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探偵マイク  作者: 光翔
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15 危険な取引: 武器、麻薬、そして脅威にさらされる会議

午後、剣持は警察署に戻ってきた。

すると、物凄い剣幕で署長室に怒鳴り声が響いてきた。

署長室をのぞくと、市警視監が署長を厳しく叱責していた。

カイの逮捕ができていないことを責め立て、カイの逮捕に全力を注ぐよう命じ、そして、超国家事業発展会議開催中、会議に参加する外国人ゲストの安全を万全期すよう強く要求してきた。

市警視監は、

「もし、第三回超国家事業発展会議中に重大な治安事故が起きたら、あなたは即刻辞任しなさい」

と、厳しい言葉を署長に浴びせかけた。

市警視監が去った後、署長室には重い空気が漂っていた。

超国家事業発展会議中の警備を万全にするには、署内の警官ほぼ全員を投入する必要があるだろう。

そうすると、カイの捜索に回せる人員はほとんど残らない。

苛立ちを隠せない署長は、署長室の外に出ると、たまたま通りかかった剣持を見かけた。

「…マイクとリンはどこに行った?」

署長は、青ざめた顔で剣持に尋ねた。

「…ホテルに戻りました。午後T市を離れる予定です」

剣持は、淡々と答えた。

「…離れるだと!? なぜだ?」

署長は、声を荒げた。

「…あなたが、マイクとリンのT市での任務は終了だと言ったからです。O市に戻るように…と」

剣持は、署長の言葉をそのまま伝えた。

「…馬鹿なことを言ったものだ!」

署長は、顔を真っ赤にして喚いた。

(…さっきの怒りで…つい…)

と、我に返った様子の署長は、

「…マイクに電話をかけてみろ。T市に残って、カイの逮捕を手伝ってくれるかどうか聞いてみろ」

署長は、マイクとリンにT市に残って、カイの逮捕を手伝ってほしいと考えているようだった。

剣持は、言われた通り、マイクに電話をかけ、署長からの伝言を伝えた。

「…喜んでT市に残る。カイを捕まえるまで、俺はここを離れない」

電話口からの力強いマイクの声に、剣持は少し安堵の表情を浮かべた。

剣持は、マイクの返事を署長に伝えると、

「…よし、じゃあ、マイクには、明日、朝から署に来てくれるように伝えてくれ」

と、署長は指示を出した。

翌日、マイクとリンは、午前中から警視庁に出勤してきた。

「…よっしゃ、全員揃ったな。入ってくるように」

笑顔を見せた署長は、珍しく柔和な雰囲気を漂わせていた。

三人を執務室に招き入れると、署長は早速、今後の作戦について説明を始めた。

「…まず、今後の指揮権は剣持に任せる。カイ関連の事件は全て剣持が責任者となり、マイクとリンはサポートに回る」

マイクとリンは、特に異議を唱えることなく、剣持の指揮下に入ることに同意した。

「…今回の事件は非常に重要だ。カイが購入した武器がテロ活動に使用されれば、多大な被害が出るだろう。外国のビジネスマンや要人が巻き込まれれば、外交問題にも発展しかねない」

署長は、事態の深刻さを三人に再認識させるように、厳粛な表情で語気を強めた。

眉間に深い皺を寄せた署長は、マイクに視線を向けた。

「…マイク、今回の件に関しては、おまえの行動を制限するつもりはない。自由に動いて構わない」

署長の言葉に、マイクは目を丸くして驚いた。

これまで、署長はマイクに対してかなり厳しく接してきた。

今回の件で、マイクのこれまでの功績を認めたのか、はたまた第三回・超国家事業発展会議の開催を控え、一刻も早くカイを捕まえたいという焦りからなのか、マイクには署長の真意を推し量ることはできなかった。

しかし、マイクは署長の言葉を素直に受け取り、

「…わかりました! カイを捕まえるために、全力で捜査に協力します!」

と、力強く答えた。

署長は、マイクのやる気に少しだけ頷き、具体的な捜査内容について指示を出した。

「…今回の任務は大きく分けて二つある。一つ目は、カイが武器を購入した動機を徹底的に調べるということ。二つ目は、可能であれば、カイを逮捕することだ。ただし、優先順位はあくまでも一つ目の動機解明にある」

