13. 赤の他人に覚悟云々言われるとムカつかない?
ソフィアは本当に暇すぎてお茶会に参加した。ジュリアとタチアナが出席しているらしいため、顔を確認することも兼ねていた。ソフィアは一人で参加しているが、他の二人は当然の如く、侍女を連れ立っている。
「ジュリアさん、お身体は?」
「順調ですわ、タチアナさん」
たしか、ジュリアが妊娠しているんだっけとソフィアは呑気に思った。
「それより、タチアナさんこそ、ラーラ様のお子はよろしいの?」
「ええ、ご心配なく。殿下のお子ですもの。大切に育て上げます」
二人の空々しい会話を聞いてソフィアは思い出した。パーティーの類がめっちゃめっちゃ苦手だということを。暇だからと言って参加するのは悪手だったなと後悔した。
「今日はそれより、ソフィアさんの話が聞きたいわ。ねえ、ジュリアさん」
「ええ、本当。いつもお忙しいようで中々会えませんもの。今は体調を崩していると聞きましたわ」 「もう大丈夫です。近い内に魔法省に復帰しようと思います。その前に、折角の機会なのでお二人にお会いしたく思い、参加させていただきました」
「あら、そう。あたくしたちもソフィアさんには仲良くしたいわ、ねえ、タチアナさん」
「ええ、もちろんですわ」
タチアナは手に握っている数珠のようなものを固く握りしめて、心を保っているように見えた。ジュリアはこちらを馬鹿にしたような目で見てくるとソフィアは感じた。
「ソフィアさんはお忙しいようね。魔法省をお辞めになられて、側室には専念なさらないの?」
「しばらくは殿下のご温情に甘えようと思います」
ソフィアはあんなに暇なのに専念とかあるのかなと疑問に思った。
「ご温情ね……。ソフィアさん、無礼を承知で申し上げますが、あなたは側室としての責務を果たしていないではありませんか」
ジュリアは大きいイヤリングをしゃらりと鳴らして言った。
「側室として殿下にお仕えする覚悟はあるのですか?」
「ジュリアさん、私にはあなたが何をおっしゃりたいのかわかりません」
疲れたようなので失礼しますとソフィアは帰った。やっぱりお茶会とかパーティーとかの貴族の集まりは面倒だなと思った。
「ただいま、サーシャ」
「早くないですか?」
とんぼ返りじゃないですかとサーシャは驚いた。
「あーいう令嬢とかと喋るの苦手なんだ。腹の探り合い、嫌味の連発。もう勘弁だね」
「貴族生まれ貴族育ちなんでしょう?慣れてないんですか?」
「そういうの嫌いだからずっと避けてた……。貴族っていう部類と肌が合わないから魔法省に入ったというのもあるね」
働くということは自立を表す。自立すると多少の自由は得られるのだ。要は社交界に参加しなくても白い目では見られない。
「年下の貴族でもダメなんですか?」
側室の方々はみんな年下ですよとサーシャは言った。
「……年下だから暴言吐かないだけで流してる」
サーシャは同年代や年上に嫌味を言われたらどうしてるんだろうと呆れた。
「まあ、もうすぐで職場復帰ですから大人しくしたらどうですか?」
「そうだね。暇だからといって苦手なことはするもんじゃない」
ソフィアは気晴らしに一人チェスをやろうと思った。この暇な休暇期間の合間にチェスなどの娯楽用品を買っていたのだ。空から面白いものは何も降ってこなかったので、自分のお金で購入した。大人買いはストレスの発散になっていた。