10 カイの捜索: T市警察の挑戦③
翌朝、警察署に出勤したマイクとリンを待っていたのは、
「…出動だ!」
と、大勢の警察官を指揮する署長だった。
何か大きな事件が起きたのではないかと察したマイクは、剣持に
「…何があったんだ?」
と、事情を尋ねた。
「…琢見さんが亡くなった。カルテル・ギャング本部で、今日、葬儀が行われるらしい。署長は、監視のために警察を派遣するところだ」
剣持は、渋い顔で答えた。
「…葬儀? どういうことだ?」
リンも、状況が飲み込めずに眉をひそめた。
マイクとリンは、すぐに署長のもとへと歩み寄り、
「…我々も同行させてください!」
と、声を揃えて申し出た。
署長の視線が、マイクに注がれた。
少しの間、沈黙が流れた後、
「…構わない。だが、今回はあくまで監視が目的だ。無断で行動を起こすようなことはするな」
と、条件付きで許可を出した。
マイクは、
「…かしこまりました」
と、渋々ながらも同意した。
今回の任務は、あくまで遠距離からの監視であり、直接的な介入は認められていない。
しかし、マイクの心のどこかでは、何か行動を起こす機会が訪れるかもしれないと、期待と不安が入り混じった感情が渦巻いていた。
カルテル・ギャング本部へと向かう車中、張り詰めた緊張感が漂っていた。
署長は、事前に下調べを行い、本部周辺の見通しが良い隠密ポイントを二箇所見つけていた。
到着後、一行は二手に分かれ、それぞれ監視を開始した。マイク、リン、そして剣持の三人は同じグループとなり、見晴らしの良いビルの屋上に待機した。
やがて、参列者は続々と姿を現した。カルテル・ギャング本部の組員はもちろん、T市内の他の組織からも弔問客が訪れていた。
なんと、T市内最大の組織の組長であるナオキの姿まであった。
二時間ほど監視を続けても、特段の動きは見られない。
じりじりと焦燥感が募っていくマイクの姿を見て、リンは
「…大したことはなさそうね。このまま大人しくしていれば問題ないんじゃないかしら?」
と、余裕そうな笑みを浮かべた。
しかし、マイクは苛立った様子で
「…こんなつまらない監視、一体いつまで続くんだ?」
不平不満げに呟くマイクに、リンは
「…署長の指示に従いましょうよ。今回のお前みたいに、勝手に単独行動を起こすような真似はしないでね」
と、皮肉を込めた忠告をした。
マイクの苛立ちぶりは、傍で見ていた剣持も気にかかった。
「…マイクさん、もう少し落ち着いてください。任務はあくまで監視ですから」
と、静かに注意したが、マイクは聞く耳を持たない。
突如、マイクは
「…俺は、弔問会場に行く」
と、一方的に宣言した。
「…え? マジですか? 非常事態でもないのに、そんなことしたら問題になるに決まってるじゃないですか!」
リンが慌ててマイクを止めようとしたが、マイクは聞くつもりなどない様子だった。
「…私を信じて! 俺には、俺のやり方がある」
マイクは、そう言い残すと、非常階段へと向かって歩き出した。
残されたリンと剣持は、顔を見合わせるだけで、言葉を失っていた。
マイクの暴走を止める術はなく、ただただ事態の悪化を恐れるばかりだった。




