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5. 疾きこと風の如し

 その日の夜。明日の夕方頃に会いに行きますという旨の連絡が来た。ソフィアは爆速すぎて驚いた。

「やっとお許しになられたのですね」

 連絡を取り次いだ侍女、サーシャは呆れたように言った。サーシャとは側室となる前からの付き合いだった。成り行きでカンラン宮の侍女をしてもらっている。ソフィアはここに居着く気がないため、サーシャがただ一人の侍女だ。とは言っても、庭の整備や建物の修繕などのために月に一度庭師や建築士が来てはいた。しかし、カンラン宮に常駐しているのはサーシャだけであった。

「もう怒ってないんですね」

「ずっと怒ってるのも疲れたし、さすがにやりすぎだったね」

「それに気づくのに5年ですか」

「何か言わないとなーとは思ってんだよ」

「行動するまで随分かかったんですね」

「こっちからいうのもあれだしなーって感じじゃん?」

「結局拗ねるのやめるのに5年ですか」

「……もう、いいでしょ別に。うるさいな」

「うるさくもなりますよ。この5年、仕事ばっかで帰る気のないソフィア様より殿下の方がこの宮にいた気がします」

「来てたらしいね」

「ええ」

 誰もいないカンラン宮に皇太子がちょくちょく訪れていると噂になっていた。

「まあ、どーりで足りないものをくれる訳だよね」

「そんな言い方しないでください。ありがたいことですよ」

 ラインハルトは庭師や建築士の派遣などこの宮を保つために手を尽くしてくれていた。そして、あれいいなーとサーシャに言ったものが届けられていたこともあった。本当にありがたいことだ。

「そういえば、何か変わったことは?」

「いいえ、特にありませんよ」

「そう」

「殿下がおいでになる前に何かしますか?」

「え?何を?」

「諸々の準備ですよ」

「とりあえずいいよ。改善点は次回に生かそう!」

 もう寝るねといろいろ言っているサーシャをほっぽった。

 翌日、ソフィアが仕事を終えて、カンラン宮に行くとラインハルトが待っていた。

「会えて嬉しいです」

「ああ、うん」

 ソフィアはラインハルトのわくわくぶりに少し引いた。

「皇太子妃はお元気?」

「はい、去年子どもが産まれましたが、大事なく」

「大仕事だからね。労わるんだよ~」

「はい」

「わかっているとは思うが、もちろん、他の女性もね。甲斐性無しはいけない」

「ええ。相変わらずですね」

「そうかな」

 何が言いたい?とソフィアは訝しげに思ったが、とりあえず水に流すことにした。

「そういえば、私の後輩の件だが」

「イライザ嬢ですね。少し調べましたよ」

「手間をかけさせて悪いね。罰として、めっちゃ仕事与えたんだ。だから、できれば何もしないでくれ。あの子は優秀なんだよ、あれで。本当だよ」

「甘くないですか?」 

「いいや」

「いいえ、あなたは年下に甘すぎます!」

「うーん。今回は魔法道具の分解・解析を三点お願いしたのよ。三つ、違う仕組みだけれど、作業自体は簡単だけどひたすら地道なものね。急は要しないし、誰かに聞いてもいいけど、自分でやるようにってね」

 つまりは、とても面倒で根気のいる作業をやらせるということだ。ソフィアはこの三つの仕事は三ヶ月から五ヶ月くらい作業すれば終わると考えている。

「ああ、うん。時々びっくりするくらい鬼になりますもんね」

 ラインハルトはそこそこの新米に与える仕事量ではないと軽く引いた。

「あの子は見込みがあるからな」

「そうですか」

 ラインハルトは少しむすっとして話題を変えた。

「久しぶりにチェスしません?」

「悪いがここには無いよ」

 ソフィアはここにほとんどいなかったため、基本的なものは揃ってはいるが、びっくりするくらいものがない。特に娯楽用品は0。

「私の部屋にあるんで、行きましょう。お願いします」

 ラインハルトはにっこにこで自分が住んでいるセーリョー殿に誘った。










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