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探偵マイク  作者: 光翔
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11 追悼と追跡:琢見の葬儀と街のバイクチェイス②

街並みは、まるでスローモーションのようにぼやけて見え、マイクの鼓膜にはエンジンの轟音しか響いていなかった。

数ブロック追跡を続けるうちに、徐々にカイとの距離が縮まってきた。

視界に入ったカイは、後ろを確認すると、ミラー越しにマイクの姿を確認すると、仲間数人に対して何やら合図を送った。

指示を受けた数人は、バイクをゆっくりと路肩に寄せると、Uターンして反対車線へと消えていった。

その意図を察したマイクは、そちらには目もくれず、ひたすらカイを追うことに集中した。

マイクの視界には、ただひたすらに逃げるカイの背中しか映っていなかった。

カーブを曲がり、直線を抜ける。

アドレナリンが全身を駆け巡り、思考は停止寸前だった。

しかし、諦めるわけにはいかない。

カイは、ちらりと後方を確認すると、ニヤリと笑みを浮かべてアクセルを回した。

バイクの速度が一気に上がり、あっという間に前との距離が開いていく。

負けじとマイクもアクセルを捻り、カイとの距離を縮めようとした。

市街地の道路を舞台に、二人の男によるむき出しの追走劇が繰り広げられていた。

スピードを競うだけではなく、これはある種の意地と意地のぶつかり合いでもあった。

そんな執念が、マイクを突き動かしていた。

ついに、目前まで迫ったその時だった。

必死に追いかけ続けるマイクだったが、あと少しというところで、カイが再び不敵な笑みを浮かべた。

視線の先には、二台のバイクが横一列に並び、道を塞ぐように待機していた。

カイの部下たちだった。

カイは、不敵な笑みを浮かべながら、道路脇に待機していた二人の部下に向かって、腕を大きく振り上げた。

その合図を機に、二人は道路中央にバイクを横倒しにし、即席のバリケードを作り上げた。

予想だにしなかった事態に、マイクは絶叫と共にハンドルを切った。

急なハンドル操作に、バイクが大きく傾いた。

「…くそっ!」

必死で体勢を立て直そうとしたが、すでに遅かった。

バイクは、バランスを崩して道路脇へと弾き飛ばされた。

アスファルトの路面が、マイクの背中に衝撃を与えた。

全身に激痛が走る中、マイクは朦朧とした意識の中で、逃走していくカイのバイクのテールライトだけを見つめていた。

アスファルトに叩きつけられた衝撃で、全身が火照るような痛みを感じたマイク。

視界がぼやけながらも、視線の先に去っていくカイのバイクの姿がぼんやりと映っていた。

その瞬間、後方から戻ってきたのか、カイがバイクを停めた。

勝機が訪れたのかと息を飲んだマイクだったが、カイは笑みを浮かべながら、マイクを見下ろした。

「…なかなかやるじゃないか、マイク。だが、この勝負に勝ち負けはない」

そう言い放つと、カイは視線をマイクの横、すれ違うようにして近づいてきたパトカーへと移した。

パトカーの窓越しに、リンと剣持の焦りと心配が入り混じった顔が見て取れた。

「…また会う機会があるだろう。次は、フェアな勝負ができるといいな」

そう不敵な笑みを浮かべながら、カイは再びバイクを走らせた。

リンと剣持がパトカーを降りて、マイクの元へ駆け寄ってくる。

「…マイク! 大丈夫か?」

心配そうな顔でリンが声をかけ、剣持の手によってマイクは車道から歩道へと運ばれた。

「…くそっ…!」

悔しさで歯を食いしばりながら、カイが去っていく後を追うマイク。

しかし、全身の痛みと左足の激痛が、その場から動くことを許さなかった。

「…勝ち負けはない…だと?」

口元から漏れたつぶやきには、苛立ちと諦めが入り混じっていた。

確かに、カイの部下が仕掛けた簡易バリケードがなければ、追いつく可能性はあった。

だが、”もし"は、この世界には存在しない。

所謂の公平な競争はもう存在しない。これはスポーツの競技場での公正な試合ではなく、警察と容疑者の間の生と死の勝負だ。

マイクは、唇を噛みしめながら、空を見上げていた。

その目には、不屈の闘志と、そして、複雑な感情が入り混じっていた。


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