打ち合わせを終えると、三人は重い足取りで署長室を出た。

会議でのやり取りは、緊迫感に満ちており、三人の表情は険しかった。

しかし、マイクの顔には、僅かながら希望の光が灯っていた。

自由な行動を許されたことで、マイクは、自分なりの方法で、カイの居場所を突き止めることができるかもしれない、そんな期待が胸の中に膨らんでいた。

署長室を出た剣持、マイク、リンの三人は、重苦しい空気を纏ったまま、いつものフロアに戻ってきた。

執務机に向かい合うやいなや、三人は早速、ケイスの実行計画について話し合いを始めた。

まず口を開いたのはマイクだった。

「…今回の武器密売事件と、新しく出てきた新型麻薬密売事件…何か繋がりがあると思うんだ」

マイクは、拳を握りしめながら、真剣な表情で言った。

「…つまり、武器と麻薬、両方とも裏で同じ組織が動かしてる可能性があるってことか?」

マイクの言葉を聞いて、リンは考え込むように顎を撫でた。

「…確かに、どちらも一大事ではあるけど、同時に起こるなんて、ちょっと不自然だよね」

剣持は、マイクの発言に賛同しつつ、さらに別の視点を加えた。

「…それに、今回の武器密売って、時期的に不自然じゃないか? 間もなく開催される第三回・超国家事業発展会議のことを考えると…」

剣持の言葉に、マイクとリンは大きく頷いた。

「…確かに…もしかしたら、この会議を狙ったテロ計画の一環かもしれないな」

マイクは、眉間に皺を寄せ、険しい表情になった。

リンは、冷静に思考を続け、

「…だとすると、会議に参加する要人たちの素性も調べてみるべきじゃないかな? もしかしたら、裏で何かしらの繋がりがある人物がいるかもしれない」

リンの提案に、剣持とマイクは目を合わせた。

三人は互いの意見を擦り合わせ、今回の捜査方針を固めていった。

「…よしじゃあ、分担を決めようか」

マイクが、リーダーシップを取って話を進めた。

「…俺は、引き続き武器密売事件を調べる。あの銃撃戦の現場に残された痕跡とか、密売人の情報を追ってみる」

マイクは、腕を組み、決意に満ちた表情で言った。

「…リンは、会議に参加する要人たちのバックグラウンドを調べてくれ。過去に、暴力団との関わりとか、金銭的な問題とか…そういうのを見つけられるといいんだけど」

リンは、冷静に頷き、承諾の意を示した。

「…俺は、新型麻薬の密売ルートを調べる。ボニーの店が起点になってるのか、それとも別のルートがあるのか…そこを探ってみよう」

剣持は、机に広げた広域地図を見ながら、今回の事件の繋がりを見出そうと、意気込んだ様子だった。

三人は、それぞれの持ち場に分かれて今回の事件の真相を追うべく、捜査計画を立て上げた。

廃墟と化した機械加工工場。前回カイが武器の取引を行った場所だ。

工場の経営者は倒産したため、現在は人影もまばらな廃墟と化していた。辺鄙な場所にあるため、訪れる者は少なく、付近には監視カメラも設置されていない。

カイがここから立ち去った後、どこへ向かったのかを追跡することは不可能だった。

十個もの武器は、かなりの大きさがある。トラックで運搬しなければ移動させるのは容易ではない。住宅街にそんな大量の武器を隠すのは不可能に近い。人通りが多く、監視カメラも比較的多い住宅街では、すぐにバレてしまうだろう。

となると、カイはこれらの武器を、人里離れた倉庫や、やはり廃墟となった工場など、人目に付きにくい場所に隠したに違いない。

マイクは、まず機械加工工場周辺の公共カメラの映像を確認しようと考えた。

不審な車両や人物が映っていないか、丹念に映像をチェックしていくが、

「…やはり何も見当たらないか…」

マイクは、肩を落とした。

まるで、カメラの存在を事前に察知していたかのように、カイの行動は映像に一切残っていなかった。

机の上に広げた地図には、マイクがピックアップした、カイが向かう可能性のある人里離れた場所がいくつか印されていた。

「…まずは、車でこれらの場所を回ってみるか…」

マイクは、ため息をつきながら呟いた。

手掛かりが掴めず、苛立ちを募らせるマイクだったが、諦めることなく、ハンドルを握り、車を走らせた。

人目を忍ぶため、マイクはあたかも記者であるかのように振る舞い、ピックアップした怪しい場所を車で回っていた。

午後になるまでに、四つの場所をくまなく調べたが、手掛かりらしきものは見当たらない。

日が暮れ始めた頃、マイクは夕食を取るためにレストランに入った。

テーブルの角に置いたままにしていたカメラが、通りすがりの客にぶつかって床に落下する音がした。

「…あっ! 大変申し訳ございません!」

通りすがりの客は、慌ててマイクに謝罪してきた。

マイクは、

「…いえ、大丈夫ですよ」

と、急いでカメラを拾い上げた。

カメラのレンズ部分に亀裂が入っており、どうやら故障してしまったようだ。

ぶつかってきた客は、何度も頭を下げて謝罪を繰り返す。

しかし、マイクには、客が故意にぶつかったようには思えなかった。誠実そうに謝罪しているので、咎めるつもりもなかった。

ふと、マイクはその客の顔を見つめた。

「…あれ? もしかして…」

マイクは、記憶の奥底からとある人物の顔を引っ張り出した。

O市で出会った、あのユータだった。


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