報課の花子さんに協力を仰ぎたいんだ。

…監視の件も、花子さんを通して説明してもらえないか?」

と、懇願した。

剣持は、マイクの真剣な表情に戸惑いながらも、

「…マイク、バレたら面倒なことになるぞ。

…署長の言う通りにした方がいいんじゃないか?」

と、慎重な姿勢を見せた。

マイクは、

「…衛星の情報は100万もかかったんだ。

…衛星にまつわる事件は、大ごとになるに違いない。

…それなのに、のんびり待てるか!

…とにかく、事態の原因を突き止めなければ!」

と、早急な行動の必要性を訴えた。

マイクは、興奮気味に、

「…頼む、花子さんの所へ案内してくれ!」

と、剣持の腕を掴んだ。

剣持は、マイクの必死な様子に押され、渋々ながらも、

「…分かった… だけど、バレないようにくれよ」

と、了承した。

マイクの強引な行動に、剣持は振り回されるばかりだった。


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