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6. 眠いと自分が何言ったかわからなくなるよね

「おはようございます。朝帰りですか」

 サーシャは眠そうなソフィアを出迎えた。服は着ていった魔法省の制服ではなく、貴婦人らしいドレスを着ていた。

「今日は寝る。有給消化しようと思う」

 ソフィアは一年休んでいただけませんかね?と人事部に言われるくらい有給を溜め込んでいた。

「連絡しますね」

「ありがとう」

「見送りはなかったんですか」

 サーシャはニヤニヤしている。昨晩はお楽しみでしたね顔をしている。

「あっちも眠そうだったからな」

「ナニしてたんすか?」

「チェス」

「え?」

「瞼の裏にチェス盤が焼きついてる。ふふ、あれがルーク、ビショップ、キング、君は指差す夏の大三角形」

「眠すぎて何言ってるかわかってませんね?一息ついてください」

 サーシャは慣れた様子でソフィアに白湯を渡した。ゆっくり飲むと、少しだけ落ち着くことができた。ソフィアはサーシャに何だっけという顔をした。

「殿下と夜通しチェスをなさってたんですね」

「あ~、うんそう。いつもあっちが勝つまでか時間ギリギリまでやるんだ。負けず嫌いな子だよ」

「はぁ」

「こっちが全勝したから、徹夜だ」

「大人げない」

「まあ、わざと負けてやれるほど強くない」

「そうですか」

 それにドミトリーの方が強いとプチ情報をサーシャに寄越した。

「それより、帰りに朝帰りですかって、紫の髪の綺麗な人に言われたよ」

「恐らく、ラーラ様ですね。高飛車な感じでした?」

「あー、まーね。なんか、高貴な感じの、めっちゃ美人だった」

 ソフィアはラーラ様 (名前は今知った) との会話を思い返した。

「ソフィアさんではありませんか?随分珍しい方がいらっしゃること」

「はぁ、朝、お早いんですね」

「朝露でお茶を飲むのが美味しいんですの」

「そうですか」

 ソフィアはあくびをかみ殺した。早く戻って寝たいと話半分で聞いていた。

「あら、眠そうですね。セーリョー殿にいらしたのですか?」

「ええ」

「どうして?」

「……殿下が私をセーリョー殿に招いてくださったのです」

「オホホホ、本当かしら……!ソフィアさん、殿下に無理強いはなさらないでくださいね。お子がいないことを焦る気持ちもお察しいたしますが」

「はあ」

 急に話が変わったなとソフィアは思った。これが本題なのだろうと察した。

「帰りましょう。坊やはもう起きているかしらね」

 ラーラは優雅に立ち去っていった。

 実際は以上のようであったが、ソフィアはチェスのせいで疲労困憊であり、眠かったため、めっちゃ美人に牽制されたなーしか覚えていなかった。

「謎に牽制された気がする」

「それはそうですよ!セーリョー殿に呼ばれたことのある女性は皇太子妃様だけだったんです。他の側室は招かれてないんですよ」

「はぁ」

「恐らくラーラ様はソフィア様がセーリョー殿で夜を過ごされたと知って待ち伏せしていたに違いない」

 サーシャは名探偵振りを発揮した。

「随分、暇なんだね」

「ソフィア様、ここにいる側室の人はみんな暇なんですよ。あなた以外は」

「ふーん。それより、これからなるべくここに帰ろうと思うんだ」

「そうですか!わかりましたー」

 言いたいことを終えると、ソフィアはベッドに倒れ込んで爆睡した。朝から夕方まで一回も起きることなかった。

 夕方、よく寝たと起き上がると、ソフィアはサーシャのところに行った。サーシャはソフィアが起きたことを知ると、ちょうどご飯の用意をしようと思っていたんですと厨房に行った。

 ソフィアはご飯ができるまで、あまり来たことのないこの宮を探険しよう思いついた。そこまで広くは無いため、すぐ終わるはずだ。ソフィアは玄関と今いるリビング、与えられた自室ぐらいしか足を運んだことは無かった。まず、サーシャのいる厨房に向かおうとした。

「ぐッ……!!」

 突然、ソフィアはガシャーンと大きな物音を立てながら倒れ込んだ。息を荒げ、悶え苦しんでいる。

 厨房にいたサーシャはリビングから大きな物音が聞こえたため、急いでそちらに向かった。

「うっ……!がっ、ゴホッ」

 ソフィアが血を吐き出して、倒れていた。意識はあるようだ。

「ソフィア様!ソフィア様!」

「だいじょうぶだから、処置は、した。わるいが、だれか」

「はい、呼んできます」

 サーシャは気丈に振る舞い、ドクターの元へと急いだ。こんな時、転移魔法だ何だのの魔法が使えれば便利だと感じた。



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